夕刊フジコラム「ズバリ直球」10年11月25日号
柳田稔法相が22日朝、いわゆる「国会軽視」発言の責任を取って辞任した。本人はもちろんだろうが、私も非常に残念な思いだ。
柳田氏は辞任表明の会見で、「自らの不用意な発言が補正予算の障害になっている」「補正を速やかに通すべく身を引きたい」と述べた。
確かに、柳田氏の発言は軽率だった。冗談半分で言ったのかもしれないが、法相とは法治国家の根幹を担う立場にある。冗談で済ませられるものではなかった。ただ、職を辞する必要があるかどうかはいろんな意見があったと思うが、柳田氏は国会審議、補正予算を重視して、辞任という重い決断を下した。
自民党内には、仙谷由人官房長官や馬淵澄夫国土交通相ら、閣僚4、5人に対し、野党が多数を持つ参院で問責決議案を提出する動きがあるという。
しかし、現在審議中の補正予算案の中心は、国民の生活を守るための景気対策だ。法案成立が遅れて、政策の実施が遅れると効果は低くなる。いまだ日本経済の先行きは予断を許さない。中小零細はじめ企業の経営は極めて厳しく、国民の家計も苦しい。何としても、速やかに補正予算を成立させなければならない。
閣僚発言の中に、やや緊張感を欠くものがあったのは事実だ。だが、その度に真摯に謝罪し、撤回している。衆参ねじれの状況にあるからこそ、野党にも国民の立場に立って、補正予算の成立に協力してもらいたい。
さて、民主党・政治改革推進本部は19日、国会内で開いた全議員対象の総会で、国会議員の歳費(給料)を1割カットする関連法案を国会に提出する方針を決めた。12日に議論した際は反対意見も出たが、今回は賛成意見が多数出され、まとまった。
民主党は今年夏の参院選マニフェストで、「国会議員の定数削減」に加え、国会議員にかかる「経費の削減」を掲げて戦った。ともに現在議論を進めている最中だが、議員定数削減などは次回選挙時までに実現を待たなければならない。では、それまでの間、われわれ政治家が何もしないということが許されるのか。
若手議員の台所が火の車なのは理解している。しかし、今後、公務員の人件費削減や国民に負担増をお願いするにあたり、まず、国会議員が「自ら身を切る」姿勢を示さなければ、誰も説得できない。1割カットは最低限のラインだと思う。これについては、他の政党も同意してくれるはずだ。速やかに国会で成立させたい。
東京高裁が先週、1票の格差が最大5倍に達した今年7月の参院選について、「憲法が定める平等原則に違反する」と違憲判決を下したことにも触れたい。
判決には「著しい不平等状態が固定した観があり~」などと厳しい言葉が並んでいる。民主主義の根幹に関わる問題であり、これ以上放置はできない。党内論議を加速するとともに、各党会派で議論して、早急に格差是正を行っていきたい。