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2013.04.11|夕刊フジ

安倍政権にモノ申す 「第2、第3の矢」にも留意を(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年4月11日号)

 日本銀行は先週4日、黒田東彦(はるひこ)総裁の下で初めての金融政策決定会合を開き、供給するお金の量(マネタリーベース)を1年間に60兆円から70兆円ずつ増やし、2014年末に270兆円まで拡大するという、大胆な金融緩和策を打ち出した。

 黒田総裁は記者会見で「現時点でできる、あらゆる措置を今回決めた」と語っていた。これを好感して、株は上がり、円は安くなっている。デフレ脱却という困難な課題に対し、まずは日銀の責任を果たしたといえる。黒田総裁の決断に敬意を表したい。

 そのうえで、2つのことを記しておきたい。

 まず最初に、金融緩和の徹底について、市場が今後どう受け止めるかは分からないということだ。現に先週末、金利が一時上がり、その後、下がった。市場が「財政ファイナンスを日銀がやっている」と考えれば、金利は上昇局面に向かうだろう。日銀には慎重なかじ取りをお願いしたい。

 次に、金融緩和は安倍晋三政権の「3本の矢」の1本目だが、「第2の矢」と「第3の矢」にも十分留意が必要だ。

 第2の矢は財政出動、つまり公共事業の大幅な積み増しだ。しかし、現時点でも、東日本大震災の復興などで「物が足りない」「人が足りない」という状況にある。補正予算で全国的に公共事業が増えれば、被災地の状況はさらに悪化し、復興が円滑に進まない可能性もある。

 第3の矢は、最も重要な成長戦略だが、まだ中身が見えてこない。成長戦略の柱である規制改革については、業界はじめ利害関係者が数多く存在する。自民党政権にやり切れるのか。第3の矢がなければ、結局、株や不動産が上がるだけのバブルで終わり、経済成長にはつながらない。そして、後に残されるのは、物価と金利の上昇だ。

 さて、昨年12月の衆院選をめぐり、各地の高裁で違憲判決が相次ぐなか、与野党が「1票の格差」の是正案を提示している。

 民主党案は、現行の小選挙区比例代表並立制のまま、小選挙区30減、比例区50減にする。区割りは選挙区270を人口比例で機械的に都道府県に配分する-ものだ。

 民主党案では、鳥取県と島根県の小選挙区は定数2から1になる。地方の議席が減ることに、「地方の声が中央に届かなくなる」「地方軽視だ」という声もある。その気持ちは分かるが、「1票の平等」は民主主義の根幹であり、是正は避けられない。ていねいに説明するしかない。私も先週、両県を訪問し、党の県連幹部と意見交換をしてきた。

 そもそも、国会議員は選挙区や支援団体の利益代弁者ではなく、「全国民の代表」として行動する存在である。都市部選出の議員も、政党も、地方の声に真摯に耳を傾け、国益を踏まえた政治判断をしなければならないのは当然のことだ。(民主党衆院議員)

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