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2014.10.03|夕刊フジ

安倍首相の中身のない所信表明、極めて残念(夕刊フジコラム「ズバリ直球」14年10月2日号)

長野、岐阜県境にある御嶽山が27日に突然噴火した。頂上付近で多くの登山客が噴煙に巻き込まれ、9月30日夕までに12人の死亡が確認され、心肺停止状態の24人が山中に残されている。けが人は少なくとも69人に上った。亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、被災した方々には心からお見舞いを申し上げたい。

 広島市での大規模土砂災害に続き、自然災害で多くの人命が失われた。非常に残念だ。報道によると今回のような水蒸気爆発は専門家でも予測が困難だという。登山ブームのなか、被害を最小限にするにはどうしたらいいか国会でも議論する必要があるだろう。

 さて、臨時国会が29日召集された。同日午後、安倍晋三首相の所信表明演説が行われたが、非常に散文的で、内閣が重要課題と位置付ける地方創生ですら、具体的な内容がほとんどなかった。これほど中身のない所信表明は聞いたことがない。

 安倍首相は地方創生の推進にあたり「各府省の縦割りを断固排除」「バラマキ厳禁」などを指示したという。ならば、民主党政権が、自治体の裁量で幅広い使途に活用できるとして導入した地方向けの一括交付金を、政権交代後ただちに廃止した理由をぜひ聞きたい。

 唯一、沖縄県では続いているが、知事や市町村長から高く評価していただいている。石破茂地方創生担当相も最近「地方からの要請もあり、政府で真剣に検討する」と語っているが、実に滑稽な話だ。

 もし、「民主党政権がやったことはケシカラン」といった狭量な考えで一括交付金を廃止にしたなら、地方衰退を加速させる愚かな判断だったことになる。国会では、そういった点もしっかりと説明してもらいたい。

 雇用の問題も、問いただしたい。

 労働者派遣法が臨時国会で再び提出されるようだが、事実上、派遣労働者の受け入れ期間の上限をなくす内容で、非正規雇用の増加につながるものだ。特に若者の所得や生活を不安定にし、未婚・非婚が増えるなど、安倍政権が最重要課題と位置付ける少子化対策にも逆行する。

 他方、安倍首相は所信表明で「多くの企業で賃金がアップした」と胸を張っていたが、非正規労働者の賃金は上がっておらず、物価上昇を差し引いた実質賃金は、正規でも非正規でも上がっていない。

 集団的自衛権行使を容認する閣議決定が、国会での徹底した議論を経ないで行われたことも問題だ。国民不在のまま一内閣が憲法判断を変えられるとなれば、憲法の安定性は大きく損なわれる。現行憲法は徴兵制を否定しているが、それすら変えられる恐れが出てくる。

 ともかく、安倍首相の所信表明演説は、さまざまな成果を「自分たちがやった」と誇るいつものスタイルで、ダメなことは野党に責任転嫁していた。一国のリーダーとしての懐の深さがまったく感じられないものだった。極めて残念だ。

 私は国政選挙担当の代表代行として、国会外の仕事が忙しいが、機会を見て、安倍首相と予算委員会で徹底的に議論したいと考えている。 (民主党代表代行)




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