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2012.11.01|夕刊フジ

与野党とも国民生活を人質に取るような政治はやめるべき(夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年11月1日号)

 第181臨時国会が29日、召集された。衆院本会議で行われた野田佳彦首相の所信表明演説では、「明日への責任」を前面に掲げ、経済再生、被災地復興、アジア外交、政治・行政改革など、これから政権が何に取り組んでいくのか、明快に述べられていた。

 野党は、衆院では所信表明演説が行われる本会議に出席し、31日からの代表質問にも応じているが、参院では「首相問責決議が可決されている」として、本会議自体が開かれないという異常事態となった。それでいて、「参院予算委員会はやりたい」と主張しているようだ。

 本会議と予算委員会の対応にどうして違いがあるのかが、分かりづらい。加えて、解散がない参院で、首相の問責決議を出して審議を拒否したり、辞職や解散を求めたりすることには、憲法上の疑義も指摘されている。

 ともかく、赤字国債を発行するための特例公債法案や、「1票の格差」を是正する関連法案など、重要法案が山積している。特例公債法案が成立しない影響は甚大で、このままでは、新たな国債発行はできなくなり、政府支出が一部止まってしまう。今後、政権交代が定着することも見据えて、与野党とも、国民生活を人質に取るような政治はやめるべきだ。

 さて、東京都の石原慎太郎知事が25日、緊急記者会見を開き、都知事辞任と新党結成を発表した。石原氏は1995年4月、議員勤続25年を祝う永年勤続表彰の場で、突然議員辞職を表明した。私もあの場にいてとても驚いたが、今回もやはり突然だった。

 しかし、石原氏が新党を立ち上げて、何をやりたいのかが良く分からない。「官僚制度の打破」と話していたが、東京都は中小国家に匹敵する巨大自治体であり、官僚機構も強固だ。「天下り先も膨大」という話も聞く。13年8カ月の在任期間中、どこまで官僚機構に切り込んだのか、しっかり説明してほしい。

 石原氏は次期衆院選では、大阪市の橋下徹市長率いる「日本維新の会」らと第3極結集を目指し、選挙後は、安倍晋三総裁の自民党との連携を目指すともいわれている。石原氏と橋下氏、安倍氏は、保守陣営でも「右寄り」と呼ばれる人たちである。次期衆院選は、「穏健な保守と中道リベラル」の民主党と、「右寄り保守」各党の争い、という構図が浮かんできた。

 第3極の結集をめぐっては、「基本政策さえ一致していれば、小異は捨てる」という意見も聞かれるが、原子力政策や消費税増税、憲法改正などは決して小さな政策テーマではない。きちんと政策調整をして、国民に考え方を示してほしい。

 それにしても、原発や消費税など民主党の政策を取り上げて、政権を徹底批判していた面々が、次期衆院選を前にして「政策は二の次」「第3極結集が優先」などと語っている姿を見ると、私は正直、苦笑せざるを得ない。(副総理)




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