テロ対策「自衛隊の任務遂行」は冷静な論議が必要(夕刊フジコラム「ズバリ直球」15年2月5日)
過激派組織「イスラム国」(ISIL)による日本人殺害脅迫事件は、湯川遥菜さんに続き、ジャーナリストの後藤健二さんを殺害したとされる映像が公開される、最悪の結末を迎えた。
お二人のご冥福をお祈りするとともに、ご親族の方々には心より哀悼の誠をささげたい。まさに痛恨の極みだ。テロ集団の蛮行に強烈な怒りを禁じ得ない。いかなるテロ行為も決して容認することはできない。
日本政府は、できる限りの対応をしたのだと思う。邦人救出のため、24時間態勢で対応した方々には、敬意を表したい。そのうえで、二度と悲劇を繰り返さないため、具体的検証を進めなければならない。すでに識者やメディアが、問題点を指摘している。
例えば、(1)2人が人質となっていることがありながら、安倍晋三首相がイスラエルを含む中東を歴訪したこと(2)安倍首相がカイロで行った中東政策演説が、イスラム国を刺激したのではないか(3)ヨルダンに現地対策本部を設置したことの妥当性-などだ。
この問題を、党利党略でやるつもりは一切ない。国民の生命、安全を守っていくために、国会などで冷静かつ慎重に議論していきたい。ぜひ、政府には可能な限り情報を公開し、わが党をはじめとする各党の質問に誠実に答えてほしい。
今回の事件を受けて、国内外で日本人がテロに遭うリスクは一段高まったといえる。もはや、「日本は安全」「日本人は大丈夫」といった意識は捨てなければならない。政府には、在外邦人の保護や水際対策、重要施設の警備強化に万全を期すことを要望したい。
政府は、テロに巻き込まれた在外邦人の救出のため、自衛隊が任務遂行できるように法整備を目指しているという。私も議論の必要性は認めるが、今回の事件を受けて拙速に進めるべきではなく、冷静な議論が必要だ。いずれにせよ、他国にも評価されている「自衛の目的以外、海外では武力行使しない」という大原則は貫くべきだ。
さて、通常国会の召集から1週間以上過ぎた。テロ対策、安全保障法制、アベノミクスの限界、格差の問題、社会保障制度、戦後70年の首相談話など、議論すべきテーマは山積している。わが党は、先週の衆院予算委員会に続き、今週の参院予算委員会に、論客を続々と投入している。
私自身も今月半ばには、安倍首相の施政方針演説に対する衆院本会議代表質問や、それに続く予算委員会の質疑に立つ予定だ。安倍首相とは骨太で建設的な、真に中身のある議論をしたい。そして、これからの国会論戦を通じて、国民の方々に「民主党ここにあり」という姿を、ぜひお見せしたいと思う。 (民主党代表)