民主党の政策軸は「改革」と「適正な富の再分配」(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年1月17日号)
安倍晋三政権の緊急経済対策が先週末、閣議決定された。総事業費20兆円規模、「即効性のある事業に絞る」ということだが、短期間で完結する事業がそれほどあるとは思えない。基本的には、自民党の十八番といえる従来型の公共事業のバラマキが中心だ。
これに伴い、5・5兆円の新規建設国債を発行するという。民主党政権時代、国債発行枠は44兆円だった。それでも自民、公明両党は「国債発行が多すぎる」「バラマキだ」と批判していたが、自らこの発行枠を大きく突破することになった。「実質GDP(国内総生産)を2%押し上げる」「60万人分の雇用を創出する」という根拠も曖昧だ。
来年度予算もこの調子で、公共事業費や防衛費、科学技術振興費などを、どんどん増やせば、財源の裏付けのない国債発行が続くことになる。来年4月から、消費税は8%になるが、増収分が借金返済ではなく、公共事業に回る危険性もある。目の前の景気・経済はもちろん重要だが、財政の立て直し、将来世代への責任は、これに勝るとも劣らず重要だ。
いわゆる「アベノミクス」への期待感から、市場は株高・円安となり、一見、経済再生へ順調に進んでいるように見える。だが、具体的政策は何も実行されていない。私は、国債増発が金利上昇を招かないか、円安が輸入物価の上昇につながらないか、そして、これらの結果、国民生活が壊されないか心配している。安倍政権には、慎重な経済運営を求めたい。
民主党は昨年12月の衆院選で大きく議席を減らした。党では現在、選挙についてだけでなく、3年3カ月の政権運営全般について振り返り、「どこが問題だったのか」「どうすべきだったか」と、1つひとつ反省し、総括する作業を進めている。
私も2009年と10年、幹事長を務めていたので、党の求めがあれば、「09年衆院選マニフェストが過大になった理由」や「肝心なときに党が一致団結できなかった理由」などについて意見を述べたい。
今年7月の参院選は、民主党にとって31ある1人区でどれだけ議席を守れるかが焦点の選挙になる。前回衆院選の小選挙区では、民主党候補と自民党候補が激突している中に、第3極候補が割って入り、結果的に、自民党候補が勝つケースが数多く見られた。この構図は参院選でも続きそうで、民主党には厳しい選挙になる。
ただ、戦術としては、他党と部分的に連携することはあるかもしれないが、大切なのは、自民党とは違う「民主党らしさ」「立ち位置」を有権者に示すことだと考えている。つまり、「現状維持ではなく改革」「弱肉強食・自由放任ではなく、適正な富の再分配」という政策軸だ。参院選まで6カ月、残された時間は少ないが、これこそ、民主党再生への道だと信じている。(民主党衆院議員)