夕刊フジコラム「ズバリ直球」10年11月11日号
沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件のビデオ映像がインターネット上に流出して、大問題となっている。この件は「政府の保秘(秘密保全)」という側面と、「国民への情報公開」という側面があり、明確に分けて考えるべきだ。
まず、問題の映像は、海上保安庁が尖閣沖で撮影し、那覇地検に提出するために編集したものとみられている。もし、国家公務員が映像を外に出したのならば、守秘義務に反する違法行為であり、決して許されることではない。
最近ではこのほか、国際テロを担当する警視庁公安部が作成したとみられる資料も、ネット上に流出した。国家の信用を傷つける、重大な危機といっていい。海保は、国家公務員法違反(情報漏えい)の疑いで、刑事告発に踏み切った。厳正な捜査を待つだけでなく、党としてもしっかりと検証を行いたい。
一方、国民の中に「ビデオ映像を早く出すべきだった」という意見がある。民主党は以前から情報公開の重要性を主張し、私も外相時代、一定期間が過ぎた外交文書の公開に取り組むなどしてきた。そういった考えはよく分かる。
ただ、政府としては、「訴訟に関する証拠物件である」ということに加えて、「日中関係で過度な軋轢を起こさない」という判断をしたのだと思う。極力事実を国民に公開するということと、過度にナショナリズムを刺激しないということの、難しいバランスの問題だ。
さて、党内および政府内での真剣な議論を経て、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について、「情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する」という基本方針が取りまとめられた。
私は、落ち着くべきところに落ち着いたと思っている。日本が繁栄を続けていくには、自由貿易を進めること、「国を開く」ことが絶対に避けられない。日本の技術力や知識・経験を活かしながら、成長著しいアジア太平洋地域のエネルギーを取り込んでいく。同時に、農業などが壊滅的打撃を受けないよう、競争力を強化し、戸別所得補償などの国内制度を整備・拡充していくことも不可欠だ。
自民党は批判ばかりしているが、自民党政権で立ち枯れ状態だった日韓EPA(経済連携協定)や日EU・EPAを、民主党政権はわずか15カ月間で交渉入り寸前まで持ってきた。日印EPAは先月、両首脳間で合意に至った。
「就業者の高齢化と減少」や「国際競争力の欠如」といった我が国農業の構造問題を放置してきた責任をどう考えるのか。自民党は、まずこれまでの政権党として無策であったことへの反省から述べるべきだろう。
最後に、小沢一郎元代表との会談(4日)について書きたい。
約30分間、いろんな話をした。私からは「ぜひ、自ら決断して政治倫理審査会に出席して説明してほしい」と話した。小沢氏は前日の動画共有サイトで発言したように「司法の手続きに入っているので、裁判の中で説明する」と否定的見解を述べた。具体的進展はなかったが、いい話し合いはできた。国会で説明責任を果たすことは、党にとっても、小沢氏自身にとっても必要だと考えている。今後もねばり強く、しっかり話し合っていきたい。
(C) 夕刊フジ