“一体改革=増税だけ”は事実と異なる(夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年7月12日号)
「社会保障と税の一体改革」関連8法案の衆院採決に反対し、民主党から除籍(除名)処分となった小沢一郎元代表らの新党が11日結成される。長く一緒にやってきた仲間として、「極めて残念だ」というしかない。
一体改革については昨年から、党内でずっと「社会保障を持続可能なものにして、財政の危機的状況を克服するにはどうすればいいか」と議論を続け、丁寧な党内手続きを取ってきた。小沢氏側からは「増税だけで、社会保障改革は何もない」といった発言もあったが、事実と異なる。
8法案のうち税法は2法案。残りの6法案は、公務員とサラリーマンの年金を一元化したり、パートへの厚生年金適用を拡大したり、小規模保育や事業所内保育にも助成金を支給するなど、社会保障を強化・充実させるための法案である。
誰の目から見ても手を付けなければいけないものが多い。だからこそ、衆参ねじれのなか、民主、自民、公明3党の合意を結ぶことができた。
私は毎週のように、一体改革について説明する対話集会に出席しているが、理解してくださる国民の方々は増えている。この危機は今始まったものではない。長く積み重なってきたものだ。増税をお願いするのは心苦しいが、国の未来に責任を持つ政権与党の政治家として、これ以上、先送りはできない。
小沢新党に参加する議員の中には、菅内閣や野田内閣で政務三役を務めた方もいる。ともに一体改革を進めてきたのに、突然、反対に回った理由がよく分からない。
ともかく、政権与党として、政策を1つひとつ実現し、山積する課題を解決していくなかで、党内混乱で損なった国民の方々の信頼を取り戻していきたいと考えている。
さて、公務員とサラリーマンの年金の一元化に伴い、公的年金に上乗せされている「職域加算部分」と退職金のあり方を検討する政府の有識者会議の報告書が出された。この機会に説明したい。
有識者会議は、経団連と連合から各1人、マスコミから2人、学者6人の計10人で構成されている。私も出席して、7回の会議を開催した。活発な、いい議論だった。
現行の職域加算部分を廃止することは政府方針として決まっているが、有識者会議の報告書では、廃止後の新たな制度設計について、考え方をとりまとめている。ポイントはこうだ。
まず、人事院調査で「民間より約400万円高い」とされた退職給付(公務員の退職金と年金の合計額)は差額分すべて引き下げる。こうして、退職後に受け取る退職金と年金の合計額を官民同水準とし、その一定割合を退職金、残りを年金で受け取れるよう、新たな制度を創設する。
一部メディアは「税投入」という部分を強調していたが、退職給付全体として官民格差がないというのが大前提で、年金で受け取る分が増えれば、退職金分が減る。逆もまた然りだ。要は、退職金で受け取るか年金で受け取るかという配分の問題にすぎない。
官民格差をなくす退職給付引き下げと職域加算部分廃止後の新たな制度設計については、今後法案化作業を進め、国会に提出する。メディアや対話集会などを通じ、正確に分かりやすく伝えたいと考えている。(副総理)