「近いうちに信を…」はギリギリの誠意(夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年8月12日号)
今週は「社会保障と税の一体改革」関連法案の参院採決にあたり、自民党が野田佳彦首相に衆院解散の確約を迫って、国会が混乱した。ロンドン五輪で日本選手の活躍が報じられるなか、永田町は政局に突入して緊迫した。
8日夜、民主、自民、公明3党の党首会談が行われ、野田首相から「一体改革法案を成立させたうえで『近いうちに信を問う』」というギリギリの誠意が示された。自民党の谷垣禎一総裁もこれを受け、内閣不信任案などを当面出さないことを明言。3党合意は維持され、関連法案は10日に成立することとなった。本当にホッとしている。
もし、関連法案が成立しなければ、日本の将来は大変なことになっていただろう。社会保障を維持することが困難になるだけでなく、市場が反応した可能性は高い。国が多額の債務を抱えていても、与野党が財政再建に取り組む姿勢を見せることが重要だった。
谷垣氏には、早期解散を求める党内の突き上げもあったようだ。最終的には、多くの自民、公明両党の議員に、政治家としての良識を示していただいた。公明党の山口那津男代表が「3党合意は守るべきだ」と言い続けてくれたことも、ありがたかった。心から感謝している。
「近いうちに信を問う」という時期について、永田町内外でいろいろ見方があるようだが、それ以上でも、それ以下でもない。言うまでもなく、解散権は首相が持つ「伝家の宝刀」だ。政治家ならば分かるはずだ。
さて、国民の方々に負担をお願いする以上、政治も行政も身を切らなければならない。先日、京セラの稲盛和夫名誉会長ら有識者10人による「行政改革に関する懇談会」の答申がまとまった。
答申では「財政破綻を絶対に回避するための行政改革の必要性」が説かれ、「入るを量って出るを制す」として、国の役割の再定義とあらゆる歳出項目の聖域なき見直しが示された。厳しい財政状況、少子高齢化のなか、無駄の削減だけではもう間に合わない。
今後は、ある程度必要性がある事務・事業も、廃止・中止する決断が求められる。国民の方々にも意識改革をお願いしたい。(副総理・岡田克也)