外務大臣会見記録(平成21年12月29日)
外務大臣会見記録(平成21年12月29日(火曜日)16時00分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)ロシア訪問について
(2)トルコ訪問について
○ロシア訪問
○訪米の見通し
○政権交代後100日及び来年の抱負
○米軍再編問題
○いわゆる「密約」に関する調査
○死刑制度について
○ミャンマー情勢
○政治主導と外務官僚との連携
○来年度予算案(ODA予算の削減)
○記者会見のオープン化
冒頭発言
(1)ロシア訪問について
【岡田大臣】大分(年の瀬も)押し迫りましたけれども、本日が本年最後の記者会見ということです。私(大臣)からは二点、第一点はロシアの訪問です。日程はご案内のとおりでありますが、まず、フリステンコ産業貿易大臣と(貿易経済に関する)日露政府間委員会共同議長間会合を実施致しました。食事を挟みながら2時間半程議論いたしまして、その中で、「極東・東シベリア地域における日本との協力を期待する各種プロジェクト」は、先般プーチン首相の来日の折に示されたものですが、その再整理を日本側が致しまして、そのリストを示すとともに、そのことを中心に重点的に議論する場として、次官級の貿易投資分科会を立ち上げることで一致を致しました。ハイレベルで具体的に、極東・東シベリア地域において、お互い協力ができるようなプロジェクトについて、更に議論を煮詰めて参りたいということであります。
翌日、ラヴロフ外相と2時間強議論を致しました。食事の前にまず議論をして、そして記者会見、その後に食事ということにしておりましたが、1時間の議論の予定が90分程に延びまして、そこは主として領土問題の議論を致しました。本日の朝刊各紙も報道振りが違うわけですが、基本的に両国の間でかなり主張の違いがあるということがまず確認されました。ラヴロフ外相は、領土問題に関しては、国際法、それから第2次世界大戦の結果を踏まえる必要があるという基本的なスタンスであります。もちろん、解決を遅らせるつもりはないと、ロシア側にこの問題を解決する政治的意思があるということを言いつつも、基本的に姿勢は変わっていないということでありましたので、それは首脳会談で示されたメドヴェージェフ大統領の姿勢とは少し違うのではないかということで、そこを中心に議論を致しました。国際法及び第2次世界大戦の結果とは具体的に何かということを個別に議論をして、そこはお互い、かなりのやり取りになったということであります。私(大臣)からは、日露行動計画に基づいて日露関係は進んでいるが、これは先程の経済的な問題を主として指しているわけですが、「領土の帰属の問題について目に見える進展がないことが問題であり、経済と政治は車の両輪と言う、やはり政治が、特に領土問題がきちんと進んで行かなければ両輪は回っていかない」と申し上げたところであります。そして、「メドヴェージェフ大統領、プーチン首相、鳩山総理というこの三者が揃っている今こそが、この問題を前に進める大きなチャンスであり、これを逃すと難しくなるのではないか」ということを申し上げました。議論そのものは「進展はなかった」ということではありますが、これから何度か会って議論しなければならない相手でありますので、最初のやり取りとしては、私(大臣)はそれなりの価値があったというように思います。お互い交渉する相手として過不足ないと言いますか、しっかりした議論が出来るということは認識し合ったのではないかというように思っております。
ナルィシキン大統領府長官とは、両首脳のリーダーシップの下、領土交渉の加速の必要性について一致を致しました。私(大臣)からは、日露間の領土問題を解決することを唱えた故ソルジェニーツィン氏の一節を紹介して、大統領にも伝えるよう申し上げたところであります。
私(大臣)としては、13年ぶり3回目の訪露でしたが、「今回の訪露は議論のスタートであり、首脳間でこれからも様々な場で議論していただくと共に、それをしっかり受け止めて、外相同士で話を具体化していくことが、お互い外相としての務めであり、責任ではないか」ということをラヴロフ外相に申し上げたところであります。
(2)トルコ訪問について
【大臣】トルコの訪問につきまして、1月3日から4日まで、トルコを訪問することに致します。アブドゥッラー・ギュル大統領への表敬、アフメット・ダーヴトオール外務大臣との会談を行うことにしております。加えて「2010年トルコにおける日本年」のオープニング・セレモニーに参加をすることにしております。
トルコは、地政学的にも非常に重要な国であり、同時に、現在、国連安保理の非常任理事国であります。もちろん、G20のメンバーとして、国際的な政治、経済の問題について重要な役割を担っているわけであります。この式典に参加をする機会を捉えて、しっかりと両国間の関係を深めたいというように考えているところです。
ロシア訪問
【毎日新聞 野口記者】ロシアの外相との会談で、ラヴロフ外相が「国際法と第2次世界大戦の結果を踏まえる必要がある」ということを仰ったということですが、これまでメドヴェージェフ大統領と鳩山総理との会談では、こういった表現は確か出ていなかったと思うのですが、この言葉についてどういう意味があると大臣は受け取ったのでしょうか。
【大臣】伝統的なロシア側の考え方であるというように考えています。ラヴロフ外相は今回初めて言った話ではなくて、従来そういうスタンスで言われることが多かったというように思います。ただ、極端な立場はやめるべきと首脳(メドヴェージェフ大統領)が言っている訳ですから、そういう意味で、より具体的に何を意味しているのかということを一つ一つ議論させて頂いたということであります。
【日経新聞 山本記者】今の質問に関連して、従来の立場と変わらないということは、以前からロシア側が言ってきている「独創的なアプローチ」のような新しい提案というものは、今回なかったのでしょうか。
【大臣】ありません。メディアによってはそういう提案があったのではないかというように書いておられるところもあるかもしれませんが、ありません。
【北海道新聞 佐藤記者】外相会談の後の共同記者会見で、ラヴロフ外相は、独創的アプローチについてその用意があると、それについても、本日議論したというように発言をされたというように聞いていますが、実際の会談の中で、この独創的なアプローチを巡って、どのようなやりとりがあったのでしょうか。
【大臣】具体的に、何が独創的アプローチであるかというようなことについての議論はしておりません。
【北海道新聞 佐藤記者】日露外相会談についてお尋ねします。最近、政府高官を含めて、ロシア側から北方四島での共同の経済活動を日本側に提案するという場面がいくつかありますが、昨日の会談では、これについてやりとりがあったのでしょうか。昨日の会談であるなしに関わらず、大臣ご自身、この帰属問題が解決しない中で北方四島で日露共同で経済活動をすることについて、どのようにお考えでしょうか。
【大臣】昨日は、そのような話は出ておりません。私(大臣)は帰属問題を明確にしない中で事実だけが先行するということは、決して望ましいことではないと考えております。
訪米の見通し
【読売新聞 村尾記者】年明けの通常国会前に岡田大臣が訪米されるのではないかという話しがちらほら出ていますが、そのようなお考えがあるかどうか、実現する見通しのようなものをお聞かせ下さい。
【大臣】全く、まだわかりません。決まった時にお知らせします。そうでないと、またつぶれたとか、そのように書かれるところもありますので。現時点では白紙です。
【共同通信社 上西川原記者】訪米の件ですが、岡田大臣としては、時間が合えば、できれば訪米して話をしたいという意向はお持ちなのでしょうか。今、何をクリントン国務長官と話したいと思われているのでしょうか。
【大臣】(訪米が)決まるまでは、何も申し上げません。
政権交代後100日及び来年の抱負
【共同通信 西野記者】外相として、ずっといろいろとご活躍を続けてきたと思いますが、本年を振り返ってどういった一年だったのかと、来年はどうのような年にしたいのかということについてお聞かせください。
【大臣】外相になってからは、まだ100日余りであります。様々な問題に取り組んで参りましたが、同時に政権も変わった上での外相就任でありますので、今までのやり方を変えていかなければならないという、いわば(国の)中を向いての仕事と、それから外務大臣としてなるべく外で直接対話をするという、そこのバランスがなかなか難しいなというように感じました。今回のロシアもそうですが、直接行くことでかなり物事が理解でき、そして前に進むと。前に進むというのは、別に解決に向けて進んだ訳ではないのですが、お互い責任者が知り合うことで、今後、前に進むための下準備と言いますか、そういう意味ではなるべく外にも出たいなというように改めて感じております。就任の時に3つの課題ということを申し上げましたが、その中でアフガニスタンについては日本としての対応は一応できたと思いますが、COP(気候変動)については会議そのものは先送りと言いますか、COP16に向けて引き続き、大きな課題でありますし、日米の問題も引き続き、宿題を残しておりますので、そういったことを懸命に取り組みたいというように思っております。併せて、やはり貧困の問題とか、或いは人権とか、そういった問題にも幅を広げながらしっかりと活動をしていきたいと思います。国会がありますので、前半は国会、そして参議院と8月ぐらいまでなかなか外に出にくい状況ですが、今回ロシアに行ってみて、正味24時間でもかなりの仕事ができるということがわかりましたので、土日を中心に、金曜の夜とか土曜に出れば、月曜日の朝には帰ってこられると、一泊二日ないし、一泊三日の旅です。そういうやり方も、割と良いと今回思った次第です。時差がアジャスト(適応)する前に帰って来れるということは悪くないと思いますので、予算委員会が終われば、4月以降はそういうことも多用しながらしっかりと進めていきたいと思っております。
【日経新聞 山本記者】大臣は就任時に「100日の課題」と「300日の課題」を掲げました。必ずしも「100日の課題」で満足のいく結果が得られていないものもあるかと思いますが、現時点で来年の「300日の課題」は何かということをどのように考えていますでしょうか。
【大臣】「300日」と申し上げたのは参議院選挙までということで、就任から300日ということで申し上げた訳です。残されたのは200日弱ということになるかと思います。やはり日米関係について、(米軍)再編の問題もありますが、日米同盟そのものをきちんとより持続可能で深いものにしたいと思っております。そのためのスタートが適当な時期にできるかと考えております。それから、先程も言いましたけれども、COPの問題も温暖化の問題も、或いは貧困とかグローバルな課題に対して、しっかりと対応する日本外交でありたいというように考えております。あとはアジア、ここは100日の間に随分進んだ部分だと思います。総理も自ら率先して韓国、中国やASEAN、或いはインドということで、関係を構築されて参りました。それを更に深めるという作業が必要かと思っております。そして、やはり北方領土の問題と北朝鮮の問題というのは、非常に大きな宿題であります。なかなか残された200日弱で解決するというのは非常に難しい訳ですが、少しでも前進できるように懸命の努力を続けたいというように思っております。
米軍再編問題
【テレビ朝日 新堀記者】先ほど、お帰りになってから、藤崎駐米大使と会われていたかと思いますが、藤崎駐米大使からどのような報告やお話があったかを教えて下さい。
【大臣】話の内容まで申し上げる立場にはないと思いますが、藤崎駐米大使から見た現在の米国の状況についての報告があったとお考えいただきたいと思います。
【テレビ朝日 新堀記者】普天間基地移設問題についてとか、何か具体的な話はなかったのでしょうか。
【大臣】具体的なことは申し上げません。
【時事通信社 高橋記者】昨日、政府与党の協議も始まりましたが、民主党の小沢幹事長が鈴木宗男衆院外務委員長と会談された際、小沢幹事長の方から「沖縄の声をしっかり踏まえないといけない。あの青い綺麗な海を汚してはいけない」と、これは辺野古の海を指している訳ですが、このようなことを言われました。民主党という政党は、「コンクリートから人へ」という理念を掲げて選挙に勝利されている訳ですが、そういう点から見ると、この幹事長の発言はこの理念に合致している発言だと私は受け取っています。「社民党に言われたから辺野古はいけない」とか、そういう政局的な意味合いではなく、「コンクリートから人へ」という民主党の基本理念という観点から見て、この小沢幹事長の発言は非常に重いと思いますが、その辺りは大臣はどのようにお考えでしょうか。
【大臣】小沢幹事長の発言は私(大臣)は確認をしておりません。どこかの記事になったものかも知れませんが、正確にそれを反映したものかどうかということも確認しておりませんのでコメントいたしません。一般論として言えば、もちろん自然環境の保護ということは重要であるということは、私(大臣)も同じ思いです。それ以上のことは、今新たな候補地を探すための場ができ、そこでの検討がスタートした訳ですから、私(大臣)がそういった状況の中であまり発言をするのは望ましくないと考えております。
【朝日新聞 内田記者】普天間の問題で引き続き伺いします。鳩山総理が昨日訪問先のインドで記者団に対して、普天間の移設先について「5月までに日本政府内の結論を出した上で米国との合意も取り付けたい」という考えを示されているのですが、この問題で米側の理解を得るために外務大臣として何が重要だとお考えか、考えをお聞かせ下さい。
【大臣】「米国との合意」というのはもう少し詳しく、どういう場面で仰ったのでしょうか。私(大臣)は把握していないものですから。
【朝日新聞 内田記者】記者が「与党内で合意しても米側の考えがある」というように質問したところ、「与党内の合意をする時に当然日米で議論していかなければならない」と。さらに記者が重ねて「5月の目途というのは日米で大筋合意することか」と聞いたところ、「無論です」と仰っています。
【大臣】5月までに結論を出すということは、日本政府として結論を出すということですから、それがいかなる結論であったとしても、総理は5月までに結論を出すという当然のことを言われたのだと思います。
【朝日新聞 内田記者】「米側との合意を5月までに」という部分はどうでしょうか。
【大臣】そのように総理が仰ったのかどうかはわかりませんが、日本政府として結論を出すということですから、米国との合意、ややそこは微妙なところだと思いますが、もう少し総理の真意をきちんと確認した上で、私(大臣)の方からお話させていただいた方がいいと思います。
【TV朝日 新堀記者】先程、300日の課題の中で、日米関係について「より持続可能で深いものにするためのスタートが適当な時期にできれば」と仰っていたと思うのですが、これは与党の方で普天間の協議が始まったところですが、それと並行してというようなニュアンスで、日米関係の深化についても、外務省としては別にやっていくという理解でよろしいのでしょうか。
【大臣】昨日スタートしたチーム(沖縄基地問題検討委員会)がやることは、新しい場所を探すということです。ですから、日米関係そのものの議論とは別次元の話です。この場でも何度か申し上げたと思いますが、米側としては、やはり普天間の問題について、一定の結論が出ないと本格的な議論はしにくいという考え方もあるかと思いますので、どうやって折り合いをつけていくかが、これからの課題です。
【共同通信社 上西川原記者】普天間問題でもう一問だけ。今、政府と与党で新しい移設先を探していると思うのですが、大事なことは、「何故、辺野古では駄目なのか」ということが良く分かりません。つまり、地元が受け入れていて、米国もいいという状況です。大臣はワーキング・グループで検証作業をされていたと思うのですが、その結果についても、まだはっきりとした発表というか報道も出ていないと思います。何故、辺野古では駄目で新しい移設先を探しているのかという点について、どのようにお考えでしょうか。
【大臣】「今の辺野古では駄目だ」と主張されたのは、社民党と国民新党ですから、その主張に基づいて代わり(の用地)を探しているということです。今の辺野古に様々な問題があることは、私(大臣)もそのことは事実だと思います。先程の環境の問題もそうですし、それから、新たな大きな構築物を作ると、しかも税金もかなり投入しないといけないという問題があるということも事実ですから、それよりも問題点の少ない場所があるということであれば、そのことを検討するには値すると思います。ただ一方で、現在の辺野古という選択肢がなくなった訳ではありませんので、よりいいものが出てくれば、もちろんそちらにすればいい訳ですが、出てこなければ現在の案が生き続けているとそのように私(大臣)は認識しています。
いわゆる「密約」に関する調査
【フリーランス 上杉氏】先週25日の会見でも、岡田大臣は言及されましたが、故佐藤栄作元総理の自宅で発見された、これは一民間のご自宅なので、そのような公の文書が、そこで見つかるということに対して、外務省とか、政府の方から抗議、もしくは調査ということをされる予定ということはあるのでしょうか。
【大臣】抗議ということは誰に、どのような理由をもって抗議するのか、私(大臣)はよくわかりませんが。
【フリーランス 上杉氏】民間、要するに「国の機密文書」、外務省の機密ではないと言っているのですが、それが持ち出されたということに対して、どのようなルートで持ち出されたとかを含めてそういう意味での調査と言った方が良いのでしょうか、そういう形で改めて密約の問題について調査するということはあるのでしょうか。
【大臣】密約の問題はいつかも申し上げたと思いますが、今、検証するための委員会を設けて、そこで様々な議論をしていただいておりますので、そちらの方にお任せをしております。持ち出されたかどうかというのは、それすら明確ではない訳です。想像するに若泉さんの著書によれば、ホワイトハウスの別室に入って、お互いサインをしたと、他には誰も入らなかったということであります。その後、その文書が一旦外務省に戻ったのか、そのまま佐藤元首相が個人として持たれて、そしてご実家に保存しておられたのか、そういうことすら分からない、という状況だと思います。
【フリーランス 上杉氏】それを調査するおつもりはないのでしょうか。要するに、国のいわゆる文書が30年間も一個人の家にあるというのは、異状な事態だと思うのですが。
【大臣】総理大臣が署名しているのですから、そういう意味では国の文書だと思いますが、そういう取り扱いを受けてきたがどうかということすらはっきりしない訳です。佐藤元総理大臣は個人の立場でサインされたのではないと思いますが、どのくらい、一体誰がそのことを承知していたのかどうかも定かではないということです。そして、そのことは、ご遺族の方にお聞きしても分からない話ではないかと思います。何れにしても、今、この問題は検証委員会に委ねられておりますので、そこに一義的にはお任せしたいと思っております。私(大臣)はむしろ、こういったものを出していただいたご遺族の皆さんに敬意を表したいと思います。これは、故佐藤栄作元首相の評価にも関わってくる話であると思います、にもかかわらず文書を出されたということは、真実を明らかにするという、姿勢かと思います。その点について、私(大臣)は評価をしたいと思っております。
【フリーランス 上杉氏】大臣が今作っている検証チーム、来月に結論というか中間報告が出るということですが、その密約に関して、1967年の密約という認識をしているのですが、その後も1969年、70年、71年の密約もあるということで米国の方から公表されていますが、それについて改めて調査の内容の幅を広げる、或いは別の検証チームを作るという予定はあるのでしょうか。
【大臣】今、対象にしているのは4つの密約であります。それ以外のことについては、現時点で白紙です。
【朝日新聞 倉重記者】密約に関して、先程「幅」の話もありましたが、しっかりとこれを機会に調査しようということであれば、1月の発表というのが間に合わないのではないかという話が一部の委員の方から出ています。1月末が最終のデッドラインなのか、場合によってはそれ以降も大臣として検証作業を進めてもいいと思っていらっしゃるのか、その見通しをお願いします。
【大臣】北岡先生をはじめ、委員の先生方はかなり意欲的にヒアリングとか議論を進めて頂いております。議論が深まっていく中で、タイミング的にもう少し時間がかかるのではないかというご意見も聞かせて頂いているところです。これは、我々がやっているのではなくて、検証委員会の先生方にご議論頂いていることなので、いつまでにということは、とりあえず申し上げているのですが、それが間に合わないときに「では、途中で切り上げてやってください」ということではなくて、それはやはり納得いくだけご議論頂くことが必要ではないかと思っています。検証委員会に揃った先生方は、それぞれこの道の専門家の非常にいい顔ぶれでありますので、我が国の外交上の大きな課題でもあった密約の問題について、しっかりとした専門的な見地からいい報告書をまとめて頂きたいと思っております。先生方からは2月になると忙しいと、つまり、受験ですから、大学は2月は忙しい訳です。「2月、3月は忙しい」という話も上がってきておりますので、どうやってこれを折り合いをつけようか、いろいろご相談させて頂いているところです。
【朝日新聞 倉重記者】場合によっては、4月以降、引き続きの検証ということも、何パーセントかはあるのでしょうか。
【大臣】4月以降と言われますと、かなり延びてしまいますので、どのようにすることがいいのか、今、少しご相談をさせて頂いているところであります。ただ、基本的には、これは我々がやっていることではありませんので、「なるべく早く」とは思いながらも、遅れる場面は出てきつつあるということが現状だと思います。
【フリーランス 上杉氏】密約について、先ほど大臣は、佐藤栄作元総理の家、佐藤信二さんのご自宅から、(密約文書を)出したことを評価し、敬意を表すると仰いました。裏を返せば、30年前に事の重要性に気付いて、30年間出さなかったということは、ある意味、隠ぺいではないかと捉えることができると思うのですが、その辺りについては、いかがでしょうか。
【大臣】当時の佐藤総理としてサインをされて、そのことを明らかにしなかったということです。
【フリーランス 上杉氏】次男の佐藤信二さんが、30年前に机の中から発見し、その文書の重要性も分かっていたが、あえて表に出さなかったということは、一般の国民の立場からすると、それは隠ぺいではないかと、事実が明らかにされなかったと、保管ということも考えられるのですが、裏を返せば、隠ぺいではないかと考えられるのではないかということをお尋ねしたのですが。
【大臣】佐藤信二さんは当時者ではありません。この沖縄の返還交渉にかかわった訳でもありません。そういう中でいろいろな葛藤があったと思います。佐藤元総理は「核抜き本土並み返還」ということを訴えられて、沖縄返還を果たされた訳ですし、そのこともノーベル平和賞の大きなきっかけになっていると思います。そういう中で、その「核抜き本土並み返還」とは矛盾するような具体的な証拠が出てきたときに、いろいろ悩まれたと思います。そのことは私(大臣)も理解できます。それから、外務省関係者に「保管してくれ」と言ったという話もあります。そこは、私(大臣)もご本人に確認しておりませんが、そのときに「私文書だから」と言ったとすると、「そんなもの出てきてもらったら困る。そういうものは、ないことになっている」と、その時のそういう相談を持ちかけられた外務省関係者の反応だったと思います。それで困ってそのままにされたというようなことだと思います。しかし、今でもそのままずっとほっておいてもよかった訳ですが、やはり歴史の重さと言いますか、真実を明らかにすることの重要さにかんがみて、決断して頂いたということは、そこはやはり私(大臣)は評価すべきではないかと、私(大臣)自身は思っております。
死刑制度について
【AFP通信社 長谷川記者】麻薬所持で中国で捕まった英国人の方が、本日、死刑執行されました。日本も死刑制度はあるのですが、このことについてどのように考えていらっしゃっるでしょうか。
【大臣】どのような量刑を定めるかということは、一義的には国に委ねられている訳ですから、そのことに対して私(大臣)は特にコメントすることはありません。国によっては麻薬については、非常に重罰を科している国が結構多いです。ですから、日本人でも同じように様々な重い刑罰の処分を受けるというケースがあると思います。あまり安易に考えずに、もちろん、日本国内でも犯罪ですが、大変厳しい刑罰を科す国がかなりあるということは、是非国民の皆様にも理解をしていただきたい、知っていただきたいと思います。
ミャンマー情勢
【毎日新聞 野口記者】ミャンマー情勢ですが、数日前の毎日新聞の報道で、アウンサン・スーチーさんが来年の総選挙の前にも解放される可能性があるという報道がありました。大臣としてミャンマー情勢、アウンサン・スーチーさんの解放について、今どのように分析をされているかというのと、年明けにミャンマー訪問をする等、日本政府として何らかの働きかけをするお考えがあるのかという点についてお伺いします。
【大臣】報じられたのは可能性があるということですから、決まった訳ではないと理解をしております。日本政府としては、アウンサン・スーチー氏が自由な状況になるということをミャンマー政府に対して既に求めてきております。そのことが選挙前に実現するということは、公正で開かれた選挙が行われるということの一つの具体的な話だというようにミャンマー政府には申し上げてきているところであります。ミャンマー政府とは、先般、首相が日本に来られた際に、私(大臣)もお会いをしてかなり突っ込んだやりとりをいたしました。そこで日本政府の考え方というものはご理解いただけたと思いますが、その後、(南部アジア)部長がミャンマーに行ったり、いろいろなフォローはしております。是非、来年の選挙が開かれた公正なものになるようにしっかりとミャンマー政府に努力してもらいたいと考えております。
【毎日新聞 野口記者】大臣自身がミャンマーをご訪問するお考えは。
【大臣】(ミャンマーに)行って意味のあるのなら私(大臣)が行くことはやぶさかではありません。しかし、行って意味があるためには、どういう人と会って、どういう議論ができるかという問題があるかと思います。首相とは既に会っております。
政治主導と外務官僚との連携
【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者からの質問を代読させて頂きます。政治主導における岡田大臣と外務官僚との連携についてです。政治主導についてお聞きします。政務三役はひとつの大きなシンボルだと思いますが、政治主導を円滑に進めていく上で、重要なこととして、大臣と官僚との関係があると思います。他の省庁において、大臣と官僚との連携不足が一部で伝えられる中、この100日で岡田大臣から見た外務官僚との関係はいかがだったでしょうか。
【大臣】一言でお答えするのはなかなか難しいですが、私(大臣)は非常に恵まれたと思っております。つまり、官僚の皆さんも非常に使命感を持って、そして優秀な人たちにサポートして頂いて外交を進めることができたというように基本的に思っております。ただ、従来と少しやり方が変わったり、或いは政策の中身も変わったりしておりますので、そういうところで時々ギクシャクすることはありますが、基本的には日本外交を皆でしっかりやっていこうという雰囲気ができてきたのではないかと思っております。
来年度予算案(ODA予算の削減)
【朝日新聞 五十嵐記者】先週、閣議決定された政府の予算案で、ODAの予算が前年度比で7.9%減ということで、過去3番目の減り幅になりました。前政権では3年ぐらい4%減ということで減少傾向は続いていた訳ですけれども、大幅に減りました。一方で(来年度)予算全体の規模は過去最大級だった訳ですが、こういったODA(予算)の減少傾向というものは、今後も続いていくものなのか、来年に大臣はODAについてしっかりと見直したいと仰っていますけれども、こういった傾向というのはやむを得ないとお考えなのか、お考えをお聞かせください。
【大臣】ODA予算というのはなるべく確保したいという気持ちは非常にあります。そのための新しい財源というものも検討していかなければいけないと、国際連帯税とか、様々な議論が国際社会の中で行われております。ただ、今回の来年度当初予算において、確かにODA予算は減っていますが、他方、補正(予算)ではかなり(予算を)付けておりますので、額的にトータルで見ると、決して私(大臣)は大きく減ったというものでは必ずしもないと思っています。大事なことは、これから中身でありまして、金額を確保するとともに、それが意味のあるものでなければなりませんので、そういう意味でODA全体の改革論議というものを来年前半のひとつの大きなテーマに据えて、しっかりと進めていきたいと思っています。本日の政務三役会議でも申し上げましたが、このODAの見直し論議と非核政策についての新しい方向付けといったことを力を入れてやっていきたいというように思っております。
記者会見のオープン化
【マガジンX 島田記者】記者会見をフリーランスや雑誌にも開放して、得たものとか今後の課題点等、考えていることがあればお伺いしたいと思います。
【大臣】これも答え方がなかなか難しいですが、外務省においては、大体定着したのではないかと、時々お叱りを上杉氏とかに頂きますけれども、仕組みとしては、大体定着したのではないかというように思っております。他の省庁もできるだけ参考にして頂きたいという気持ちもあります。いろいろな幅広い意見がこの場で出るということは、私(大臣)はいいことだと思います。また、私(大臣)自身もこうやってお答えしながら、楽しまさせて頂いているということです。幅が非常に広がったのではないかと思っています。