外務大臣会見記録(平成22年5月18日)
外務大臣会見記録(平成22年5月18日(火曜日)15時03分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)日中韓外相会議について
(2)温家宝中華人民共和国国務院総理の訪日について
(3)クリントン国務長官の訪日について
(4)中国人観光客に対するビザの緩和について
(5)外務人事審議会について
○クリントン国務長官の訪日
○中国人観光客に対するビザの緩和
○北方四島ビザなし交流
○米軍再編問題
○日中外相会談(中国に対する核兵器削減の要請)
○口蹄疫の発生
○韓国哨戒艦の沈没事案
○温家宝中華人民共和国国務院総理の訪日
冒頭発言
(1)日中韓外相会議について
【岡田大臣】第一点は日中韓外相会議ということですが、このタイミングで2週間先の日中韓首脳会議の粗ごなし的な会議を開催してまいりました。併せて特に日韓間では日韓FTAの問題、沈没船への対応の問題を中心に、有意義な意見交換ができたと思います。日中間では核の問題、海の問題で危機管理メカニズムの創設の必要性について、お互い一定の確認ができたことは成果だったと思いますが、ただ、ヘリの危険な行為とか、或いは中間線の東側で調査を行っていた海保の船に対して、執拗につきまとって調査の継続を困難にしたというようなことに関しては、こちらの主張に対して完全に物別れと言いますか、お互い意見の相違があった訳で、そういった点については今後なおしっかり議論をしていかなければいけない。こちらはもちろん抗議をした訳でありますが、まだ決着はついていない状況であります。いずれにしても、率直にこのタイミングで意見交換できたことは非常によかったと考えております。
(2)温家宝中華人民共和国国務院総理の訪日について
【大臣】温家宝中華人民共和国国務院総理の訪日です。5月30日から6月1日まで公式実務訪問賓客として訪日する予定です。滞在期間中、天皇陛下の御引見、鳩山内閣総理大臣や各界要人との会見などを行う予定です。2008年5月の胡錦濤主席の来日の際に、原則として毎年どちらか一方の首脳が他方の国を訪問することで一致しており、この度の訪日はその一環として実施されるものであります。この温家宝総理が訪日を通じて、日本に対する理解を一層深めていただくことを期待するものであります。
(3)クリントン国務長官の訪日について
【大臣】クリントン国務長官は5月21日(金曜日)に訪日し、日米外相会談などを行う予定であります。クリントン国務長官との間では国会でも申し上げましたように、沈没船への対応の問題、或いはイランの核疑惑に対する対応といった問題を中心に話し合いをする予定であります。普天間の問題は何もないのかと聞かれれば、当然意見交換をすることになると思いますが、重点は先ほど申し上げた2点でございます。
(4)中国人観光客に対するビザの緩和について
【大臣】これは随分なんか色あせたものになりましたけれども、中国人観光客に対するビザの緩和について、7月1日から緩和することにいたしました。中国人の訪日観光は平成12年から団体観光の形式で実施してまいりましたが、これに加え、昨年7月からより少人数で自由な観光が可能となるよう、個人観光客に対しても査証を発給しているところであります。今般、個人観光客に対する査証の発給要件を緩和することといたしました。主な内容としては次の3点です。まず、申請受付公館をこれまでの3公館から7公館に拡大し、中国本土における全公館とするということであります。第二に、取扱い旅行会社を現行の48社から290社に拡大する。第三に、一定の職業上の地位及び経済力を有するものに対して査証を発給する。具体的に企業や政府機関の中堅幹部などが想定されるということでございます。今般の査証緩和により、観光分野における日中間の人的交流が一層活発化することが期待されるところでございます。報道によると発給の基準についていろいろな報道がされておりますが、外務省として明らかにするのは以上でございます。あとは内規の問題ですから、ああいったいろいろな記事が出たことは誠に遺憾であります。どこからそういった記事が出たのかということは、よく調べてみる必要があると思いますが、本来そういった内規については、外務省が持っている訳ですが、今まで出たことはございませんので、大変遺憾に思っているところであります。
(5)外務人事審議会について
【大臣】外務人事審議会について申し上げたいと思います。外人審というのは一体何かということを私(大臣)も事務方に何度か確認してきた訳でありますが、外人審というのは外交及び人事行政の専門家による独立性の高い第三者機関として、外務公務員の人事管理、在勤手当額の改定或いは名誉総領事の任命などについて意見を述べるものであります。簡単に言ってしまえば、人事院というのがありますが、人事院というのは一般の公務員を中心にしたものであって、それにプラスして外務公務員に関して特例的な問題について人事院と同じように、一定の独立性を持って意見を述べる、これが外人審であります。しかし、今までそういうことで運用されてきたかどうかというと、甚だ疑問があるということで、もう一度運用を見直し、本来の役割をきちんと果たすようにしたということでございます。そういう観点を踏まえて、今回新たに4名の新委員に参加していただくことになりました。任期が満了して空席であったものを、4名を新たに任命したということでございます。犬飼委員、大村委員、西村委員、広瀬委員ということで、それぞれの専門家を任命させていただいたところでございます。詳しくは担当のところにお聞きいただきたいと思います。
クリントン国務長官の訪日
【NHK 禰津記者】クリントン国務長官の来日の件でお伺いしたいのですけれども、先ほどメインは北朝鮮問題で。
【大臣】北朝鮮とは私(大臣)は言っておりません。
【NHK 禰津記者】韓国の沈没船の対応とイランの核問題で、普天間問題についても意見交換はされるということですけれども、普天間問題に関しては、5月末まで2週間を切りましたが、大臣として、今回のクリントン国務長官との会談で、政府の案にどのような理解を求めようとしているのか、更に進んで何らかの一定の合意というものを目指そうとされているのか、その辺についてお考えをお聞かせください。
【大臣】普天間問題については、日米間で今、各レベルにおいて協議、意見交換を行っておりますので、中身はもちろん、いろいろと協議をしなければならない点もありますが、話し合いそのものは順調にといいますか、少なくとも動いていますので、いきなりトップ同士で、つまり、私(大臣)とクリントン国務長官が何かを決めなければいけないということではないと思っております。
【NHK 禰津記者】今、政府の中で詰めている最終の普天間の移設案について、理解を求めるということではどうでしょうか。
【大臣】ですから、日米、いろいろなレベルで議論を行っているところですので、当然中身はクリントン国務長官にも上がっていると思いますし、トップ同士で何か交渉するという局面にはないと私(大臣)は認識をしております。
【琉球新報 滝本記者】今の普天間の件に関して、トップ同士で議論しなければならないという局面というのは、どういうことを大臣は想定されておられるのですか。今は事務方なり、いろいろな段階で詰めているところだということは、最終的にはそれがトップに上がってきて、トップで議論しなければいけないということになるのでしょうか。それとも、もうサインするというだけで合意ということになる形になるのでしょうか。
【大臣】それは分かりません。ただ、今、何か具体的にトップ同士でやらないと物事が動かないとか、そういう事態ではないということです。実際、来られたときに、どういう状況になっているかは、まだ日がありますから。断言はできませんけれども、現時点ではそういうことです。
【フリーランス 小山氏】米側は、徳之島でもいいと言っている訳ですか。
【大臣】中身については、私(大臣)は申し上げません。
【フリーランス 小山氏】米側は徳之島は困ると私は聞いています。海兵隊というのは、いろいろな部門があって、艦船部隊、航空部隊、歩兵部隊、砲兵部隊、兵站部隊、これが一緒に動かないと機能しないということです。そのうちの1つの部門を徳之島に持っていってしまったら、海兵隊は機能できなくなるということなのですが、この点はいかがでしょうか。
【大臣】いろいろなことを報じられておりますけれども、日米間で行っている具体的な内容を申し上げることは控えたいと思います。
【NHK 別府記者】クリントン国務長官の訪日は、今、政府が行っている5月決着に向けた努力の中で、どのように位置づけられるのか。つまり、5月決着という努力の中でいいタイミングの訪日だと見ているのか。また、その決着ということを米国との間で、どういう形でもって決着をイメージしていったらいいのか教えてください。
【大臣】普天間のために来るのではありません。それははっきり申し上げておきたいと思います。もちろん、来られる以上、普天間の話にもなると思いますが、より重要な案件があるから、日本に寄るということであります。より重要な案件とは何かというのは、先ほど申し上げたところであります。
【NHK 別府記者】日米間の決着のイメージについて、理解を全くできていないので、どういうものをイメージしたらいいのかお願いできますか。
【大臣】それは、5月末も間もなくですので、今、具体的中身を私(大臣)が申し上げることはございません。各閣僚がそれぞれ一生懸命に努力をしているところでありますので、中身はずっと私(大臣)は申し上げてきておりませんので。
【テレビ朝日 吉野記者】今までの質問と重複するかもしれないのですけれども、5月末の決着が見えている中で、日本の外務大臣と米国の国務長官が会われるという位置づけで、何らかの5月末に向けた結論を政府がする中で、現時点において両外相が会って、特にトップ同士で決めることがないという状況がよくわからないのですが、どう捉えたらいいですか。5月末決着に向けて、両大臣が合意する必要がないような合意が出てくるということなのでしょうか。
【大臣】そういうことは全く申し上げておりません。特に何か交渉をするという局面には、現時点ではないということです。それは各レベルにおいて交渉といいますか、議論してもらえればいいということであります。最終的に何か論点が残って、これはどうしてもハイレベルで決着をつけなければいけないということであれば、それは必要になりますが、まだ来られるタイミングでは、そういうことにはなっていないだろうということであります。
【NHK 禰津記者】今週、東京では日米の実務者の課長級の協議をやっているかと思いまして、この後、審議官級の協議もやるかと思うのですけれども、今回、審議官級の協議で、話をしていることをクリントン国務長官との間で、例えばいくつか合意をするとか、そういったことではないということでよろしいのでしょうか。
【大臣】まだそういうタイミングではないということです。それに合わせて来る訳ではありませんので、そこは頭の構造を変えてもらった方がいいと思います。
【マガジンX 島田記者】クリントン国務長官の訪日に関して、イランの問題もと仰っていましたけれども、先日のイランのウラン燃料の交換に関して、トルコと確かもう一国が合意して行うという報道を拝見したのですが、こういうことに関しては、何かコメントが出るということはあるのでしょうか。
【大臣】トルコとブラジルですね。まず、今回合意したとされる案は、私(大臣)が確認している限り、日本がかねて類似の提案をしたこともありますので、私(大臣)はブラジルと、そしてトルコの努力をまず多としたいと思います。ただ、この間も20%濃縮に向けて、イランが着々と濃縮活動を続けてまいりましたし、今回、このことで海外に一部出したとしても、20%に向けての濃縮活動は止めないという前提で言われているようであります。もしそうだとすると、これは制裁に関して、今、議論が国際的な場で行われておりますけれども、そのことに何か影響を及ぼすものではないということであります。20%濃縮というのは、IAEAの提言に対して違反行為でありますから、そういう意味で、イランの濃縮活動を止めるということのために、将来は核を持つということがないために、今、制裁の議論をしている訳で、そのことに直接影響を及ぼすものではないと考えております。
【NHK 梶原記者】これまでの普天間問題なのですけれども、大臣は、5月末までに、米国との間で米国の理解を得るという言い方をされていたと思うのですが、理解を得たかどうかというのは、我々はどのように確認すればいいのか、どういう形をイメージされているのでしょうか。
【大臣】それは、何らかの成果物が日米間で共有できたときには、理解を得たということになるのでしょうね。
【NHK 梶原記者】今回のクリントン国務長官の来日で、そこを確認するということにはならないのでしょうか。
【大臣】まだ、なりません。
【フリーランス 岩上氏】クリントン国務長官との話し合いですけれども、イランなどの主要な議題というものが日米同盟の深化、これは関連してお話し合いをされるのでしょうか。また、日米同盟の深化の問題は、今回の会談でお話し合いされることはあり得るのでしょうか。
【大臣】日米同盟の深化ということは、日米安保50周年ということで、さまざまな議論を事務レベルで行っておりますが、そのこと自身が話し合われるかというと、話し合われないと断定する必要もないとは思いますが、主要なテーマではございません。しかし、イランの問題にしても、韓国の艦船の沈没事案に関しても、これをやはり日米で、或いは艦船の沈没の事件は、日米韓でどのようにしてお互い協力をしながら、この問題に対処していくかということでありますから、まさしく日米同盟そのものが問われているという事案だと思っております。イランも同じであります。やはり同盟国として、イランが核を持つのではないかという疑惑に対して、国際社会が協力をして対応していくということです。その中にあって日米が同一歩調を取るということであります。
【共同通信 西野記者】日米外相会談について戻らせていただきます。頭の構造を切り替えたつもりで質問いたします。韓国の沈没船問題、それからイランの核問題というのが、おそらく米国が非常に今関心を持っているということで、そのような話をするということはわかりました。一方で5月末ということで、普天間問題の何らかの決着というものを閣内で一生懸命追求するということになっている訳ですので、普天間問題を取り扱うとすれば、どういったようなことをクリントン国務長官とやっていきたいのかという、あまり話すことがないというのではなくて、何か合意することがないのではなくて、今回の会談でどのようなことを大臣として目指されるのかということをお話し下さい。
【大臣】それはですから、現状についての説明といいますか、お互い理解しているはずですから、確認といいますか、それから方向性について、見通しを述べるということになるだろうと思います。
中国人観光客に対するビザの緩和
【香港フェニックステレビ リー記者】先ほどの中国人観光ビザの緩和に関してですが、大臣が「具体的な基準に関しては言及できません」とお話があったのですけれども、中国では日本への観光に関心を持つ人は非常に多いと思うのですけれども、以前の25万元から具体的にどのように範囲が拡大したのか、或いはその具体的な条件を、もしお話しできれば、お願いいたします。
【大臣】人数というのは結果論ですので、何人とまず決めた上で査証を発行する訳ではありませんので、そういう意味ではなかなか申し上げにくい訳でありますが、個人観光の対象者という意味では、従来と比べて10倍くらい、1600万世帯くらいが対象になると考えております。そういう意味では、そのまま皆さんが来ていただければ10倍ということになる訳ですけれども、我々はそのくらいのことを期待しているところでございます。
【香港フェニックステレビ リー記者】中国には、日本に行きたい人はたくさんいると思いますけれども、この機会に大臣から何かメッセージがあれば、お願いいたします。
【大臣】「どんどん来てください。お待ちしております」と伝えていただきたいと思います。香港の方は日本に今まで随分来ていただいているはずですが、是非、中国の皆さんに同じくらい来ていただくと大変ありがたいと思います。
【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者からの質問を代読いたします。先ほどの中国人向け観光ビザに関してですが、先ほど10倍というお話が大臣から出ましたが、外務省として中国にあるすべての在外公館で対応するとしましても、緩和となりますと手続事務に携わる職員の増員は不可欠のような気がするのですけれども、どのくらいの増員、或いは増員の見通しはございますでしょうか。
【大臣】それは外務省の中の話ですので、そのことを申し上げることはないのですけれども、いろいろな工夫をいたしまして、増員もいたします。それから、手続の中で必ずしも権限を持った外務省職員でなければできないことと、機械的なことがありますので、一部そういったものを外部に出すということで、より効率化して対応したいと思います。ただ、一遍に10倍になると果たして対応できるかというと、そこは疑問がない訳ではありませんが、必要があればしっかりと人員を強化して、どんどん日本に来ていただきたいと思います。もちろん、受け入れ側の体制も重要なことで、ある程度の人数の方が来られ、しかも個人客という形で来られる訳ですから、いろいろな案内とか、そういったことも含めて、気持ちよく日本で観光していただけるような、そういう体制作り、これは観光庁の方でしっかりと対応していると思いますが、そういったことも同時に必要なことだと思います。
【共同通信 西野記者】大臣はこの関連の報道に対してご不満があったみたいですけれども。
【大臣】報道というより、それは情報提供した方が悪いので、別に報道した方に文句を言っている訳ではありません。
【共同通信 西野記者】それはどうもありがとうございます。その上で、いろいろとあったとは思いますけれども、在外公館の関係とかビザの発給というのは外務省の権限ですが、このように中国の旅行者の方々に門戸を開いていくというのは、政府全体の方針として、そのような意思が観光立国本部で決まって、それを受けて外務省が外務省の仕事として、こうするということを発表されたという理解でよろしいですか。
【大臣】基本方針は、政府全体として確認されております。それに基づいて、具体的に何がネックになっているかという中で、ビザの問題が多少ありましたので、ここは外務省としてしっかり対応しようということです。
【共同通信 西野記者】その数字も出たのですけれども、いつごろからどうなるということになるのでしょうか。例えば、中で規則を変えたりするようなことがあると思うのですけれども、大臣が言及されたことはいつから実施されるという見通しなのでしょうか。
【大臣】人の問題は多少時間を要しますが、そんなに1年も2年も先と考えている訳ではありません。
【読売新聞 川崎記者】このビザの緩和策の論点の一つとしまして、国土交通省の外客誘致ワーキングチームでは、この世帯主本人だけでなくて、世帯主が要件を満たす方であれば、ご家族が単独で日本に来ることについても緩和しようということが大きな論点であったようですが、そのことについてはどうなりましたでしょうか。
【大臣】具体的なことは担当のところに聞いていただければと思いますが、本人の家族については、本人に同行する場合でなくても、個人観光のためのビザを発給することとしております。
【読売新聞 川崎記者】そういたしますと、先ほど対象が1600万世帯と大臣はご説明されたのですが、実際の人数としては、当然その各家族の人数をかけるとなると、対象人数としてはもっと多いという理解でよろしいでしょうか。
【大臣】もちろん、そうです。常に家族全員が来られる訳ではありませんけれども、対象としては一世帯3人だとすれば、その3倍ということになる訳です。
【香港フェニックステレビ リー記者】一部の省庁では今回のビザ緩和に関して、反対や慎重のご意見もあったようですけれども、昨年から対応していますが、なぜ1年の間、すぐにこういった大幅の緩和策を取ったのでしょうか。その理由をお聞かせください。
【大臣】いろいろな心配はない訳ではありませんでした。日本に入国された方が途中で行方不明になるとか、過去にはそういう事案もありましたので。しかし、実績を見ると、そういうことは、ほとんど心配するに当たらないということで、1年間の実績を見た上で判断をしたということであります。
【日本経済新聞 山本記者】このビザの緩和が、日中関係に与える影響というのを、どのように考えていらっしゃるかというのと、中国では中間層が猛烈に拡大しておりますけれども、将来的な広がりというのをどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
【大臣】現実に日本に来ていただいて日本を見ていただければ、私(大臣)はそのうちのかなりの方が日本に対してファンになっていただける、理解が進むのではないかと期待をしております。今後のことは、今回、かなり思い切った措置を取りましたが、それで効果があれば、更に一歩進めるということも当然考えられると思います。一挙にやり過ぎると弊害が出る可能性もありますので、一歩一歩ですけれども、そのスピード感はかなり早く、今回も1年で大幅に拡大した訳ですが、状況が許せば、そういったことも考えていきたいと思っております。
北方四島ビザなし交流
【北海道新聞 島田記者】ビザなし渡航についてお願いします。先日、第一陣が戻ってきましたけれども、ロシア入国の際にロシア側が主張している入港申請書を求められましたが、外務省としては、それはそういう証明書は認めておりませんが、ロシア側が求めた紙に対して船長が署名記入したことについては、やはり不適切だという見解を出したと思います。それに関連して第二陣以降、そういう形で船長にその場で署名記入の判断を求めるのは酷ではないかと思いますけれども、その点についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
【大臣】いわゆる入港申請書という形では、ロシアから求められておりませんし、提出もしていないというのが外務省の理解であります。ただ、今回、ロシア側の文書に記載する形で一定の船舶に関する技術的な情報を提出したことは、無用な誤解を与えかねないということで、今後は我が方作成の文書によって情報提供をするよう指示したところであります。
【北海道新聞 島田記者】先ほど大臣は、日本側が書いた紙をこれから提出することにするというお話がありましたけれども、それはロシア側とは合意済みというか、あちら側の了解というか、そのくらいの話し合いは付いているのでしょうか。
【大臣】今回、何か具体的にこれを出してくれということではなかったと、何か一定のフォームがあってということではなかったと理解していますので、何かそれでトラブルになるというようには考えていないのですが。
【北海道新聞 島田記者】船会社とか実施団体側から話を聞いたのですけれども、今までも入管とか検疫とか税関等では船長が署名を書いたり、必要書類を出しているということですけれども、そこら辺で実施団体の方から見ると、少しグレーゾーンが多くて、少し分かりにくいというところがあるみたいなのですけれども、そこら辺を明確に線引きしたりとか、そういうお考えなどはありますでしょうか。
【大臣】ですから、相手方のフォームに書き込むようなことはしないということですから、私(大臣)はかなり明確な基準になっていると思いますが。
米軍再編問題
【フリーランス 小山氏】先ほど中国の船の危険行為について言及されましたけれども、これが最近かなり起きているということですが、これと日米間の普天間の交渉が上手くいっていないという両者の間には関係はないというようにご覧になっているのでしょうか。
【大臣】基本的にそれが関係があるという具体的な証拠は何もありません。ですから、私(大臣)は国会でも申し上げたのですが、最近、何かあると「中国が」という中国原因説みたいなことが少し過ぎるのではないかと思っております。もちろん、いろいろな議論はあっていいと思いますが、先般、非常にその典型的なのは、上海万博に日本の国旗を掲揚していないということに対して、野党議員から「そんなことは初めてだ」と、「日本だけだ」と、それはいくつかの新聞が報じた訳ですけれども、「中国にやはり遠慮しているのだろう」と報じた新聞もありました。私(大臣)は、一つ一つ申し上げたのですけれども、今までの自民党政権時代の万博においても、日の丸を掲揚していないと、それから日本だけではなくて米国を含めて、国旗を掲揚していない国は他にもたくさんあるということです。ですから、事実関係が全然根拠なく、質問者が質問した訳です。そのことはきちんと反論いたしました。従って、そういう事実関係が違いますから、報道も私(大臣)は根拠がないのではないかと憶測で言っているのではないかということであります。私(大臣)は、そういう話が少し多過ぎるのではないかという感じがしない訳ではありません。ただ、今の国旗の件に関して言えば、私(大臣)は日本館が日本の国旗を掲げないというのは、私(大臣)個人の意見を聞かれれば、それは掲げた方がいいと思いますし、そういうことを国会でも申し上げて、政府としても検討を行って、これは政府が決める話ではないのですけれども、政府としては掲げた方が妥当であると申し上げて、日本館として判断して、掲げることになったということであります。
【琉球新報 滝本記者】今の質問と少し関連しているかもしれませんが、普天間の海兵隊の存在についてですけれども、海兵隊が沖縄から引いてしまうと、よく中国が攻めてくるのではないかという議論があります。議論という程の議論でもないと思うのですが、そういう日中関係という中で、中国脅威論というように、中国が脅威なのかどうかということの議論がまた別にあると思うのですが、中国の最近の軍事力の増強という問題点が、そこの透明性がないということが指摘されることは、日本も米国もそうであると思うのですけれども、ただ、中国が攻めてくるのだという場合にどうするのか、中国が攻めてくるかもしれないから海兵隊を引くことはできないという論があることについて、その中身については、大臣はどのようにお考えでしょうか。
【大臣】攻めてくるということの意味がよくわかりませんし、特定国を名指しすることは、なるべく避けた方がいいと思います。ただ、中国の海軍力の増強というのは、これは明らかにある訳で、そういう中で最近のいろいろ指摘されたようなことも起きてきている訳ですから、日本を取り巻く安全保障環境というものは決して甘くはないということは、私(大臣)は国民の皆さんにしっかり理解していただきたいと思います。或いは、どこが行ったかということはわかりませんけれども、韓国で軍艦が、これも事故の究明や調査の結
果を待たなければいけませんが、場合によっては攻撃を受け、そして46名の人命が失われている訳であります。そういったことが日本周辺で起きているということをきちんと踏まえて、やはり日本の自衛隊というのは、攻撃能力は持ちませんから、自衛隊の今の力だけで日本の平和が、或いは安全が維持できるのか、守られ得るのかというと、それはそうではないと、私(大臣)はそのように言うべきだと思います。従って、米軍の存在というものは日本の安全のために非常に重要であると考えております。
【琉球新報 滝本記者】前回もお伺いしましたが、沖縄の嘉手納基地の方で、岩国基地から飛来しているホーネットがクラスター爆弾と思われる武器を搭載して離陸し、カラで帰還ということがあります。昨日も本日も同じ形式の爆弾を搭載して、帰還時にはその爆弾はなかったということですが、米側からは、運用上の理由で詳細については回答がこなかったということですが、日本としてはクラスター爆弾の使用禁止という条約を批准しているという中で、米国は(条約を)批准していないから使用しないという義務はない証ですが、日本国内、日本の領土で使用しているという疑いがある中で、これに対して外務省としては、「運用だから答えられない」という米側に、「はい、そうですか」だけで終わることでいいのかどうかということが、地元としても抗議決議も嘉手納町議会の方で出ております。その部分で一歩更に踏み込んだ対応が外務省に求められるのではないかと思いますが、その点についてお伺いします。
【大臣】仰るように条約上、米国は加盟しておりませんので、米国自身が使用することについては可能ではあります。しかし、今回は使用した訳ではなく、訓練ですので、実際にそれを戦場で使用したということではありませんので、物事を分けて考えるべきだと思います。ただ、訓練とはいえ、我が国はクラスター爆弾については使用しないことを決めておりますし、これだけ沖縄の負担軽減ということが議論になっている最中に、仮にクラスターの訓練を行ったとすれば、私(大臣)は今の沖縄の人々の気持ちというものを十分理解していないのではないかと思います。事実関係をはっきり確認できませんので、断定的なことは申し上げられませんが、もう少しセンシティブティというか、そういうものを持ってやってもらいたいという気持ちはあります。
日中外相会談(中国に対する核兵器削減の要請)
【共同通信 斎藤記者】中国の軍事力というくくりでお伺いします。大臣は15日に韓国の慶州で行われた日中外相会談の後のホテルの中でのぶら下がりで、このように述べられています。「胡錦濤国家主席の核セキュリティ・サミットのスピーチは良かったです。しかし、5つの核保有国の中で、中国だけが、ただ唯一増やしている。核兵器の削減、またはこれ以上増やさないことを約束してほしいという趣旨のことを申し上げた」とこのように私たち記者団に仰られました。ここでお伺いします。中国だけが唯一核兵器を増やしていると断定できるだけの客観的事実を確認されているのかどうかという点です。いろいろとインテリジェンスやシンクタンクの分析などに、そういう話があることを私も存じ上げておりますが、中国政府が公式にそれを認めたことがあるのかどうかという点については、私も若干はっきりしません。国際社会は中国の核政策について不透明だと指摘はしていますが、「増やしている」という客観的な事実関係を、もしお持ちであれば、ご指摘願いたいと思います。
【大臣】中身といいますか、そういうことを申し上げるべきではないと思います。ただ、中国が「増やしていない」という声を、私(大臣)は聞いたことがありませんし、中国側も私(大臣)とのやりとりの中で、いろいろなことを述べられた訳ですが、中国が増やしてないという発言はありません。
【共同通信 斎藤記者】今、「個別具体的なケースについては申し上げない」というように私は受け取りました。それがインテリジェンス関係であれば、それは当然のことだと私も理解します。そこで確認したいのは、公にはできないけれども、岡田大臣なりに間違いなく増やしているというようなデータなり情報分析というのはあると理解してよろしいでしょうか。つまり、確信していると理解してよろしいでしょうか。
【大臣】そのことも含めて、私(大臣)は申し上げるべきではないと思います。ただ、私(大臣)が指摘したことに対して、それが「間違っている」と、「増やしている事実はない」といった指摘は中国側からはありません。
【大臣】それから、先ほどの(共同通信社の)斎藤さんの話に関して、中国外交部のスポークスマンがいろいろ述べられた訳でありますが、無責任な発言であるとか、事実を尊重してないとかそういったことについては、これは根拠のないものであると申し上げておきたいと思います。本来このような核軍縮の問題については、冷静かつ真摯な議論が必要であり、これからもそういったことをしっかり行っていきたいと考えております。
口蹄疫の発生
【マガジンX 島田記者】口蹄疫に関してなのですけれども、今月7日に口蹄疫のウィルスが韓国香港系ではないかという報道があったのですけれども、その昨年9月に韓国の輸入を再開して今年の1月にまた禁止しましたけれども、外務省として海外の伝染病等に対して、貿易の観点から役割というものがあるのでしょうか。
【大臣】それはどこから来たかということはわかりませんが、重要なことは、発見されたときに、今まさしく政府と宮崎県が行っていることですが、それが広がらないように最善の努力をするということだと思います。
韓国哨戒艦の沈没事案
【NHK 禰津記者】日米外相会談で主要テーマになるのが韓国の哨戒艦沈没ということですが、20日にも韓国の方で調査結果が発表される見通しになっていますけれども、調査結果を受けて政府として、または外務省としてどのような対応を考えていらっしゃるのかということと、クリントン米国務長官との間で「日米韓の連携」というものを今後どのように話し合っていくのかと、例えば国連安保理の話なども、韓国政府内で検討中であるようなのですが、その辺りについて見通しをお伺いできますでしょうか。
【大臣】まだ、調査結果がでておりませんので、あまり仮定に基づいて議論をしない方がいいと思います。ただ、当事者同士では日韓、日米、或いは米韓、「こういう場合にはこうだ」ということはお互い意志疎通をしっかりしておかなければいけないと思います。いずれにしても、46人の人命が失われていると、それがもし事故ではないということになれば非常に深刻な事態だと思っております。我が国としても、国民の生命と財産を守るという観点から最善の対応を図っていかなければいけないと思います。
【共同通信 斎藤記者】韓国の哨戒艦沈没の関連です。私たち記者はある程度いろいろ取材をしていますで、この沈没の持っている意味、或いは、また今後どうなるという見通しを持って取材している訳ですが、翻って一般国民から見れば、本当の一般の人たちから見れば、確かに韓国で船が沈んで46人の方が亡くなったことについては痛ましいことだと思うと思いますが、なぜ、今、このように緊張感を持って政府が韓国や米国と協議をして、そして、場合によれば大きな判断をしなければならない局面がくるやに報道の方に伝わってくるのかどうか、その点についてはストンと落ちていない部分もあるかもしれないと、私はそのように理解をしております。改めてこの場で、なぜ韓国の哨戒艦沈没というものが重大事案であり、なぜ、我が国として全力で韓国を支援し、そして米国と連携していく必要があるのか、若干大局的といいますか、全体的な目線でご見解をお伺いできれば幸いです。
【大臣】これから発表される調査ですが、我が国自身としてもきちんと検証をして、そして納得しなければならないということを、まず前提として申し上げておきたいと思います。その上でその調査が客観的に事実というように考えていいという調査結果が出たといたしますと、その内容によっては大変なことだということです。つまり、事故とか、そういったことではなくて、人為的なものであるとなりますと、現実に韓国の軍の船が沈み、46名の方が亡くなりました。もし仮に、何者かがそれに関与しているとなると、そのことの深刻さといいますか、それは少し考えていただければ分かることだと思います。なぜ起こったかということも明確ではありませんが、しかし、同じことが繰り返される可能性はないとは言えない訳です。それが我が国ということも、絶対にないと断言できないと思います。そういう状況の中で、それはきちんとした対応が求められるということです。そういうことにならないように、しっかりとした対応が求められるということであります。
温家宝中華人民共和国国務院総理の訪日
【ブルームバーグニュース 坂巻記者】日中関係ですが、自衛隊の艦船への中国のヘリコプターの接近や核兵器の問題、いろいろ懸案がある中で今回の温家宝氏の訪日によって大臣としては、どのような成果を期待なさっていますか。
【大臣】日中関係の基本は非常に良いし、お互い日中両国の関係は深まっていると思います。今お上げになったような話を私(大臣)は外相会談でも取り上げたのですが、そういった目の前にある懸案を一つ一つきちんと解決していこうということです。そのことによって、より日中関係の深まりというものを作っていこうと、目の前のものを先送りせずに解決していこうというのが私(大臣)の基本的なスタンスです。基本的には、外相レベルでそういったことをしっかりやっていくべきです。首脳レベルは、もちろん懸案事項について議論することも大事ですが、より未来志向で、どのような協力がお互いにできるかということを中心に議論していただければいいのではないかと思っているところです。