夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年8月23日号
韓国の李明博大統領が10日、わが国固有の領土である島根県・竹島を突如訪問した。2008年に韓国の首相が訪問したことはあるが、大統領が訪問したのは初めてだ。極めて遺憾であり、看過できない。
これまで、李大統領とは何度かお会いしているが、親日的で、日韓関係の重要性を十分認識されている方だった。それだけに、今回の行動には正直驚いた。「何が李大統領にあったのか」というのが、正直な気持ちだ。
その後の、天皇陛下に対する発言は、さらに理解できないものだ。日本側から韓国に陛下のご訪問を申し入れたことは一切ない。誤訳もあったとはいえ、外交的に著しく非礼と言わざるを得ない。日本国民の感情も傷つけた。一連の李大統領の言動は、今後の日韓関係に及ぼす影響は大きいだろうが、過度に感情的になるのはお互い戒めるべきだ。
今回の事態を受け、野田政権としては国際司法裁判所(ICJ)に提訴することを決めた。第三者である専門家に判断してもらう。日本政府としては、竹島が歴史的にも国際法上も日本領土であることを証明する。いまこそ、事実に基づく冷静な議論が必要だ。ぜひ韓国にも提訴に応じてもらいたい。
香港の民間団体活動家による、沖縄県・尖閣諸島上陸事件についても、話しておきたい。
今回は2年前の尖閣沖・中国漁船衝突事件のように、海上保安庁の巡視船に漁船を意図的に衝突させるような悪質な公務執行妨害行為がなかった。このため、不法上陸・入国容疑で逮捕したうえで、入管難民法の規定に基づき、強制送還した。
一部に「強制送還せずに送検し、起訴すべきだった」という意見もあった。1つの意見として理解できる。もし、活動家らが他の犯罪行為をしていれば、別の対応もあり得た。法律に基づいた、事案ごとの判断であり、「強制送還ありき」というわけではない。
中国国内では複数の「反日デモ」が起きている。幸い、日本人に危害はないが、お互い必要以上に、国民のナショナリズムを刺激することは避けるべきだ。そういう意味で、今回の決定は妥当なものだったと多くの方が判断していると思う。
ともかく、尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的にも明らかである。ぜひ、中国の方々には、日本外務省のHPを見ていただき、日本の主張に耳を傾け、何が事実かを知ってほしい。
さて、通常国会も終盤に入り、残り3週間を切った。赤字国債発行のための公債発行特例法案と、衆院の定数是正・削減などが重要案件として残っている。国民の期待に応えるためにも、与野党でしっかり話し合って、法案成立のために協力していくことが求められている。(副総理)