夕刊フジコラム「ズバリ直球」10年4月29日号
夏の参院選を前に、新党の立ち上げが続いている。彼らは「民主党だけでは参院過半数は厳しい」とみて、選挙後に連立政権のパートナーになることを考えているのかもしれないが、新党の中には、政策棚上げで寄せ集め感が漂うものが多い。とても国民の支持を得られるとは思えない。
ただ、自民党再生の切り札とみられた与謝野馨元財務相と舛添要一前厚労相が離党したのにはやや驚いた。日本の民主主義発展のためには、二大政党を中心とする「政権交代ある政治」が必要だというのが私の持論だが、果たして自民党は再生できるのだろうか。
ともかく、新党乱立の背景には、民主党の支持率低下がある。大変厳しい状況ではあるが、鳩山総理を中心に立て直しを図り、参院選で勝利を収めたい。
さて、私は今月16日、国連安全保障理事会で議長を務めてきた。紛争や内戦後の平和を定着させ、国家の再建に道筋をつける「平和構築」がテーマだった。安保理のメンバーに加え、アフガニスタンのラスール外相や、ボスニア・ヘルツェゴビナのアルカライ外相など紛争・内戦経験国も迎えて、丸一日議論してきた。日本の外相が安保理会合で議長となるのは初めてのことだ。
平和構築は、日本の外務省が長年取り組んできたテーマである。今月の議長国が日本ということで、私は「これを取り上げよう」と思い、2カ月ほど前から準備を進めてきた。
政権交代後の昨年秋、私はボスニア・ヘルツェゴビナのアルカライ外相と会談した。同国は宗教上の対立などで隣人同士が殺し合う悲惨な歴史を経験した。現在でも、3つのグループが8カ月ごとに持ち回りで大統領職を務めている。安保理でアルカライ外相の話を改めて聞きながら、対立の根深さについて考えさせられた。
紛争・内戦終結後に、当事国の社会を安定させ、平和を永続的なものとするには、国際社会が平和維持や選挙に加えて、人道支援から当事国の自立のための開発援助、雇用、教育、医療など、5年、10年のスパンで切れ目なく関与する必要性がある。
若者たちが武器を置き、仕事を手にして安定した生活を送れてこそ、平和は確実なものとなり、国家が再建される。不安な英語で議長を務めながら、日本がこれまで以上に「平和構築」に関わっていくべきだと、決意を新たにした安保理だった。