外務大臣会見記録(平成22年4月2日)
外務大臣会見記録(平成22年4月2日(金曜日)15時15分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)ハイチ支援国会合及びG8外相会合について
(2)国連安全保障理事会の議長国について
(3)中国での邦人に対する死刑の執行について
○アフガニスタンにおける邦人行方不明事案
○米軍再編問題
○G8外相会合
○北方領土問題
○中国での邦人に対する死刑の執行
○日・ヨルダン外相会談
○調査捕鯨(シー・シェパードの船長の起訴)
○いわゆる「密約」問題に関する調査
○記者会見のオープン化
○郵政民営化
○国連安全保障理事会の議長国
冒頭発言
(1)ハイチ支援国会合及びG8外相会合について
【岡田大臣】三点申し上げます。一点目は出張の件ですが、今回3月31日にニューヨークで開催されたハイチ支援国会合に出席のため、ニューヨークにまいりましたが、そのことと加えてG8外相会談、そして米国のゲイツ長官とのバイの会談、クリントン米国務長官とのバイの会談などを行ってまいりました。
先ず、ハイチ支援国会合ですが、全体で59の国や国際機関から53億米ドルの支援表明が行われたということで、非常に良い会合だったと思います。私(大臣)からは仮設住宅の建設、感染症対策などを含む、プラス3000万ドル、総額1億ドルの支援を行うことを表明したところです。どこかの新聞が書いておりましたが、クリントンご夫妻の姿が非常に目立っていた会合で、どちらかが挨拶の中で言っておりましたが、「新婚旅行はハイチに行った」ということもあって、大変思い入れが深いということだったようで、非常に力を入れて会議の主催をしておられたと思います。
G8外相会談は、ニューヨークで夜に食事を取りながらということを(昨年)9月にいたしましたが、それに続いて今回1日半かけて様々な課題を議論するということでありました。議長声明、或いは外相会談の結果はもう既に紙になっておりますのでご覧いただいていると思いますが、どちらかというと少人数で自由に議論しようと、これはカナダ政府の方針もあったと思いますが、G8+EUですから、代表者は9人いる訳ですが、それに一人づつ付いて、日本の場合ですと佐々江外務審議官が付いて、全体18人で一つの机を囲んで議論をするということです。もちろん発言できるのはその内の代表者9人だけです。それぞれ外務大臣(の経験)が長い方もいらっしゃって、それぞれの経験に基づいて非常に興味深い意見のやりとりがありました。フランスのクシュネール外相などは、やはり国境なき医師団の創設者の一人ですから、その時の経験の方がむしろ饒舌になって話しておられたと思います。その中で私(大臣)からは核の問題で「『核なき世界』と言うために一歩踏み出す」、そういう表現をなんとか文書の中に盛り込めないかと、もう一つは「核の役割を低減する」ということを盛り込めないかということで、これは実務的にも徹夜のような状態で交渉してもらった訳ですが、なかなか難しいということで、私(大臣)が改めて提起をして、全体で写真撮影の前後合わせて60分くらい議論をいたしました。私(大臣)も5回か6回発言しましたが、最終的にはコンセンサス方式ということで、フランスの強い反対があり、それに他のEUの国々も最終的には荷担したということで、残念ながら今回は文書化はされなかったということです。ただ、非常に良い話し合いができましたので、核の軍縮の問題、不拡散の問題、特に今回は軍縮の問題ですが、引き続いて、こういったG8外相会合などの場で話し合いをしていけば、次第に議論が深まっていくのではないかと思います。
クシュネール仏外相には、この会議が終わった後、立ち話で「フランスの核政策についてよく勉強してウィークポイントもよく探し出して、次回は必ず論破するからな」と言っておきましたが、それぞれの国は核について、核を持っている国は論理と思い入れがありますから、そういったこともしっかり把握をしながら、更に議論を深めていきたいと思っております。
バイの会談はそれぞれ行いましたが、特に米国の関係でゲイツ長官と40分くらい意見交換を行いました。非常ににこやかに会談が行われました。中身は既にブリーフを行っておりますので、繰り返すことはいたしませんが、これからよく話し合っていこうということになりました。「また近々お会いしたいですね」とゲイツ長官が言われるので、私(大臣)が「6月が良い」と言いましたら、ゲイツ長官は「シンガポールで会うのか」と、シンガポールで防衛大臣会議を毎年やっていて、それだと思っていたので「いや、そうではなくて、5月末の後だ」と申しまして「そうか」ということで、「5月末に普天間問題をきちんと解決した上で6月にお会いしたい」というように申し上げておきました。もちろん、それまでにお会いすることもあるかもしれません。クリントン米国務長官とは、会議が始まる直前でしたので25分くらいですか、この普天間の問題もやりましたが、特にイランの問題、それからミャンマーの問題を中心に意見交換を行いました。なお、ジョーンズ補佐官とは、ジョーンズ補佐官がアフガニスタンに大統領とともに行かれたということで、ワシントンでほぼすれ違いのような状態になりましたので、改めてカナダで1時間程かけて、電話で会談をいたしました。会談の中身は普天間の問題も若干触れましたがが、ほとんどはイランの問題ということでありました。何れにしても、有意義な意見交換が行われたと考えております。
(2)国連安全保障理事会の議長国について
【大臣】次に、今月(4月)日本は国連安保理の議長国ということになります。したがって、イランの問題なども非常に責任が重くなる訳ですが、16日には日本が重視している平和構築の問題を取り上げて、テーマ別会合を開催したいと考えております。国会の了解が得られれば、私(大臣)がニューヨークに赴いて会合の議長を務めたいと考えております。今月、議長国の間に我が国からも要員を派遣しておりますスーダンの国連PKO(UNMIS)の任務の延長問題、或いは中東情勢などが取り上げられる他、先程言いましたイランの核問題が取り上げられる可能性があります。これら国際社会の重要問題に対して安保理がしっかりと対応していけるように議長国として指導力を発揮していくつもりです。
(3)中国での邦人に対する死刑の執行について
【大臣】三番目は、中国における邦人の麻薬密輸犯に対する死刑執行についてです。3月29日に麻薬密輸罪によって死刑が確定している赤野光信受刑者の刑執行の通報があり、また昨日4月1日には新たに武田輝夫受刑者、鵜飼博徳受刑者、森勝男受刑者、合計3名に対する刑の執行の通報がありました。我が国としては、これまで在中国日本国大使館などを通じ、中国外交当局に対して死刑執行に関する我が国の関心と懸念を表明してまいりましたが、3月29日の赤野受刑者に対する死刑執行の通報を受け、3月31日午後に在中国日本国大使館より中国外交部に対して懸念を表明したところです。しかしながら、更に3名に対する死刑執行の通報があったことを受け、本日午後、これからですが、程永華在京中国大使を外務省に招致し、私(大臣)から直接死刑執行に対する懸念を表明したいと考えております。
アフガニスタンにおける邦人行方不明事案
【NHK 禰津記者】アフガニスタンで日本人のフリージャーナリストが行方不明になっているとの話がありますが、誘拐されたという指摘もあるようですが、事実関係、あと外務省として、今どのような対応をとっているのかについて、お伺いします。
【大臣】特にコメントいたしません。
【NHK 禰津記者】行方不明になっているかどうかという点に関しても確認できないでしょうか。
【大臣】コメントいたしません。
【フリーランス 畠山氏】今、アフガニスタンで行方不明になっている常岡さんのことについて、「特にコメントいたしません」ということでしたが、その理由というのはどういったところにあるのでしょうか。
【大臣】今仰ったことの事実関係も含めて、コメントいたしません。
【フリーランス 上杉氏】アフガニスタンで何者かに拘束された常岡浩介さんですが、朝のフジテレビの報道によると、外務省も事実関係について調査しているとありますが、そのことに関しては事実かどうか、報道の事実かどうかという点に関してはいかがでしょうか。
【大臣】その点も含めて、コメントを差し控えたいと思います。
【共同通信 齋藤記者】改めて、今仰った「コメントしません」という理由についてお伺いしたいと思います。といいますのは、邦人の安否にかかる情報は確かに公表できないというケースが多いというのは我々も分かっております。したがって、邦人安否については、一切コメントできないという意味で仰られているのか、今回の件についてコメントできないのか、コメントできないと言われるバックグランドについて説明頂ければ有り難いです。
【大臣】それを説明することは、何らかの事実について発言することに繋がりかねませんので、そのことも含めて、コメントできません。
米軍再編問題
【毎日新聞 野口記者】普天間飛行場の移設問題についてです。ゲイツ長官との会談の後、大臣は記者団に対して、現行計画については非常に難しいということを述べておりました。これまで大臣は、現行計画については、ゼロベースなので現行計画も検討の対象になるという趣旨の発言をしておりましたが、ゼロベースだったものが現行計画が難しいという認識に至った変化について教えて頂けないでしょうか。
【大臣】あなたの書かれた記事も読みましたが、私(大臣)は、考え方は全く変えておりません。従来からゼロベースで、つまり検討対象に入っているということを申し上げて参りましたが、検討対象に入っているということと、しかしそこに困難さがあるということです。我々が今考えている案と比べて、より困難さがあるということは首尾一貫している訳ですから、何か意見が変わったということは全くありません。
【共同通信 西野記者】日本側が考えている方が、日米で合意した現行計画よりも実現可能性が高いということでしたが、鳩山総理も国会の中で「腹案」と称されて実現可能性が高いということでお話になっています。大臣がルース駐日米大使にお示しになった日本の考え方というのと、総理が腹案というように仰ったものは、大体同じものだと考えてよろしいのでしょうか。
【大臣】大体ではなくて同じです。
【共同通信 西野記者】全く同じものだと。
【大臣】はい。
【時事通信 高橋記者】ゲイツ国防長官との会談についてお伺いします。会談の後にペンタゴンが声明を出しまして、その会談の中身でゲイツ長官の発言の一端を紹介しておりまして、沖縄海兵隊という在沖海兵隊の重要性、その海兵隊が運用面でもオペレーションの上でも、政治的にも、「ポリティカリー」と書いていましたけれども、その両面で持続可能になるように日本政府はしっかりと力を尽くしてほしいというようなことをゲイツ長官は発言したと、公式に発表したペンタゴンの声明の中で書いております。
それから、日本政府のブリーフでは、運用面、政治面というような発言は我々には紹介はなかったのですけれども、なぜこの紹介はなかったかという点と、この発言に対して大臣の方からどのように反論といいますか、御主張をなさったのかということをお聞きしたいと思います。
【大臣】会談の中身をどこまでお話しするかというのはそれぞれの判断ですので、日本側から細かくは言っていないと理解いたしますが、ゲイツ長官は、運用面で抑止力を維持したままそれができるのかという意味で、当たり前のことを仰っていたと私(大臣)は理解しております。
もう一つは、政治面というのが地元の問題です。あと、日本の政治状況ということで仰ったのですが、私(大臣)からは、「それは日本政府が責任を持ってやる話なので、任せてもらいたい。政治状況まで御指摘いただかなくても、それは日本政府の中できちんとやります」と申し上げておきました。
【朝日新聞 鵜飼記者】今のお話に関連して、地元の理解とか了解を得るという作業ですけれども、これを今後どのように進められていくのでしょうか。今回、ルース駐日大使への説明を皮切りに米国に説明をされて、これから対米交渉というのも始まっていくのかと思いますけれども、それは並行して進んでいくのか、地元の方が先行して進んでいくのか、そういったタイムラインを少し御紹介いただけますでしょうか。
【大臣】どういう順番でどうやるかという話については、私(大臣)からこの場で申し上げることは控えたいと思います。しかし、最終的な姿としては地元の理解を得、そして米国と合意する中で初めて移転ということが可能になるということであります。
【時事通信 水島記者】今後の取り運びも含めてですけれども、本日の官房長官の午前の会見では、ちょうど岡田大臣も帰国されたので関係閣僚による関係閣僚会議というのでしょうか、本日中にもやる方向でやらなければいけないようなということを仰っておりますが、本日中にそのような機会を持たれるのでしょうか。
【大臣】それは官邸がお決めになることですけれども、官房長官がそう仰るのであればそういうことだと思います。
【NHK 禰津記者】大臣が訪米されているので、一方で北澤防衛大臣は沖縄の方に行かれまして、地元に説明を行っていますけれども、今後、北澤大臣や防衛省側とも今回の成果というものはどのように共有していって、どのように話し合っていくおつもりなんでしょうか。
【大臣】大臣間の連携は十分に情報交換を密に行っておりますので、「どのように」と言われても「いつものように」と言うしかないと思います。
【ニコニコ動画 七尾記者】海外同行取材をさせていただき、ありがとうございました。少し話が前後するかもしれないのですけれども、G8外相会合の共同記者会見の後、クリントン米国務長官が普天間基地の移設問題につきまして、「我々はなお現行案が望ましいと考えている」と語りましたが、その一方で、「日本政府から提案があれば考慮する用意がある」とも仰いました。この発言について、現地で大臣は、「解釈はいろいろできるから分からない」と仰ったのですけれども、時間を置きまして、今、改めて思い起こしてみて、クリントン国務長官の発言の真意についての解釈のほどはいかがでしょうか。
【大臣】長官の真意がここにあるなど、私(大臣)が言わない方がいいと思います。別に新しいことを言われたわけではなくて、現行案は最善であるというのは米国が一貫して言ってきていることです。しかし、では現行案でなければならないのかというと、それは聞く耳は持つということを仰いました。それは聞く耳を持つからこそ、ゲイツ米国防長官に我々の考え方というのを先週説明を行ったわけであります。
【共同通信 西野記者】クリントン国務長官、ゲイツ国防長官とお話をされたということで、今後は実務レベルでやっていくことになると思うのですけれども、その見通しのようなものというのは、今のところどうなっているのでしょうか。
【大臣】それは一生懸命やるしかないと思います。
【共同通信 西野記者】局長クラスでやるのでしょうか。それとももうちょっと下のクラスでやるのでしょうか。
【大臣】それは特に申し上げる必要はないのではないかと思います
【フリーランス 岩上氏】政府案、或いは腹案と言われるものが、もう既に決まっていらっしゃるんだろうとは思いますが、それについてはお尋ねいたしません。それとはまた別に、ホワイトビーチ案というものが浮上しているということが取りざたされておりますが、ホワイトビーチ案というものは、沖縄県民の理解を得られるプランになるとお考えでしょうか。今、沖縄県民はその県外移転というものを非常に強く希望していると伺っておりますけれども、確かに島の陸上部からは基地がなくなって、海上に行くということになるのでしょうが、これはいかがなものでしょうか。大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
【大臣】今の御質問は、特にコメントいたしません。
【読売新聞 川崎記者】日米合意の現行案について、非常に困難であるということを今回の会談でも大臣は仰られたと思いますが、それでは現時点で現行案というのは、なお選択肢に含まれるという認識は、大臣はまだ変わらないのかどうか。現行案はもうないということなのかどうか。大臣が仰るゼロベースの中には、現行案はなおまだ含まれているのかどうかについて、改めてお聞きします。
【大臣】先ほどお答えしたと思いますが、私は従来からゼロベースということを言っております。そこは変わっておりません。総体的に、今、政府案として考えているものと比べれば、困難さがあるということですが、総体的に困難さがあるということと、(現行案が)なくなったということは、全く次元の違う話であります。
G8外相会合
【フリーランス 岩上氏】今、冒頭で大臣がお話頂いた点に関して、2点。同行の記者団にはブリーフィング等をされたと思いますが、以前もありましたが、ネットメディア等があります。大臣の口から直接、国民に向こうでの模様をできるだけ詳細に語っていただきたい。一点は、核政策を巡って、特にフランス側と非常に強くやりやったという内容について、できればもう少し詳細にお語り頂きたいということと、それから、今のゲイツ米国防長官との会談は、「ブリーフィングをしたということで割愛します」ということを先ほど仰られましたが、この内容について、繰り返しになるかもしれませんが、ダイレクトに国民に語っていただきたいと思います。
【大臣】核政策につきましては、先ほど言いました「核なき世界を目指す」ということと、それから「核の役割を低減する」ということです。いずれも、オバマ大統領のプラハ演説に出てくる話でありますが、そういった表現を成果物に盛り込むべきだということを申し上げました。それに対して、特にフランスのクシュネール外相からは、フランスの政策、自らは核の縮減ということは自発的にやってきているということですが、しかし、核の役割を低減するというのは、そういう考え方にはフランスは立っていないということです。例えば、核の役割を低減するということで、まず思い浮かぶのは、核を持っていない国に対する核使用をしないという「核の消極的安全保証」ですが、フランスは必ずしもそういう考え方に立っていない。通常兵器の攻撃に対しても自国の安全を確保するためには、核を使うということを排除していないということで、私(大臣)が言った「核の役割を低減する」という考え方とは相容れないということでありました。これは、外務大臣レベルで対応できることではなくて、国の大きな政策であるということで、絶対譲れないということです。昨年のG8サミットでの表現を基本的に踏襲してもらいたいということでありました。私(大臣)からは「この1年があったのだから、前進を示すべきだ」ということで、途中からは「議長声明でもいいから残してもらいたい」ということを申し上げましたが、フランスは非常に固いということでした。あと、どこの国が何を言ったかというのは、あまり言うべきではないと思いますが、私(大臣)の立場に立って、発言をしてくれた国もありましたが、やはりEUの中の協力と言いますか、最後はそういうことです。それから、コンセンサスの取れてないものは書かないということでありますので、一人でも強硬に反対するということになると、それは書かないということで今回は盛り込まれなかったということであります。ロシアも核の先制使用ということを否定しておりませんので、ロシアも賛成できないということであります。今回、ひとつは、そういう核の先制使用ということ、或いは核を持っていない国に対する核の使用ということを、必ずしも否定していない核保有国があるということですから、「消極的安全保証」ということを、より実効性を高めるためには、核を持っている国は皆そのことを認めないと、例えば安保理でそれを決議するとか、そういうところまで行かないと単なる宣言で終わってしまう訳ですが、一つ一つそれぞれの国ときちんと議論していかないといけないということを改めて感じました。もう一つは、G8サミットというのは、核を持っている国と持っていない国がそれぞれいて、非常にユニークな構造になっておりますが、こういうところでしっかり議論していくことが全体の核軍縮を進める上で非常に有用ではないかと改めてそのことを感じた次第であります。これ以上やると、新たに来た日本の外務大臣は変人ではないかと思われてもいけませんので、全体の1日半の議論の中で1時間というのは相当な時間ですので、他にお互い激論になったという点もありませんでしたので、私(大臣)も途中で断念をしたということであります。
それから、ゲイツ国防長官との話というのは、多分、紙は出ているのではないかと思うのですが、あまり具体的な中身を言うべきではないとい思ますけれども、私(大臣)からは日本の考え方ということは、具体的には説明しておりません。これはクリントン国務長官に対してもそうです。それはルース駐日大使に説明したということで、中身の説明までは今回しないという方針で私(大臣)は挑みました。ただ、ゲイツ国防長官からは、実行可能性ということについて、若干の質問があったり、それから、会話の中で私(大臣)の方から、日米合意案が一番いいというのが米国政府の考え方だというのはよく分かっているけれども、しかし、実際に実現可能性ということを考えると、我々が提案した考え方の方が、より実現可能性が高いと考えているので、真剣に検討してもらいたいということを申し上げたところであります。
北方領土問題
【北海道新聞 島田記者】昨日ですけれども、北方領土解決の新基本方針が正式決定したと思うのですが、それに対してロシアの外務省が、その中に「固有の領土」と明記していることに対して、ビザなし交流の中止とか、そういうことをほのめかしながらかなり反発しているようですけれども、その点に対しての大臣の御見解をお願いします。
【大臣】日本の政府の従来の考え方を述べたものでありますから、それをもって反発されるということについて、必ずしも理解は容易ではありません。そういったことは、従来、外相レベルでも伝えてきておりますので。
中国での邦人に対する死刑の執行
【TBS 樋口記者】冒頭に大臣が触れられた中国での日本人の死刑執行についてお聞きします。大臣はこの後、外務省に大使を呼んで、懸念を表明したいと考えていると仰いましたけれども、具体的にどういうことに対して懸念を表明されるのか。またその懸念というのは、死刑の執行を中止してほしいという要請とはまた違うということなのか、その点も含めてお願いします。
【大臣】この問題はなかなか難しい問題ではあります。それぞれの国に法律があり、そして司法制度があるわけですから、そういう中で死刑という判決を受けた。そのこと自身について、中止をしてくださいとか、そういうことを正面から言うわけにはなかなかいかない問題だと思います。
日本は、他の国から同じようなことを言われたら、それは司法の独立ですとか、日本の国内問題ですとか、そういう問題になるのだろうと思います。
ただ、先般、死刑執行について懸念の表明を行って、また、続けざまに3名ということでありますので、そのことについて日本政府として懸念を表明したいと考えておりますか。
その懸念というのは、こういう形で日本人が1人から3人、4名引き続いて死刑になるということが国内世論にも影響を及ぼしますし、あるいはこれだけ死刑があるということは、世論の中には、果たして適正に手続が行なわれているのだろうかという声もあります。そういった声があるということを懸念として伝えたいと思っております。
もう一つは、これは、むしろ国民の皆様に申し上げることですけれども、薬物犯罪に対して、特に東南アジア、或いはアジアでは最高刑を死刑としている国が非常に多いわけであります。中国だけではなくて、インドネシア、シンガポール、スリランカ、タイ、バングラディッシュ、マレーシア、そういった国々は、最高刑が死刑であります。そういったことは十分に承知をした上で行動していただきたいと思います。
もちろん、薬物犯罪そのものが日本でも当然これは犯罪になるということでありますが、量刑の面で、非常に重くしている国が多いということは十分に理解をしていただきたいと思います。
日・ヨルダン外相会談
【ブルームバーグニュース 坂巻記者】本日行なわれましたヨルダンの外相との(会談の中身について、)特にエネルギー面での協力、例えば原子力協定に向けての話し合いが開始されるのかどうなのか、そこら辺を含めて、成果についてご説明ください。
【大臣】外相会談を先ほど行いまして、引き続いて国王を訪問して、30分ほど会談を行いまして、今、総理と国王が会談されているところだと思います。あるいはもう終ったかもしれません。そういう中で、特に二国間の関係、日本としてはヨルダンを非常に重要な国だと、中東和平に果たしている役割、そういったものを評価して、経済協力についても今までも累次行っていたところですが、そういうことについてのお話。
それから、今、お話に出ました原子力の問題は、原子力協定を結ぶということについて、それを急ぐということについて話し合いを行なったところであります。
調査捕鯨(シー・シェパードの船長の起訴)
【ロイター通信 オー記者】今、警察で聴取を受けているシー・シェパードのピーター・ベスーン氏が起訴とありましたが、これに関して、ニュージーランド政府とどのような外交的な懸念を持っていらっしゃるか、それをお願いします。
【大臣】今仰ったような報道はあるのですが、本件は司法当局の問題ですから、それに対して外務省として特にコメントすることはありません。
いわゆる「密約」問題に関する調査
【週刊金曜日 伊田記者】密約問題についてお伺いします。大臣が積極的な姿勢を示されていることを評価するのですが、
【大臣】その割には記事が厳しいですね。
【週刊金曜日 伊田記者】評価しながら応援ということなのですけれども、外務官僚の方は本当に嫌がっているのではないかと思います。例えば現在発売中の『週刊ポスト』に、外務省の幹部のコメントとしまして、こういうコメントが載っています。「官邸は普天間の日米合意は総理自ら決着させて支持率アップにつなげたいし、小沢氏も訪米でマイナスイメージを返上したい。そうなってくると普天間の嘉手納統合という独自案でミスリードした岡田外相には日米密約の調査やハイチの大地震の被災者慰問という暇な仕事しか回って来ない」という外務省幹部のコメントが載っております。
日米密約の調査を暇な仕事というように外相は考えているのかどうか、それから、今後の取組みについて、もし明らかにしていただけることがあれば教えてください。
【大臣】普天間の問題について、私(大臣)が担当していないという前提での発言だと思いますが、それだけでその発言は外務省幹部の発言でないということははっきりわかると思います。
【週刊金曜日 伊田記者】密約についてはいかがでしょうか。
【大臣】そういう真偽が明らかでない発言には、コメントをするつもりはありません。
【共同通信 西野記者】本日午前中、外務委員会で密約に関する参考人質疑がありました。その中で大きく2つ出てきたのですが、1つは報告書の評価の問題。それから、もう1点は、文書破棄の問題というのが(外務委員会に)出てこられた有識者の方から出ました。
まず1点目から。沖縄への核再持ち込みの秘密合意に関して、我部教授は「密約中の密約だ」と言われました。それはいろいろ理屈があるのですが、さておいて、それから、新原さんは60年の核持ち込みについては、その60年当時から日本政府は明確な持ち込みという認識を持っていたというような形で話されました。
こういった論者の指摘を受けて、また何らかの調査をすることはあり得るのかということ、まず1点目はこれです。
【大臣】調査をする予定はありません。それは密約の定義による問題であります。そして、外務省には沖縄における核の再持ち込みに関する資料がありませんでした。ですから、これ以上の調査をしても答えは同じであります。
沖縄の核再持ち込みは当時から外務省が認識していたとかという話は、何を根拠に言われているのか、むしろ、それを明らかにしていただきたいと思います。若泉さんの本が出て、みんな、「えっ」とびっくりしたというのが現実ではないでしょうか。
【共同通信 西野記者】今の大臣の「何を根拠に」ということについて言えば、新原さんがおっしゃっていたのは、1958年のマッカーサー駐米大使の米側の公電に基づいて1960年の段階で知っていたという話でした。
【大臣】それは沖縄の話ですか。
【共同通信 西野記者】沖縄ではないです。
【大臣】さっき、沖縄と言ったでしょう。
【共同通信 西野記者】我部さんについては、沖縄の再持ち込みについて密約だと言い、新原さんは1960年の核持ち込みについて、これは認識があったと、2つあったということです。
【大臣】1960年のどの話ですか。
【共同通信 西野記者】4つの密約のうちの(1)についてです。
【大臣】はっきり言ってもらわないと混乱します。
【共同通信 西野記者】新原さんが言われたのは(1)について、我部さんが言われたのは(3)についてです。
【大臣】ですから、(3)は要するに密約の定義の問題で、それから、いろいろ議論は分かれ得るので、それは学者の皆さんの間で更に論争していただければいいと思います。外務省としては、あれが「密約があったか、なかったか」ということについては、何も触れていないわけです。そして、有識者は「密約ではなかった」ということですが、それに対するいろいろな議論はあるだろうということは、私(大臣)は当初から申し上げているわけであります。さまざまな観点から大いに論争していただければいいのではないかと思います。それから、第1の密約についての話ですが、共産党からもご意見をいただいていますが、本日も検証委員会のメンバーでもあった坂元委員が答弁されたと聞いていますが、基本的に情報としてはそれだけのものを持って、しかし、当初から密約があったということは言えないと申し上げて、検証の中で、報告書の中でそういうように結論付けているわけであります。米国の電報がすべて正しいという前提に立てば、違う結論もあるかもしれませんが、我々は必ずしもそういうことではないだろうということで総合的に判断したわけであります。ただ、当初から密約があったかどうかという話は、やがてそれがお互い認識が違うということが明らかになって、そして、そのことは省内的にも、それを前提で総理や外務大臣への説明に至るわけですから、タイミングの問題はあったとしても、数年間のずれがあるということに過ぎないわけであります。
【共同通信 西野記者】参考人質疑の件で、2点目です。坂元先生、それから、春名先生は文書破棄について、報告書と同じように、改めて強い遺憾の意を表明されて、やはり「外務省の信頼性を回復するためにも真剣な調査をするべきだ」ということを言われました。それから、谷内前事務次官の関係についても、東郷元条約局長の赤いファイルの話、これも取り上げられまして、谷内さんから話を聞きたいということが自民党の野党の方からも出てくるという状況です。
【大臣】どこから出たんですか。
【共同通信 西野記者】野党の方からです。
【大臣】「も」というのは。
【共同通信 西野記者】あと鈴木委員長もそういった方向で進めたいと言っておられました。
【大臣】ちょっと認識していませんでした。
【共同通信 西野記者】大臣は、少人数の調査委員会をつくって調べたいということでしたが、これは今後どのように進んでいくんでしょうか。
【大臣】ほぼメンバーは決まりましたので、メンバーについては来週の火曜日には御報告できると思います。
【共同通信 比嘉記者】先ほどおっしゃっていた文書破棄の話に戻りますが、少人数の委員会で、どのようなタイムスケジュールで結果を出してほしいと思われますか。
【大臣】そこは、私(大臣)も1週間おりませんでしたので、これから相談して、火曜日にはある程度はお話できるかと思います。ただ、文書廃棄についてもいろいろあるのですけれども、情報公開法施行前に大量に文書を意図的に廃棄したのではないかということに対しては、それは憶測でしかありませんので、どの役所もやはり情報公開に備えて資料を整理して、ファイリングすることは当然やっているわけなので、そのことについてまで私は、現在、調査の視野に入れているわけではありません。具体的な話をしっかりと調査したいと考えております。
【共同通信 比嘉記者】ということは、東郷さんの残された赤いファイルについてのみが調査の対象ということですか。
【大臣】そこまで特定するのはいかがかと思いますけれども、それはおいおい調査をやっていく中で調査の範囲は決まってくるので、今から決めてやるつもりはありません。
記者会見のオープン化
【フリーランス 上杉氏】先週の今日ですが、総理官邸で首相会見がオープン化しました。外務省に遅れること半年ですが、その翌日、総務省の行政管理が記者会見のオープン度合いについてランクづけをして、ここ外務省は「A」というランクづけ、総理の会見と並んで「A」になりましたが、その評価に対しての大臣の評価をお聞かせ願えますか。
【大臣】評価していただいたのはありがたいのですが、私は、なぜ総務省がランクづけするのかちょっと違和感を禁じ得ません。確かに行政監視という役割が総務省の中にあることは事実ですが、お役人が大臣の記者会見についてランクづけするのは、ちょっと私にはよくわかりません。政府として、きちんとした第三者を選定して、そこで何か言っていただくならわかるのですけれども、どういう基準でやったのかもよくわかりませんし、何で役人にそういうことで評価されなければいけいのか、よくわかりません。
【フリーランス 上杉氏】総理の会見についての御感想は。
【大臣】よかったと思います。これからも是非続けていただきたいと思います。
郵政民営化
【ロイター通信 久保田記者】郵政民営化に関してお伺いしたいのですけれども、米国のルース大使とEUのリチャードソン大使から民営化に対する懸念を表明した手紙が、先月の初めに日本政府側に送られたというようにEUから聞いているんですけれども、大臣が受け取られた手紙の内容と、あとはその中に郵貯の預け入れ限度額を2000万円に上げることなどが、WTOの、多分これはサービス貿易に関するものだと思うんですけれども、協定や、G20の金融サミットの首脳声明に反するというように書いてあったのかという辺りをお聞かせください。
【大臣】手紙の中身はお話ししません。それは、むしろ発信した方が言われるのはいいと思いますが、受け取った側が言うべき話ではありません。
それから、外務省としては、例えば内国民待遇とか、つまり内外の事業者に差別的な取扱いがあってはいけないということ、つまり国際条約と整合性がある改革でなければならないということは、何度も郵政改革を担当しているところと意見のやりとりをしているところでありますので、最終的に法案の中にはそういうものが盛り込まれるものと考えているところです。
【ロイター通信 久保田記者】今後、ルース大使やリチャードソン大使に、この件について直接説明なさったりする御予定はありますか。
【大臣】それは法案が決まったところで、必要に応じて担当の役所が御説明されればいいのではないかと思います。
国連安全保障理事会の議長国
【朝日新聞 高橋記者】4月16日に国連で議長を務めて、平和構築についてのお話をなさりたいということですけれども、岡田大臣として「平和構築」、概念がかなり広いですけれども、特にこういうことについて話をしたいということはございますか。
【大臣】具体的に事例を取り上げて話をしたいと思うのですが、平和構築は非常に重要ですけれども、今、ただPKO、経済的な支援、或いはこれから新たな法制度、いろいろなことがパッチワーク的に考えられているので、全体を1つのものとしてとらえて、国際社会が関与しながら国家を再生させていくということについて、具体的な事例に即してお話をしていきたいと思っております。
ハイチなどもまさしくそういうことで、私も演説の中で申し上げたのですが、「地震前のハイチに戻したのでは意味がない」と、「病院や経済発展、教育とか、そういう国家の骨格になる部分をしっかりつくっていかなければいけない」と申し上げましたが、まさしくそういう視点で平和構築を論じていきたいと思います。