安倍政権の成長戦略は「願望リスト」 参院選前に大風呂敷(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年6月20日号)
安倍晋三政権の成長戦略が14日、閣議決定された。「日本再興戦略」と名付けられたようだが、中身を見ると、野田佳彦政権時代に掲げた「日本再生戦略」と変わり映えしなかった。しかも、具体的に決めたものはほとんどなく、「こうしたい」という願望のリストといえる。
「一般医薬品のネット販売解禁」が注目を集めたが、便利さと安全のバランスをどう取るのか、根本的な議論がない。「混合診療の解禁」も10年以上議論されてきた課題だが、今回も具体論には踏み込めなかった。農業への株式会社参入も見送られた。この様子では、自民党支持の利益団体が復活するなか、今後、本当に調整できるのか疑問だ。
株式市場は「新味がない」と判断したのか、売りが続き、皮肉にも株価は下落した。安倍政権は、投資減税を柱とする企業減税など、早々に追加策の表明を余儀なくされたが、いかにも、その場限りの対応に思える。
一連の成長戦略を見て疑問に思うのは、公共事業や防衛費の積み増し、幼児教育の無償化など、お金を使う話はたくさん出てくるが、財源に関する話がないことだ。行政改革も切り込み不足が目立つ。これで、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の2020年度黒字化は変えない」といわれても、ブラックジョークにしか聞こえない。
昨年末の衆院選前、自民党はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に反対だったはずだが、いつの間にか「TPP交渉参加」に変わった。今回も参院選前に、大風呂敷を目いっぱい広げている印象が強い。選挙後に政策方針が変わらないか注視していきたい。
さて、来月の参院選を見据えて、地方に応援に行く機会が増えている。今日(19日)は、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県沿岸部を回っている。震災から2年3カ月たつが、被災地の状況はまだまだ厳しい。復興については、与野党も選挙も関係なく、しっかりと協力していきたい。
地方を回って、街頭演説などをしていると、国民の方々の民主党に対する反応が徐々に変わってきたように感じる。先日は地元・三重で、同じ民主党の高橋千秋参院議員とともに早朝の駅頭に立ったが、多くの方にビラを受け取っていただき、「頑張って」と言葉もかけていただいた。
アベノミクスへの過剰な期待から、冷静さを取り戻しつつあるのではないか。世論調査では、民主党の支持率はなかなか上がらないが、何とか選挙までに風を起こしたいと思う。 (民主党衆院議員)
高橋千秋参院議員とともに駅立ち