夕刊フジコラム「ズバリ直球」10年8月26日号
民主党代表選が来月1日告示される。現時点で、現職の菅直人首相(代表)以外に、立候補者がいるか分からないが、国会議員や地方議員だけでなく、党員やサポーターも参加して行われる本格的選挙となれば、8年ぶりのことだ。「我こそは」と思う方は手を挙げて、正々堂々と戦えばいい。
私は約2カ月前、「民主党らしさを取り戻してほしい」と、菅首相を代表に推した。その気持ちは今も変わっていない。参院選の結果について、菅首相の責任を問う声もあるが、約10カ月の民主党政権全体を国民が判断した結果と考えている。就任1カ月で選挙を迎えた首相や現執行部に全責任を負わせるのは間違いだ。
加えて、日本はここ数年、首相が毎年交代しており、世界中から「一体どういう国なのか」と奇異に見られているほどだ。外交において、首脳間の信頼関係が果たす役割は大きい。首相がコロコロ変わることがどれだけ国益を損なっているかということを外相として痛感している。
急激な円高や景気の先行き不安など、喫緊の課題が山積している。菅首相にはご自身が取りまとめた「新成長戦略」などの政策をさらに力強く推進していただきたい。
さて、今月初め、私は中央アジアのカザフスタンとウズベキスタンを訪問し、「中央アジア+日本」の第3回外相会合に出席してきた。本来、2年に一度の定期協議のはずなのだが、4年前に東京で開催して以来となった。しかも、日本の外相が中央アジアを訪問したのは6年ぶりだ。
中央アジアは地政学的に極めて重要な地域だ。ユーラシアの真ん中にあり、北はロシアに接しており、東には中国がある。周辺にはイランやトルコもある。また、石油や天然ガス、ウラン、レアアース、レアメタルなどが豊富で、日本にとって貴重な資源国でもある。
日本との関係は良好で、約20年前に旧ソ連邦が崩壊して、中央アジア各国が困窮したとき、日本は条件抜きに手を差し伸べた。カザフスタンとウズベキスタンの大統領は当時のことをとても感謝していた。こうした「遺産」がある間に、しっかりとした外交関係を築き上げていかなければならないと、改めて実感した。
さて、お盆の前後、比較的ゆっくり時間が取れたので、細川護熙元首相にいただいた著書「内訟録-細川護熙総理大臣日記」( 日本経済新聞出版社)をじっくり読んだ。政権交代を成し遂げた1993年8月から、内閣総辞職する翌年4月まで、首相としての日々の苦悩と決断の背景が記されていた。
政治改革関連法案や、コメの輸入自由化を受け入れた関税貿易一般協定(GATT)ウルグアイ・ラウンド交渉などの諸課題に対し、国家のトップとしてどう取り組んだのか。非常に参考になった。忙しい首相日程の中で、細川氏がこういう日記をつけ続け、それを公表したことは、今後の日本政治にとって非常に意義のあることだと思う。
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