外務大臣会見記録(平成22年8月6日)
外務大臣会見記録(平成22年8月6日(金曜日)16時10分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)広島平和祈念式典参列について
(2)仲井眞沖縄県知事等の要請について
(3)ウズベキスタン、カザフスタン訪問について
○広島における平和祈念式典
○閣僚の靖国神社参拝
○ホルムズ海峡沖での日本の原油タンカーの損傷事案
○日韓歴史問題(首相談話)
○インドの終戦記念日の式典
○仲井眞沖縄県知事他との会談
○日韓関係(世論調査)
○米軍再編問題
○米韓合同軍事演習
○報道方法(事実の一部切り取りによる報道)
○中央アジア訪問
○資源外交
○国際コンテナ戦略港湾の選定
○核の傘
冒頭発言
(1)広島平和祈念式典参列について
【岡田大臣】私から三点申し上げます。本日、午前中の広島の平和祈念式典に参加をさせていただいた件ですが、私(大臣)も以前から何回か8月6日のこの式典に参加をさせていただきましたが、外務大臣としては初めてです。それだけに、同じ式典といっても、やはりその責任の重さとい言いますか、そういうものを改めて感じたところです。この1年間、外務大臣として核の軍縮・不拡散に向けて、どれだけの努力をしてきたのかということを改めて思い返しながら参加をさせていただきました。私(大臣)としては、いろいろなことに取り組んできたつもりですが、特に主要国の外務大臣との間の、核を持った国の外務大臣との間で軍縮の議論、G8外相会合や、あるいは日中外相会合での議論、あるいはNPRをまとめた米国との、その事前のさまざまな意見交換、そういうものもNPRの中である程度、反映されたのではないかと思っております。そして、独のヴェスターヴェレ外相と共同で日独の新聞に投稿したこととか、NPT再検討会議において、豪州のスミス外相と共同の意見表明をしたこととか、いろいろなことが思い出されるのですが、しかし、まだまだ十分ではないという思いもあります。私(大臣)自身が外務大臣になる前から非常に力を入れてきた核不拡散、そして軍縮の問題でありますので、本日、決意を新たに、これからしっかりと取り組んでいきたいと思ったところです。
式典そのものは、潘基文国連事務総長、そして、ルース駐日米大使はじめ各国の代表者の皆さんにもご出席をいただき、今まで以上に充実した、そして世界にアピールするものになったと考えております。いずれにしろ、今後とも更に努力をして参りたいと思います。
(2)仲井眞沖縄県知事等の要請について
【大臣】二番目は、先程、仲井眞沖縄県知事、あるいは儀武金武町長はじめ、関係者のみなさんから、沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会として要請をいただきました。そこに書かれたそれぞれの項目について、お話をお伺いしたわけですが、一つはご要請いただいたことについて、政府としてきちんと文書で回答したいと考えております。そういうことは従来あまりなされてなかったということです。鳩山政権になって初めてそのことが実現したというお話でありましたが、5月31日に国からの回答がなされたということですが、今回の要請についても誠実にしっかりと対応することをお約束させていただいたところです。それから、最近もそうですが、いろいろな事件が次々に起こります。「そういった事件の再発防止」と言うのは簡単ですが、私(大臣)自身もルース大使に何度もこのことについて要請をしてきたわけですが、よりこういった事件を起こりにくくするためのさまざまな工夫というのは、まだまだ余地があるのではないと思っておりますので、そういったことについても日米間でよく議論していきたいということを申し上げたところです。
(3)ウズベキスタン、カザフスタン訪問について
【大臣】私(大臣)自身の本日からのウズベキスタン、カザフスタン訪問です。11日(水曜日)までの予定で行って参ります。ウズベキスタンでは、タシケントで開催される「中央アジア+日本」対話の第3回外相会合に出席するということです。しばらく途切れていたわけですが、なかなか中央アジアに出かけるということについて、スケジュールの問題その他があったと思います。確か5年ぶりかと思いますが非常に重要な地域でありますので、そしてエネルギーとか、資源の面でも日本にとってもより関係を深めるべき、そういう地域でもありますから、しっかりと意見交換を行ってきたいと思います。
ウズベキスタンではカリモフ大統領の表敬、それから、各国外務大臣との二国間会談を行う予定です。9日(月曜日)から10日(火曜日)の日程で、カザフスタンということで、ナザルバエフ大統領の表敬や、あるいは日・カザフスタン外相会談を行う予定です。時間の許す限りODAの現場などもしっかり見てきたいと考えているところです。
広島における平和祈念式典
【フリーランス 岩上氏】本日の広島での祈念式典に関連してご質問させていただきます。改めて広島への原爆投下の意味についてですが、米国では戦争終結のために原爆を投下したということは許されるというように考えている米国民が5割を超えるということだそうです、さまざまな世論調査などで報じられておりますけれども、こうした米国民の意識、あるいはそれを寛容する米国政府やマスコミ、またそういう姿勢というものがどのように外相の目には映られているのか、また岡田外相としては、どのように原爆投下というものを捉えられるのか、戦争終結上必要な投下だったとお考えなのか、ご見解をお聞かせいただきたいと思います。
【大臣】私(大臣)も思い出すのですが、いつでしたかスミソニアン博物館にたまたま入りました時に、ちょうど原爆に関する展示が行われておりました、これは経緯のある話で、原爆投下に関して博物館側が計画したものが、結局軍人OB会などの抗議によって中身が変わって原爆投下はやむを得なかった、あるいは必要であったという趣旨のものに変わっていたものです。両国民の間の意識のギャップというのは非常に大きいものがあるというように、その時感じた次第であります、確か、あの時に、館長は更迭されたのではなかったでしょうか。もっと現実を知ってもらいたいと思います。今回ルース大使が広島に来られたこと、彼にとっては二回目ですが、多くの方に広島、長崎に来て、何があったのかということをよく知っていただきたいと思います。そうすることによって、同じ人間ですから、感じるところは私(大臣)は一緒ではないかと思います。
【フリーランス 上出氏】今日の広島の関連で、オバマ米大統領が来られたときに是非広島、長崎に立ち寄って欲しいという声が出ているということについて、相手のこともあるのでということで決定的なことは動きはないと思いますが、岡田外相自身のオバマ大統領が広島に来ることの意義と、それを実現するための思いというのは今の段階ではどういうようにとらえておられますか。
【大臣】これは、米政府、あるいは大統領ご自身がどう考えるかという問題であって、こちらとしては米大統領がいらっしゃっていただければ大変ありがたい話ですが、それ以上のべき論で議論すべき話ではないと思っています。先ほど申し上げましたように、なるべく多くの方に現実を見ていただきたいと思っておりますが、誰が来るべきだとか来るべきでないという議論を日本側からする話ではないだろうと思っています。
【中国新聞 荒木記者】本日、平和祈念式典で菅総理が核軍縮、核不拡散について強く取組をやっていきたいという意向表明がありましたが、担当大臣として今後具体的にどういうふうに取組まれていくか、改めて教えてください。
【大臣】先ほどお話したつもりですが、私(大臣)自身、この一年間かなり動きをして参りましたし、9月の国連総会においては、少人数グループの外相会合を予定しております。新しいグループを立ち上げようということです。「核のない世界」、その前段階としての「核リスクの少ない世界」というものを実現するということを申し上げているわけですが、この「核リスクの少ない世界」ということを私(大臣)だけではなく他の国の外相も使われたりして、かなり浸透してきたと思います。つまり将来の大きな目標を語るだけではなくて、そこに至るまでに何をすべきかを、きちんと議論しながら進めていくという手法で私(大臣)は一年間やって参りましたし、これからも力強く進めたいと思っています。
【朝日新聞 高橋記者】今日の式典で、秋葉広島市長が米国の核の傘からの離脱ということを求められましたが、これに対する外相の見解をお願いします。
【大臣】広島市長としての秋葉さんの思いはよくわかります。ただ、日本の安全と現状を見たときに、特に核を持っている国が近くに北朝鮮、ロシア、中国とある中で、米国の核の傘なくして、日本国民の安全を確保することは、私(大臣)は極めて困難だと思っていますので、そこは見解が異なると思っています。
【フリーランス 岩上氏】核の抑止力、あるいは米国がさし出している核の傘というものが存在しているということが、全て前提になって議論がずっと進められてきているように思うのですが、果たして本当に核の傘というものは存在するのかという疑いがあります。例えばモーゲンソーというような方、またその他米国の国際政治学者、様々な方々が、もし核戦争となり得るような事態が起きた時、果たして米国本土が攻撃されるリスクを犯してまで、同盟国のために核の反撃を行うだろうかということに疑義を呈しております。こうした声がある中で、本当に米国の核の傘というものが、有効に機能し得るのであろうか、根本的な疑問ではありますが、改めて大臣のご見解をお聞かせ頂きたいと思います。
【大臣】決定的な答えはありません。しかし、それは同盟の中身による訳で、日本が核攻撃を受けた時に核で報復するという構えがあってこそ、日本に対する核攻撃が抑止されていることは間違いありません。そのことを論理的に証明しろと、100%証明しろと言われても、それはできないかもしれませんが、私(大臣)はそのことを信じて疑っておりません。今仰った議論は、最終的に論理的に証明することはできませんので、(議論)すること自身が何をも生み出さないというように思います。問われるのは同盟の質だというように思います。
【フリーランス 岩上氏】今、同盟の質次第であるということを仰られましたが、では、どのような質を持った日米同盟であれば、よりその核抑止が担保できるのか、その質の内容についてお聞かせ頂きたいと思います。
【大臣】端的に言えば、日本が核攻撃を受けた時に米国が核で報復するだろうというように核攻撃をしようとする国が思うがどうかという問題だと思います。
【朝日新聞 高橋記者】岡田大臣がこの問題に大変熱心に取り組まれていることは大変承知しているのですけれども、やはり最後には米国の拡大抑止に依存しながら、核軍縮を唱えていくことの矛盾というものが、どうしても問われると思うのですけれども、ここについて大臣はどういうご見解をお持ちなのかお願いいたします。
【大臣】核の傘と核軍縮ということは、それは矛盾いたしません。核軍縮というのは、核を持っている国全体に対して軍縮を求めていくわけですから、そのことと核によって守られているということが矛盾しているというのは私(大臣)は論理的によく分からない議論だなと思っております。
閣僚の靖国神社参拝
【NHK 藤田記者】民主党政権としては、初めて8月15日の終戦の日を迎えることになりますが、改めて、終戦の日に岡田克也外務大臣として靖国神社を参拝されるお考えはあるのか。もう一点は、閣僚が靖国神社に参拝することへの是非について、大臣はどのようにお考えになるのか、お聞かせ下さい。
【大臣】私(大臣)自身はもちろん、その気は全くありません。A級戦犯が合祀された靖国神社に閣僚が参拝すると、特に外務大臣が参拝するということは、私(大臣)は不適切であると考えております。他の閣僚のことは、私(大臣)が言うべきことでは必ずしもないと思いますが、私(大臣)の考え方を今述べた考え方で判断していただければと思います。基本的な内閣の方針として、官房長官なり、総理が述べられる話だと思います。
ホルムズ海峡沖での日本の原油タンカーの損傷事案
【AFP通信 長谷川記者】商船三井の(原油タンカーの)ホルムズ海峡での事件に関して、アラブ首長国の方のレポートでは、テロリストの犯行であったと確認したという報道があるのですが、それについて何かあれば教えてください。
【大臣】詳細ははっきりしておりません。確認もできておりませんので、現段階ではそれ以上のことは申し上げられません。写真を示してという話もありますが、どうも本当にその写真が商船三井の該当する船舶なのかどうかということも、確認がされておりませんので、現段階ではこれ以上のコメントは差し控えたいと思います。
日韓歴史問題(首相談話)
【共同通信 斉藤記者】歴史のくくりでお伺いします。これまで日本政府は、村山談話をはじめ、小泉談話もありました。いくつか談話が出ております。また、共同宣言も出ております。村山談話にあるアジアの人々に対して痛切な反省と心からのお詫びという表現が定着しているようにも見えるのですが、この村山談話を含む、一連の談話のこの表現、日本政府が世界に対して示すメッセージとして適切なのかどうか、そして、これまでアジア外交をやってきた上で意義があったのか、そして効果があったのか、この点について外務大臣のご所見をお伺いしたいと思います。
【大臣】適切かどうかという意味では、それは当然適切だと考えております。アジア外交にとって意味があったのかどうかというよりも、日本自らの問題として、間違ったことは間違いましたと言うことは、私(大臣)は、当然のことだと考えております。
インドの終戦記念日の式典
【フリーランス 島田氏】8月15日に関連して、同日にインドの終戦記念日もインド大使館で行われるということも、インドのホームページで拝見しましたが、外務省として、こちらに職員等を派遣したりしてお祝いを述べるとか、そのようなご予定はありますか。
【大臣】ご招待いただいているかどうかも含めて、私(大臣)は承知しておりません。
仲井眞沖縄県知事他との会談
【琉球新報 滝本記者】先ほどの仲井眞知事とのご会談の件で、要請書の中には普天間の移設についての日米合意について、極めて困難だと、沖縄県民の理解、沖縄県民が納得いく形で解決してほしいという要請書を手渡されたと思うのですが、その内容が、やりとりの中でも口頭でも、知事からお話があったのかということと、その中身について岡田大臣の方から何か言及されたのかということをお伺いしたいのですが。
【大臣】やりとりの中身については、こういう場で公にする予定はございません。
【琉球新報 滝本記者】冒頭で、正式に文書で、政府はまた更に返すと、回答されるというお話しでしたが、その書簡のやりとりみたいなのは、ある程度、地元との意見の交換、あるいは対話というような形にも取れなくはないのかなと思うのですが、地元とのやりとりの、あるいは、地元に理解を求めるということでの文脈での協議機関のようなものの設置について、本日は言及なりがあったのか、あるいは、これはどのように進んでいくのかということをお伺いしたいのですが。
【大臣】先ほども言いましたように、中身について触れることはございません。それは、お互い非公開で意見交換している訳ですから。
【琉球新報 滝本記者】中身でなくて、協議機関一般について。
【大臣】ですから、中身について触れるつもりはございません。
日韓関係(世論調査)
【フリーランス 安積氏】KBSワールドとNHKの共同世論調査によりますと、日本人の62.1%が「日韓関係が良い」と答えておりますが、対して韓国人の59.9%は、「日韓関係は良くない」と答えております。このギャップについてどう思われますか。
【大臣】いろいろな理由があるかと思います。例えば、痛みを与えた側と痛みを受けた側で受けとめ方は違うということもあると思います。ただ、少し前と比べると、例えば、小泉政権時代と比べると非常に良くなってきていることも事実でありますので、絶対的な数字だけではなくて、そういう趨勢というか、数字の流れを合わせて考えていく必要があると思います。
【フジテレビ 高橋記者】韓国との関係は小泉政権と比べて良くなってきていると先ほど仰られましたが、具体的にどういった態度で良くなってきているのか、そして今後、更に良くするために、どういったことが必要になってくるのかということを伺いたいと思います。
【大臣】良くなってきた理由を説明するのはなかなか難しいことだと思います。現に数字は、私(大臣)は明らかに改善していると思います。それはもちろん、小泉政権以降の安倍政権、福田政権、麻生政権のこともありますが、これは鳩山政権、菅政権になっての努力というものが非常に受け入れられていると思います。
米軍再編問題
【共同通信 比嘉記者】普天間問題の関連かもしれないのですが、昨日の予算委員会で社民党の福島党首に対する答弁だったかと思うのですけれども、沖縄における海兵隊の意義について、大臣はそれがなかったときに国民の生命と財産をどのように守るのかと反抗的な形でお返しになっていったかと思うのですが、認識としては海兵隊が沖縄にいないと国民の生命と財産を守れないということなのでしょうか。そういうことであれば、8000人の人数削減というのが目標になっていますけれども、そのこととの整合性についてもう一度お願いします。
【大臣】私(大臣)の答弁を正確に聞いていただきたいと思うのですが、私(大臣)は沖縄になぜ海兵隊がある必要があるのかというときに申し上げたことは、それは全体の訓練と実施部隊が一体でなければいけないということです。それ全体を沖縄以外で受け入れるということは現実にはない。そういうこともあって沖縄に海兵隊が必要であるということを申し上げたつもりであります。
【琉球新報 滝本記者】今の大臣のお話に関連して、沖縄以外に沖縄のまとまったアセットを受け入れるところはない、実際に見つからないだろうということでお話ですが、現状、沖縄もそれが受け入れられないというお話で、そういう意味でフラットというか立ち位置は全く同じだと思うのですが、それでなぜ沖縄になるのかということは、そう考えると沖縄に今あるからだということなのかなと思うのですが、その私の考えはどうでしょうか、大臣のお考えと一致するのでしょうか。
【大臣】もともとは普天間の移転というところから話が始まっているわけで、普天間の危険性を除去するために移設をするということです。その移設先としてさまざま検討したけれども、結局、辺野古しかなかったということであります。もちろん、今、辺野古に、地元では反対しているわけですから、そういう意味では受け入れる状況にありません。だからこそ理解をしっかり求める努力が必要なのだということを申し上げているわけです。
米韓合同軍事演習
【共同通信 斎藤記者】韓国海軍哨戒艦沈没を受けた米韓合同軍事演習の絡みでお伺いしたいのですが、昨日、米国防省のスポークスマンが、ジョージ・ワシントンの空母が、朝鮮半島から見て西側の海域である黄海の演習に参加すると正式に発表されたと報道で聞いております。この件については確認されているかどうかということと、この件について中国は非常に反発しておりまして、ここは公海なのですが、中国の軍の幹部が公の場で中国に近いところで演習をやるのは、これは中国に対する挑戦であり、断じて許せないということを繰り返し、繰り返し表明しております。そうした中で空母が行く。これは、いわゆる極東の平和と安定に何らかの影響を与えるのかどうか、そして、この問題をどう処理していくべきなのかどうか。日本はオブザーバーを送っているという観点から若干関係もあると思うのですが、この観点からお伺いしたいと思います。
【大臣】まず、黄海で行われる演習にオブザーバーを送るかどうかは、決まっていないと私(大臣)は承知しております。それから、私(大臣)どもはいつも申し上げているのですが、公海上での演習ということは、国際法上認められたことであって、中国側が日本近海でやるときにいろいろ言う方がいらっしゃいますが、そのことも含めて、お互い公の海で演習をやるということについて、それをどのように受け取るかという気持ちの問題はあるにしろ、法的には何か問題であるということではないということであります。したがって、今回の黄海での演習についても、そういう意味で中国側に理解を求めたい。日本が求める立場にはないのですけれども、中国側にも冷静に対応していただきたいと思います。
報道方法(事実の一部切り取りによる報道)
【フリーランス 島田氏】話は全然変わるのですけれども、大臣は度々会見で、我々の質問に対して、事実の一部を切り取ったような認識で質問をするのはやめてほしいというようなことを仰っておりますけれども、その事実の一部を切り取るような報道が多々あるという認識で、そういうことを仰っていると思うのですが、このことに関して大臣の率直な考えをお伺いできますでしょうか。
【大臣】一般論で聞かれると非常に難しいのですけれども、1つのセンテンスというか文章の背景にある気持ちというのが当然あるわけですけれども、それを途中で切ってしまえば、ある意味ではいかようにでも、全く逆の意味にも受け取られかねないということになるわけです。そこはやはり、報じる方も、どういう意図で言っているのかということを踏まえて、報じていただくというのがあるべき姿ではないかと思っております。別に、そういう報道ばかりと言うつもりはありませんし、一部切り取られないように、なるべく短く私(大臣)も答えるように心がけております。余り丁寧に答えると文章が長くなりますと、そのうちの前半だけとかになりかねませんので、気を付けるようにはしておりますが、本来であれば、やはり信頼関係に基づいて、話す側がどういう意図で言っているかということを踏まえて報道していただくと大変ありがたいと思っております。
中央アジア訪問
【共同通信 斎藤記者】中央アジアについてお伺いします。先ほど大臣は中央アジア出張について、非常に重要な国家であると仰られて、その例として資源を出されたのですが、中央アジアは日本の一般国民からすれば、馴染みのない地域だと思いますので、その中央アジアの重要性、資源もその一つだと思いますけれども、また、他の面もあれば、安全保障、経済、いろいろな面もあると思います。その重要性について、全体的な説明をしていただければと思います。
【大臣】私(大臣)は資源、エネルギーと申し上げましたが、その前に申し上げたことは、地政学的な重要性ということも当然あるわけです。つまり、旧ソ連邦であってロシアの南にあり、そしてロシアと中国、西側の世界、一方で、アフガニスタンということですから、非常にそういう意味で地政学的に重要な位置にあるということであります。それに加えて最近、ウランとか、資源面でもガスもありますし、そういった資源、エネルギー面でも注目されているということであります。実は、私(大臣)は13年くらい前だったと思いますが、カザフスタン、ウズべキスタンには一度行っております。今は懐かしい新進党という党の時代だったのですけれども、ソ連邦が崩壊してまだそんなに時間が経っていないときで、例えば、核の問題。カザフスタンは核を持っていましたが、それを放棄したということだったのですけれども、そういう点でも非常に関心があって、二か国を党の調査団で行ってきたわけであります。あれから13年くらい経って、状況がどう変わっているかということも併せてしっかりと見届けてきたいと思います。いずれにしろ、日本にとって非常に重要な地域なのですが、2006年に東京で開催された第2回の外相会合以降、しばらく途切れておりましたので、この機会に少なくとも2年に1回くらいは会合を開けるような関係にもう一回戻したいと考えております。
【読売新聞 川崎記者】少し細かい話になりますが、今回の中央アジアの5か国との外相の会合では、トルクメニスタン、この国だけ外相がいらっしゃらないようです。トルクメニスタンはご承知のとおり、今、永世中立を宣言していて、5か国の中でも少し特徴がある国かと思います。トルクメニスタンにつきましては、これまでの会合でも大使の参加ということであったと思うのですが、昨年、トルクメニスタンの大統領が日本にもいらっしゃったということもあって、今回、日本との関係というところも少し築けるとよかったのではないかと思いますけれども、今回、そのトルクメニスタンの外相がいらっしゃらないことについて、先方から何か日本に対して説明はあったのかどうかということと、それに関しての大臣のご所見をお伺いしたいと思います。
【大臣】外務大臣の日程上の問題だと理解しております。昨年来られて、私(大臣)も大統領とも随分言葉を交わしました。したがって、外相が来られることを楽しみにしておりましたが、大変残念なことだと思っております。トルクメニスタンも非常に重要な国で、パイプラインとかガスとか、そういう視点で非常に日本にとっても重要であり、去年大統領をお招きしたことで、1つ関係が深まったと思っておりますので、今回のことは残念ですけれども、しっかりと関係を深める努力を行っていきたいと思っております。
資源外交
【共同通信 斎藤記者】今の資源外交という関連でお伺いしたいのですが、資源外交は現在、国際社会で非常に各国がしのぎを削ってやっていますので、当然、我が国もやらなければいけないと、当然私もそう思っております。問題になるのは、どういうわけか、資源をたくさん抱えている国というのは、どうも発展途上国でしかも政治的に不安定、あるいは、開発独裁で、政権が非常に独裁色の強い政権になるとか、あるいは人権侵害が指摘されている国に資源があって、その資源に対してどのようにアクセスしていくかということは、常にいろいろ問題になってきていることだと思います。この点、今後、日本が資源外交を進めていく中で、何かその辺できちんと物差しを持って対応していくというお考えなのか。それとも、やはり相手国の内政には余り入っていかないで、国対国の関係で、相手が軍事国家であることは別にして、国と国との関係で粛々と資源外交を進めていくのか。この辺の基本的な考えについて教えてください。
【大臣】今仰ったことは、資源を持っている国が開発独裁の国であるというと、オーストラリアとか南アフリカとか、怒る国は大分出てくるとは思います。もちろん、きちんと選挙を行って、議員とかトップを選んでいる国もたくさんあるわけであります。人権侵害ということが目立つような場合には、日本としての対応を考えなければいけない場合は当然出てまいります。例えば、今で言えばミャンマーとか、そういった国であります。しかし、民主主義というものは、成熟していくためには段階を踏んでいかなければいけないわけであります。例えば、一昔前のインドネシアと今日のインドネシアを比べれば、それは日本もかなり努力をしたと思いますけれども、時間をかけて、民主主義が成熟するために待った結果として、今日のインドネシアがあるということで、余り性急に、単一の価値観だけでこうあるべきだという議論をやり過ぎることの問題もあると思います。そもそも、選挙をしないで議員とか代表を選んでいる国もたくさんまだあるわけですから、そこは一定の人権侵害という視点を持ちながら、しかし、余り厳しく考え過ぎない方がいいと、少し時間をかけて、そういうゆとりを持って考えていけばいいのではないかと思います。
国際コンテナ戦略港湾の選定
【伊勢新聞 中森記者】外交から外れて恐縮ですけれども、大臣、地元の四日市港が伊勢湾として応募している戦略港湾の落選が決定的になったのですが、今後の四日市港のあり方について、地元の国会議員としてのご所見をお伺いします。
【大臣】まだ最終的な結論には至ってないと思うのですけれども、本日、そういうのが出ましたか。それは、私(大臣)はまだそういう段階で、そのことを前提にコメントはいたしませんが、10年前から申し上げていることなのですが、やはり名古屋港と1つになってやっていかないと、1ローカル港湾として生き残っていくことは、非常に困難であると思います。もう少し早く、そういう一体化ということに踏み切っていれば、また違う結論にもなったかもしれませんが、別にスーパー中枢港ではなくて、今回の選に漏れたとしても、日本で言えば、名古屋港と含めて3番目に取扱いの多い港湾ということは変わりませんので、しっかりと頑張っていただきたいし、そのための後押しはしたいと考えております。
核の傘
【フリーランス 岩上氏】核の傘に関して、すいませんが、確認で1点だけご質問させてください。米国の核の傘が有効であるための前提としては、いわゆる核の均衡が成り立っていないといけないと思うのですけれども、米ソ間相互確証破壊戦略(MAD)は成り立っていた。これは60年代には成立したと思いますが、米中間で相互確証破壊戦略というものは既に成立しているか、あるいは近い将来成立し得るのか、この点について、大臣のご見解をお聞かせいただきたいと思います。
【大臣】核の傘と核の均衡というのは、必ずしもイコールではないと思います。それから、相互確証破壊というのは、それは米ソ間でかつて言われた議論ですが、今、それが有効であると、私(大臣)は必ずしも考えておりません。過去の議論です。