自民党に求めるのは「国民の声に耳傾ける姿勢」(夕刊フジコラム「ズバリ直球」14年12月25日号)
衆院選は残念な結果に終わった。民主党は、次の政権交代に向けた「基礎固め」という位置付けで、精いっぱい戦ったが、前回選挙時から16議席増の73議席にとどまった。突然の解散とはいえ、政権を狙う政党としては100に近い議席がほしかった。民主党を応援していただいた方々にはお礼とともに、おわびを申し上げたい。
維新の党との選挙区調整については、いろいろな意見があった。ただ、小選挙区で勝利した38人のなかで、維新と競合して打ち勝った民主党議員は2人しかいない。調整しなければ、民主党と維新が共倒れして、自民党にもっと漁夫の利を与えたことだろう。
全国を応援で回って、自民党政治やアベノミクスへの懸念はかなりあったが、景気回復に期待して「もう少し待ってみよう」という声が多かった気がする。多忙な師走の選挙への関心が高まらないなか、自公与党に3分の2以上を与えてしまった。
これまで民主党には「リベラル」と「改革政党」という2つの大きな柱があった。今回の選挙を見ると、有権者に「改革姿勢が弱くなっている」と受け止められているのではないか。
民主党を再生させるには、分かりやすくエッジの効いた改革政策を掲げて、女性を含めた魅力ある候補者の擁立を進める必要がある。党内でも、亀裂を恐れて議論を避けるのではなく、徹底的に開かれた議論を行い、決まれば一致結束する強さを見せなければならない。
野党再編も取り沙汰されている。
まず、来年の通常国会で、維新と政策的な共通点を見いだし、どこまで連携できるかを探っていくべきだ。衆院選で戦ったばかりなのに、いきなり再編はあり得ない。「野合」といった批判を避けるためにも、政策で切磋琢磨(せっさたくま)し、信頼関係を築いてから進めるべきだろう。
2015年は経済が心配だ。今年4月の消費税増税が日本経済に打撃を与えたという見方があるが、数字を見ると、13年の10-12月あたりから経済に変調が出てきたといえる。これをどう乗り越えるかが重要だ。
圧倒的多数を得た自公与党が、今後どんな政権運営をしていくのかも注目される。多様な声に耳を傾ける謙虚さを見せるのか、これまでのような問答無用の政治を続けていくのか。前者であることを強く願っている。
さて、衆院選の直前、私は外相時代の経験などをまとめた『外交をひらく-核軍縮・密約問題の現場で』(岩波書店)を上梓した。日米密約の調査・解明や、核軍縮・不拡散のための各国協議などについて、かなり踏み込んで書いたつもりだ。国民の理解と信頼があってこそ、力強い外交が展開できる。ぜひ、ご一読いただきたい。 (民主党代表代行)