飯島内閣参与は訪朝の理由説明すべき 二元外交なら許されない(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年5月23日号)
飯島勲内閣官房参与の北朝鮮訪問は極めて疑問というしかない。
まず、どういう立場で訪朝したのか。内閣官房参与であるため、政府を代表して訪朝したとしか考えられないが、安倍晋三首相らの説明はあいまいだ。
関係国が歩調を合わせて北朝鮮に経済制裁を科すなか、抜け駆け的に訪朝した点も説明がない。飯島氏は北朝鮮幹部に対し、「日本は拉致問題で妥協しない」などと伝えたとされるが、それは従来の政府方針だ。それ以外にどういう話し合いがあったのか。岸田文雄外相や外務省は事前に承知していたのか。通訳や同行者はいたのか。いずれもはっきりとしない。
万が一、飯島氏が個人的立場で行ったとすれば、まさに「二元外交」であり、飯島氏の行動は許されるものでない。それを許した安倍首相や菅義偉官房長官の責任も問われることになる。
ともかく、北朝鮮の核・ミサイル問題は日本と日本国民の安全に関わり、拉致問題は日本の主権、被害者の方々の人権に関わる。ともに極めて重要な問題だ。米国や韓国、中国など関係国の理解と協力も欠かせない。飯島氏は国会に出てきて、きちんと説明することが求められると思う。
こうしたなか、安倍首相の歴史認識が問われている。
安倍首相は以前、戦後50周年の1995年に出された「村山談話」について、「そのまま継承しているわけではない」と語っていたが、最近は「政権としては全体として受け継いでいく」などと国会で答弁している。
一見、軌道修正したかに見える。しかし、村山談話は「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」「疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と述べている。つまり、日本による過去の「植民地支配」と「侵略」を「事実」として認めたうえで、謝罪しているのだ。
2005年の「小泉談話」でも、「植民地支配」と「侵略」を認めて、お詫びの気持ちを表明している。私は10日の衆院内閣委員会で「安倍内閣も引き継いでいるのか」と質問したが、菅官房長官は最後まで、「植民地支配」と「侵略」の言葉を口にしなかった。
「植民地支配」と「侵略」は村山談話、小泉談話の核心部分だ。安倍首相は「日本が侵略しなかったと言ったことは一度もない」とも国会で述べているが、植民地支配や侵略の事実があったと認めたこともない。
もし、歴史的事実と向き合わずに、村山談話や小泉談話の核心部分を認めないなら、大きな歴史認識の転換になる。ごまかさずに、きちんと説明しなければならない。
日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)の発言が注目されているが、現職首相である安倍首相の歴史認識は、それ以上に重大な問題だ。中国や韓国だけではなく、米国も問題視しており、終盤国会の大きな焦点になるだろう。(民主党衆院議員)
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