外務大臣会見記録(平成22年6月29日)
外務大臣会見記録(平成22年6月29日(火曜日)15時00分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)G8、G20サミット同行について
(2)ODAのあり方に関する検討について
(3)サッカー・ワールドカップについて
○G8・G20サミット
○ODAのあり方に関する検討
○スーダンへのPKO部隊の派遣
○参議院選挙(沖縄の民意)
○G8・G20の役割と枠組み
○米韓間における戦時作戦統制権の移管延期
○米軍再編問題(外来機の飛来)
○日印原子力協定
○外交文書の公開
○日米関係(日本からの留学意欲)
○その他
冒頭発言
(1)G8、G20サミット同行について
【岡田大臣】それでは、私(大臣)から3点申し上げます。
G8・G20両会議から帰ってまいりました。出発前にもお伝えしておりましたが、私(大臣)自身は会議そのものには出ておりません。事前のレク、そして、このときを利用して行われたバイの会談、日中、日露、日韓、日米に同席をいたしました。
G8で、間接的ではありますが、北朝鮮の今回の事案に対して一致してそれを取り上げたということは、非常に意味のあることだったと思います。ロシア側がどういう対応をするかということは、直前までいろいろ議論があったわけですけれども、最終的にはまとまったということであります。
経済の問題については、菅総理が自ら財務大臣のときに練り上げてきた考え方について、「強い経済・強い財政・強い社会保障」ということについて、しっかりとご説明になったということであります。
バイの会談はそれぞれ非常にいい雰囲気の中で行われましたが、特に日米に関しては菅総理は全くノンペーパーで自らの思いをしっかりと語られたと思います。最後はカメラも入れて記者の前で両首脳がお話になったわけですけれども、あそこにいて両首脳のお話を聞かれた方は、非常にいい雰囲気で会議自身が行われたということを、実感していただいたのではないかと思います。もちろん今回はそれぞれ実質的に初めての出会いでありまして、鳩山さんのときにも2回、3回と重ねる中でより親近感が高まっていったと、特に日中とか日韓を見ているとそう思いますが、これをまた一からやらなければいけないというのは大変ではありますが、しかし、しっかりとみんなで支えていい首脳関係ができるようにしていきたいと思っております。
なお、私(大臣)はバイの会談の合間に、韓国の柳明桓外相とは北の問題を中心に30分ぐらいだと思いますが、意見交換を行いました。中国の戴秉国氏とも日中の首脳会談が終わった後に、立ち話で10分ほど北の話を中心に少しお話をしたということであります。
菅総理の外交デビューということになりますが、全体として非常にいい形で行われたと思っております。
私(大臣)は行きは民間航空機で行ったわけですけれども、乗り継ぎで行ったのですが、帰りは政府専用機でそのままトロントから帰ってまいりました。政府専用機に乗るのは初めてだったので、中の探検とかいろいろしたのですけれども、私(大臣)の部屋はベッドがある部屋で、その前に菅総理と野田財務大臣と福山官房副長官と、もちろん伸子夫人もおられたのですが、食事を菅総理の部屋で一緒にとりまして、その後、自分の部屋に戻ったのですけれども、ベッドはあるものの何となく立派なベッドで、そこで寝るのははばかられたので、イスで寝て帰ってまいりました。もちろん余り寝過ぎると夜寝られないということもあったので、2、3時間イスでまどろんだということであります。
(2)ODAのあり方に関する検討について
【大臣】ODAのあり方について、長らく議論を省内で、或いは関係者と行ってまいりましたが、それがまとまったということでありますので、その発表です。
省内の議論も随分、福山前副大臣、或いは西村政務官を中心にやっていただきました。私(大臣)もときどき参加をして、最後の部分ではかなりいろいろな意見も申し上げました。ODAが国民の共感を十分に得られていないという認識の下で、国民の理解と支持を得るために在り方を見直したものであります。そしてODAをより戦略的かつ効果的に実施していく必要があるという考え方に基づいて見直しを行いました。経済界、NGO、有識者、外部の方の意見も伺いながら、このたびまとまったものであります。中身は余り私(大臣)からご説明をいたしません。また、事務方からも改めて説明があるかと思いますが「開かれた国益の増進」ということで重点3分野、貧困の削減、この中にはもちろんMDGsが含まれます。そして平和への投資、持続的経済成長の後押しという3つを重点3分野ということにいたしまして「選択と集中」ということであります。その他に具体的な政策については、かなり技術的、或いはある意味では細かい議論になりますが、NGOの皆さんも含めてかなり現実には非常に意味のある、しかし、そう派手ではない政策が具体的に書き込まれております。私(大臣)もいろいろ意見を申し上げましたが、この具体的政策の中で特に私(大臣)がこれは是非やろうと申し上げたのは、1つは円借ではなくてドル建ての融資というものが実現できないか、為替リスクを貸付先、途上国に負わせるのではないやり方というものを是非できないかということが1つで、外貨建て借款の検討ということであります。ほかにもいろいろあるのですが、検討課題についてそれぞれ進めていかなければいけないと思います。
あとは革新的資金調達、国際開発連帯税というものについても、しっかり更に詰めていきたいと考えているところであります。
(3)サッカー・ワールドカップについて
【大臣】あともう一点は、ワールドカップです。本日は、日本時間23時試合開始ということでありますので、是非見たいと思っております。アジアの中でまだ残っている日本、この前、李明博大統領と菅総理の会見のときにも、大統領の方から、是非日本はアジアの代表として頑張ってもらいたいという話はございました。アジアの代表として、しっかりいい戦いをして、前に駒を進めていただきたいと思っているところでございます。
G8・G20サミット
【フリーランス 岩上氏】G8・G20の方に行かれたという件に関して、お話を伺いたいと思います。菅総理は「強い経済・強い財政・強い社会保障」という自らの考えをお述べになったということでした。菅総理はしばしばギリシャのことを引き合いに出して、極めて同じように日本は財政状態が悪いのだと例えて、お話をされております。しかし、ギリシャと日本との財政の基礎的な条件はかなり違います。国内で国債を消化できる日本と、海外にほとんど買ってもらわなければいけないギリシャと引き合いに出すのはいかがなものかと思うのですが、この点についての消費税の増税の問題も含めて、岡田大臣のお考えをお聞かせいただきたいのと、また、G8、或いはG20の場で菅総理が仰った経済に対する考え、財政に対する考えを他国の首脳はどのように受け止めていたのか、どんな反応を示していたのか、その点について、お伺いしたいと思います。
【大臣】まず、私(大臣)自身は同席していたわけではありませんし、他国の首脳がどういうように発言をしたかというのは、基本的に言わないことになっていますので、合意されているのは合意文書という形で出ているということであります。
ギリシャと日本は確かに違います。ギリシャほど脆弱ではないと私(大臣)も考えております。ただ、国内の貯蓄過剰というのは高齢化に従って、むしろ逆のベクトルが働いているわけで、いつまでも国債をどんどん出して、それが国内を中心に消化されるという事態ではなくなってきつつあるということは正しく認識をしておく必要があると思っております。基本的にこれだけ景気が悪くて、税収が極端に低かったということはあるにしろ、収入の大半を借金で賄うという事態は早く脱却しないと、少なくとも次の世代に対して大変申し訳ないことだし、子どもたち、若者たちが希望を持てない日本になっていると思います。
ギリシャに対しての危機感というのは、これは菅総理だけではなくて、菅総理はもちろん、財務大臣として財相会議に出て、そのことを強く認識されたというお話を聞いたことがありますが、ギリシャ問題を契機に財政赤字の問題、脆弱性というものについて、これは世界の主要国の首脳が共通して、そういう危機感を持っているということだと思います。
【共同通信 斎藤記者】G8・G20のくくりでお伺いしたいのですが、韓国の哨戒艦に関する協議ですけれども、先ほどのお話で、宣言の中は必ずしも完全とは言えないかもしれないけれども、ある程度、評価できる文言が入ったという認識だと私は理解したのですが、実際にその文言を私も見てみましたが、かなり非常に工夫された、取りようによっては事実上、北朝鮮を名指ししたと取れないこともない。しかし、また別の見方をすれば、そうとは言っていないという微妙な表現でした。
これを日本政府としては、基本的に満足の行く内容だと言えるのか。それとも、やはり今、申し上げたように、読み方によっては別の見方もできるという意味では、若干不満が残ったということが言えないでもないと思いますけれども、その点を改めて大臣のこの文言に対する見解をお伺いしたいと思います。
【大臣】こういうものは、お互い立場の違う国が集まって文言を調整するわけですので、100点満点はあり得ないわけです。そして、ロシアが強硬に反対をしていたという流れの中で、少なくとも国連安保理の場では、そういう名指し批判に対して非常に抵抗していたという中で、今回の文言で落ち着いたということは、よくロシア側も妥協してもらったなという感じだと思います。そういう意味では、よくできたと思っております。この文言をベースにして、安保理でも議論を進めていきたいと思います。ただ、中国の方は、バイの会談でも、従来からソフトランニングといいますか、余り追い詰め過ぎてもいけないという考え方を基本的に持っていますので、そう簡単ではないかもしれませんけれども。しかし、これだけのことをやって、国連安保理で批判といいますか、批判のための批判をしているのだけではなくて、再発防止のための批判ですが、そういうことすらできないということになると、これはむしろ大変なことでありますので、しっかりと努力をしていきたいと思っております。
韓国の外相にも、安保理の場で日本は随分しっかりとやってくれたし、今回のG8のときも、韓国はメンバーではありませんので、日本が頑張ってくれたということについては、評価をするという話でありました。
ODAのあり方に関する検討
【NHK 吉田記者】ODAの在り方の件でお伺いしたいのですけれども、一読しますと、NGOとか民間企業支援の辺りにかなり注力されて書いているのかなという印象を受けるのですが、特に財政が厳しい中で、民間の支援とか、或いはNGOとの連携を強めるという従来からの大臣のお考えですけれども、この点について、この在り方の中で、大臣が強調したいポイントとか、どういうお考えで書かれたのかということを改めてお伺いできますか。
【大臣】もちろん、絶対量は増やしたいというように基本的に考えておりますが、いずれにしても、財政状況が厳しい中で効率的に使っていかなければいけない。効率的に使うという中で、民間やNGOの知見を生かしてやっていくということは非常に重要なことであると思っております。
あとは、ここで書いている新しさ、例えば円借を卒業した後もそれがなお使えないかとか、いくつかのことを書いているわけですが、その辺りは私(大臣)も必要なことであると思いますが、もう少し「選択と集中」という考え方も或いは出てくるかもしれません。そういうことは、これからしっかり議論していきたいと思っております。
【共同通信 斎藤記者】今のODAの関連で、前回の記者会見のときにもパレスチナの件、UNRWAの件を挙げてお伺いしたのですが、その絡みでお伺いしたいのですけれども、その「選択と集中」といった場合にはどうしても地域的に、やはり日本の国益を考えた上で、優先的に選ぶところと、残念ながらそうではないところと、どうしてもそれは結果として出てくると思います。その点をどういうように国民にわかりやすく説明するのか。例えば具体的に言えば、パレスチナの場合には、どうしてもODA全体の減少を受けて、パレスチナ支援も棒グラフで見る限りは右肩下がりになっているところをどのように説明するのか。パレスチナということに限っても結構ですし、或いはパレスチナ以外のやはり右肩下がりになっている地域について、どういうように説明し、また、どういうような対応を取っていこうとしているのか、その点についてお伺いしたいと思います。
【大臣】まず全体のボリュームが減らないようにしなければいけないわけですが、しかし、そうはいっても非常に厳しい財政状況の中でいかに効率的に使っていくかということがひとつあると思います。これについては、是非、中をごらんいただきたいと思うのですが、途上国からプロジェクトごとに要請するというやり方からもう少し、最初から日本政府ないしJICAと途上国が協議をして、全体の方向性を決める中で具体的プロジェクトを決めていくと、まず、個々のプロジェクトありきではなくてという考え方に転換していこうということも書かれているわけであります。そういうことによって、ある意味での「選択と集中」がなされるということです。要請主義ということになりますと、我々も決裁を自分でしていてときどき思うのですけれども、なぜ、この道路が必要なのかとか、なぜ、ここにこういう、例えば水道施設が必要なのかということが全体の絵の中できちんと位置づけられていないといいますか、それは要請主義を取っているとそういう部分はどうしても出てくるのですが、それをもう少し、その国全体の、こういうところが足らないから日本としてここの部分を補うという発想に立てば、より効率的な、無駄のない援助になるということであると思っております。そういう中で、より効率的なお金の使い方ができます。従って、もちろん、アフリカとかアフガニスタンというものは、金額でもコミットしているところは確かにありますけれども、それでしわ寄せが弱いところに行かないようにしなければいけないと思います。
スーダンへのPKO部隊の派遣
【NHK 別府記者】スーダンのPKOについてお尋ねします。今、外務と防衛の間で議論中であると思いますが、改めて、このスーダン南部の住民投票にもしPKOを出すということになれば、それは日本にとってどういう意義があって、それはスーダンの人はもちろんのこと、国際社会の中でもスーダンへの関心が高い中でどういう意味を持つのかということをお尋ねしたいと思います。
【大臣】スーダンというのは大きな国でありますし、南北では長らく紛争があって、今はPKO部隊が派遣されて、平和が維持されて、そして、南部の独立の問題について住民投票が行われるということで、これが平和裏に行われれば、結果がどちらになったとしても、長年のスーダンの南北間の対立が解消されるということで、その意義は非常に大きい、しかもアフリカの中での大きな存在ですから、アフリカ全体に及ぼす影響も大きなものがあると考えております。
ただ、日本がPKO部隊を派遣するかどうか、参加するかどうかということについては、別に防衛や外務でやっているだけではなくて、現在、政府全体の中で議論しているところでありますので、それ以上のことは結果が出た上で申し上げた方がいいと思っております。
参議院選挙(沖縄の民意)
【琉球新報 滝本記者】参院選について少しお伺いしたいのですけれども、前回の質問とかぶるのですが、ちょっと違う内容の質問で、沖縄選挙区で民主党が候補を立てられていないという状況がありまして、今、出ている沖縄選挙区での候補というものは皆さん県外にということで、いわゆる政府方針と違う方針を求める形になっています。
その普天間移設についての部分で言いますと、争点化されていないといいますか、政府方針との争点になっていないということがあるのですけれども、この名護市辺野古への移設の是非を問うというような意味合いで、この参院選がどういうような形で沖縄の民意を酌み取るというように、大臣ご自身はどういうような形で民意をはかれるものであるとお考えなのでしょうか。
【大臣】それはちょっとわかりません。そして、民主党は候補者を出していないわけなので、そういう立場で何か言うべきことではないのではないかと思います。今、出ている候補者それぞれの詳しいお考えも我々は承知しておりません。それは報道で伝えられる以上のことを聞いておりませんので、余り軽々にコメントするのは控えたいと思います。
G8・G20の役割と枠組み
【共同通信 斎藤記者】G8の絡みに戻ってしまうのですが、現在、G20が動き始めてからG8の存在感、或いはあるいは役割といったものが国際的に議論されていると承知しております。菅総理もG20の席上で、中国もたまには入ったらどうかというような発言をしたやに聞いております。G20の枠組みについて、大臣、何かご自身の考えはありますでしょうか。そして、役割について、何かお考えはございますでしょうか。
【大臣】これは従来からいろいろ議論をしてきているところであります。基本的にはG8の枠組みは非常に重要であると考えております。もちろん、経済ということになるとG20、新興国も入れた形がより実効性が上がるというところはあると思いますけれども、しかし、経済以外のテーマについて、例えば開発の問題とか、あるいはより政治的な、北朝鮮の問題もそうですけれども、そういう問題になりますと、同じ価値観を共有する先進国というくくりがきちんとあるG8というのは、非常に私(大臣)は重要であると思います。G20の場で開発の問題とか、多少これはやったのですが、例えば温暖化の問題とかも、それが果たして適切かというと、そうは言えないと思いますので。総理が中国をと言われたのは、たまにはということで。それはもちろん必要に応じてアウトリーチと言いますか、いろんな国を呼んでより参加してもらうということは、アドホックにはあって当然だと思いますけれども、それがずっと恒常化するということではないと理解をしております。
米韓間における戦時作戦統制権の移管延期
【フリーランス 安積氏】このたび、米韓間で移管が延期になりました戦時作戦統制権についてお伺いします。柳明桓長官と意見交換されたということなのですけれども、この件について話題が出ましたでしょうか。また、この延期によって、日本の極東に対する安全保障政策というのが影響を受けるかどうか、お伺いいたします。
【大臣】今のお話は、私(大臣)と外相との間でも、或いは、首脳間でも議論は出ておりません。もちろん、それは米韓間で議論が行われたわけであります。
今の朝鮮半島情勢も踏まえてのことだと思いますけれども、もう少し先に延ばすというのは、当事者間の判断でありますので、日本はそれに対して、特にいいとか、悪いとか、そういうようにコメントする話ではないと思います。あくまでも当事者間で決めていただく話だと思います。ただ、その背景にあるのは、やはり朝鮮半島情勢というものが念頭にあったということは、容易に想像できるわけであります。
米軍再編問題(外来機の飛来)
【琉球新報 滝本記者】日米首脳会談の中でも、改めて沖縄の基地負担の軽減ということについて米国側も協力してくれというようなオファーというか、そういうのがあったと聞いておりますけれども、実際、今の沖縄の現状を振り返ってみるときに、嘉手納基地の方で外来機の飛来ということで、さっき25日でしたでしょうか、米国軍の方から、岩国から、また12機が8月末まで一時的に駐留するとか、あるいは現時点で、既にF22が来ているとか、5月にはまたホーネットが来ていたりとか、その外来機の飛来というのが常態化している状況であります。そういう流れの中で、県民の負担の軽減ということを、県民の理解も求める上で進めていくと言われる一方で、全然実態がなかなかそれに伴っていないということで、まず、この現状をどういうようにごらんになられるかということと、実際に、今、私が申し上げたようなホーネットが来るという通告に対して、外務省として米国側にどういうようなアクションを起こされているのかということをお伺いしたいのですが。
【大臣】まず、外来機が来ること自身が、それは米国の基本的な判断でありますので、今の全体の安全保障環境を見る中で判断している部分というのはあるだろうと思います。したがって、今、負担の軽減は非常に重要なことではありますが、それだけではなかなか決められないというところもあると思います。
しかし、訓練飛行を他に移しても、その分外来機が増えてしまうということでは、そこに相関関係があるかは別にして、外来機の飛来が非常に増えているということは事実でありますので、そういったことが、より負担が軽減される中で行われるように、しっかりと日米間で議論していかなければいけないと思います。
それは、私(大臣)が先ほど申し上げたのは一般論でありまして、今の日本を取り巻く安全保障環境ということも当然念頭に置いておかなければいけないことである思います。
【琉球新報 滝本記者】ということは、先ほどの前段のお話で北朝鮮の今の情勢というのがあると思うのですけれども、その北朝鮮の情勢も嘉手納の外来機が増えているという実情を反映した、連動したものだというように大臣はお考えなのでしょうかということと、先ほどの私の質問で、具体的に今回来ている飛来についての米国側へのリアクションは、どのようにされたのかということについてお答いただきたいと思います。
【大臣】今回といいますか、外来機が来ること自身は、協議事項ではないと私(大臣)は理解しておりますが、私(大臣)はそのことについて事前に何か通知を受けたとか、そういったことはございません。
それから、今の朝鮮半島情勢が影響しているかどうかということについては、私(大臣)の口からは申し上げられません。それは全体状況を判断していただくしかないということだと思います。
日印原子力協定
【朝日新聞 鵜飼記者】日印原子力協定についてお伺いします。先日の会見で苦しい判断だということで、一方で積極的な材料もあるということを仰っていて、産業界の要請などもその一つかと思うのですが、平成20年2月の衆議院予算委員会での大臣の当時の質問の中でこう仰っています。「原子力の平和利用についてのいろいろな売り込みとか、最近、仏サルコジ大統領などを見ていましても、そういう感じがしない訳ではないし、そういう目先の利益に各国が走って、これは日本も含めて結局核の不拡散ということが事実上ないがしろにされるということは、やはり政治の責任としては避けるべきだ」というように仰っているのですが、今回の決定というのは、それと180度転換しているように思われるのですが、いかがお考えでしょうか。
【大臣】今、ご指摘の平成20年のものは、まだNSGでの全会一致での決定というものがなされる前の話だったのではないかと思います。これは旧政権の時代ですが、日本も最終的には賛成をしてNSGにおいて決定がなされた訳です。決定がなされた後、各国がそれぞれ原子力協力を進めていくという状況の中で、どういう判断をするかということです。日本だけが頑張るのだということが、どれだけ意味があるのかということです。象徴的には非常に意味があると思います、ですから、私もいろいろなことを考え、そして今回の判断に至った訳ですが、日本の思いというのは十分世界に伝わったというようには思います。そういう中で、例えば日本が原子力協定に基づく協力はしないと言ったところで、他の国が進めてしまえば同じことになる訳でありますので、ここはやむを得ない判断だったと思います。もう少し中長期的な課題としては、インドのようなNPTに加盟していない国というのはNPT上の義務も負わない、核保有国としての義務も負わないということになっておりますので、そういった問題をどう考えていくのかということも、歯止めをかけることと並んで検討していかなければならないと思います。
外交文書の公開
【共同通信 比嘉記者】外交文書の公開についてお伺いします。先日推進委員会で決まりました38冊のファイルの公開ですが、進み具合いはいかがでしょうか。いつ頃外交史料館に移管されますでしょうか。
【大臣】そう時間をかけるつもりはありませんが、今、私(大臣)のところで決裁中であります。
日米関係(日本からの留学意欲)
【琉球新報 滝本記者】日米関係について、日本から米国に留学する学生の人数と、中国とインドからの米国への留学生の人数、私は具体的な数字は一時情報で持っていないのですが、中国から(の留学生数)は150%位増えているとか、インドから(の留学生数)は200%近く増えているという中で、逆に日本は減っている状況があるやに聞いています。日米同盟の深化の中で、軍事だけではなくて人的交流も含め、いろいろな分野の中で(の日米同盟の深化)ということであれば、将来的な部分もにらんだ上で、この状況をどのようにご覧になられていますか。
【大臣】憂慮すべき状況でしょう。ただ、これは、なかなか強制というのは難しいです。そういった留学の気持ちを持ちながら、経済的な理由とか、そういったことで果たせないでいるという若者に対してはしっかりと支援の手を差し伸べていくようなことが必要だと思います。全体の内向き志向みたいなものがあるのかなと思いますけれども、もっともっと本当は海外に出て学んでもらいたいと、別に米国だけではないのですが、中国とか、ヨーロッパも含めて、いろいろなところに、日本の若者には出て行ってもらいたいと思います。ゴルフなどを見ていると随分海外で日本の若いプレーヤーが活躍していますから、どうして大学がこれだけ減ってきているのかなとやや不思議な感じがします。あと、交流という意味では、いろいろな交流が考えられますけれども、例えば、元米兵で日本の捕虜になった方々を日本にお呼びするとか、それからJETプログラムなどありますが、やはり海外から日本に来てもらって、英語を教えるとともに、日本の文化を経験してもらうという人の中から、小説家になったりとか、何人か出てきています。それから日本の先生方も、私(大臣)は、もう少し海外で、例えば、英語の教師が海外に行って1年ぐらいネイティブな英語に触れるとか、そういうことも予算が大分かかりますので、なかなか難しいところがあるのですが、そういったことも出来ないものかと考えているところです。
その他
【フリーランス 安積氏】個人的な関心事で、ずっと大臣が大臣に就任されてから思っていたことなのですが、大臣が野党の議員時代に、例えば、アフリカなど訪問されたとき、2度以上のトランジットがあったにもかかわらず、エコノミー席をお取りになったと聞いております。その理由を聞いてみたら、大臣はエコノミー席がお好きだということだったのですが、大臣に就任されてからも、やはりエコノミー席の方がいいとか、そのようにお考えになっていることはありますでしょうか。
【大臣】まず、エコノミー席というのは、事実誤認だと思います。私(大臣)はビジネスで、自分でお金を払って、野党時代には行っておりました。中国とか近いところには、ほとんど数時間のことでありますので、エコノミーで行ったこともあります。しかし、基本的にはビジネスで行っていたということを申し上げておきたいと思います。大臣になりまして、ファーストのあるところはファーストを使っております。最近は、国際線でもアジアを中心にファーストのないところが結構増えてきましたから、そういうところはビジネスで行くということです。この前なども、国連に出て、ヨーロッパ経由で日本に帰ってきたときも、ニューヨークからパリまではエールフランスでファーストだったのですが、パリから成田まではビジネスしかない機種だったのでビジネスで帰ってまいりました。やはり、かなり無理して動いていますので、体力的にはきついです。そういう意味で、できれば少しでも体を休める時間が欲しいと思います。あとは状況の判断、あまり華美にならないようにはしたいと思います。だから、専用機のベッドを使わなかった訳ではないのですが、それは目の前にあったのですから使うことはできたのですが、ほどほどに考えていきたいと思っています。