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2010.05.11|記者会見

外務大臣会見記録(平成22年5月11日)

外務大臣会見記録(平成22年5月11日(火曜日)15時00分~ 於:本省会見室)

○米軍再編問題
○日中韓外相会議
○郵政改革法案
○報償費
○日中関係
○日米実務者協議
○日本の安全保障政策
○ジブチにおける自衛隊の独自の拠点整備

米軍再編問題
【共同通信 西野記者】普天間問題に絡んでなのですが、鳩山総理が23日にも沖縄を再訪されて、また沖縄の関係者の方と会談なさるというお考えがあると聞いています。このような形で5月末の決着に向けて動きが出ている中で、沖縄の理解を得ていくということについて、どのような見通しを大臣としては持っておられるでしょうか。

【岡田大臣】23日という日程が決まったものかどうかというのは私(大臣)は承知しておりません。そういう話が記者の皆さんの間で出ているということは、官房長官の記者会見でも指摘はありますが、官房長官ご自身がそういうようには言っておられないと思います。いずれにしても、「5月末までに」ということで進めておりますので、総理も言っておられますが、その5月末までに関係方面のご理解を得られるように、各閣僚が力を合わせて努力をしなければならないと思います。

【共同通信 西野記者】最後のところの各閣僚が努力していかなければならないというお立場は理解するのですが、一方で、福島大臣は「辺野古に造らせないことに全力で頑張りたい」という発言をされています。やはり閣内で「5月末に向けて一致している」と客観的にみると言い難いような状況と思えるのですが、こういう閣内の動きについてはどのようにお考えでしょうか。

【大臣】次第に5月末が近づいてきておりますので、どこかで関係閣僚会議といいますか、基本政策委員会ですか、これを開催しなければならないと思います。
 本日も本会議場で総理が横におられましたので、「亀井先生、福島先生に対して丁寧に説明された方がいいのではないか」ということを申し上げたところです。ただ、「いろいろ総理始め、各閣僚が努力しているときに、あからさまに外に向かって言うのはいかがなものか」ということは、私(大臣)がときどき閣僚懇談会で福島さんに対しては申し上げているところです。

【時事通信 水島記者】普天間問題で引き続きなのですが、決着の定義について、総理は昨日、「地元も米国も連立与党もこの方向で行こうではないかというものが決着なのだ」と仰いましたが、日米間の交渉ということで言うと、方向性ということであっても日米合意をつくるということはあり得るのでしょうか。

【大臣】総理がそういうように仰ったとすれば、それがまさしく答えであります。閣僚としては総理の基本的なお考えに基づいて進めておりますので、それ以上のことを特に付け加えることはございません。

【琉球新報 滝本記者】「抑止力」についてですが、岡田大臣は昨日の沖縄・北方対策特別委員会で、沖縄になければならないかどうか、ということについての議論でお話しをされました。前回もお伺いしましたが、沖縄に必ずしもなければならないのかということについてはどのようにお考えなのかというのを改めてもう一度ご確認したいのですが。

【大臣】「抑止力」ということを考えたときに、私(大臣)は基本的に日本に海兵隊が必要だと申し上げております。なぜそういう言い方をしているかということは、ここでも以前に申し上げたことがあると思いますが、つまり沖縄の海兵隊による負担を軽減するという議論をしているときに、沖縄になければならないと言ってしまいますと、それは負担の軽減にならないからであります。
 ただ、沖縄の海兵隊全部を沖縄以外に持っていく、つまり日本の中のどこかに持っていくということは極めて困難であります。かつ、沖縄という地理的特性ということもありますので、「負担の軽減を極力図りつつ、しかし、一定規模のものは沖縄に海兵隊が必要である」と言うべきだと思います。

【琉球新報 滝本記者】今のお話をお伺いした上で、沖縄以外の日本のどこかに持っていくのは極めて困難だと。

【大臣】丸ごとね。

【琉球新報 滝本記者】丸ごとということ。これは政治的に受け入れるところがないからだということだと思うのですが、それを前提として、今回のそれこそ米軍再編ではなくて、鳩山政権での県外移設ということを検討する中で、丸ごと日本の他の部分に持っていくというのは困難だというのは、自公政権でもこれまでもずっとそうだったということは、小泉総理がされていたときもそういうお話で、「総論賛成、各論反対」というような言い方であったと思うのですけれども、そういう意味ではなかなか困難だというのは事前からわかっていたはずなのですが、鳩山政権下で沖縄以外の日本のどこかに具体的に持っていこうということを、地元がなかなか受け入れるのが難しいからだというのはわかりますが、打診なり、実際にアクションとしてどういうようなことを起こされたのかというのをお伺いしたいのですが。

【大臣】丸ごと持っていくのは困難だという意味は二つあって、それこそ丸ごと受け入れるところがないということと、もう一つは訓練地というのを切り離して、訓練地以外の機能、つまり飛行場の機能だけ持っていくということは、米国がそれでは運用上の効率性が極めて悪くなるということを改めて主張したということであります。

【琉球新報 滝本記者】普天間問題とは関係なくですが、沖縄の基地負担軽減という文脈の中で、嘉手納飛行場の騒音の問題もあり、現在ある嘉手納飛行場の問題自体があると思うのですが、その中でも昨今また外来機が飛んで来ているという中で、地元もずっと反対の決議をしたりという形があるわけなのですけれども、鳩山政権で沖縄負担軽減という文脈は普天間の単なる移設だけではなくて、沖縄全体の基地負担の軽減ということで掲げておられると思うのです。そういう意味で、その中で外来機がまだ入ってくると、なかなか地元の「NO」だということについて、なかなか一定の答えもないというリアクションが、目に見える成果がないということについてどのようにお考えかをお伺いしたいと思います。
  
【大臣】私(大臣)が嘉手納に行ったときに確認した話では、嘉手納そのものにいる飛行機は時間を一応守って、夜間、或いは早朝の離着陸を控えている。しかし、外来機といいますか、ほかから飛んでくる飛行機がそういう時間帯も含めてあるという話があったと思います。
 沖縄負担軽減という中で、この嘉手納の騒音をいかに減らしていくかということも重要なテーマでありますので、もちろんそれだけに限りませんけれども、そういった問題についてもしっかりと日米間で議論していかなければいけないと思っています。

【琉球新報 滝本記者】今の問題に関連してですが、先ほど申し上げたように、地元の自治体の議会等は、今でも負担が大きいのに更に外来機が入ってきて騒音が増えることについてどうだということで、外来機の飛来移駐をやめてくれという決議をしたりする訳です。
  そういう決議をやはり現地の司令官なり嘉手納の司令官なりに抗議文を手交しに行こうとするのですが、と地の米軍の責任者になりますが、嘉手納の空軍の司令官が応対を受け付けないというような状態があるようです。その部分はこれまでもずっとそういう決議なり、そういうことが手交されたりしているのですけれども、なぜそういうふうにそもそも手交の受付けがなされないのかという理由自体、自治体も地元もわからない状態ですが、そういう事態についてお聞き及びか、その事態について、どういうふうに対処されるお考えがあるかお伺いしたいのですが。

【大臣】受け付けないかどうかは、私(大臣)は承知しておりません。ただ、私(大臣)が嘉手納に行ったときの話ぶりから見ると、恐らくそれは基地の責任者、司令の権限を超える話なのだろうと思います。つまり嘉手納空港に外来機がやってくるということは、彼の決定できる話ではないということで、よりハイレベルで議論をしなければならない。そういう意味では、やはり日米両国間政府で議論をしなければいけないテーマではないかと思います。

【マガジンX 島田記者】基地負担の件で、例えば普天間にしても設立当初はその周辺に住民はほとんどいなかったと私は記憶しているのですが、それが時間が経つごとに経済圏として成立していってしまったということがあると思いますが、基地が仮に無人の島とかにできたとしても、その後、経済圏が発達した上で更に住民が増えてくるという可能性もないわけではないですが、基地をそういう安全なところに移転した後のまちづくりの構想とかは考えているのでしょうか。

【大臣】普天間の場合には基地が後からできた形で、人が住んでいなかったわけではないと私(大臣)は認識をしております。学校なども当初からあったと、後からできたものもあるかもしれませんが、かなり早い段階から学校はあったということであります。ですから、今仰ったようなことを考えると、やはり人の住みそうな場所にはなるべく造らないという発想になってくるのだと思います。現行案はそういう発想でできていると思いますが、それ以上のことは、今はコメントを差し控えた方がいいと思います。

【世界日報 山本記者】抑止力の関係でご確認させていただきたいのですが、先日鳩山総理が沖縄に行かれまして、「海兵隊の抑止力が理解できるようになった」という発言がございまして、これは若干失望をかっているようなところもあるのではないかと思うのですが、それとまた関連で先日の金曜日の記者会見で抑止力については岡田外相と首相は「いろいろ議論してきた経緯があった」と仰っておられたのですが、そういう議論の中での抑止力の議論と、首相の今回の沖縄での「抑止力が理解できた」ということとの、その辺りの整合性がよく分からないものですから、どういう経緯でそういう理解に進んでいったのか、分かりますでしょうか。

【大臣】鳩山総理がどういう人かというのが分からないと、そういう仰り方をよくされる方です。先日、前原大臣も「総理が抑止力について、今まで考えてなかったということはあり得ない」と国会でも答弁されていました、私(大臣)もそう思います。ただ、非常に謙虚な方ですから、そういう時に少しへりくだって謙虚に仰っているということだと私(大臣)は思っております。

【琉球新報 滝本記者】先程私がお伺いした中で私自身として、大臣からお答えいただいていないつもりですが、「何故、沖縄でなければならないのか」ということでの、沖縄の外に持っていけるのかどうかという議論が、具体的に打診して断られたり、難しかったということが実際にどのように検討したのかということについての、具体的な部分をお伺いしたいのですが。

【大臣】基地の中で訓練地を離すということは非常に難しいということは一つあると思います。日米の話し合いですから、あまり具体的に申し上げられませんが、それが一つあると思います、セット論です。それから、もう一つはセットを丸ごとどこかへ持っていけばいいじゃないかということですが、それに適切なところというのは残念ながら出てこなかったということです。それはやはり一定の設備も要りますし、訓練地も必要です。そういったところについて、具体的なものはなかったということです。

【琉球新報 滝本記者】それは具体的に自治体に打診されたというような行為があったのか、それとも政府内で諸条件を考えたら当てはまるところがなかったという、つまり机上で考えられた、それはどちらでしょうか。

【大臣】基本的には官房長官をヘッドにする検討委員会の中でいろいろ当たって来られた訳で、その中でどういうやり方をしたかということは私(大臣)は承知をしておりません。

日中韓外相会議
【共同通信 斎藤記者】日中韓外相会議の関係です。近く韓国で日中韓外相会議が行われますが、現在北東アジアが抱えている諸問題はいろいろあると思います。日本政府として、外相として日中韓首脳会談でどのような成果を期待するのか、どのような日本の立場を主張されるのか、ご見解をお伺いします。

【大臣】日中韓外相会議というのは、その2週間後に開かれる日中韓首脳会談の議論の整理をするというものです。日中韓で例えば経済、将来の共同体を目指しての3か国のFTAの議論でありますとか、もちろん3国間共通の安全保障の問題でありますとか、そういったことについて議論します。併せて日本の場合であれば日中、日韓それぞれ外相会談を行うといったことで、議論すべきことはたくさんあります。3国間もありますが、日中、日韓間でも相当議論しなければいけないと思っております。

【マガジンX 島田記者】将来の日中韓の共同体という想定に関してですが、今、欧州の共同、EUがかなりギリシャの問題で危うくなっていますけれども、それでも経済共同体、もしくはそれに準ずるようなアジアの共同体というのは必要だとお考えでしょうか。

【大臣】EUのようなレベルまでいくことをすぐ考えているわけではありません。政治体制も違いますから。主権の制限に大きくつながるような、例えば通貨の統合といったことには、私(大臣)は相当距離があると思っています。

【週刊金曜日 伊田記者】歴史認識の方に振るのですけれども、今年は韓国併合100年ということで、昨日10日に日韓知識人共同声明というのが出ました。東大名誉教授の和田春樹さんなんかも呼びかけ人の一人なのですが、その共同声明の中で、「韓国併合に至る過程が不義不当であると同様に、韓国併合条約も不義不当である」という共同声明が出ています。
  説明としては共同声明の中にあるのですけれども、「日本政府は併合条約案は対等な立場で、また、自由意志で結ばれたものであり、締結時より効力を発生し、」等、あとは省略します。過程を検討すると、やはり韓国側が今まで主張していたとおり、韓国の併合条約自体も不義不当であると判断するのが妥当だという共同声明を出されています。
  この声明には、日韓歴史共同研究委員会の第1回の日本側の座長を務められました、三谷太一郎さんも署名されています。そういった意味で今年は日韓併合100年なのですけれども、いきなり結論は出せないと思いますが、政府の今までの見解を見直されるよう検討されるというお気持ちはございますでしょうか。

【大臣】この点は日韓基本条約第2条で、日韓両国政府が認めたものとして1910年8月22日以前に、大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認されるとしております。これが両国政府の考え方であります。

【共同通信 斎藤記者】日中韓外相会議で議題に上りそうな1つの案件として、韓国の哨戒艦の沈没事案があるかと思います。この件に関連して岡田大臣は前回の記者会見で、もちろんまだ韓国政府は正式な発表をしていないということを踏まえた上で、いわゆる北朝鮮関与説、今、韓国の中で非常に取りざたされているのですが、この件については一言、前回の記者会見で「理解できる」と大臣は仰られたと記憶しております。

【大臣】「理解をする」と言いましたかね。

【共同通信 斎藤記者】理解という言葉、「理解はできる」と仰いました。「北朝鮮関与説」というのは私が質問の中で使った言葉であって、大臣は北朝鮮関与説とは仰っておりません。質問を受けている中で、「韓国国内の動きについては反応自体は理解できる」と仰っています。これは間違いありません。ご記憶にないとなると、この後の質問の振り方が非常に難しいのですが、まさに「理解できる」と仰られた背景には、岡田さんご自身もこれまでの種々の情報、分析を踏まえた上で沈没問題についてある種の見方というものがあるのかどうか、この点をちょっと確認したいと思いました。そして、そうしたことを日中韓外相会議の席上で様々な意見交換するのかどうか、その点も併せてお願いします。

【大臣】この問題は非常に重要な問題です。多くの方が亡くなったわけですし、そして事故ではないという見通しが非常に強いわけですから、非常に重要な問題で、日中韓外相会議でも議論になると思います。ただ、日中韓の外相会議をやるタイミングではまだ正式な結論は恐らく出ていないというタイミングでの議論になると思いますので、今、韓国を中心に米国とかスウェーデンとか、幾つかの国の人々が入って調査を行っておりますので、基本的にはその正式な結果をきちんと見極めた上で議論すべきで、それまでは決定的なことは言うべきでないと思っています。

郵政改革法案
【フリーランス 上出氏】日米関係について関連があると思います。実は今日、金融庁の亀井大臣のいわゆる第2記者会見に参加しまして、そのまま言うと露骨なので言いませんが、その中で日米関係全体のことを考えて、「外務省はアメリカの外局に成り下がっている」とのことでした。もっと厳しいことを言ったのですけれども、そういうことも含めて、普天間の問題とかいろいろな問題を言っておられましたが、大臣としてそういうご認識、実際に亀井大臣がどう話されていたかも含めて、ご説明できる範囲で、そういう問題について、外務省の役割ということについて、どうご認識されているでしょうか。

【大臣】本日、閣議の前に、亀井大臣とは隣同士ですので、普天間の問題を少しお話ししたのですけれども、どうせ言うなら私(大臣)に直接言っていただければいいのにと思いますけれども。

【フリーランス 上出氏】そういうことでお話をされたことはないですか。

【大臣】本日は普天間の話をした訳ですが、「外務省が米国の言いなり」とか、そういう発言は全くありませんでした。そう言われれば、私(大臣)は当然説明したと思いますけれども、余りそういう固定観念で見ない方がいいのではないでしょうか。言いなりなら、こんなにもめていないです。

【フリーランス 岩上氏】今の上出さんの質問に関連して、ご質問させていただきます。上出さんが奥ゆかしく、詳しく説明されなかったのですけれども、私も亀井大臣の会見に出てまいりました。正確に申し上げますと、郵政改革の一連の作業に際して、大塚副大臣に対して外務省から随分圧力がかかったと。条約局の局長までいらして、「このままだと日米関係が大変なことになってしまう。具体的には現在、郵政改革を進めている、その方向に進んでいくと、外資を含めた民業圧迫になる」という形で、外務省側からいろいろな幹部の方々が何度もいらして、郵政改革を思いとどまるようにという圧力があったということで、それに対して亀井大臣は非常に憤慨されて、「どこの国の外務省だよ。国務省の言ってみれば支店のようなものではないか。米国の国益と外資の利益を代弁しているのではないか」というようなニュアンスの強い言葉で怒りを表明されていて、「断固としてそれはCIAに暗殺されるまでははねのける」みたいなことを仰っていたのですが、具体的にはこういう言葉です。とはいえ、インターネットの方も入っていて、フリーにアクセスできる、中継できる場で、この懸念というものを強く表明されていたので、外務省の幹部、条約局長というところまではっきり仰っていましたので、こうした高官が実際に郵政改革に対してマイナスの働きかけといいますか、否定的な働きかけをされたかどうか、それを含めて、またそれについて大臣としてどうお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

【大臣】まず郵政改革法案に関して、私(大臣)が、今からもう2か月近く前になりますが、これはきちっとフォローするようにと命じまして、吉良政務官、或いは経済局や条約局でずっと法案に関して協議を行ってまいりました。そして、かなり私たちの意見が入ったところもありますが、最終の場面で、やはり内国民待遇がきちんと確保されないとWTOに提訴されかねないということで、是非、そういったことも念頭に置いて、きちんと根拠になる条文を置いてもらいたいと私(大臣)は申し上げました。そして、具体的説明は吉良政務官と経済局長と条約局長にしてもらった訳です。結果として、少しですが、条文は変わりました。
そして、私(大臣)はおりませんでしたけれども、4月30日の閣議でこれが決まったわけです。その直前にそういう形で意見交換をさせていただいて、条文に多少修正を加える形で円満に纏まったということです。
  それが入ったから、それでは、WTOに提訴されるということが100%ないかといえば、そういうことは断言できませんが、仮に提訴ということになったとしても、こちらとしてはきちんと対応しているという抗弁をすることができるだけの根拠は置くことができたのではないかと思っております。これは米国がどうのこうのという話ではなくて、国際的な貿易・通商のルールの話です。

【フリーランス 岩上氏】引き続き関連で、今のくだりを確認させていただきたいのですが、変更された条文というものは、どの箇所でどのように変えられたのか、ご記憶の範囲で教えていただきたいということ、それから、米国がどうのこうのという訳ではないと仰いましたが、この外務省の姿勢の背景に米国側からの圧力とか、或いは申し入れとか、働きかけとか、そういったものがあったかどうかという点について、米国の官、民ということの両方ですけれども、その点にも言及していただければと思います。

【大臣】米国から意見というものは来ております。でも、これは米国だけではなくてEUからも来ておりますので、やはり内国民待遇、内外無差別、つまり日本の企業だけを特別扱いしないという大原則はきちんと確保していかないと、それはまさしく日本が非常に保護主義的なことをやっているということで、提訴の対象になりますので、それは常識の問題としてきちんと対応しなければならないというのは当然のことだと思っております。別に米国から聞かれたということではなくて、それは貿易立国としての日本として国際ルールに反するようなことをやるわけにはいかないということであります。
  条文は記憶しておりませんけれども、非常に技術的な書き方です。しかし、いざというときにはこういった規定が置いてあって、そういう差別的扱いはしないということが言えるような形になっております。

報償費
【週刊金曜日 伊田記者】外交報償費、いわゆる外交機密費の使途についてお伺いします。
 先般、野中広務元官房長官が、自分が官房長官時代に報償費を政治評論家に、名簿に従って配っていたという発言がありました。それで外交報償費なのですけれども、例えば広い意味で、そういう外交の基本環境を整えるために国内世論、特に間違った世論形成があれば問題なので、国内マスコミの人々に正しい理解をしていただくといった目的で外交機密費を使われるというのは適正な使途に当たると大臣はお考えでしょうか。

【大臣】適正かどうかは別にして、外交機密費は幾つか用途があると私(大臣)は思いますが、通常では取り得ない情報を取るために使うというのは、私(大臣)は外交機密費として認められる使い方であると思います。通常では取れない情報を取るために使うというときに、その相手がマスコミ、メディア関係者であるということもあり得ることだと思います。ただ、一般的に懇親を深めたりということのために機密費を使うということは私(大臣)は適切ではないと判断をしておりますし、その旨、私(大臣)が大臣になってから省内に徹底をしているところであります。

日中関係
【共同通信 斎藤記者】東シナ海の関係でお伺いします。前回の記者会見でもお伺いしましたが、一つは中国の艦船の航行問題。もう一つは、中国の国家海洋局の調査船による追尾問題、いろいろありまして、大臣の方から、先方には抗議するとともに、いわゆる対話のメカニズムと言ったらいいんでしょうか、今後、再発防止、あるいは不測の事態発生を防ぐための何らかの枠組みをつくる必要があるという話があったやに記憶しております。その関連でお伺いしたいのですが、もちろん、そうしたことは非常に大事だと思うんですが、一方で本日、程永華駐日大使が都内で講演をされまして、私も見に行きましたが、程永華大使も対話の重要性は言及されていました。ところが問題は、やはり原則部分が非常に日中間で大きく食い違っていまして、お察しがつくと思いますけれども、日中中間線をまたいで海洋調査船がやってきたことはおかしいではないかというこちら側の指摘に対して、そもそも中国は日中中間線を認めていないということで、そういう議論は成り立たないという趣旨だったと思います。それはそれで中国の理屈だったと思います。問題は、この状況が放置されていくと、また同じことが繰り返される。すなわち海洋調査船が、我が方の主張からすれば、日中中間線を越えてやってくる。そして、また、中国の艦隊が日本近海を航行する。これは公海だから問題がないと、そして、日本の自衛艦がまたそれを追尾するという状況は、今後も生まれかねないわけで、そうした状況を何らかの形で、とにかくそうしたことが起きないような何らかの対応策というのは考えられるのかどうか。もちろん対話は大事です。また、そういった対話と同時に、何かほかにできることがあるのかどうか、ここで何か大臣、アイディアがございましたら、お伺いしたいと思います。同時に日中外相会談が今度ございます。そこで、もし何か取り上げるとすればどのように取り上げたいのか抱負もお願いいたします。

【大臣】少し厳密にきちんと議論した方がいいと思います。今仰った中で、別に日本の排他的経済水域であっても、中国の艦船が、これは軍も含めて、そこに入ってくることは、国際法上何の問題もありません。そのことが問題だと今仰ったので、それは違います。その上で、お互いの主張が重なり合う部分など、これをどういうように対応していくのかというのは非常に難しい問題ですが、そういったことについても知恵を出し合っていかなければいけない問題だと、もちろん、根本解決は中間線なのか、大陸棚延長なのか、そこの決着がつくということが根本問題ですが、それが簡単に決着がつかないで時間がかかるとすると、やはり知恵を出して暫定的な期間、決着がつくまでの期間にどのようにしていくかということについて知恵を出していかなければいけないのだろうと思います。いずれにしても、そこまで詰めた議論になるかどうかは別にして、日中外相会談において、いろんなことが続きましたので、そういったことについて、再発が、何度もこういうことが繰り返されないように、議論はしてみたいと思っております。

【共同通信 斎藤記者】今の関連ですが、まさに大臣が、艦船が日本近海を航行したこと、排他的経済水域の中を航行したことについては、これは国際法上何の問題もないと、全くそのとおりだと思いますが、今日、その点について、程永華大使は、このような言い方をしておりました。「これは、正常で通常の訓練の一環である」と、これが一つです。二つ目は、「我が国の艦船に付きまとったのは日本一国である」と、つまり「他の隣国、東シナ海にはいろんな国が面しているが、我が国の艦船に付きまとったのは日本だけだった。他の国もあるけれども来ていない。したがって、そうしたことが起きると、やはり相互信頼を損なうということを、私は心配をしている」と仰いました。法律的なことは言っていないです。趣旨としては恐らくあなただけやったと、これは日中関係を損なうのではないかと、いわゆる道義的な問題を差しての発言だと思います。道義的な部分に照らして、今回の自衛隊の行動が何か相手を刺激するような行動だったのかどうかという観点からいかがでしょうか。

【大臣】一国だけだったのかどうか、私(大臣)は確認しておりませんのでわかりません。いずれにしても、公海上を、あるいは排他的経済水域を含めて船が航行することは自由なのですから、訓練をしているときにそれを近くで見ると、ウオッチするということは、これは法律上何の問題もないわけであります。そういったことは一般に行われていることであります。問題なのはやはり、それが危険を感じるほど接近をするということであって、それが今回の中国側のヘリコプターの近接ということでありますので、もちろん、ヘリコプターはそんなに近づいていないという声も中国側にはあるようですけれども、その辺の事実関係の問題というのは、私(大臣)は日本の言うことを前提に議論しておりますけれども、やはり常識的なルールというのはあるのだと。それは日本や、日米が訓練しているときに、中国の艦船が近くでそれを注視するというのはだめだということではないし、それを禁じる理由はないわけでありまして、しかし、危険を感じるほど近づくということになると、それはやはりまずいということだと思います。そういうことをもう少し冷静に議論できるようになればいいなと思っています。

日米実務者協議
【共同通信 西野記者】先ほどの私の質問に戻るのですけれども、閣僚懇の中で、福島大臣に余り表に向かって言うものではないという問題提起をされているということなのですけれども、今日の閣僚懇でもされたのですか。

【大臣】今日はしていません。それから、閣僚懇で言ったことをしゃべってはいけないのを忘れていました。過去のことですから。

【共同通信 西野記者】それから、日米間で話をするのは、当然の時期になっているというように思います。5月末に決着していこうということで、また、12日にワシントンで実務者協議があると聞いています。中身の話になるので、なかなか発言しにくいのはわかるのですが、やはり実務者協議を行っているということをきちんと国民にはっきり出していただければという気がするのですけれども、12日に実務者協議を行うのか、どういうところが焦点になるのか、どんな形で外務省の方々に指示をしているのか、差し支えない範囲でお願いします。

【大臣】なかなか中身はお話しできません。ただ、前回申し上げたように、前回は日米安保50周年ということで、ここで申し上げたのか、国会で申し上げたのか忘れましたが、安保50年ということで議論をすると、しかし、その際にも普天間の問題は当然議論にはなると申し上げました。今回は、どちらかというと普天間の問題を中心に議論すると申し上げておきたいと思います。ルース駐日米大使と私(大臣)の間で基本的な考え方の整理をしてまいりましたので、しかし、まだ具体的なところで幾つか詰めなければいけないということがあり、そういったことについて、実務者で技術的な観点を含めて議論してもらうということであります。

【NHK 別府記者】実務者協議は技術的な問題を詰めるということで、交渉すると、つまり、日本側か、米国側から何かを勝ち取ってくるという具体的なマンデートをもらって米国と交渉しているものではないという理解なのですか。

【大臣】まず、実務者協議という表現は使わないのです。実務者が集まって議論すると。そういう会議みたいなものが決まったメンバーであるわけではございません。それから交渉ということの意味ですけれども、技術的な説明だけではなくて、幾つかの点について議論するということになります。そこで最初に決めることになるのか、それぞれ持ち帰って、また大使との間でやることになるのか、その辺は物事の詰まり具合だと思います。

【時事通信 水島記者】先程のNHKの別府さんの質問への大臣の答えの確認ですが、ワシントンで実務者での話し合いの中身というか、成り行きですが、お答えでは最終的に決めるのか、持ち帰って大使とやるのか、物事の詰まり具合いだということですが、米国の出方次第では大筋合意のようなものに至る可能性もあるというように受け止めてよろしいのでしょうか。

【大臣】今週は、そこまでは難しいかなと思います。

日本の安全保障政策
【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者からの質問を代読します。若干意見に近いのですが、こういうメールが来ました。「普天間基地の問題ですが、民主党だけの問題ではないと思います。党を超えて、日本全体で話し合えないでしょうか。北海道から沖縄まで、知事もしくは代表者などを決めて、どこに移転するかなど話し合えないのでしょうか。その結果が日本国全体の民意だと思います」というメールでした。手詰まり感がある報道がある中で、みんなで考えよう、沖縄だけではなく分担しようという機運が高まってきているのも事実だと思いますが、こういった意見についてどう思われますでしょうか。

【大臣】具体的には今までも知事会などでも議題になったりしました。ただ仰るように日本全体で普天間基地移転の問題をきっかけに、抑止力とは何か、何のために米軍は日本にいるのかとか、そういう議論が国民の中で少し高まりが見られることは、私(大臣)は非常にいいことだと思います。国会でも申し上げているわけですが、日本を取り巻く環境、朝鮮半島情勢とか中国をはじめとする周辺国の海軍力を中心とした増強、そういう中で、先程来議論になっておりますいくつかの自衛隊との接点といいますか、ヘリコプターが危険なところまで近づいてきたということも起きているわけで、日本自身で日本を守るということがどこまでできるのか。もちろん防御的なことは自衛隊は大変高い能力を持っているのですが、相手を攻撃することはできません。専守防衛であります。攻撃するところは米国が担っているわけですが、これなしで防御だけで国民の命が守れるのかというと、私(大臣)はそれは無理だと思います。そういう意味で米軍の抑止力に期待せざるを得ない。これはもちろん日本だけではなく、米軍は日本のためだけにいるのではなく、この地域の平和と安定のためにいるということを前提にして、しかし同時に戦後の色々な流れのなかで、沖縄にあまりにも過度に負担が偏っています。それを何とか国全体で分かち合っていかなくてはならない。そういうことについて国民の皆さんがそれぞれお考えいただき、普天間移転の問題はその象徴的な出来事でありますが、そのことについて関心を持っていただければ非常にありがたいと思います。併せて鳩山総理が沖縄の負担を何とか軽減するために、今、苦しまれながら努力しておられることも是非ご理解いただきたいと思います。

【フリーランス 岩上氏】抑止力関連でご質問させていただきたいと思います。海兵隊の戦力というものは、抑止力になりうるということはたびたびお話しいただいてきたと思います。2009年に中曽根前外務大臣が「尖閣諸島は中国の脅威にさらされたときには、日米安保の対象になる」と仰られまして、麻生政権としても「これは日米安保の対象である」と答弁もされていると思います。ここで一点の確認ですが、実際に尖閣諸島に対して、もし中国が侵略してきたとき、海兵隊が出動するのかということに関して、2005年の日米同盟変革と再編の文書の中で明白に、「島嶼部については日本側の負担である。日本側が分担する。島嶼部の防衛は第一義的に自衛隊がやるものであって、米軍は出動しない」ということが明記されています。この点、やや矛盾を感じるところであるのですけれども、実際、現実性の行動、軍事行動となった場面では果たしてこの日米安保の前政権の回答が正しいのか、それとも日米同盟変革と再編に書かれている島嶼部の防衛は第一義的に自衛隊が出動して行うのが優先されるのか、どちらが正しいのでしょうか。

【大臣】どちらも正しいと思います。ですが一義的に日本を守るのは当然日本人です。自衛隊です。日本を守ることまで米軍に依存するということではありません。ただ、自衛隊の手に負えないということになれば、米軍の力を借りることもあるということであって、一義的には日本を守る役割は日本自身が行うのは当然のことだと思います。

【フリーランス 岩上氏】仮に中国軍が尖閣諸島に攻め入るというようなことがあった場合、自衛隊が出動し、手に負えなくなった場合、海兵隊が後から加わるという形になるのでしょうか。

【大臣】あまり生の議論をしないほうがいいと思います。想像の世界ですので、どこの国がということは言いませんが、しかし日本は沢山の島嶼部を抱えておりますので、今の自衛隊の能力でそれが十分に守れるのかどうか、もっと島嶼部を守るための能力をしっかり身につけるべきではないかというのを今議論している防衛大綱を作る中で、まだ政治レベルでは議論していないのですが、学者の先生に議論していただいている段階ですが、一つの議論すべきテーマであることは間違いないと思います。

ジブチにおける自衛隊の独自の拠点整備
【フリーランス 岩上氏】4月末にAFPが伝えた話ですが、アフリカのジブチに日本の海上自衛隊の基地が建設されるという話が伝えられました。その記事の中ではその海上自衛隊の二等海佐はインタビューに答えているというように伝えているのですが、これは戦後初の海外の基地であるというように伝えられているのですが、これはあまり国内で大きく報じられることがありません。どのようなものであるのか、そして、またどのような位置付けとか性格を持った施設であるのか、またそれが日本の戦略上どのような意味を持つのか、可能な限りお話しいただければと思います。

【大臣】今、海賊対策で船だけではなくて、飛行機も出している訳です。その飛行機を整備をするとか、そういうことが必要になります。そういうスペースを確保したということです。それを基地と言うかどうかは別にしてということです。今ももちろんそういうスペースはありますが、きちんとジブチ政府と契約を取り交わして、スペースを確保したということです。

【フリーランス 岩上氏】それは整備場程度のものなのでしょうか。それとも、軍事基地と呼ばれるような性格や規模、或いはそこそこの駐屯する人員とか、武器、装備といったものが整備場と言える程度のものなのか、それともやはり自衛隊の海外の基地と言われる性格を持つものなのか、その点についてもう少し明らかにしていただければと思います。

【大臣】いわゆる飛行場を持ってというような、そういう基地というイメージで考えていただかない方がいいと思います。各国それぞれ飛行機を持っていますから、そういったスペースを確保しているということです。確か自衛隊の飛行機は2機だったか、正確な数字は今出てこないのですが、10機も20機も行っている訳ではありません。船を出している、それを上から海賊船を見るために出している飛行機ですので、お考えのような基地というものではありません。




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