平成27年6月26日 第189回国会 安全保障法制特別委員会
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○岡田委員 民主党の岡田克也です。
本題に入る前に、いろいろな各種の世論調査がございます。それぞれ調査によって少しの差はありますが、おおむね八割ぐらいの国民が政府の説明は不十分だというふうに答えています。それから、半分以上の方々が、この法案に反対だ、あるいはこの国会で成立させることに慎重な意見を述べておられます。
今こういう状況にあることについて、総理はどういうふうにお感じでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 私も、世論調査等において、まだ十分に政府は説明を果たしていないという御意見の方が多い、あるいは国会での議論が不十分であるという御意見が多いということは十分に承知をしております。
その中におきまして、私どもは、国会の会期、過去最大幅の会期の延長をいたしまして、じっくりと国会で議論をしていく、十分な審議の時間をとったところでございまして、こうした国会また委員会での議論を通して国民の皆様に御説明をしていきたい。また、国会の議論だけではなくて、与党において、また自民党において、各地域において説明会を開催していくということも通じて、さらに理解を深めていきたいと思います。
そうした説明の機会をいただければ必ずや御理解がふえていくのではないか、御理解をいただけるのではないか、このように考えているところでございます。
○岡田委員 総理から、十分な議論の時間、審議の時間をというお話をいただきました。私もそれは非常に大事なことだというふうに思います。この委員会での議論も十分に行って、国民の理解、どういう理解かはともかくとして、国民の理解を得られるようにしていかなければならないと私も思っています。
そこで大事なことは、審議時間が何十時間たったから採決しますよということではなくて、やはり国民がどれだけ理解したかということでその適否を決めていくべきである、そういうふうに私は基本的に考えるわけですけれども、そこは総理、御同意いただけますか。
○安倍内閣総理大臣 今まで、さまざまな国の判断あるいは議会の判断がございました。そのたびごとに、残念ながら国民の支持が十分でなかったものもございます。典型例が、六〇年の安保改定もそうではなかったかと思いますし、またPKO法案が成立をしたときもそうではなかったかと思います。しかし、今ではそれぞれが十分に国民的な理解を得ている。法案が実際に実施される中において、これはやはり国民のためのものなんだなという理解が広がっていくという側面もあるわけでございます。
政治家は、いわば国民の代表としてこの議会で有権者を代表して議論を闘わすわけでありまして、そしてそれぞれの見識において、どこかの時点で議論が尽くされたという判断を委員会においてあるいは議会においてなされれば、決めるときには決めるということになるのではないかと思います。
○岡田委員 ぜひ、内容のある議論をしていきたいと思います。私も今回、中身をかなり事前にお知らせして、そして議論したいというふうに考えているわけです。
そして、国民の安全と平和な暮らしを守る、ここは共通の認識ですね。私たちは、日米同盟は重要である、強くそういうことを考えているわけです。ですから、そういう前提の中で、しかし政府のおっしゃることにさまざま問題があるし、もちろん違憲の問題も含めてありますので、一つ一つしっかりと議論していきたいと思います。
その第一ですけれども、前回、党首討論で申し上げました重要影響事態と存立危機事態の違いです。重要影響事態、我が国の平和、安全に重要な影響を与える事態、ここから存立危機事態、我が国の存立が脅かされ国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に移行する一番のポイントは何なのか。前者は米軍等に対する後方支援、後者は我が国自身の武力行使、大きな違いがあるわけです。
今までの総理の御答弁を見ていても、その判断基準、これは五月の答弁をそれぞれ引きましたけれども、重要影響事態と存立危機事態でほとんど同じですよね。この赤字で書いたところだけが違う。重要影響事態は後方支援ということになりますから、その前提となる米軍等の活動というものが一つ入っておりますけれども、そのほかのところは一緒ですよ。
だから、同じ配慮要因、考慮要因の中で、では一体何が違うのか。日本のすることは決定的に違います、後方支援と武力行使ですから。そこをわかりやすく総理に説明していただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 今、岡田委員が指摘されたように、重要影響事態と存立事態。重要影響事態については、後方支援をするわけでありまして、武力行使はしない。存立危機事態については、まさに我が国の生存そして国民を守るために武力行使をする。これは大きな違いがあるわけであります。
この重要影響事態と存立危機事態の両者は、異なる法律上の概念として、それぞれの法律に定める要件に基づいて該当するか否かを個別に判断するものでありますが、我が国にどれくらいの戦禍が及ぶ可能性があるのか、そして国民がこうむることとなる被害はどの程度なのかといった尺度は共通するわけでありますが、存立危機事態は概念上は重要影響事態に包含されるものであります。したがって、事態の推移により重要影響事態が存立危機事態の要件をも満たし、存立危機事態が認定されることもあり得るということは、今までの委員会でも何回か答弁をしてきたとおりでございます。
どのような状況がこのような場合に当たるかは一概に申し上げることは困難でありますが、その一例をあえて申し上げるといたしますと、我が国の近隣で武力紛争が差し迫っている状況で、米軍も事態の拡大を抑制し、その収拾を図るために活動をしている、我が国も重要影響事態法のもとで対応措置を行っていたが、状況がさらに悪化し、我が国と密接な関係にある他国、例えば米国に対する武力攻撃が発生した。
さらに、その時点ではまだ我が国に対する武力攻撃が発生したとは認定されないものの、攻撃国は我が国をも射程に捉える相当数の弾道ミサイルを保有しており、その言動などから我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている状況にある。
当該他国の弾道ミサイル攻撃から我が国を守りこれに反撃する能力を持つ同盟国である米国の艦艇への武力攻撃を早急にとめずに、我が国に対する武力攻撃の発生を待って対処するのでは、弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることになる明らかな危険がある。
このような場合であれば、いわば重要影響事態からさらには存立危機事態に認定されていくということになるわけであります。
○岡田委員 やはり存立危機事態の定義が甘いんだと思うんですよ。我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される、非常にわかりにくいですよね。しかも、明白な危険がある事態。
私は、武力行使の要件でなければ政府の判断には多少の幅があっていいと思います。だけれども、武力行使するかしないかでしょう。そのことによって国民の権利が守られる部分もあるかもしれませんが、例えば反撃を食ったり、命が失われたりするリスクもあるわけです。これは重大な判断ですよね。それを基本的に政府に白紙委任する、そういう結果になるんじゃないか。いろいろな抽象的な要素は書かれていますけれども、あるいは発言されていますけれども、最後はいろいろな情報を総合して政府が判断するんだというふうにも答弁されていますから、私はやはり、武力行使のあるいは防衛出動の要件としては甘過ぎる、もっと明確にならなければならない、そういうふうに思っております。
そこで、今、総理、具体例を挙げられました。随分長くお話しになったので、党首討論のときにも総理は同様の例を挙げて御説明いただきました。
あのとき総理が言われたのは、既に日本の同盟国、例えばアメリカが周辺有事でどこかの国と戦闘が始まっている、そのときにそのある国が、あえてある国と言いますが、ある国が東京を火の海にするなどの発言をどんどんエスカレートさせる、さまざまな状況、日本に対してミサイル攻撃するかもしれないという状況が発生している、その中において米艦船が攻撃される、こういう具体例を挙げられました。
今言われた例とほとんど同じだと思うんですけれども、この御説明を聞いて私よくわからないのは、どこまでいったら存立危機事態と認定して防衛出動するんですかということをお聞きしたいと思うんですね。
大きく言って三つあると思うんです。一つは、米国がその国と戦闘に入った、こういう時点です。もう一つは、総理のおっしゃる、さまざまな状況、日本に対してミサイル攻撃をするかもしれないという差し迫った状況が発生している、これが第二点。第三点は、米艦が攻撃を受ける。この一、二、三の中のどこで存立危機事態だと認定し、防衛出動されるんでしょうか。これは基本的な問題なので、ぜひお聞かせください。
○安倍内閣総理大臣 重要影響事態という中においては、まさに例えば近隣国の中において紛争が発生し、その中で米軍あるいは米軍を含む他国の軍隊がこの対応に当たっているという状況の中において、そこで我々も重要影響事態の中において後方支援をしているということであります。
そこで、しかし、その中において、単に米国に対しての武力攻撃、そもそも武力攻撃が発生しているという中において、我々は、例えば米国に対しての武力攻撃が発生している中において後方支援をしている状況において、いきなり存立危機事態にはなっていない中において重要影響事態と認定しているわけであります。もちろん、そのまま放置すれば我が国にも重大な戦禍が及んでくる危険性等もあるという中において後方支援をしていくわけでございますが、いわば存立危機事態については、これは何回も申し上げておりますように、三要件に当てはまっていく理由が必要でございます。
三要件というのはすなわち、我が国の存立が脅かされなければならないわけでありまして、そして国民の生命や自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることというのがあるわけでございます。それがまさに判定の基準でありますし、その中で、例えば、先ほど申し上げましたように、相手国が東京も火の海にすると既に言っているという状況があります。そして、例えばその中で、彼らの態勢、日本に直接攻撃を加えようとしているという態勢がある程度さまざまな状況から情報として入っているという状況もあるわけでございます。
こういうことは、まさにこれは日本の手のうちを今明かしているわけでありますから、手のうちを明かしているわけでありますから余り詳細に申し上げることは控えさせていただきたいとは思うわけでありますが、しかし、わかりやすく説明をしなければならないということにおいて、たびたび、ではほかの例、ほかの例と言われても、それはそれほど説明するわけにはいきません。
しかし、そこで米国の艦船がミサイル防衛において重要な役割を果たしているという中において、その艦艇が攻撃されるということについては、まさにこれは我が国に対する攻撃のための攻撃となる可能性というのは十二分にあるわけで、我が国を攻撃する上における米国に対する攻撃、つまり、我が国を攻撃する上においては、我が国が攻撃されれば日米で共同対処をします、共同対処をするわけでありますから、一緒に行動する米軍の力をあらかじめそいでおく、あるいはまたイージス機能を落としておく、そういう作戦上の可能性というのは十分にあるわけでありますから、そこで判断をするわけであります。
しかし、その判断はもちろん、そのときの政府が総合的に最終的には判断するわけであります。いわば法律事項において自動的に決められるということではもちろんないんです。さまざまなことを総合的に判断しなければならないわけでありますから、しっかりと政府がそういう高い情報収集力と判断する能力を持たなければならないわけでありまして、幾ら法律をちゃんとつくっても、能力のない政府であれば……(発言する者あり)
○浜田委員長 静粛に願います。
○安倍内閣総理大臣 ちゃんとした法律を用意しておいても、能力のない政府であっては当然正しい判断はできない、残念ながらそれはできないわけであります。いずれにせよ、ですから、法律を正しく活用しながら状況を正しく分析し判断するということが時の政府には当然求められるわけでありますが、その中においてこの三要件に当てはまるかどうかということに全てかかっているのではないか、このように思います。
それではわかりにくいとか、そういう批判をする方がおられますが、世界じゅうで、細かく、これで、これで、これで、こういう状況であれば武力行使をするなんということを決めている国はあり得ませんよ。もちろん、ルール・オブ・エンゲージメントというものはありますよ。でも、その中においてまさに最終的な政府の判断を具体的に全て判断して、これでなければだめだということというのは基本的にはない。しかも、個別の想定される相手との関係においてそれを定めている国というのは、相手を定めてそんなことを決めている国というのは基本的にはないんだろう、このように思います。
○岡田委員 総理、私も時間がありますので、もう少し端的にお話ししていただきたいと思うんですね。やはり、頭の中をちょっと整理していただきたいんですよ。
一番目の話、先ほど言った一、二、三の一ではないということはわかりましたが、二か三かと私は聞いているんですね。だから、我が国に対してミサイルが飛んでくるかもしれないという状況が発生している、そこで存立危機事態と認定して防衛出動をするのか、その段階ではまだできなくて、実際に米艦が襲われたときに存立危機事態で防衛出動するのか、どちらなんですかと。
これは考え方の問題ですから、事前に言えないとか、そういう話じゃないです。お役所に十分レクを受けてください、それはもう決まっているはずですから。考え方として、ぜひお答えください。
○安倍内閣総理大臣 それはもう既に何回も御説明をしているとおりであって、まさに第一要件の中にあるように、我が国か、我が国と密接な関係にある他国に武力攻撃が起こらなければ当然何もできません。それは第一要件で明らかなんですよ。
つまり、武力攻撃が発生して初めて、ですから武力攻撃が発生していないときに、さっき申し上げたような、ある国が日本を火の海にしてやると、そして攻撃する態勢をとっていたとしても、これは切迫事態にはなるかもしれませんが、武力攻撃は発生していませんから、個別的であれ集団的であれ自衛権を行使することはできない。これは着手ではありませんから、切迫事態でありますが、まさに我々は自衛権を行使することはできない、このように考えております。
○岡田委員 私が聞いているのは、第一要件、国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険、これは、相手の国のリーダーの言動あるいは準備の状況などを見て、ミサイルが我が国に飛んでくる可能性がある、そのことをもって国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆されると考えるのか。いや、それではまだその要件は満たしていないと。実際に日本を守っている米艦が攻撃を受けるというときに初めてこの第一要件に該当するのか。どちらなんですかということを聞いているわけです。
明確にお答えください。
○安倍内閣総理大臣 もう既に明確にお答えをしていると思いますが。
まず最初に前提として、我が国か、我が国と密接に関係のある他国に武力攻撃が発生しなければならない。その上において、今申し上げましたように、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があって、そしてこれを排除するために、国の存立を全うし国民を守るために他に手段がないということを確かめなければいけないわけでありまして、外交的手段等も尽くしたのかということも問われるわけでございます。その上において必要最小限度の実力行使にとどまるべきことと書いてあるわけでありまして、この三つとも満たさなければ武力行使はできないということになるわけであります。
ですから、これが常に三つとも満たされているかどうかということになるわけでありまして、一つでも欠けたらこれはこの法律上できないということになるわけであります。一つでも欠けてはならないということになるわけであります。
○岡田委員 形式論を聞いているんじゃないんです。具体的な事例で、総理自身が挙げられた事例ですよ、これは。だから、総理大臣として、どこで存立危機事態だとして防衛出動するんですかということを聞いているわけです。
三段階あると申し上げました。一段階は米軍がどこかと戦っている、この段階ではないようだ。しかし、二番目の段階なのか、三番目の段階なのかということを総理は全くお答えにならない。これは一番基本的なところですよ、議論のスタートですよ。それを総理がきちんとお答えになって初めていろいろな議論が展開できるわけですよ、我々の考え方も御披露できますよ。そこをきちんとお答えにならなかったら、国民にわかるはずないじゃないですか。
○安倍内閣総理大臣 まず、近隣諸国で紛争が起こり、この対応に当たっている米軍との関係において、そこで米軍に武力攻撃が発生したとしても直ちに存立事態になるわけではないわけでありまして、ここでは重要影響事態において我々は後方支援をしている。しかし、その中において先ほど申し上げたようなことが生起してくる。例えば、東京を火の海にすると。そして、さまざまな情報において、我が国に対するミサイル攻撃を準備している可能性があるという状況が発生してきます。
そういう言動等、あるいは彼らが持っている海軍力をある点に結集し始めているということになれば、これは例えば切迫事態になりますから、防衛出動が可能になってくるわけであります。この段階で切迫事態として防衛出動が可能になりますが、武力攻撃はまだ発生しておりませんから武力行使はできないということになるわけであります。
そこで、いよいよ実際に、ミサイルの発射を警戒している米軍の艦艇に対して艦上ミサイル、艦対艦ミサイルが発射されたという段階において、例えばその艦対艦ミサイルを我が国のイージス艦は能力上撃沈する能力があるという段階において発射された、そして今までの態様、進展ぶり、彼らの発言等からすれば、これを撃沈した後に攻撃がこちらに向いてくる、そしていわばミサイル防衛体制、日本のミサイル防衛の能力の一角を崩そうとしているという可能性というのはあるわけでありますから、そのときにおいては国の存立が危うくなったという判断をすることもあり得る。これは限定的ではありませんけれども、総合的判断をしなければなりませんが、そういうこともあり得るということではないか、このように思います。
○岡田委員 今の御説明だと、二番目だけじゃだめで、三番目、実際に攻撃されたかどうかはともかくとして、攻撃される、そういう状況になったときに存立危機事態を認定して防衛出動する、こういうお話だったと私は理解しました。
しかし、それでは間に合わないですよね。それから存立危機事態を認定して防衛出動するんですか。間に合いませんよね。向こうがミサイルを撃ってくるときにそういう手続をしていて自衛隊が防衛出動する、それは論理的に成り立たない説明をしておられると私は思います。
いずれにしても、ほかにもやるべきことがありますので、きょうはこの辺にしてまた次回やりたいと思いますが、基本的なことなので、しっかりと国民にわかりやすく説明していただきたいと思います。
次に行きます。(パネルを示す)この「新三要件と旧三要件」で、それぞれあるわけですけれども、これは法制局長官にお聞きしたいと思っております。
旧三要件のときの第三要件、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、これは何に対して必要最小限度かといえば、それは第一要件である我が国に対する急迫不正の侵害がある、これを排除するための必要最小限だというふうに私は理解しております。新三要件についても、これは赤で書いたところですね、存立事態、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、この状況を排除するための必要最小限がこの第三要件の意味だというふうに理解しておりますが、それでよろしいですね。
○横畠政府特別補佐人 御指摘のとおりでございます。
○岡田委員 そういうふうに考えますと、例えばホルムズ海峡の例を挙げたいと思うんですけれども、ホルムズ海峡でこの新三要件、まず第一要件、私はこういうことはないと思いますが、国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が油がとまることによって起きている、そういうことがあると政府は御説明になっているわけですね。この第一要件を満たしたときに、第二要件、第三要件。第三要件で必要最小限の実力行使ということですから、波静かなときにその機雷を排除する、掃海する。これが、政府の言っておられるホルムズ海峡における限定的な集団的自衛権の行使です。
私がお聞きしたいのは、この第一要件、今言ったような国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じている場合に、もし波静かでなかったらどうなんですか。波静かでなくて、まだ戦闘が時々起きているような状況。そのときの必要最小限というのは、必要最小限を満たしていないということじゃなくて、第一要件がもう既に起きているわけですから、それを排除するための第三要件ということで、必要最小限度のそういった排除行動、戦闘行為の排除行動もしながら機雷を除去するということも憲法上は可能である、この新三要件のもとで可能である。そういう考え方でよろしいですね、法制局長官。
○横畠政府特別補佐人 いわゆるホルムズ海峡の機雷の問題でございますけれども、どのような状況を私自身として考えているかといいますと、まず、そのような機雷の敷設というのが、我が国に対する武力攻撃の意図があるならば、それはまさに我が国に対する武力攻撃そのものになり得るんだというのが前提でございます。もしそうであるとするならば、それを放置するのであればまさに国民の生死にかかわるような深刻、重大な被害が生じて、他に手段がなく、まさに座して自滅を待つということになるのであれば、それは他国の領海に敷設されたものであるとしても、これまで申し上げている誘導弾等の基地をたたく場合と同じことになるということで、個別的自衛権の発動によってその機雷を処理するということはあり得るだろう。
ただし、あくまでも必要最小限ということでございまして、いわゆる海外派兵をしないという原則がありますので、本格的な戦闘まで及ぶということは、個別的自衛権の場合でもそこまではできないという解釈をしているわけでございます。そのことは、まさに自国を守るために限定した今般の集団的自衛権というものを行使する場合も同様であろうということを申し上げているわけでございます。
○岡田委員 いや、長官、ごまかさないでくださいよ。私、個別的自衛権の話は全くしていませんから。
今まで政府が御説明になっている集団的自衛権行使のとき、つまりホルムズ海峡に機雷がばらまかれた、それは別に日本をターゲットにしたものではない、しかし日本のタンカーが現実に通れない、そういう状況のもとでそれを排除することはできる。それは波静かなときにできるということは今までるる説明されていますが、波静かでなくても、実際やるかどうかは別ですよ、しかし憲法上はできるというような答えじゃないですか。ごまかさないでくださいよ。
総理も今までの答弁の中でそういうことは言っておられますよ。戦闘行為が行われる中では事実上オペレーションできない、事実上できないとおっしゃっているんですね。これは憲法の問題ではなくて、憲法との関係ではなく政策的な判断であると、五月二十七日、松野さんの質問に対してお答えになっています。
つまり、憲法上は可能なんです。政策的にやるかどうかは別です。法制局長官、どうですか。個別的自衛権の話じゃないですからね。
○横畠政府特別補佐人 今パネルでお示しいただいています第三要件の必要最小限度といいますのは、先ほどお答えしたとおり、新三要件のもとにおきましても我が国を守るため、国民を守るための必要最小限度ということで、個別的自衛権を発動する場合と変わっていないのでございます。
すなわち、先ほどホルムズ海峡の機雷の例を我が国に対する武力攻撃と認定できる場合には個別的自衛権を発動すると申し上げましたけれども、その認定ができないときでも、実際に我が国に対する武力攻撃が発生した場合とまさに同様な深刻、重大な被害が生じている、そういう状況なのでございます。そのときには、国際法上は集団的自衛権と言われるものでございますけれども、一定の必要最小限度の武力の行使というのがあり得るということを申し上げているわけでございます。
そこで、その必要最小限ということでございますけれども、我が国が武力攻撃を受けているときですら、まさに本格的な戦闘まではいたしません、他国の領域に入っていくのは例外中の例外で、まさに他に手段がない、本当に他に手段がないという場合に限るんだということを申し上げているわけでございまして、そのことは、自国防衛にまさに限るというこの新三要件のもとでの、いわゆる国際法上は集団的自衛権の行使として正当化される武力の行使であっても、全く同じであるということを申し上げているわけでございます。
○岡田委員 私の論理的な説明に対してちゃんとお答えになっていないですよね。
この赤い字で書いたところ、例えば政府の説明だと国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じている事態、そういう事態が現にあるときに、波静かなときはその機雷を静かに除去するということですが、波静かでないときだってそういう国民の生死がかかっているような状態であれば、そしてそれが個別的自衛権では説明できない、そういう事態であれば、当然、憲法上は、戦闘を排除し、例えば制空権を確保して機雷を除去するということは憲法上できますねという質問なんです。総理、どうですか。
○安倍内閣総理大臣 今委員がおっしゃった例えば制空権を確保してということにおいて、いわば我が国の戦闘機等々が相手の領土に行って基地を攻撃している、こういうことはまさに必要最小限度を超えることになるのではないか。正確には法制局長官に答弁をしていただきたいと思うわけであります。
基本的に、いわば制空権を支配するという目的を持って部隊を送ってそうした施設を壊滅するということについては、従来から申し上げております一般に海外派兵は禁じられているということに当たる可能性があるのではないか。もし必要であれば、詳しくは法制局長官から答弁をしていただきたい、こう思うところでございます。
その上において申し上げれば、先ほど既に御紹介をいただいているように、そこで機雷を掃海するということについてはまさに限定的、受動的な行為でもあるという中において、三要件に当てはまればこれは一般に認められていない海外派兵の例外に当たる、こう申し上げているわけであります。そして当然それは受動的、限定的なものになるわけでありまして、受動的、限定的になるわけでありますから、いわば事実上受動的、限定的になる中において、であるにもかかわらず相手の領空に行って空爆を行って施設を破壊していくということについては、その前の段階で既に一般に認められていない海外派兵に当たる可能性は高いのではないか、こう思うわけでございまして、法制局長官からこの点については答弁をいただきたい。
どの道、政策判断としては、事実上の停戦合意が行われていないところにおいて、そこに木やプラスチックでできている攻撃能力のない掃海艇を送ることは事実上考えられないということは繰り返し申し上げているとおりでございます。
○岡田委員 総理、政策判断の話を聞いているんじゃないんです。政策判断は総理大臣がかわったら変わるじゃないですか、状況が変わったら変わるじゃないですか。大事なのは憲法上どうなのかということでしょう。
先ほど必要最小限を超えるとおっしゃいましたが、最初に私が説明したように、必要最小限というのは、第一要件、これのための必要最小限なんですから、だから超えないんですよ。ほかに手段がなければ必要最小限の範囲に入っちゃうんですよ。そのことを、もうこれ以上やっても仕方がありませんから、次回またやりたいと思いますが、長官にはぜひお願いしておきたいんですけれども、やはり法制局長官、日本国政府の法律解釈の最後のとりでです。ですから、誠意を持ってしっかりと、ごまかさずにお答えいただきたいというふうに思います。
次に、もう時間もありませんが、日韓関係について総理にお聞きしたいと思います。
ことしは日韓基本条約五十年という非常に重要な区切りの年ですけれども、総理は朝鮮半島における植民地支配ということについてどういうふうに基本的にお考えになっているのか。例えば朝鮮総督府における統治とか、それから参政権の制限とか日本語の強制とか、あるいは、これは全てではありませんが創氏改名とか国家神道の普及とか、非常に自由を制限され、そして歴史と伝統のある国家である朝鮮半島の例えば韓国が非常に大きな制限のもとに置かれた。
総理は朝鮮半島の植民地支配についてどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 安倍政権としては、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるわけでありまして、今後も引き継いでいく考えであります。
そして、戦前のさまざまな出来事、日韓間の出来事につきましては、一九六五年の日韓基本条約で完全かつ最終的に解決しているものと認識をしておりまして、安倍内閣として植民地支配を否定したことは一度もないわけでありまして、また、累次申し上げてまいりましたように、基本的には歴史の個々の問題につきましては歴史家に任せるべきであろう、このように考えております。
○岡田委員 植民地支配については、村山談話、小泉談話、小渕総理と金大中大統領との日韓共同宣言、あるいは北朝鮮との平壌宣言、それぞれ触れられていることですね。だから、否定したことはないという言い方は私は非常に不十分だと思うんですけれども。
そこで、菅談話、それも引き継がれているというふうに理解しますが、この菅談話は私も外務大臣のときに深くかかわったわけですが、この中で「当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました。」ということを書きました。総理もこれは共通の認識でしょうか。
やはり私自身は日本人であることに誇りを持っていますし、日本の文化に誇りを持っておりますので、立場を置きかえてみたときに、そういうものがいろいろな意味で制限される、限定されるということは、私がもしそのときに朝鮮半島の、あるいは韓国の人の立場だったら絶対我慢できなかったと思うわけですね。そういうことを我々が強いてきた、過去に強いたということについて総理はどうお考えですか。
○安倍内閣総理大臣 もちろん、岡田代表が今おっしゃったように、相手の立場、相手の国の立場に立つ、国民の立場に立って考えるということは大変大切なことではあろうと思います。また同時に、そのときの世界史的な意味、状況等についても思索をめぐらせていくということも大切だろうと思います。
いずれにせよ、今申し上げましたように、安倍内閣としては歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるわけでありまして、今後も引き継いでいく考えであります。そして、個々の歴史認識につきましては歴史家や専門家に任せるべきである、このように考えております。
○岡田委員 総理、個々の認識は歴史家あるいは学者に任せるべきだというふうにおっしゃいましたが、総理はこの談話について、総理大臣としてではありませんが、過去にコメントしていますよね。総理が会長を務めておられる創生「日本」の中で、この談話を出したときに、出す前にまず反対の署名運動を試みられましたが、出したときに、「あまりに自虐的であり、日本国民と日本の歴史に対する重大な背信である。」これが安倍さんが会長を務められる創生「日本」のそのときのコメントですよ。
私はこれは本当に残念でした。いろいろな苦労をして日韓関係を何とかよくしていこうと、当時は日韓併合条約百年だったんですよ、そういう厳しい中でいろいろ苦労しながらやっているときに、当時野党だったかもしれませんけれども、こういう言葉を投げつけられる。今まで歴代総理大臣が日韓関係を、これは日韓関係にとどまりませんけれども、何とかよくしよう、そういう努力をしてきても、有力な政治家がそれを否定するような発言を繰り返されることでそのことが無に帰してきた、そういうことの歴史じゃないですか。
総理も過去にはそういうことをされたんですよ。反省はありますか。
○安倍内閣総理大臣 まさに日韓関係においては、その時々の政権が改善すべく努力をしていくわけであります。
ただ、改善をしていく上においてはお互いの努力も必要であって、そこは単に我々がどんどん主張すべきことを主張せずに国益を削っていけばいいということではなくて、ここはやはり外交でありますから、我々の国益を守るために主張すべき点はしっかりと主張していくということも求められているんだろう、このように思うわけであります。その中においてお互いが相手の立場に理解を示しながら、改善に向けて一歩一歩今努力をしている最中であるわけでございます。
○岡田委員 それぞれ主張すべきはきちんと主張するというのは当然だと思います。
しかし、この菅談話に対して安倍さんが、総理とは言いません、当時安倍議員が会長をしておられるその団体が示したその中身は、私は、これは決して褒められたものじゃないし、日韓関係を非常に悪くした、今の韓国側の安倍総理に対するいろいろな不信感、その一つがここにあるということは申し上げておきたいと思います。
ですから、総理、七十年談話を御検討中だと聞きます。これから七十年談話、その形式をどうするのか、閣議決定するのかしないのか、中身をどうするのか、いろいろな言葉を入れるのか入れないのか。私は、今まで使われた言葉をきちんと踏まえて、そして内閣の決定という形で出すべきだと思いますが、しかし、最終的にはこれは総理に委ねられていますよね。ですから、私は総理にぜひお願いしておきたいし、考え方を聞かせていただきたいんです。この七十年談話は非常に重要ですよ。この七十年談話によっては、せっかく今まとまりつつある、少しいい方向に進みつつある近隣の国々との関係、これがまたおかしくなりかねない。
韓国との関係はどうですか。総理、北朝鮮の脅威、いろいろ具体的に周辺の安全保障環境が変わった中で北朝鮮のミサイルの話を言われますけれども、これは韓国のいろいろな協力がなければ対応できない話でしょう。そういうときに、お互い歩み寄っていかなきゃいけないときに、それに水を差すような結果になっては絶対いけないと思いますね。もちろん、アメリカとの関係もそうですよ。ですから、ここは非常に大事ですから、十分考えてやっていただきたいし、そしてその結果について責任を負うのは総理ですから、そのことも踏まえて、いい談話を出していただきたいと思います。一言ありましたら。
○安倍内閣総理大臣 まさにこれはお互いが努力することが必要でありまして、民主党政権時代に李明博大統領が竹島に上陸しましたね。これは初めてのことであります。そして、そのことによって関係は悪化していくわけであります。かつての自民党政権時代にはそれはなかったことと言えるわけでございます。ですから、そういうことについて、あらかじめ、上陸すれば大きな問題になるということを果たして先方に伝えることができたかどうかという疑問も出されているわけでございます。(発言する者あり)
○浜田委員長 静粛に願います。
○安倍内閣総理大臣 これは委員会ですから、場外の方まで参加されるとやはり委員会としての統率がとれていないということになりますから、よろしくお願いをさせていただきたいと思います。
そこで大切なことは、まさにこれは両国が努力を積み重ねていくことであろう、こう思っております。
そして、七十年の談話につきましては、まさに日本というのは、さきの大戦の痛切な反省の上に平和国家としての道のりを歩んできたわけでございます。こうした歩みについて、七十年を迎えることしに、総理大臣として、国民の皆様あるいは世界に向けて談話として発表したい。今、有識者の皆様に議論を積み重ねていただいております。この有識者の皆様の御議論もしっかりと踏まえて、また耳を傾けながら考えていきたい、こう思っているところでございます。
○岡田委員 総理、日韓関係を初めいろいろな国との関係は、与党も野党もないと私は思っているんです。ですから、我々は野党として、しっかりと野党なりに努力したいというふうに思っているんです。
今、大統領の話をされました。いつもされるので一言だけ言っておきますけれども、確かに、李明博大統領が竹島に行かれたことは私は驚きましたし、本当に残念に思っています。しかし、そのことを、これは民主党政権で初めて行ったと総理は言われます。それはそのとおりですが、しかし、あのときに大統領が行った竹島に建っている石碑、これは自民党政権のときにできて、そして首相がその除幕式をやっているんですよ。だから、そのことも言わないとバランスがとれていないじゃないですか。
私はこれを言うのは初めてですよ。だから、余りつまらないことで野党攻撃をするんじゃなくて、私は、いい七十年談話をつくってくださいということを申し上げているわけですから、よろしくお願いをしたいと思います。
○浜田委員長 岡田君、どうぞ続けてください。
○岡田委員 それでは、もう一つ申し上げたいと思いますが、これからどういう国を目指していくのかということについて、残された時間で少し議論していきたいというふうに思います。
私は、前にも申し上げましたように、日米同盟、その抑止力によって日本の七十年の平和は保たれたというふうに思っています。しかし、同時にやはり憲法九条の存在も大きかったというふうに申し上げました。最初の党首討論です。総理も平和憲法、憲法の平和主義という確固たるものがあるというふうには言われましたが、この憲法が七十年の平和に果たした役割について具体的に御説明がなかったんですね。
もう一度聞きたいと思います。平和憲法があることでこの七十年の日本の平和にどういう効果があったか、あるいはなかったのか、そのことについて率直にお聞かせいただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 世界の多くの国々の中においても、憲法の中において平和主義を明記している国は多数あるわけでありますが、日本もその一国であります。
まさに、さきの大戦の反省の上に平和国家としての歩みを進めてきた、その中におきましては、もちろん憲法の中における平和主義、基本的人権、そして国民主権、この三つの大きな原則があるわけでございます。こうした原則の中においていわば多くの国々の信頼もかち得ている、このように思うわけでございます。しかし、同時に、かつてはソビエト連邦が存在したわけでございまして、その脅威の中におきまして、自衛隊の設立、そして日米同盟というものがしっかりと機能している中において抑止力が存在したことによってまさに日本の平和と安定は守られてきたんだろう、こう思うところでございます。
○岡田委員 明快にはお答えいただけなかったんですけれども、憲法九条があることで海外における武力行使を事実上禁じてきた。我が国が攻撃を受けたときはそれに対して断固反撃するけれども、みずから海外で武力行使することはない、それは今までの憲法解釈ですよね。そういう中で、つまり、武力行使と一線を画することで日本の平和が保たれてきた部分は私は確実にあると思っています。
例えば、同盟国アメリカのベトナム戦争やイラク戦争。もし限定的な集団的自衛権じゃなくてフルサイズの集団的自衛権を日本が持っていたとすれば、そこに参加することは、少なくとも要請があった可能性は高いと思うんです。イエスと言うかノーと言うかは、それは最後は日本の主権です。しかし、そういったことに参加を求められた可能性は私はかなり高いんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 これは仮定の質問でございますから、しかも日米両国にかかわることでございますから、お答えは控えさせていただきたい、こう思うところでございます。
まさにイラクのときには、その後、復興の支援を日本は行っているわけでありますし、そのことはまた大きな評価にもつながった、こう思うわけでございます。
そしてまた、これは集団的自衛権の行使とはかかわりがないわけでありますが、PKO法案のときにも大きな議論が行われたわけであります。あのときも、戦後の国是を大きく変えるものである、憲法の解釈改憲であり立法府の自殺であるという社説すら当時はあったわけでございます。しかし、その後、このPKOについてはそういう社説を書かれた新聞ですら評価をされるに至っているわけでございます。こうした活動等も行うことによって地域の平和と繁栄は保たれていくし、また日本に対する信頼も高まっていくんだろう、こう思うわけであります。
そこで、岡田代表が挙げられた、ベトナム戦争に参加したのではなかったか、あるいはイラク戦争に参加したのではなかったか、あるいは要請があったかどうか。これは、今の段階から、そのときのいわば政府と政府との関係にもよるわけでございますから、今ここで軽々に推測することは控えさせていただきたいと思います。
○岡田委員 PKOは武力行使ではありません。PKO法のときは私、中谷さんと一緒にここで野党の抵抗を排除して委員長を守ったことを記憶しておりますけれども、それはともかくとして。
私は、先ほどのアメリカの話、申し上げました。もちろん、アメリカは大事な国です。しかし、非常に強い国です。国民の中にはやはり、そういった事態の中で、もしできるということになったときにアメリカに言われて断り切れないんじゃないか、そういう漠然とした不安感があるんですね。それが巻き込まれということの話なんですよ。もちろん最後は日本が決める話だ、そのとおりなんですけれども、本当にきちんと判断できるだろうか、現実を見たときにそれができるだろうかということで多くの国民は不安に思い、この集団的自衛権の問題について異を唱えているというのが実態だというふうに私は思います。
そして、武力行使を、もし限定した集団的自衛権の行使であってもいろいろやっていく中で、国際的な評価がどうなるのかということも大事だと思います。先ほど公明党の方からの質疑を聞いていて私は思ったんですけれども、戦後の日本に対する国際的な高い評価、それはやはり武力行使をしないということに対する評価でもあったと私は思っています。少なくとも外務大臣として、そういうことを痛感しておりました。
いろいろな人道復興支援あるいは経済開発、いろいろな支援を日本はしてきましたが、しかし、武力行使とは一線を画してきたということが日本の評価につながっている。それは、NGOの関係者なんかにも随分そういう声はありますよ。それを今度変えてしまうということが、日本に対する評価を変えてしまう。(発言する者あり)いや、武力行使を、集団的自衛権の行使を、限定で行使とはいえやるわけですから、そういったことにつながりかねないというふうに私は思っているわけですけれども、総理はいかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 議論は正確にしていかないといけないと思うんですが、武力行使ということにおいては、まさに海外で武力行使、これは我々は今でも認めていないわけでありまして、例外として、限定的なものとして危険物の除去に近い機雷の除去を挙げております。つまり、海外における武力行使は今度もしないわけでございます。結果として武力行使はしなかった。個別的自衛権としては武力行使はできるんですけれども、幸い我々はしっかりとした抑止力の中において武力攻撃を受けることがありませんでしたから、武力行使をすることもなかったわけでございます。
そして、今後もまさに海外派兵というのはできないということは何回も申し上げているとおりでありまして、まさに三要件の中において我々は限定的な集団的自衛権の行使は行えますが、この三要件の中に書いてあるように、まさに国の存立、我が国の、日本の存立が脅かされるわけでありまして、その中において国民の生命や自由や幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるわけでありますから、そういうときが来たときに果たして国民を守るために対応しなくていいのかどうか。これについては、政治家というのはやはりとことん突き詰めて考える責任があるんだと私は思いますよ。そういうことをしっかりと我々は考え抜かなければならない、こう思うわけでございます。
○岡田委員 海外派兵ができないという話も新三要件、三要件の中から出てくるとおっしゃいましたが、私は総理はトートロジーに陥っていると思うんですよ。これは別途やります。もう時間がありませんから。海外派兵ができないというのは、第三要件、必要最小限度を超えるから他国の領土、領海、領空でできないということであって、新三要件になったときにはそれは変わる、変わり得るということを私は前から申し上げているわけで、海外派兵はできませんというその概念をまた持ってきて議論しているというのは一種のトートロジーであります。
総理、今いろいろおっしゃいましたが、自民党の憲法改正草案、ここには自衛権を持つということが書いてありますね。何の限定もつけておりません。ということは、自民党が目指している日本というのは、今のような限定した集団的自衛権の行使ではなくてフルスペックの、制限のない集団的自衛権の行使ができる国を目指している、そういうふうに理解していいですね。
○安倍内閣総理大臣 まず、今ここで御議論をいただいている法案については、現行憲法の中において砂川判決と軌を一にする昭和四十七年の政府見解の中の、基本原理の中の解釈から導き出されてきた当てはめの中における集団的自衛権の行使、これは国民の命と幸せな暮らしを守るためには必要であろう、我々はこのように解釈の当てはめをしたわけでございます。そしてまさにこの範囲内で我々は国民の命を守るべきである、こう考えて今回の法案を提出させていただいたということであります。
それとは別に、これは谷垣総裁のときに自民党の中において大いに議論をした結果、自民党案として提出をさせていただいたものでございます。しかし、当然これは発議する上においても三分の二の賛成が衆参それぞれ必要でありますし、また国民の過半の支持がなければ到底無理なわけでございます。その中におきまして、党としても、まずどの条文から変えるべきかということについて議論を重ねているところでございます。
○岡田委員 総理、手続を聞いているんじゃなくて、党として立派に出された自民党の憲法改正草案について、憲法草案九条についてお尋ねしているわけです。その中で、自衛権の行使については限定をつけておられませんねと。それはそのとおりですよね。ということは、違法な戦争はしない、だけれども集団的自衛権の行使は基本的にフルスペックでできるようになるということになると、いわば普通の国になるということだと思うんですね。普通の国になる。
我々は違うんですよ。やはり、海外における武力行使、これについて抑制的に考える。今の憲法の平和主義、これをしっかりと守り抜いていく。もちろん、現実の中で解釈が将来的に少し変わることはあるかもしれませんが、基本的に私たちは、海外における武力行使をしない、この考え方の中で物事を考えていく。
その憲法の平和主義を守り抜いていくという私たちの立場と、普通の国を目指す自由民主党の立場と、どちらをとるかという、この法案はそれ以前の問題、その手前の問題ですから直接は関係ありませんけれども、やがて目指す方向というのはそのどちらをとるかという、そこを視野に置いて議論されている問題だ。だから、国民の皆さんから見たときに、一体どっちの道を選ぶんだということが今問われているということを申し上げておきたいと思います。
以上です。