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2014.07.11|夕刊フジ

議論が足りない集団的自衛権 衆院だけで最低100時間の審議を(夕刊フジコラム「ズバリ直球」14年7月10日号)

 日本政府は、北朝鮮に対して日本が独自に科している経済制裁の一部を解除した。北朝鮮が設置する拉致被害者の再調査などに関する特別調査委員会が、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の直轄組織であり、実効性ある調査が見込めると評価したという。政府の評価が正しければ、拉致問題の解決に向けて半歩前進であり、歓迎したい。

 ただ、相手は北朝鮮だ。再調査の日朝合意後も、ミサイルを発射している。とてもこのまま一直線に解決に向かうとは思えない。北朝鮮が本当のところ何を求めているのかもハッキリせず、核・ミサイルの問題を絡めてくることもあり得る。どうか、政府には懐深い外交を展開してほしい。

 さて、安倍晋三内閣は1日、憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。今月中旬、安倍首相が出席して衆参両院の予算委員会で1日ずつ、集中審議をする。「閣議決定の前に十分な国会審議を」という要求は全く顧みられなかった。

 集団的自衛権など憲法9条をめぐる解釈は、政府と国会が戦後70年かけて、積み重ねてきたものだ。国民の疑問や不安が山積するなか、一内閣が国会を無視して、これだけ拙速に閣議決定したことに深い憂慮、大きな懸念を感じざるを得ない。

 今回の閣議決定では、集団的自衛権の行使が容認されるケースとして、《わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合》など新たな3要件を規定しているが、非常に曖昧だ。一体、《わが国の存立が脅かされ》《権利が根底から覆される》とは、どういう事態なのか。

 例えば、公明党は、新3要件でもペルシャ湾における機雷の除去は「認められない」というが、政府・自民党は「認められる」という。結局、こうした解釈は内閣に委ねられることになり、極めて大きな権限を内閣が持つことになる。裁量の余地が大きすぎる。

 自衛隊が他国への後方支援(輸送や補給など)を行う活動範囲も、これまでの非戦闘地域から、「他国が『現に戦闘行為を行っている現場』ではない場所」に大きく変わった。「地域」に比べて、「現場」というのは非常に狭い概念だ。

 そもそも、他国の後方支援をしている自衛隊が、戦闘が始まった途端に活動を中止し、他国を放置して撤収することなどできるのか。結局、そのまま留まって後方支援を続けることになるのではないのか。

 公明党は、閣議決定の文言を厳しくする役割は果たしたかもしれないが、根幹の部分を曖昧にしたまま、集団的自衛権の行使に道を開いてしまった。

 ともかく、疑問や問題は山ほどある。衆参1日ずつの国会審議ではとても足りない。これまで安全保障の重要法案は150時間から200時間の議論をしてきた。憲法の解釈変更は法律より重い。私は衆院だけで最低、100時間の国会審議を要求したい。 (民主党衆院議員)




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