外務大臣会見記録(平成22年6月11日)
外務大臣会見記録(平成22年6月11日(金曜日)15時30分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)外交文書の欠落問題に関する調査報告書の修正について
(2)サッカー・ワールドカップについて
○亀井金融大臣の辞任
○菅新総理の所信表明演説
○大使人事
○外交文書の欠落問題に関する調査報告書の修正
○日米合意(思いやり予算)
○BBCのインタビュー
○韓国の哨戒艦沈没事案
冒頭発言
(1)外交文書の欠落問題に関する調査報告書の修正について
【岡田大臣】一つは、外交文書の欠落問題に関する報告書を先週、バタバタと発表いたしましたが、その後、宇賀先生からのご指摘もあり、若干手直しをしたということだけご報告しておきたいと思います。
(2)サッカー・ワールドカップについて
【大臣】あとはワールドカップサッカーが始まりますから、私(大臣)も、なるべく観戦をしたいと思います。スタートは南アフリカとメキシコということで、マシャバネ外務大臣対エスピノザ外務大臣という両女性外務大臣の顔が思い浮かんで、一体どちらを応援しようかなと、なかなか難しいところですので、答えは保留したいと思います。いずれにしても日本が頑張って、しっかりといい成績を残すことを期待したいと思います。
亀井金融大臣の辞任
【フリーランス 岩上氏】政務とは関係ない質問になりますが、昨日深夜、亀井金融大臣が辞任されました。連立は国民新党は離脱せずと、しかし、閣外協力にとどめながらも辞任ということで、菅新政権の連立の枠組み、その体制が非常に揺らいだものになっているのではないかという不安を感じますが、大臣として、この辞任劇を受け止めていただいて、どういうことになりそうなのか、菅新政権は磐石の体制でいけるかどうか、お聞かせ下さい。
【大臣】亀井大臣が辞任されたことは非常に残念なことであります。ただ、政権離脱をするということではありませんので、その影響が深刻なものがあるというようには受け止めておりません。
菅新総理の所信表明演説
【朝日新聞 鵜飼記者】菅新首相の所信表明演説についてお伺いしたいと思います。外交に関する部分ですが、あまり目新しいところがないといいますか、特徴のない内容だったように思うのですけれども、大臣としてはどのようにお聞きになられましたでしょうか。
【大臣】ポイントになるところについては、きちんと押さえられた非常にいい演説であったと思います。その中で普天間についてはかなり言及されました。やはり非常に重要な課題であるということを総理ご自身がはっきりとご認識になっているということの表れだと思います。
【朝日新聞 鵜飼記者】補足でお伺いいたします。所信表明演説の中で、「時には自国のために代償を払う覚悟ができるか」というようなことを菅新首相が問いかけているのですけれども、これはもう少しかみ砕いてみると、どういう意味を持つ言葉なのでしょうか。
【大臣】それは菅総理にお聞きいただきたいところではありますけれども、やはり公の概念というか、場合によっては、それは自らもこの国を担うものとして、そういった公のために、犠牲を払うというと非常に言葉が曲解される可能性がありますが、個人の利益よりは、そういった公ということに、より踏み出してもらいたいと、そういう場合がありますよということを言われたのだと思っております。
【北海道新聞 島田記者】所信表明演説も絡むのですけれども、北方領土の関係ですが、菅新総理が前政権と同じような形の内容を述べられていたと思います。それで鳩山前首相はかなり就任時から北方領土に関して解決意欲を示されていて、「就任1年くらいに方向性を見出したい」という形のことを仰っていたと思いますけれども、今後の対露政策、北方領土問題に際しては、菅新総理もその考えを踏襲するという考え方でよろしいのでしょうか。
【大臣】1年以内にというのは、鳩山前総理の非常に個人的な思いが入った言葉だったと思います。私(大臣)はあのとき驚きました。この問題はそう簡単ではないので、方向性を見出すということであれば、それは可能かもしれませんが、解決に至るには幾つかの山を越えていかなくてはいけない問題であると、そういうように私(大臣)自身は認識をしております。
いずれにしろ、新総理になって、外交案件について、何に対してどのように優先順位をつけてやっていくのかということは、これからよく総理と話をしてみないといけないと思っております。そこまでの詰めた話はできておりません。
ただ、一般論として言えば、北方領土に対して、これは菅総理も仰いましたが、経済と政治を車の両輪として前に動かしていくと、そして、その解決に向けて前進していくという思いは前総理と変わらないと考えています。最近、「思い」という言葉を私(大臣)もついつい使ってしまいます。
大使人事
【共同通信 斎藤記者】報道で一部の国の、あえて国名は申し上げないことにしますが、国の大使人事について取り沙汰されていますが、そのことの確認を求める質問ではなくて、むしろ一般的な意味で、いわゆる「ポリティカル・アポインティー」というものの意義がどこにあるかという点からお伺いしたいのですが、今、民主党政権、今度は菅内閣になる訳ですけれども、大使人事でポリティカル・アポインティーというものを存分に活用していこうという政権として、或いは大臣としてご意思があるかということと、それから、今、申し上げたように、ポリティカル・アポインティーが職業外交官と違って、何かプラスの面があるとすれば、それはどういった点なのか、もし、一般論でお伺いできれば、お伺いしたいと思います。
【大臣】まず、ご質問の趣旨、つまり「ポリティカル・アポインティー」ということの定義がはっきりしないのですけれども、基本的に大使というのは指定職でありますので、それぞれについて、そういう意味では、全部が「ポリティカル・アポインティー」と、定義によりますけれども、言ってもおかしくない存在であります。
職業外交官を大使に任命するべきかどうかということで申し上げれば、それは人とポストによるということです。職業外交官でなければならない理由はないし、今までも外務省でも、例えば三井物産出身の大使とか、ほかにも民間出身の方はいらっしゃった訳であります。ですから、まさしく、それは適材適所で考えていく。しかし、職業外交官という範囲にとらわれる必要はなく、よりいい人材が外にいれば、それも重視をするということで、こうでなければならないというのは、私(大臣)は全くないと思います。柔軟に考えていけばいいと思っております。
【共同通信 斎藤記者】「ポリティカル・アポインティー」の件ですが、専門家とか、或いは外交に詳しい方がよく言われることとしては、例えば米国の大使、例えばシーファーさんなんかいい例だと思いますし、それから、特に米国の場合には大統領制ですから、たしか、中国にこれまでいらっしゃった大使も長い間いらっしゃったと思うのですが、ブッシュ政権のときに、それぞれ大統領と非常に近しい関係にあると、何かあったときには、すぐに大統領とホットライン、すぐ連絡がつくというところが持ち味だというような指摘もあります。そこが、職業外交官と違って、実務には明るくないけれども、そういう切り札といいますか、決め手を持っていると、そういう意味で非常に有用性があるという指摘もありますが、そうしたような考え方も大臣はお持ちでしょうか。
【大臣】それは1つだと思います。しかし、米国の場合、大統領と近い人だけが大使になっているわけではないわけで、米国はほとんどポリティカル・アポインティーですから、そのうちの一部は確かにシーファー大使のように大統領と直接話ができるという方もいらっしゃいますが、そうではない方もたくさんいらっしゃるとは思います。ですから、総理なり外務大臣と直接話せるというのは、それは1つの要素ではありますが、私(大臣)はそれが大きな要素であるとは思いません。やはり人物、能力、そういったところが非常に重要だと思っております。
私(大臣)は、ルース大使とお付き合いをかなり濃密にさせていただく中で、彼は全く外交とは無縁の世界にいた訳ですけれども、弁護士という全く違う世界で非常に実績を挙げられた方ですから、そういう能力、或いは実績というものは職業を変えてもやはり生きてきていると思います。
したがって、別にシーファー大使を見ていたから思う訳ではありませんけれども、私(大臣)は人物、能力、そういったものに優れた方がいらっしゃれば、幅広く大使の人材というのは求めていいと思います。もちろん、外交官出身の大使というのは、経験もありますし、いろいとなことがよく分かっておられるわ訳ですから、そういった外交官出身の大使について、私(大臣)は決して悪いとは思いませんけれども、まさしく最初に申し上げた、それは適材適所で判断していけばいいと思っています。
外交文書の欠落問題に関する調査報告書の修正
【時事通信 高橋記者】欠落文書の報告書の修正について一点お伺いします。沖縄の原状回復のところで、11ページですけれども「仮にそれが写しであったとすれば、必ずしも違法とは言えない」というところを削除するという直しをしているのですけれども、これは認識が非常に180度変わっている直しだと思うのですが、なぜこういう削除をしたのかというのをご説明いただけますでしょうか。
【大臣】ここは宇賀先生のアドバイスに従った訳ですけれども、基本的には、それはコピーであれば違法とは言えないとの認識は変わっていないのですけれども、ただ、原義がない場合、そして、これは唯一のコピーであるというときに、それを廃棄するということは、それは違法と言えるかどうかは別にして、やはり外務省なら外務省として持っているただ1つの文書ですから、それを廃棄するということは、非常に問題があると思います。
そういう意味で、若干誤解が生じ、写しだったら常に廃棄できるのかというように読まれかねませんので、削除をさせていただいたということです。同じようなところがもう一か所出てきたと思うのですが、5ページの下から7行目、「原義が存在する場合には、写しを廃棄すること自体が直ちに違法とまでは言えない」と「原義が存在する場合には」というのをあえて入れたのも同じ趣旨であります。
日米合意(思いやり予算)
【フリーランス 上出氏】普天間問題の日米合意についてお聞きします。防衛省に関する問題ですが、8月までのいろいろな環境作り等に、在日米軍駐留経費、いわゆる、思いやり予算を適用して、という条項があります。沖縄の人たちの思いを見たら、殆ど米国は何も譲ってくれなかった中で、更に思いやり予算を、こういう中で使っていくことについて、どのようなご説明があるのか。或いは、もう既に予算化されたもので、実際に米国の予算は、今回、三分の一くらいに相当削られており、その辺との関係で、どのようになっていくのかということを具体的に説明して頂ければと思います。
【大臣】ホストネーション・サポートについて、それを活用する可能性には言及していますが、具体的なことはこれからであります。そのことを決めた訳ではありません。しかし、ホストネーション・サポート全体をこれから議論していかなければいけないのですが、やはり納税者から見てより納得し得る使い方が必要で、私(大臣)は現在のホストネーション・サポートの中で整理が必要なものも出てくるだろうと思います。同時に、新しい分野で、それが納税者から見て容易に納得し得るものであれば、新しい分野に出していくということもあっていいと思っています。光熱水費等については、もちろん一定の限度額が導入されるにしても、そういうものに自然エネルギーを導入すれば、全体としてのコストがランニングベースでは下がる訳ですから、そういうことは一つ考えられるのではないかと思っているところであります。しかし、決めた訳ではありません。
先ほど仰った、沖縄から見て取られっぱなしではないかというのは、私(大臣)はやはり違うと申し上げておきたいと思います。共同訓練を県外に出すとか、ホテル・ホテル地域の見直しでありますとか、その他、今まで環境の問題について合意ということを、認めたこととか、今までなかったところがかなり入っていると正確に認識していただければと思います。
【琉球新報 滝本記者】昨日開かれました「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」という与党の超党派の議員の皆さんの勉強会がありましたが、そちらの方で外務省、防衛相の方に共同声明についての説明を受けたいということで、議員懇の方から両省の方にオファーがあったのですが、当日の昼過ぎになって、「菅内閣が発足直後であるという状況の中で官邸の指示に基づき自粛させて頂きたい」という文章での回答があって、事務員の説明が受けられなかったという状況ですが、これは、今までも事務方の説明があったと思うのですが、何故、この状況、この時期に、こういう形になって出来なかったのかということについて、お伺いできますか。
【大臣】それは外務省で判断した訳ではありませんので、私(大臣)からはお答えできません。一般論として言えば、政策会議では説明をしている訳ですから、議員の集まりに、どこまできめ細かく対応するかと、無限にはできませんので、一つの判断はあるかと思いますが、今回は外務省の判断ではありません。したがって、今回のことについてはお答えし難いということであります。いずれにせよ、これから部会的なものもできると聞いておりますので、そういう場で集約して役所として対応していくということが通常になると思います。与党に出れば、野党のそういった議員の集まりにも出るとか、当然そのようになる訳でありますので。
BBCのインタビュー
【日本インターネット新聞社 田中記者】今日昼前、BBCを見ていたら、大臣がBBCの記者のインタビューを受けておられまして、政権交代前の対中国外交と照らし合わせると、岡田大臣は毅然としたことを仰っておられました。それで、向こうの記者は、納得したようでしたか。それとまずインタビューを受けたのはいつでしたか。
【大臣】インタビューは昨日です。30分ぐらいやっていますので、そのうちの一部です。ですから、相手の記者、東京支局長が納得したかどうかというのは、私(大臣)はよく分かりません。どういう考えをそもそもお持ちかということも分かっておりませんので。どこが引用されたか、放映されたか私(大臣)も非常に気になってはいるのですけれども。
【日本インターネット新聞社 田中記者】領土問題のことです。
【大臣】30分の中の数分というか、数秒でしょうから。顔色は良かったですか。
【日本インターネット新聞社 田中記者】かっこよかったですよ。
韓国の哨戒艦沈没事案
【共同通信 西野記者】韓国の哨戒艇の沈没案件とロシアについてお伺いしたいと思います。「哨戒艇関係で韓国に入った調査団は、『必ずしも北朝鮮による犯行だとは断定できない』」という報道がロシア発の報道として、弊社も含めて複数の国際通信社が流しているのですが、一方、ラブロフ外相との電話会談の中でやりとりがあって、それが貼り出しで紹介されています。その中では、「まだ正式な発表ではない」と言われているというような表現でしたが、先ず一点目、このような調査、それから二点目、ロシアの調査の有りよう、それから、今後の安保理の取り扱いに向けての日本の立場というのを、改めてお伺いしたいと思います。
【大臣】ロシアの方は、調査団を派遣して、その成果を今、精査をしている状況だと思います。したがって、ラブロフ外相も結論めいたものは私(大臣)には言わずに、調査の結果を待っているという話でありました。それが真実なのだろうと思います。私(大臣)も報道など、事前のものを見ておりましたので、もう少し否定的に仰るのかなと思っておりましたが、全くニュートラルに仰いました。もちろん、これからのことは分かりません。いつ頃、どのような結果が出てくるかということは、実際出てこないと分からないということです。安保理では、いろいろな展開が予想されると思いますが、韓国側に対して日本としては、可能な限りサポートするというスタンスで、今、さまざまなアドバイスも求められれば行っているということであります。今、我々は非常任理事国でありますので、韓国側がこの問題を安保理に持ち出し、議論するために必要なアドバイスを必要に応じてやっているというところであります。それ以上のことについては、現段階では申し上げることはございません。非常に北朝鮮のミサイル発射時の日本の対応と言いますか、、それは皆さんご記憶だと思いますが、なかなか難しい部分もありました。最終的に決議というのはとれなかった訳ですが、韓国政府が基本的にどのようにお考えかということを十分に伺って、しかし、最後は答えを見い出さなければいけませんから、いろいろなアドバイスをしなければいけないと思っております。しかし、基本的には韓国の考え方が実現できるように、日本としてサポートするという考え方でしっかりやっていきたいと思います。外相も「日本に来たい」という趣旨のことを言われておりましたが、それはどうなるかは別にして、電話連絡などは頻繁に行っていきたいと思っております。
【NHK 別府記者】韓国政府がどう打ち出すかということが、日本政府の行動にとっても対応にとっても大きな基準だというのはわかるのですが、日本として譲れない線として、決議なり声明なりに北朝鮮に対する非難という部分が入らないとことには日本としては納得できないという立場はあるのでしょうか。
【大臣】調査の結果は、明確であります。そして、46人と多くの方が亡くなっているわけです。やはりそういったことに対してはきちんと非難し、そして再度そういうことが行われないようなきちんとした歯止めが求められていると思います。