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2015.10.22|夕刊フジ

夕刊フジコラム/安倍首相は逃げるな 国会を召集せよ 第3次安倍内閣に質問事項山積

 日本の経済や社会に大きな影響を与える、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が大筋合意された。第3次安倍改造内閣も発足した。年明けの通常国会まで2カ月以上もある。いつもなら、臨時国会を召集し、国会審議を通じてTPPの合意内容を説明し、各閣僚の所信表明も行っている。

 ところが、政府・自民党からは国会召集の声が聞こえてこない。20日の与野党幹事長会議で、与党に召集を要求したが、「安倍晋三首相の外遊日程が立て込んでいる」と後ろ向きの回答だった。外交日程を理由に国会を開かないなど、信じがたい話だ。

 野党は、衆参いずれかの4分の1以上の議員の要求があった場合、内閣は(臨時国会を)召集を決定しなければならない-という憲法第53条の規定を使って、内閣に国会召集を求めていく。

 私は、安倍首相に「逃げずに国民に説明責任を果たすべきだ」と言いたい。TPPの合意内容に疑問や不安が指摘されている。複数の新任閣僚にスキャンダルが報じられている。「新3本の矢」なるものの中身もしっかり聞かねばならない。国会を開けば、よほど都合が悪いのか。先送りしても、通常国会で徹底的に追及するだけだ。

 さて、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の記憶遺産に、日本の「シベリア抑留資料」とともに、中国が申請した「南京事件(大虐殺)文書」が登録された。

 南京事件については、日本政府も、多くの非戦闘員の殺害や略奪行為があったことは否定できないとしてきたが、犠牲者数などで中国の指摘とは大きな違いがある。そういう状況下で、手続きも公開されずに登録が決定されたことには疑問がある。日本としては、登録の仕組みを見直すような提案をすべきだ。

ただ、自民党外交部会などがユネスコへの分担金拠出の停止を求めたり、菅義偉官房長官がそれを示唆するような発言をしたのは、あまりにも拙速といえる。

 ユネスコは、諸国民の教育や科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関。これまで、さまざまな役割を果たしてきた。中でも、ユネスコが選定する世界文化・自然遺産は有名だが、日本でも、文化遺産として「富岡製糸場」「富士山」「京都・奈良の文化財」「広島原爆ドーム」など、自然遺産に「知床」「屋久島」など、計19が選ばれている。

 ユネスコの否定は、これらの価値を傷つけることにもなりかねない。もう少し、冷静に議論すべきだろう。

 今月31日と来月1日、日中韓首脳会談がソウルで開かれる。この機会を通じて、安倍首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領による、初めての首脳会談が開かれることが、ほぼ固まった。「無条件で早期に」と言い続けてきた私としては、歓迎したい。

 両国間には難しい問題もあるが、北朝鮮への対応や、中国との向き合い方など、話し合うべき課題、協力すべき案件は山積している。どうか、両首脳には国民のために、世界のために、信頼関係を築いてほしい。 (民主党代表)




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