対中で揺れる香港、台湾を訪問した 消費税率10%は避けられない情勢(夕刊フジコラム「ズバリ直球」14年8月21日号)
私は先週後半、親日的であり、中国との関係をめぐって揺れている香港と台湾を、3泊4日で訪問してきた。
香港で7月1日に行われた反中デモには、約50万人が参加した。これに先立ち民主派が実施した、香港行政長官選挙の改革を求める住民投票も、約80万人が投票したという。
経済人や報道関係者と会談したが、香港の人々としては、中国の存在感が大きくなるなか、返還後50年間は認められるはずの「一国二制度」「高度な自治」が、なし崩しとなるのではという危機感があるようだ。
行政長官選挙は現在、1200人の「選挙委員」が投票する間接選挙だが、2017年に直接選挙にしようとしている。だが、直接選挙の前提として、事実上、中国政府の同意を得た人の中から選ぶのか、1%の署名を集めれば出馬できるルールにするかでモメているという。
台湾では今年3月、馬英九総統が進める中国とのサービス貿易協定に反対して、学生らが国会に相当する立法院を約3週間にわたって占拠する事件が発生した。かつては台湾の方が中国よりも経済規模が大きかったが、今や逆転して、「中国に飲み込まれるのではないか」「中国人に雇用を奪われる」といった不安感が底流にあるようだ。
馬氏とは総統府で会談した。これまで中国との連携を強める姿勢が強かった馬氏だが、私との会談では、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係強化を強調していた。立法府占拠事件を受けて、慎重になっている印象を受けた。
香港も台湾も、中国と別の道を行くわけにはいかないが、巨大化する中国との間に一定の距離感を保ちたいという思いが感じられた。
驚いたことに、香港の人口は約710万人だが、昨年1年間で約75万人が日本を訪れたという。台湾の人口は約2300万人だが、同じように約220万人が日本に来ている。ともに人口の10分の1が訪日するという親日国であり、日本にとって極めて重要な地域といえる。
さて、消費税増税を受けた、4~6月のGDP速報値が発表された。予想の範囲内とはいえ、年率換算で6・8%減と大幅に悪化した。7~9月も改善はするだろうが、梅雨明けの遅れや天候不順で、夏物商品の売り上げが鈍いなど不安要素もある。決して楽観視はできない。
安倍晋三政権は今秋、消費税率を2015年10月に10%へ引き上げるか、最終判断が迫られる。景気の先行きは極めて心配だが、日本の財政状況を考えると、余程のことがない限り、10%は避けられないと考えている。
ともかく、金融緩和と公共事業頼みのアベノミクスは、そろそろ限界なのかもしれない。 (民主党衆院議員)