震災復興:国債発行だけに依存できない(ロイター・インタビュー記事(3月25日))
震災復興:国債発行だけに依存できない=岡田民主幹事長
[東京 25日 ロイター] 民主党の岡田克也幹事長は25日、ロイターとのインタビューに応じ、東日本大震災の復旧・復興財源について、国債発行だけに依存できないとの認識を示し、既存予算を全面的に見直す考えを明らかにした。
ただ、民主党の目玉政策である子ども手当については、野党が主張するような「廃止」は考えていないと強調。法人税5%下げを見送り復興財源に充当する案については「どうするかは決めていない」と流動的な考えを示した。谷垣禎一自民党総裁が提案した「臨時増税」については、政府・与党の立場でコメントしないと述べるにとどめた。一方で、日銀引き受けによる「復興国債」発行による財源手当てについては「財政規律が失われる」と反対の意向を示した。
補正予算編成に関しては、4月から5月にかけて復旧対策に重点を置いた第1次補正予算を組み、その後、本格的な復興対策を盛り込んだ第2次補正予算を組む考えを表明。全体では「非常に大きな予算が必要になる」としたが、第1次補正予算規模は「決めていない」とした。
インタビューの詳細は以下の通り。
──復旧・復興対策について。民主党内では10兆円以上との声も挙がっている。
「どの程度の予算が必要になるかは、政府として何も決定していない。10兆円という数字が新聞紙上に出ているが、正式なものはない。被害を特定しそのなかで国が責任を負わなければならないのはどれだけあるかなどこれからの作業で、額について今言える段階ではない」
「ただ、来年度予算に1兆1600億円の予備費が計上されている。これを使えば、当面は対応できる。予算面の心配は特にない。次のステップとして、おそらく4月から5月にかけて第1次補正を組むことになるだろう。これは、がれき処理、仮設住宅建設など当面の対応になる。予算規模は決めていないが、作業が円滑に進むように、柔軟に使えるカネを十分計上する必要がある。次が復興段階で、もう少し先になるが、第2次補正予算を組まなければならない。このプロセスのなかで、(財源を)国債発行だけに頼るわけにいかないので、既存の来年度予算を全面的に見直して、急がないもの、重要度が低いものを復旧・復興予算に振り替える作業が必要になる」
「来年度予算はベストな予算として出した。それを見直すのは残念だが、大震災という新しい状況のなかで見直さざるをえない」
──組み替え対象は。
「これからだが、高速道路無料化実験の縮小や、普通車で平日上限2000円とする新たな割引の導入見送りは決まった」
──子ども手当も対象か。
「自民党は政権批判をするために、民主党が進めてきた政策をターゲットにするが、公共事業予算や公務員人件費など、さまざまなことが検討対象になる。高速道路無料化や子ども手当だけではなく、幅広く検討しなければならない」
──目玉政策の子ども手当を見直すことは難しいのか。
「全て見直しの対象だ。ただ、子ども手当は、自民党が主張するように『廃止』は考えていない。社会全体で子育てを支援する考え方は正しい。子ども手当を廃止する考え方には立っていない。しかも、そのために1兆円以上の増税をしている。年少扶養控除を廃止し増税した財源で子ども手当を作ることにしていた。子ども手当は作らないで、年少扶養控除を廃止したままでは、子育て世代にピンポイントで増税することになる。負担を増やすことになり、間違った判断になる」
──公共事業予算とは。
「東北以外のものを減らして東北に向けることも検討対象になる」
──財界から法人実効税5%下げも検討対象との声があがっている。
「公式には聞いていない。あらゆることを見直しの対象にする。ただ、法人税をどうするかは決めていない。日本経済の活性化のためには重要なことで(まだ決めていない)」
──1次補正の段階では、国債発行は回避するスタンスで臨むのか。
「そのようなことは決めていない。1年間のスパンのなかで考えていけばよい」
「1年間トータルで考えて、もちろん国債発行は抑制しなければならないが、だからといって、1次補正で国債発行をしないとかするとかはあまり意味のないことだ」
──湾岸戦争の時には、つなぎ国債を発行して財源を手当てし、償還財源を将来の増税で手当てした。有効な手段ではないか。
「まだ議論していない。谷垣自民党総裁が臨時増税に言及したことは事実。しかし、政府与党としては、それについてコメントしない。国債発行を抑えようという考えから出た発想だと思うが、経済にどういう影響を及ぼすかも合わせて考えなければならない」
──日銀引き受けによる「復興国債」発行による財源手当ては。
「全く根拠のない報道だ。(政府・与党で)議論していない」
──手法として有効と考えるか。
「国債発行に対する規律が失われる。市場を介さないで安易にそういうものに頼ると財政規律が失われる」
──災害からの復旧・復興は大変だが、日本がよりよくなる機会になるとの指摘もある。
「是非、そういう機会にしたい。非常に大きな予算が必要になるが、元に戻すことではなく、ある意味新しい東北を造らなければならない。それが新しい日本のモデルになる」
「たとえば、海外沿いに小さな漁港があり、そこに人が住んでいる。津波を防ぐために施設を作るという発想から少し変えたほうが良いかもしれない。エネルギー面でも、今までの延長線でない新しい発想が必要になるかもしれない」
──特例公債法成立の見通しは。
「必ず成立する。日本の今の予算で特例公債なしで予算が組めないことは、誰がみても明らかだ。野党は駆け引きで反対しているが、本来反対することはできない。時間がくれば解決する」
──与野党結束の手法として、菅直人首相が谷垣自民党総裁に閣内での協力を要請したが、否定された。大連立はまだ考えられるのか。
「連立を組むかどうかには大きな決断がいるため、谷垣総裁はあの時点ではそこまで決断できなかった。しかし、これからどうなるかはまだわからない。これだけ大きな災害を乗り越えていくために、協力しようという雰囲気はある。協力と大連立とは次元が違うので、そこまでいくかどうかはわからないが、協力していこうという気持ちは野党にもある」
──まだ、大連立の余地はあるとの認識か。
「可能性がなくなったわけではない」
──大連立が好ましいとの認識か。
「意思決定が早くなる可能性はある。ただ、それぞれの党内にいろいろな意見がある。自民党のなかにも反対・賛成(両論)がある」
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