外務大臣会見記録(平成22年3月16日)
外務大臣会見記録(平成22年3月16日(火曜日)16時45分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)川上隆久国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)事務総長副特別代表の逝去について
(2)潘基文国連事務総長との電話会談の実施について
(3)外交記録公開・文書管理対策本部第1回会合の開催について
(4)衆議院外務委員会における参考人と守秘義務について
(5)外務大臣就任後半年を振り返って
○衆議院外務委員会への参考人招致と守秘義務
○国連PKO活動(武器使用基準に係る大臣発言)
○いわゆる「密約」問題に関する調査
○国務大臣の資産公開
○キャンベル米国務次官補の訪日中止
○外務大臣就任後半年を振り返って
○米国におけるトヨタ自動車のリコール問題
○調査捕鯨(シー・シェパードの船長逮捕)
○クロマグロの国際間取引
○中国の海島保護法
○米軍再編問題
○高校の無償化
○沖縄県うるま市での米軍車両による交通事故
○日トルコ関係
冒頭発言
(1)川上隆久国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)事務総長副特別代表の逝去について
【岡田大臣】それでは、私(大臣)から何点か申し上げます。まず、昨日、福山副大臣の会見においてもご報告したとおり、川上国連東ティモール統合ミッション事務総長副特別代表が現地東ティモールの自宅において病気で亡くなりました。川上氏は日本政府からの派遣で、これまでも国連アフガニスタン支援ミッション官房長としても活躍をしてこられた方であります。今後も一層の活躍を期待していただけに、同人を亡くしたことは日本政府としても非常に無念の思いでございます。残されたご家族に心からお悔やみを申し上げたいと考えております。
(2)潘基文国連事務総長との電話会談の実施について
【大臣】昨日の夜、潘基文国連事務総長と電話で会談を致しました。内容は、まず冒頭、「川上国連東ティモール統合ミッション事務総長副特別代表の突然の訃報に際して、心からお悔やみを申し上げる」という発言がございました。その上で、ハイチの支援について、我が国の対応に謝意を述べられると共に、今後更に支援をお願いしたいということでございました。私(大臣)の方からは、「本格的な復興支援に関しては、我が国も参加して行われている復興支援ニーズ調査の結果も踏まえ、我が国としていかなる支援が可能であるか検討したい」と述べたところであります。なお、3月31日の国連と米国政府主催のハイチ支援国会合への参加を求められましたので、私(大臣)からは「国会の調整がつけば是非参加をしたい」と申し上げたところであります。カナダにおけるG8代表会合等に引き続いて予定されている会合でございます。
(3)外交記録公開・文書管理対策本部第1回会合の開催について
【大臣】先程、外交記録公開・文書管理対策本部の第1回の会合を開きました。いわゆる「密約」問題に関して先程述べたところでありますが、文書の管理が十分でなかった、あるいは30年経ってもまだ十分な公表がなされていない。こういうお話が明らかになり、それに対してしっかり対応するための本部の設置でございます。私が本部長になりまして、主として3点、一つは「外交記録公開に関する規則の制定」ここにおいては30年で原則公開する。公開しない場合の事由を限定列挙する。それから、政務三役が最終的に公開しないと判断するときに関与する。こういったことを骨子とする新たな外交記録公開に関する規則を作るというのが一つであります。二番目は「外交記録公開についての体制の強化」。三番目は「文書管理に対する各種改善措置」ということで、大体2週間に1回ぐらいの頻度で開催を行い、そう時間をかけずに結論を出していきたいと考えているところでございます。
(4)衆議院外務委員会における参考人と守秘義務について
【大臣】3月19日の衆議院外務委員会における参考人招致に関して、衆議院側より参考人の守秘義務の解除について要請を受けました。公務員のOBの方が参考人として呼ばれております。国家公務員法においては、守秘義務の解除についての規定がございます。国家公務員法100条第2項であります。この規定は、証人や鑑定人等が法令に基づき課せられている出頭証言などの義務と、職員及び元職員の守秘義務とを調整するための規定であるということで、国会における参考人については、この規定に該当しないという政府としての解釈でございます。従って、今回の参考人に対して、法的には外務大臣として守秘義務を解除することはできないということになるわけでございます。これは、この法律を所管する総務省、内閣法制局、外務省で協議した結果であります。しかし同時に、既に3月9日に、いわゆる4つの密約問題に関する有識者委員会報告書、それから、外務省調査チーム報告書及び関連の331点の文書については、秘密指定を既に解除した上で公表しております。いわゆる4つの密約の存否、内容の全体像を明らかにしたところであります。
上記のように、既にこれらの全体像を明らかにしているので、いわゆる4つの密約の存否・内容に直接関連する事項は実質的に秘密として保護する必要はないものと考えております。上記の事項を超える情報については、秘密として保護するものが存在し得ると考えられますが、要職を経験し、外交関係に専門的知見を有する参考人は、この点も踏まえて、誠実かつ適切な発言が行われるものと考えております。私(大臣)と致しましては、上記のことを踏まえれば、守秘義務違反が生じるような事態に至ることは想定しておりません。ということで、19日の参考人質疑においては以上のことを踏まえてお話をいただければ結構であり、基本的に守秘義務違反が問われるようなことは想定していないということでございます。
(5)外務大臣就任後半年を振り返って
【大臣】最後ですが、本日は閣議でも、「本日でちょうど半年だ」ということが話題になりましたが、私(大臣)も大臣就任以来半年ということでございます。海外は結構行ったという感じが致しますが、いつかもお話ししたと思いますが、主な国の外務大臣とお互い親しく会話できるというネットワークを作るということが、外交を実現していく上で、実行していく上で非常に重要なことだと思っております。中国の楊潔チ外相と4回の会談、クリントン長官とは3回など、会談も数が増えてまいりましたけれども、まだまだしっかりとお話をしていない主要国の外相もおられます。近々にお会いするフランスのクシュネル外相も今回初めてということであります。そういった会談をさらに重ね、同時に現場を見るという中で間違いのない外交を進めていきたいと思っております。
この間、いろいろなことがございましたが、私(大臣)としては一つは、アフガニスタン・パキスタン支援をとりまとめたこと。もちろん具体的に予算を使っていくのはこれからでありますから、そのことも極めて重要でありますけれども、5年間で最大50億ドル規模の支援を決めていただいて、その枠の中でしっかりとこれから行っていきたいと思います。もう一つは、先程の密約調査について一定の成果が出た。これに、先程の文書公開のルール化というものが、あるいは現実に公開されていない多くの情報の公開がなされるようになれば、これは一つのまとまりをもった仕事ではないかと思っております。あと、皆さんの中にはお嫌いな方もいらっしゃるかもしれませんが、記者会見のオープン化。そういったことが、この半年間では特に思い出が深い出来事でございます。仕掛かりの一部の問題は、普天間とかいろいろございますが、その辺は結果が出てからお話しした方がいいかなと思っております。
半年を振り返りまして、非常に忙しかったということで、考えてみれば、外務省の中で自分の執務室や接見室を除きますと、あまり外務省の中をあちこち行っていないということでございます。噂によると、何かコンビニがあるらしいということですが、私自身はまだ行ったことはございません。食堂も(行ったことが)ありません。ましてや各課を訪ねるということは、基本的にまだ果たしておりません。多少、国会も予算委員会が終了して時間の余裕ができれば、そういうことも併せてやっていきたいと思っているところでございます。
衆議院外務委員会への参考人招致と守秘義務
【TBS 樋口記者】冒頭に大臣が言及された19日の外務委員会の参考人招致についてお聞きします。先程大臣は、4つの密約の存否に直接関連するものは実質的に保護する必要がないと考えていると仰いましたが、例えばこの4つの密約に関連して、文書破棄、あるいは「そこに公表されていなかった文書があったはずです」とか、そういった発言は守秘義務に該当するのでしょうか。
【大臣】文書廃棄というのは事実行為ですから、これはそもそも密約の秘密の対象ではございません。それから、「他に資料がかつてはあった」とか、そういうこともこの守秘義務の対象ではないと考えています。
【フリーランス 岩上氏】前回も実は質問させていただいて、問答が少しずれたのですが、公開のルールについて、そのルールを破った場合、とりわけ文書の破棄、文書の管理、そして違法な破棄というようなことがあった場合の罰則についてですが、それはどの程度厳しいものになるのでしょうか。今回、「規則」と書いてありますが、これは「内規」程度のものに止まるのでしょうか。法令になるのか、その辺りも含めて、ルールとサンクションの厳しさについてお話しいただきたいと思います。
【大臣】これは省令でしょう。
【フリーランス 岩上氏】罰則は。
【大臣】意図的に廃棄をしたりということになると、国家公務員法上それに抵触するということもあるかと思いますけれども、これから作る規則の中に罰則的なものを入れるかどうかというのも、これから議論していきたいと思います。
【共同通信 西野記者】外交記録・文書管理対策本部の件でお伺い致します。三本柱を掲げられましたけれども、二本目の、「外交記録公開についての体制強化」で推進委員会を設置されますけれども、これについてもう少し詳しく、どういう性格の委員会なのか。それから、三番目の「管理に関する各種改善措置」についても、想定できる範囲で今どういうことを考えておられるのかお願いします。
【大臣】二番目の話は、これから公開するにあたって膨大な資料がありますから、30年超のものだけでもたくさんあります。そういうものについて、どういう優先順位で公開していくかということを決定するというのは、一つ大きな仕事としてあるかと思います。それから、実際に公開していくための体制ということで、例えば、人員というのも必要です。人手もないと進んでいきません。そういったところをどういう形で整えていくかということもあると思います。それから、これは上の規則に関わる話でありますが、例えば書類を公開しないとなったときに、それを最終的にどういう形で決定するかということが、これは規則の中身に触ることになると思いますが、それに基づいて具体的に作業をしていくというのが(2)であります。
(3)は、むしろ普段の文書管理ということでありますので、例えばどのぐらいの期間が経れば担当課から違うところに移すのかとか、そういうことのより明確なルール化とか、あとは、人事異動のときには必ず書類をきちんとファイリングするとかそれをしないと異動させないとか。これはちょっと言い過ぎですが。私も経験がありますが、こういう書類の整理というのは普通、忙しいとあまりしないです。忙しい、大事な書類があるところほど、資料管理がいい加減になりがちでありますので、そういうことについて、個人ではなくて組織として、例えば課単位できちっと取り組めるような仕組みも含めて、できるところからすぐやっていくということだと思います。
【北海道新聞 島田記者】外交記録公開に関する規則の中で、原則として30年で公開するとありますけれども、現時点で例外として考えられる、想定されるものというのは、何か想定されていますでしょうか。
【大臣】これは個々の書類ということになりますから、例えば、明らかに国益を損なうようなもの、あるいは個人の名誉を害するようなもの。これは、具体的な限定列挙を規則の中にきちんとすべきだと思いますが、今思いつきで言っていますけれども、そういうものに当てはまるということになれば、公開をしないということになると思います。
【北海道新聞 島田記者】例えば、北方領土の問題は、例外的なところに入ってくると想定してもよろしいですか。
【大臣】これは、先の(2)のところで、外交記録公開推進委員会で順番をどうするかということで、30年経ったもののストックがかなりありますので、それをどういう順番で公開していくかということの中で、議論されるべきことだと思います。日米関係をだいぶ公開することになりますので、日米から最初にやっていくべきだという議論もあるかもしれませんし、古いものから手をつけるべきだという議論もあるかもしれません。より関心の高いものからという声もあるでしょう。その辺の順序づけの問題であります。北方領土の交渉はまだ続いておりますので、そういう意味では、あまり早くオープンにしないほうがいいという判断も、あるいはあるかもしれません。特に相手方が公開していないときに、こちらだけ公開するということになると、いわばつまみ食いされることにもなりかねません。そういうことは全体の判断で、やがて公開しますが、順番をどうやっていくかということだと思います。
【NHK 別府記者】守秘義務の関係で、衆議院の外務委員会より、解除してくれという要請があったということでよろしいのでしょうかということと、そもそも要請されても、いいも悪いも言うことではないというのが大臣のお立場であって、つまり、守秘義務違反になることはないという期待を表明されたというのが先程の話だったと理解してもよろしいでしょうか。
【大臣】外務委員会の方から、参考人招致を行うにあたって、守秘義務の解除についての要請を受けたものであります。私も守秘義務の解除が可能ではないかと漠然と思っておりましたが、法律的に詰めると参考人の場合には該当しないということです。証人ということになるとまた違うと思いますが、該当しないというのが政府としての解釈で、ただ、今回の場合には既に文書の開示は行っておりますので、具体的に守秘義務違反に当たるという事態は起こり得ないと私(大臣)は考え、そのことを公に申し上げたわけでございます。「外務委員会としては前例がないため要請しなかった」ということで、よく分かりませんが、外務委員会が要請、要するに自由にしゃべれるようにしてくださいということだったと思います。「正式に守秘義務を解け」というとこまでは、言ったのではないかもしれません。
【共同通信 比嘉記者】先程の対策本部についてですが、まず、外務省の内部の方ではなくて、有識者などの活用はどのように考えておられるかということと、職員や外務省OBの方の活用等はどのように考えていらっしゃいますか。それから、できるだけ早い時期にということでしたけれども、目途がありましたら教えていただけますか。
【大臣】この点でも、有識者のご意見をいただきながら話を進めていこうと考えております。それから、OBというのは、実際に情報公開の作業をするときに、退職した方にやっていただくということを考えております。現職はそれぞれ仕事を持っておりますので、第一線を退いた方で、当時のこともよくわかっているような方がやった方が、より効率的にできるのではないかと思っているところであります。いつまでにというのを言うと、また遅れてしまうといけませんので、しかし、参議院選挙を越えてというようにはイメージしておりません。そんなに時間のかかる話ではないと思っております。
【日経新聞 山内記者】有識者のご意見をいただきながら話を進めるというのは、本部での議論についてでしょうか、それとも国益にかなうかどうかという判断について有識者の意見も伺いながら、政務三役で決めるということでしょうか。
【大臣】ルールを作っていく中でということです。個々の判断ということでは必ずしもありません。これからの議論ですが、個々の判断という時にも外部有識者の知見を求めるという仕組みも、或いは考えられるかもしれません。政務三役がと言っても膨大な資料の中で、どのくらい非公開という候補のファイルが出て来るかによりますが、それを全て政務三役で片っ端から見るということは事実上難しい訳で、むしろ有識者の方々に先ず判断してもらうということも考えられるのではないかと思います。もちろん、そのときは守秘義務を科して見ていただくということはあり得るのかなと思っております。
【朝日新聞 倉重記者】確認ですが、先程大臣は参議院選挙を越えてというようにはイメージしていないと、時期について仰っていましたが、これは我々が「30年経ったものを見たい」と言った場合も参議院選挙までにはそういう状態になるという、環境が整うというイメージでよろしいのでしょうか。
【大臣】全ての資料を片っ端からチェックしていって、そして公開していく訳ですので、もちろん途中で情報公開要求があれば、それに具体的に応じるというケースがあると思いますが、膨大な資料を何とか数年くらいである程度、30年を越えたものは公開したいと思いますが、どのくらい膨大かというのは、2万点という説もありますし、マンパワーとの関係でよく計算してみないと分からないということです。今回、いろいろ作業しました日米の関係については、全体かなりの量の資料を見ましたので、そういうところはかなり早く出せるのではないかというように思っております。
国連PKO活動(武器使用基準に係る大臣発言)
【NHK 梶原記者】先程、参議院の委員会の中で、PKOでは武器使用基準の緩和について、大臣が、「国連決議にあったような場合には、緩和も、個人的には考えた方がいいのではないか」ということを発言されたと思いますが、どういったことを具体的に、どの部分で緩和し得るとお考えになっているのか、また、こういうことを考えられる背景みたいなものを説明していただけますか。
【大臣】ちょっと余分なことを発言しましたよね。まだ議論していませんから、それ以上言うつもりはないのですが、私(大臣)の従来からの考え方を申し上げたところであります。小沢幹事長のように、「国連決議があれば(憲法)9条からそもそも外れる。武力行使は可能である」という考え方には、私(大臣)は立っておりません。ただ、9条ができた淵源というものを考えると、自衛という名の下に勝手に武力行使したと、そういうことの反省に基づいて9条が海外における武力行使を禁止していると考えれば、その武力行使が、自分の判断や特定の国々の判断ではなくて、国連という場で認められたPKO活動ということであれば、普通における武器の使用と、許される範囲の程度を少し変えていいのではないかと、私(大臣)はかねがね申し上げている訳でございます。そういうことを申し上げたところです。省内で議論している訳ではありません。内閣の中でももちろんありません。
【NHK 梶原記者】可能であれば、具体的なシチュエーションで、今、自己、または自己管理下にいる者の正当防衛、緊急避難に限られるかと思うのですが、それからさらに治安維持とか、警護とかいろいろな場面が想定されますけれども、大臣ご自身はどういう場面を想定されているのでしょうか。
【大臣】これ以上言わないほうがいいと思います。それだけを取り上げられてしまいますので。じっくりと政府の中で、あるいは外務省の中で議論すべき話だと思います。ただ、私は必要だから武器をもっと使えるようにすべきだという考え方には立っておりません。やはり、憲法に基づいてきちんと、論理的に考え方が整備された範囲で認められるべきだと思っている訳であります。
いわゆる「密約」問題に関する調査
【琉球新報 滝本記者】密約の調査結果についての関連ですが、第三番目の、沖縄の返還でいうところの核再持ち込みに関連した件ですけれども、外務省の方では、若泉氏の指摘の文書の存在は確認されなかったという事実関係の確認が、外務省の報告書ではあったと思いますが、有識者の方では、その文書と照らし合わせて、持ち込みの合意というか、つまり若泉氏のあの文書、合意議事録というのは、共同声明の範囲を超えるものではないと結論づけておられて、「だから密約ではない」と説明されておられます。つまり、「共同声明の文書自体、文言自体が、持ち込むということを外交的な事例の言葉で読めば、そのとおり読めるんだ」と、北岡座長などが仰っていました。その認識は、私の受け止めと少し違うのですが、つまり、持ち込みという意味合いを共同声明自体が包含しているということで、一般国民としても常識的には受け取りづらい感覚かなと思いますが、その辺は大臣はどのようにお考えでしょうか。
【大臣】北岡座長が言われていたのは二つです。一つは、今仰ったこと。もう一つは、これは佐藤元首相と当時のニクソン大統領の、いわば個人間での約束であって、少なくとも日本国政府には引き継がれていないという二つの理由で、これは密約には当たらないという判断をされたと思います。外務省の調査と有識者の調査で、考え方に差があるとすれば、三つ目の密約についての考え方だと思います。外務省の方は判断していませんが、そのときにはまだ紙が出てきませんでしたので。それは、せっかく我々が有識者にお願いをしてそれぞれ見識のある方々が議論した結果、出てきたものでありますので、それを私が言うというよりは、これからそのほかの有識者の皆さん、学者の先生方が、まさしく議論されるべきことではないかと思います。最初のときにも申し上げましたが、外務省ということではなくて、個人として聞かれれば、紙があって、そして、少なくともサインをした二人は拘束をされたという見方も可能なわけで、そういう意味では、あれが密約ではないかという見方も当然あり得ると思います。
【琉球新報 滝本記者】合意議事録の意味合いというか、持つ効力についての部分を大臣が仰られたことだと思うのですが、「合意議事録がなくても、共同声明があるだけで、リエントリーの部分が包含されている。外交の研究者の常識からはそう読むのは当たり前だ」と北岡座長は仰られていたのですが、その感覚が、私には理解しづらい部分です。
【大臣】北岡座長はそれだけではなくて、二つ理由を挙げられたと思います。共同声明で、核の再持ち込みということを読み込むことができるというのは、従来の外務省の考え方ではございません。
【フリーランス 岩上氏】密約関連で、先程、30年で原則公開というお話がありましたが、質問に対する回答の中で、「先方が公開していないような場合は、こちらも公開を控える可能性もある」ということを言われました。例えば北方領土の交渉などを例にあげましたが、そういう事例はあると思いますけれども、基本は、相手国が開示していない場合は開示しないということになるのでしょうか。それとも、原則相手国が開示していない場合でも、我が国として30年経ったら原則公開していくと。ただ、外交交渉上、不利になるような場合であれば開示を思い止まると、このように受け取った方がよろしろいでしょうか。
【大臣】原則は公開です。お互い、相手がしてないということで、見合って、両方公開しないなどということが論理的には起こり得ますが、相手にかかわらず公開するということが原則です。ただ、個々に見たときに、これは公開することで国益を損なう可能性がある場合があれば、その公開はしないということになります。申し上げたのはそういう考え方ですが、たくさんあるものの中で順番をつけて公開していくときに、やや問題があるようなジャンルについては後になるかもしれない。それはこれからの話し合いですけれども、そういう意味で申し上げました。
国務大臣の資産公開
【読売新聞 川崎記者】本日、国務大臣の資産公開の訂正資料で、岡田大臣の方から訂正が出まして、愛媛県今治市の貸事務所ということのようですが、公開は昨年10月にあった訳ですが、なぜ今この時期になって訂正が出てきたのか、その経緯についてご説明頂けますか。
【大臣】これは妻の所有している土地でありますが、義父が20年以上前に亡くなって、その時に相続をした訳ですが、本人(妻)にその意識がなく、今回の公開のリストから落ちていたということです。それに気がついて今回入れたということです。
【読売新聞 川崎記者】そう致しますと、確認ですが、これは建物ですが、大臣ではなく大臣の奥様の所有ということでしょうか。
【大臣】そうです。妻の所有する不動産です。私は見たこともありません。
キャンベル米国務次官補の訪日中止
【共同通信 井上記者】米国のキャンベル国務次官補が明日、来日を予定していたのを、本日突然中止したということで、大臣はもちろん、直接対応されるお立場ではないですが、この急遽の中止は異例だという指摘もありまして、大臣の受け止め方をお聞かせ下さい。それと、G8に出席される場合はそこでクリントン米国務長官と会う機会もでてくるかと思いますが、3月末頃になると、その頃には普天間問題についてもお話になる頃合いになっているかどうか、見通しをお聞かせ下さい。
【大臣】キャンベル米国務次官補の訪日が急遽中止になりました。これは訪問先のタイにおける現在の混乱によって日本に来ることができなくなったということで、大変残念に思っております。タイの混乱が早く治まることを期待したいと思います。秋篠宮殿下も日程を変えられたということでございます。それから、G8外相会合がカナダで行われますが、その時に当然バイの会談も行われると思います。まだ具体的に、どなたと会談するかということは決めておりません。そのときに普天間の話がどうなっているかというのは、まだ分かりませんので、例えばクリントン米国務長官とお目にかかった時にお話できるような状態になっているかどうかということは、現時点ではコメントできません。
外務大臣就任後半年を振り返って
【週刊金曜日 伊田記者】半年を振り返っての中で、記者クラブのオープン化を成果の一つに挙げられましたが、それにつきまして大臣の感想と言いますか、「仕事」というように言われたということは、肯定的に受け止められているということだと思いますが、どの点が良かったとお感じになられているかについて、具体的にお聞かせ下さい。
【大臣】非常に多様な意見がでるということで、私(大臣)も勉強になりますし、楽しく記者会見をさせていただいております。「おやっ」と思うような視点からの質問もあったりして、大変有用であると思っています。
【共同通信 西野記者】半年を振り返っての中で、いろいろなところに出張されて大変だったことも私共は取材をさせていただいてよく分かるのですが、一方でこの半年で出来なかったこととか、こうすれば良かったという反省というか、自ら振り返るところとか、或いは今後もう少し変えていきたいというようなところは今考えているところはありますか。
【大臣】自分としては精一杯やってきたというように思いますが、もう少し立ち止まる時間も必要だと、日々少し忙しすぎるという感じはあります。しかし、それは国会も含めて、大臣としての仕事、それぞれ責任がある訳ですからやむを得ないというように思います。
米国におけるトヨタ自動車のリコール問題
【フリーランス 岩上氏】米国でトヨタ車の問題が非常にクローズアップされて、非常に大きな問題となりましたが、ここへきて、証言者の中に、急発進の原因が嘘だったと、証言の中に一部嘘が混じっていたという話が出てきたり、或いは、あまりも苛烈なバッシングの背景には、トヨタ車のプリウスのハイブリットの一番のブラックボックスとされている電子制御装置の中身を開示させたいという米国側の思惑があったのではないのかという憶測が流れたりとか、何か単純な事故やリコール問題ではない、複雑な政治的背景があるかのような気配がしてきました。もし一企業が政治的な背景をもって叩かれているとすると非常に気の毒なことでもあり、政府としてかばうべきはかばうところがあるのではないのかというようにも思うのですが、現時点でこの問題を、どのようにとられていらっしゃるのでしょうか。
【大臣】今お話になった件は、かなり憶測と言いますか、伝聞と言いますか、そういうものもありますので、ひとつひとつはコメントはしませんが、いろいろなことがあったということは言えます。そういうことが出てくるのは米国らしいなと(思います)。きちんと、こういう問題があったのではないのかということが、それまたメディアで明らかになっていくというのは、やはり米国のオープンさの表れだというように思っております。今回の一連の出来事の中で、私(大臣)としては、基本的にはこれは安全に関わる問題、リコールの問題であって、しっかりとトヨタ自動車に対応してもらいたいと申し上げながら、しかし、国として外務省として、出来ることはバックアップしたいということを申し上げて参りました。そういう姿勢・気持ちというのは今も変わりません。別にトヨタでなくても別の企業であっても個人であっても、やはり、日本人や日本法人が厳しい立場にあれば、もちろん私人間の問題について、国がどこまで介入するかということではありますが、できるだけしっかりとバックアップしていくというのは、外務省として非常に重要な使命であるというように思っています。
【フリーランス 岩上氏】今、「できるだけバックアップしていく」というように仰いましたけれども、そのバックアップというのは具体的にはどういうことを指し示しているのか。現在までにされたこと、それから対応策として考えていらっしゃること、具体的にお示しいただければと思います。
【大臣】今回のトヨタ自動車に関して言うと、米国においてかなりの蓄積をお持ちですから、必ずしも外務省ができることというのは、そう多い訳ではありません。むしろ自分で出来るということだと思います。しかし、国によっては、国の関与がより強い国というところもありますから、そういう国については、やはり政府ベースでの話し合いということが、より大きな意味を持つ場合もあるというように思います。それはケース・バイ・ケース、それから事案によっても違うということです。あまり政府が全面に出た姿を見せるということになりますと、これはいつの間にか国と国との問題になりかねませんので、一定の節度ということを考えながら、しかし、あまり目立たない範囲でしっかりサポートする、必要があればサポートできる体制をとるということが私(大臣)は重要でないかと思います。
調査捕鯨(シー・シェパードの船長逮捕)
【日本テレビ 小栗記者】シー・シェパードの船長が逮捕されました。それで起訴するかしないか、いろいろ意見が分かれているようなのですけれども、大臣としてのご所見を聞かせてください。
【大臣】ベスーン被疑者を逮捕するかどうか、起訴するかどうかというのは、外務省が判断する問題ではありません。公正な手続きに従って、そういった判断がなされるということだと思います。それ以上のことはコメント致しません。
【時事通信 高橋記者】シー・シェパードの関係ですけれども、シー・シェパードが調査捕鯨ではなく、次のターゲットは大西洋のクロマグロの漁を妨害するとして、もう豪州から船を出したようです。これを予防する手段といいますか、どういう対策を今考えておられるのでしょうか。
【大臣】まだ具体的な行動がなされておりませんので、そういう意味では、あまり憶測でものは言わないほうがいいいと思いますが、一つ聞いておりますのは、トーゴから船籍を剥奪されて無国籍船となっているシー・シェパード船籍であるボブ・バーカー号は、オランダに船籍登録を申請したということを聞いております。オランダに対し、船籍を付与しないように、引き続き働きかけを行っているところであります。
【読売新聞 川崎記者】今、大臣が仰ったことに関連してお伺いします。(オランダに)船籍を付与しないように引き続き働きかけていくということですが、あともう一つ、昨年バルケネンデ前蘭首相が来日された時に、鳩山総理にお話されていることで「船籍を剥奪できるようにする法改正をするんだ」というように言っておりまして、実際に今年になってオランダ国会に法案が提出されたのですが、バルケネンデ内閣の崩壊により、その行方が不透明になっており、船籍剥奪が当面難しいかもしれないという状況にもなっておりますが、このことも含めまして、先程の件と岡田大臣の方から政治レベル、より高いレベルでオランダ政府に対して働きかけなどを行う考えはおありでしょうか。
【大臣】オランダ政府に対して二つのことがあるということです。一つは船籍の剥奪、もう一つは船籍を付与しない、二隻の船に対してある訳ですが、今ご指摘のようにオランダで政治的な変化がありましたので、我々が聞いておりますのは、6月の総選挙までは、船籍法改正案の審議は見送られることになったというように承知をしております。したがって、船籍を剥奪するということに関しては、6月、少なくとも6月まではそれは出来ない状況であります。付与しないようにというのは、別の観点だと思いますので、一定の対応が可能ではないかと思っておりますが、何れにしてもオランダ政府に対して引き続き働きかけをしっかりと行っていきたいと思っております。選挙の結果によって新しい政府ができた時にも、あまり時間をおかずに、そういったことはしっかりと伝えられるようにしておかなければいけないと思っております。
【フリーランス 岩上氏】シー・シェパードの関連で質問します。シー・シェパードの活動については、事故や事件が起こってから報じられたり、事後的な対応を練られたりと、後追いになっていることが多いと思うのですけれども、聞くところによると、このシー・シェパードの活動そのものが米国ではテレビでずっと追いかけられていて、テレビ番組化されているということです。もはや一種の娯楽、エンターテイメントで、そこにスポンサーがついて、メディアが一緒に乗って、おもしろおかしくずっと続けられるようなものになってしまっているというように聞いております。したがって、そういうサイクルそのものに介入して、何らかの警告をするとか、やめてもらうように依頼をするとか、事後的な形でなく、どこかもう少し先手を打った対処の仕方というものも必要なのではないかというように思います。このあたり、言論の自由や表現の自由なども関わるかもしれませんが、この点についてご見解をお示しいただきたいと思います。
【大臣】これからマグロ漁船に対して、一定の抗議行動を起こすということは、彼らは明らかにしていますが、具体的にそれがある訳ではありませんから、今の段階で予防的に何かするというのはそう簡単なことではないというように思います。ただ、先程も言いましたように、ベスーン船長に関してはこれからどうなるかは決まってはおりませんが、例えば裁判ということになれば、その中でこういったシー・シェパードの行っていることの適否ということが、当然議論になるということだと思います。
クロマグロの国際間取引
【共同通信 斎藤記者】クロマグロの問題に我が国としてどう対応すべきか、このクロマグロの問題については日本の関係者達がそれぞれ意見表明をされていますが、改めて外務大臣という立場からクロマグロ問題についての考え方、そしてクロマグロというものがどういう食材であり食文化にどういう意義を与えているかということも含めて、ご所見がありましたら教えて下さい。
【大臣】食文化にどういう影響を与えているかということは、私(大臣)があまり自分の意見を言ってみても仕方がないかと思いますが、マグロというのは非常に広く子供からお年寄りまで、日本の食文化の中で存在感を示していると思います。農林水産省と協力をしながら「なんとか回避できないか」ということで、今、外交的な努力を行っているところです。担当官を現地に派遣するということも当然考えておりますし、少しでも理解を得たいというように考えているところです。
【時事通信 鈴木記者】ドーハの会議は、かなり厳しいといろいろなところから言われておりますけれども、大臣は現状どのようにご覧になっているか教えていただけますでしょうか。
【大臣】現地には水産庁長官を始め、かなりの専門家が行って、日々状況をウォッチしながら活動していると聞いております。かなり厳しいという報道もありますが、予断を許さないというか、状況というのは、どちら側もまだ見通せないという状況ではないかということで、これから残された日々、しっかりと対応していくということが重要だと思っております。
中国の海島保護法
【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者からの質問を代読いたします。中国が無人島の資源や生態系保護の強化を目的とした「海島保護法」を施行いたしました。この保護対象には日本の尖閣諸島も含まれております。艦船による中国の監視体制が強化されるとの報道もありまして、これに関しての大臣のご見解をお願いいたします。
【大臣】尖閣諸島については、これは領土問題は存在しないというのが、日本国政府の考え方です。そのことは一貫して申し上げております。日本としては、日本の領土ですから、法令に則って粛々と対応していきたいというように考えております。
米軍再編問題
【フリーランス 上杉氏】昨夜のNHKニュースの中で、政府高官が普天間問題に関して、今後平野官房長官、岡田大臣、北澤防衛大臣の関係閣僚で話し合いの場を持つというニュースが流れましたがこのニュースは事実かどうか、仮に事実だとすると、どのような形で話し合いというのをやるかをお聞かせください。
【大臣】そのニュースは私(大臣)は見ておりません。具体的に特定して言われたとすると、ちょっと私(大臣)には思い当たりません。ただ不断に北澤大臣、平野長官とは意見交換しておりますので、それがニュースになるというのはあまりよく理解できません。
高校の無償化
【フリーランス 安積氏】高校授業料の無償化に関してですが、朝鮮学校の適用除外について、人種差別撤廃委員会は改善勧告を3月15日に出すとの報道がありました。これについては、日本国政府の方はもう受け取られたでしょうか。
【大臣】私(大臣)は承知しておりません。
沖縄県うるま市での米軍車両による交通事故
【琉球新報 滝本記者】前回の会見でお伺いしました、沖縄のうるま市の中部病院に米海兵隊の車両が侵入した件ですが、事実関係を確認してみたいと仰られた後、日米地位協定のからみで、要請団に対して外務省の皆さんのほうが地位協定違反ではないと見解を示されているというのが報道であるのですが、地位協定のからみで違反ではないというのは、どういう根拠や論理で違反でないということになっているのかというのをお聞かせください。
【大臣】病院ですから、時間とかいろいろなことを考えると普通ではないことは事実なのですけれども、一般車両が入り得るという施設ですので、地位協定の問題というよりは、一般の問題といいますか、民事上といいますか、国内法上の問題と考えていいのではないかと思います。
【琉球新報 滝本記者】この事故に対してはどのように。
【大臣】一般の車が入りうるとはいえ、しかし時間が時間ですので、しかも一部器物損壊があった訳ですから、そういう意味では望ましいことではありません。したがって、必要があれば民事上の問題として取り扱われるということだと思います。
日トルコ関係
【ニコニコ動画 七尾記者】今年はエルトゥールル号事件から120年の節目に当たりまして、外務省は本年をトルコにおける日本年としておりますが、これを踏まえましたトルコとの関係のあり方について、ご所見をお願いいたします。
【大臣】私(大臣)は1月4日にトルコを訪れて、今年1年間のスタートに当たって、(トルコにおける日本年の)オープニングセレモニーに参加をしてきた訳でございます。現地でも多少時間がありましたので、文化的な施設なども見る機会がありましたが、日本人の観光客もそういう時期にも関わらず結構いらっしゃいました。是非多くの日本国民に(トルコを)訪れていただきたいと思います。一つの文化の交流点でありますので、大変興味深いと私(大臣)は感じました。カエル(の置物)もホテルの売店で確保しました。