党首討論、首相の発言にガッカリ「自衛隊員のリスク」徹底追及へ(夕刊フジコラム「ズバリ直球」15年5月28日)
私は27日の衆院安保法制特別委員会で、政府が提出した安全保障関連法案について、民主党のトップバッターとして質問に立つ。戦後の安全保障政策の大転換であり、国民の命と平和な暮らしに直結する重要な法案なので、丁寧な議論を心がけたい。だが、先週20日の党首討論での安倍晋三首相(自民党総裁)の発言にはガッカリした。
党首討論は限られた時間しかないので、私は「自衛隊員のリスク」と「集団的自衛権行使の範囲(場所)」の2点に絞って問いただした。
まず、自衛隊員のリスクだが、法案では「現に戦闘行為が行われている現場でなければ自衛隊は活動できる」ため、高まるのは当然といえる。私は決して「リスクがあるからダメだ」と言っているわけではない。リスクが高まったとしても、自衛隊員を活動させる意義や必要性などを、日本国首相そして自衛隊の最高指揮官として説明してほしかった。
ところが、安倍首相は法案の中身の説明をして、「リスクとは関わりがない」などと言うだけで、真正面から議論をしようとせず、聞いてもいないことを長々と答弁していた。安倍首相は別の場所で「木を見て森を見ない議論が多い」と批判したようだが、自衛隊員の命に関わる問題であり、「木」ではない。今後もしっかり議論していきたい。
集団的自衛権行使の範囲については、安倍首相は党首討論で「海外派兵は認めない」「自衛隊が戦闘行為を目的に外国の領土、領海、領空で活動することはない」と明確に発言した。だが、そのことは法案には書いていない。
法案を読む限り、米国がどこかの国と戦っているときに、それが日本の安全にも直接影響を及ぼす、つまり新3要件をきちんと満たすときには、自衛隊は、相手国の領土・領海・領空でも集団的自衛権を行使できる-と解釈できる。安倍首相がそれを否定するなら、法案を修正すべきだ。
現に、中谷元防衛相は、他国領域での武力行使について「新3要件に合致すれば、憲法上は許されないわけではない」との見解を示しており、支離滅裂になっている。活動範囲も極めて重要な論点なので、正直で率直な答弁を求めていきたい。
さて、日本が目指す「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産への登録に、韓国が反対していることは残念だ。韓国側は「遺産には朝鮮人労働者が強制徴用された施設が含まれている」といい、日本側は「遺産の対象時代は1850年代から1910年までの間で、(強制徴用とは)異なる時代の出来事だ」などと主張しているようだ。
日韓関係は厳しい状況にある。この問題で両国民がさらに感情的になるのは好ましくない。「明治日本の産業革命遺産」の歴史的価値は、強制徴用とは別の部分にある。日本としては歴史的事実を踏まえて韓国側と協議し、必要に応じて韓国側の主張も踏まえた登録となるよう努力すればよい。韓国側には是非賛成してほしい。 (民主党代表)