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2015.11.10|国会会議録

平成27年11月10日 第189回国会 衆議院予算委員会「憲法と安全保障法制、日中韓首脳会談、アベノミクスの成果、新3本の矢、臨時国会開会」

※質問の動画はこちら(衆議院TV)「岡田克也」をクリック
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○岡田委員 民主党の岡田克也です。

 きょうは、まず憲法についてお尋ねしたいと思います。

お示ししたのは、自民党の憲法改正草案であります。第九条の第二項、「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」と端的に書かれています。ここの意味するところは、少なくとも自民党がお考えなのは、憲法上は集団的自衛権について限定なく認められるようにしたい、こういうことだと理解しますが、よろしいですね。

○安倍内閣総理大臣 今お示しをいただいているのは、平成二十四年四月、当時の谷垣総裁のもとに制定された自民党の憲法改正草案でございまして、九条において、当時、自民党としての考え方を示したものでございまして、集団的自衛権におきましても、それは国際社会における標準の集団的自衛権の行使を認めるものである、こういうことでございます。

○岡田委員 今のお答えは、国連憲章上認められた集団的自衛権の行使を限定なく認める、そういう憲法にするというのが自民党の憲法改正草案である、そういうお答えだったと思います。

 二〇一四年の衆議院選挙に当たって、自民党のマニフェストの中で、憲法改正原案を国会に提出し、憲法改正を目指します、こういうふうに書いてあります。もちろん、国民の理解を得つつとは言っておられますが。したがって、チャンスがあれば国会にこの九条も含めて憲法改正原案を提出して、このような憲法改正、今の九条を、限定なく集団的自衛権を認める憲法に変える、これが総理のお考えですね。

○安倍内閣総理大臣 今回の平和安全法制の整備によって切れ目のない対応が可能となったわけでございまして、喫緊の課題としての集団的自衛権の一部解釈容認を行うことによって、日米同盟を強化し、そして切れ目のない対応を行うことは、私は可能になった、こう考えているわけであります。

 同時に、平成二十四年にお示しをしましたように、今後、二十一世紀において、しっかりと国民の命とそして平和な暮らしを守っていく上においては、九条の改正を行うことが必要であろう、こう自民党の総意としてその草案を取りまとめたわけでございます。

 その考え方には変わりはないわけでございますが、いずれにせよ、憲法改正においては、これは衆参両院でそれぞれ三分の二以上の賛同が必要でございますし、発議が必要でありますし、さらには国民の過半の支持が必要であろう。そのために、現段階においては、まずは国民的な議論を深めていくことが大切ではないか。

 そして、我々は、憲法改正草案については前文から含めて全体をお示ししておりますので、どの条文を議論していくべきか、あるいは、改正すべき条文として、まずはどの条文にしていくかということを議論していく、そういう段階にあるんだろう、こう思っているところでございます。

○岡田委員 しかし、憲法改正草案という形でこういうふうに出された。私は、総理の持論は限定なき集団的自衛権の行使ということだというふうに考えているんですけれども、三分の二衆参で得られれば、これを国会で成立させ、そして国民投票にかける、こういうお考えですね。

○安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、これをやみくもに国民投票にかけても賛同を得られるかどうかということはわからないわけでございますし、我々は、憲法草案については、先ほど申し上げましたように、憲法の前文から改正条項等々に至るまで全て我々の考え方をお示ししている中において、どこから議論するかということについても、今、党においても御議論をいただいているところでございますし、国会における憲法調査会においても議論が深まっていくことを期待したい。

 その中において国民的な議論が深まり、広がり、高まっていくことが絶対的に必要でありますから、まずそこに我々は重点を置いていきたい、こう考えているところでございます。

○岡田委員 国民的理解と総理は言われるんですが、例えば二〇一二年の衆議院選挙において、マニフェストの中に、「集団的自衛権の行使を可能とし、「国家安全保障基本法」を制定します。」と小さく書かれておりました。これをもって根拠にして、国民の八割が政府の説明は不十分だと言うにもかかわらず、集団的自衛権の解釈を変えてしまったわけですね。

 ですから、そういう総理を見ていると、今そういうふうに言われていますけれども、数がそろえばそれをやってくるというふうに私は思うんですが、総理、もし反論がありましたら言ってください。

○安倍内閣総理大臣 数がそろえばということは、これはしかし民主主義のルールでありますから、数がそろうために我々は国政選挙で衆参ともに、国民のいわば支持を受けて大勝しなければならないわけであります。

 そして、その上において、国民の支持を受けて、過半の国民の理解と支持のもとに成立をさせる、そういうプロセスがあるわけでありますから、私が勝手にこうすればいくということでは全くないわけでありまして、憲法にのっとって、そして法にのっとって、それはそういう理解が深まっていけば進めていくべきものとして我々はお示しをしているわけでございますが、党においても、この憲法の我々の草案の中において、どこから始めるべきか、緊急事態という条項からやるべきだという議論もかなり有力でありますし、さまざまな議論を、民主党というのは極めて民主的な党でありますから、そこでしっかりと今議論を深めているところでございます。

○岡田委員 過去二回の総選挙を、アベノミクス、この道しかない、それから、消費税の引き上げ延期を問う、そういう名目で選挙されながら、そして、マニフェストには小さく書いただけの集団的自衛権の行使の解釈変更を、これは選挙で国民に問うたんだということで総理は強行されたわけであります。

 そういうことを見ていると、やはり、次の参議院選挙で三分の二自民党がとるということにもしなると、これは憲法九条がこのように変わる、その提案がなされるということを我々はしっかりと踏まえておかなければいけない、そういう重要な参議院選挙になるということを認識しなければならないというふうに思います。

 先ほど言いましたように、国民の八割が政府の説明不十分という中で、集団的自衛権の限定的な行使についての解釈が変わりました。そして、場合によっては、憲法そのものも、九条そのものも変えられかねないという状況にある。そのことをしっかり踏まえて我々は戦っていかなければならないというふうに思います。

 まずは、次の通常国会で、憲法違反の法律、時間がたてば憲法違反の法律が憲法違反でなくなるわけではありませんから、少なくとも憲法違反の部分について、これを白紙に戻す、そのための法案をしっかり国会に提出して、そしてそういった白紙撤回を実現していきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 さて、次の課題に移りますが、日中韓首脳会談、これについて、私は、できたことはよかったというふうに評価します。

 ただ、総理は、日中韓首脳会談の開催について、これは画期的なことだというふうに自画自賛されました。私は非常に違和感を覚えるわけであります。なぜ、安倍総理になって日中韓首脳会談が三年間開かれなかったのか、あるいは日韓首脳会談が開かれなかったのかということを考えたときに、もちろんそれは双方に問題がある、中国側、韓国側にも問題があるということは、私もそう考えておりますが、しかし、総理にも反省すべき点があったんじゃないか、そういうふうに思いますが、どういう反省をしておられますか。

○安倍内閣総理大臣 私の主張は一貫しております。

 どういう主張かということについて申し上げますと、日中韓はお互いに隣国同士であります。隣国同士であるがゆえに難しい課題もあります。しかし、そうした難しい課題があるからこそ、首脳間において胸襟を開いて話をすることが求められているわけでございますし、同時に、三カ国の首脳は地域の平和や繁栄にも責任を共有しているわけであります。この責任感のもとに、まずはお互いに会う機会をつくるべきだ、こう申し上げてきたわけであります。こうした課題をあなたのところでまず解決しなければ会いませんよという外交は間違っていますよということであります。私は、政権を預かって以来、そういう主張をしてまいりました。

 このたび、前提条件をなしに我々は首脳会談を行うことができた。そして、今回、李克強首相も朴槿恵大統領も、三首脳がこうして一堂に会したことは極めて有意義であったということを表明しているわけでありますし、それぞれ三カ国の国民に対して我々は責任を果たしている、こういう実感も共有することができたことは、私は画期的なことではなかったか、こう申し上げているところでございます。

    〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

○岡田委員 私も、首脳会談は無条件に、しかも定期的に行うべきだという主張でありますし、朴槿恵大統領にお目にかかったときにもそのことを申し上げてまいりました。そこは総理の言うとおりなんです。しかし、その前提として、やはり私は、首脳間の信頼関係というものがなければなかなかそこに至らないということもあるのではないかというふうに思います。

 総理は、こういった中国や韓国の首脳との間の信頼関係が今あるというふうに思われますか、あるいは今まであったというふうに思われますか。

○安倍内閣総理大臣 信頼関係というものはお互いに培っていくものであります、お互いにですね。そのためにも、まずお互いが会わなければ、何を考えているかがわからないわけでありますから。果たして日本や中国や韓国の世論はどうなのか、それぞれの国がそれぞれの国をどのように考えているかということをしっかりとまずは忌憚なく率直な話をすることから信頼関係というものは始まっていくわけでありまして、その上において、これからさらに一つ一つ信頼関係を積み上げていきたい、こう思う次第でございます。

 中国においては、習近平主席と二回にわたって首脳会談を行うことができた。先般、李克強首相とは初めてお目にかかることができたわけでございますが、そういう中で間違いなく信頼関係は培われていくもの、こう考えているところでございます。

○岡田委員 私は、もちろん信頼関係は会うことで深まる部分もありますが、やはり、会わなくても相互の言動を見て判断される部分もあるというふうに思うわけですね。私は、総理が、まあ総理になられてかなり自制はされているものの、総理になる前のさまざまな発言というものが、やはり韓国や中国から見て非常に総理の信頼を失わせる、そういう要因になっているのではないかというように考えているわけですね。

 余り言いたくありませんが、総理が総理になる前に、例えば総裁選などでどういうふうに語っていたか。例えば村山談話について、まさに踏み絵である、村山さんの個人的な歴史観に日本がいつまでも縛られることはない。今は、継承しているというふうに言われているわけですね。河野談話について、第一次安倍政権のときに河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある。今は、河野談話は継承しているというふうに言われているわけです。

 尖閣については、これは民主党政権のときに国有化をしたわけでありますが、それに加えて、船だまりの設置や公務員の常駐を検討する、こういうふうに発言されているわけです。

 もちろん、総裁選挙の中で、あるいはその前の段階での発言ではありますが、私は、こういう不用意な発言が両国関係を非常に難しくした、結果として三年間首脳会談が開かれない事態を招いた、そのことについてやはり日本国総理大臣として反省すべきだというふうに思っていますが、いかがですか。

    〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

○安倍内閣総理大臣 私は全くそうは考えていません。まず、そのことをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 国と国、国が違うわけでありますから、当然、お互いが求める国益がぶつかる場合もあります。隣国であるがゆえに歴史的な課題が存在するわけでありますが、その国からの見方はそれぞれ変わっていくわけであります。そこで、私は、あくまでも日本の国益を考えた上において発言をしているわけであります。それが相手国側から必ずしもよく思われない場合もあるかもしれない。それは、お互いにそういうことがあり得るわけであります。しかし、だからこそ私は、首脳同士がしっかりと膝を交えて話をすべきだ、こう申し上げているわけであります。世界じゅうの国境を接する国々は、そうした課題を持つ中において、話し合いをする中においてさまざまなことを解決しているわけであります。

 これはまさに、首脳同士がお互いを好き嫌いということではありません。責任感です。その地域や国際社会に対してどういう責任を負っているか。その責任の一つが、ちゃんと首脳同士が会って話をしていくことによって信頼関係を醸成していくという努力をしていく、これも我々首脳に課せられた大きな責任ではないか、このように思っております。

○岡田委員 総理、議論をすりかえないでもらいたいんです。

 総理は先ほど、国益を考えて発言をしているというふうに言われました。先ほどの、総理になる前とはいえ、発言、村山さんの個人的な歴史観に日本がいつまでも縛られることはないとか、あるいは河野談話を修正したことをもう一度確定する必要があるとか、そういう発言は国益にとってどうだったんでしょうか。私は大いに国益を損なったと思いますが、国益に沿った発言なんですか。もしそうだと言うなら、総理になってからどうして方向転換するんですか。同じ発言をどうして繰り返さないんですか。全く矛盾しているじゃないですか。

○安倍内閣総理大臣 まず、村山談話がありました。しかし、先般、八月十四日に安倍内閣としての談話を発表いたしました。まさに閣議決定を行いましたから、これが今まさに我が国における一番新しい、いわば七十年の談話である。我が国の歴史を振り返り、何を教訓とするか、そしてその教訓をどう生かしていくかということであります。我が国が国策を誤った、曖昧なこういう表現ではなくて、歴史から、どこでどういう問題があったかということを私たちは認識している、それからどういう教訓を酌み取り、何をしていくべきかという観点から、まさに新たな談話を発表したところでございます。

 河野談話におきまして私が申し上げたことは、第一次安倍政権において、質問主意書に対する回答の中で強制性について申し上げているわけでございまして、そのことを意味しているわけでございます。

 また、船だまり等については、当然、これは日本がさまざまな選択肢や検討を持つということについて、さまざまな検討をするということでございます。実際にどうするかどうかというのは、それは政策判断であるわけでございます。

 そうしたことも含めて、我々、そうした今までの発言してきた経緯も含めて、今回は、まずは首脳会談を行うことができたわけであります。

 首脳同士が、あのときあなたがこんなことを言ったから、もうあなたとは会いませんよと言ったら、国と国との関係はおしまいなんですよ。そうではなくて、やはり、先ほど申し上げましたように、しっかりと地域の平和と安全に責任を共有しているという認識を持ち合うということが大切であろうと思うわけであります。

 常に相手の国に気に入られたいということによって国益を削っていったのではどうしようもないわけでありまして、しっかりと国益は確保しつつ、当然、言うべきことは言いながら、でも、国と国との関係においては現実的な、政治的な判断をしていくということが求められているんだろう、このように思うところでございます。

○岡田委員 国益を本当に考えるのであれば、総理になる前からきちんと発言されるべきだったということをもう一度繰り返して申し上げておきたいと思います。

 その日中韓首脳会談の共同宣言の中で、歴史を直視し未来に向かうとの精神が強調されました。総理にとって、この日中関係、日韓関係において、歴史を直視するというのは具体的にどういうことだというふうにお考えでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 歴史を直視する、これはもちろん、日本だけではなくて、日中韓それぞれが歴史を直視していくということであります。それはまさに正しい歴史を見ていくということであって、同時に、特定の歴史に焦点を当て過ぎることは、過度に当てていくことは生産的ではないわけであります。

 例えば、日中関係におきましても、戦後の友好の歴史があります。そして、韓国との間においても、六五年の基本条約以来、ともに発展してきたという歴史があるわけでございます。そうしたことも含めて未来への教訓としていく必要があるんだろう。もちろん、日本には反省すべき点はあります。それは、首脳会談でも申し上げたように、七十年談話、安倍内閣としての談話で申し上げているとおりであります。そうしたことも含めて歴史を直視するということではないか、こう考えているところでございます。

○岡田委員 私は、国の指導者は、特に日中関係、日韓関係を考えたときに、確かに我々は過去に誤ったこともあった。もちろん、いいこともありました。しかし、一時期誤ったこともあった。そのことの事実をきちんと正面から受けとめて認めて、そして和解のための努力をしていく。和解はお互いが歩み寄ることが必要です。和解のための努力をしていくということが私は日本の指導者に求められるというふうに思うんですが、総理は同じ考えですか。

○安倍内閣総理大臣 先般、メルケル首相が来日されたときにも言っておられましたが、独仏の和解というのは、これはお互いが歩み寄ったから、まさにフランスも寛容な姿勢を示したからであるということを述べられておられました。もちろん、ヨーロッパと東アジアとはさまざまな状況は違うわけでございますが、やはり和解をしていくためにはお互いの努力が必要であろうと思います。

 もちろん、我々にとって何を反省すべきか、まさにこれは、戦後七十年の日本の歴史というのは、さきの大戦の反省を酌み取りながら、だからこそアジアの発展のため、平和のために努力をしていかなければならないという歴史ではなかったか、私はこう思うわけであります。

 我々の先輩方は、日韓の歴史においても日中の歴史においてもそうですが、そして、日本の国民は、中国や韓国の発展のために私たちもやはり尽くしていこう、そういう努力を重ねてきたわけであります。そういう努力においても、やはり理解し合うことが大切であろうと思います。

 そうした努力もある中において、我々はさらに、戦後七十年を迎えるに当たって、何を考えているかということにつきましては戦後七十年の談話でお示しをさせていただいているわけでありまして、我々は常に胸に刻まなければならない反省がありますが、同時に、これまで平和国家として歩んできた道のり、アジアの国々の発展のために努力してきた道のりということについても我々は静かな誇りを持っているわけでございまして、そういう点においても理解を進めていくべく努力をしていきたい、このように思っているところでございます。

○岡田委員 今総理は、八月の安倍談話について言及されました。その中にこういうくだりがありますね。私たちの子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない。ここの意味するところ、総理はどういうふうにお考えか。これでもう、これ以上謝罪する必要はないんだ、こういう議論も中にはあるわけですけれども、ここのくだり、私たちの子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない、そのために日本国総理大臣として何をすべきだというふうにお考えですか。

○安倍内閣総理大臣 この全体の中から私が言わんとしているところを酌み取っていただきたいと思いますが、「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。」ということでありまして、謝罪をし続けるという運命を背負わせるということは、これはまさに、次の世代に、他の国々の人々とともに夢を紡いで、希望を紡いでいくということにはならないわけでありまして、そのことを申し上げたかったわけでございます。

○岡田委員 先ほど言いましたように、ここのくだりについて、私たちの子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないということをもって、いや、もう謝る必要はないんだ、こういうふうに議論している人たちが一部にいます。それは、私は明らかに間違いであると。総理も今言及されていましたように、同じ段落の中に、「世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。」というふうに書かれているわけであります。ここは非常に大事なところだと思います。

 そして、次の世代に謝罪の宿命を背負わせないためにはしっかりとした和解が必要で、その和解をなすためには、まず指導者が過去の歴史に真正面から向き合わなければならない。そして、和解は一方通行では、もちろんありません。相手の歩み寄りも必要ですけれども、しかし、この日中、日韓を考えたときに、まず私たちが、日本側がしっかりと過去の事実に正面から向き合って、そして和解を請うていくということでなければならないというふうに思いますが、総理、基本的に同じ考えですか。

○安倍内閣総理大臣 今申し上げたことが全てでございます。

 先般この発表を行った際、記者の質問にもあったわけでございますが、ドイツのワイツゼッカー大統領の荒れ野の四十年の中においても、今や、さきの戦争にかかわりのない人たちが非常にふえている、子供であったか、かかわりのない人たちがふえている中において、まさに、彼らにこれからも粗布をまとい続ける、そういう宿命を負わせるわけにはいかないという趣旨のことを述べているわけでございますが、ここで大切なことは、やはり、しっかりと和解をしていくということは極めて重要であろうということでございます。そのための努力は続けていかなければならない、このように思っております。

○岡田委員 日韓首脳会談の中で、従軍慰安婦問題の早期妥結を目指して協議を加速化するということも確認されました。総理のこの問題についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 慰安婦問題については、政府としては、一九六五年の日韓請求権協定で法的に解決済みとの立場には変わりはありません。その上で、本年八月十四日の内閣総理大臣談話では、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去をこの胸に刻み続け、二十一世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしていくとの決意を示しました。

 今回の日韓首脳会談では、慰安婦問題が日韓関係の発展に影響を与えているとの認識のもとに、両国が未来志向の関係を築いていくため、将来の世代の障害にならないようにすることが重要との認識で一致をいたしました。本年が日韓国交正常化五十周年という節目の年であることを念頭に、できるだけ早期に妥結するため、協議を加速化させることで一致したことでありまして、このことを踏まえて、韓国側と引き続き局長級協議を行っていく考えであります。

○岡田委員 この従軍慰安婦の問題、非常に難しい複雑な問題であります。私も、法的には決着済みという立場、考え方であります。しかし、法的には決着していることが全て決着しているという意味ではもちろんないわけでありまして、和解のための相互の努力、これは一方的ではなく相互の努力が求められる。非常に複雑で難しい問題ですが、日韓関係の大局を見て、しっかりと双方の首脳が、朴大統領と安倍首相が政治決断をしていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

 さて、経済にちょっと話題を移したいと思います。アベノミクスについて、雇用の問題。

 総理は、アベノミクスの成果として、雇用は百万人以上ふえたということをよく言われます。先ほど来話がありますように、失業率の低下とか、有効求人倍率が上がっているとか、いろいろな数字はあります。ただ、そういう中で、私はやはり、全体で百万人以上ふえているものの、それは非正規の働き方がふえているのであって、正規労働者はむしろかなり減っているというところが非常に重要だというふうに考えております。

 この数字は、きょう、二〇一五年七―九が発表になるという話もありますが、現時点での最新の値が二〇一五年四―六月、その三年前、これは民主党政権ですが、二〇一二年四―六月、三年前と比べた数字であります。

 全体の雇用者数ですけれども、確かに百二十一万人ふえている。総理は百万人以上ふえているとおっしゃっているのはそのとおりであります。

 ただ、非正規が百七十八万人ふえて、正規は五十六万人減っている。景気が次第に回復基調にある、デフレから脱却しつつあると総理は説明されていますが、そういう中にあって正規が減っている、現状維持ならともかく、減っているということは、やはりこれは非常に重大ではないかというふうに思うわけですね。

 特に、二十五歳から三十四歳で五十八万人減、三十五歳から四十四歳で五十一万人減、合わせて、これは働き盛りといいますか、二十五歳から四十四歳というところが百万人以上減っているということは、私は非常に重大だというふうに思いますが、総理はこのことについてどう考えておられるんですか。

○安倍内閣総理大臣 まず、正規において、これは今委員が示された、安倍政権で五十六万人減っているではないかということであります。

 しかし、民主党政権においても、その前の二〇〇九年から比べれば六十五万人減っているわけでございまして、これは民主党政権のときの方が減っているではないかということが言いたいわけではなくて、ここは人口が減少しているということでありまして、人口の中に対する正規の比率を見れば、これは実は横ばいでございます。その中において、非正規はふえているのは事実でございます。

 では、なぜ非正規はふえているかといえば、これは景気回復に伴ってパートなどで働き始めた方が増加をしているということが一点。と同時にまた、六十五歳までの雇用確保措置が実施をされて、高齢層で非正規が増加をしているということでありまして、不本意ながら非正規の職についている方も前年に比べてみれば減少してきているわけであります。

 そこで、正規雇用の状況を見なければならないわけでありますが、働き盛りの五十五歳未満では、平成二十五年から十四半期連続で非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っております。そして、正社員の有効求人倍率は調査開始以来の最高水準になってきているわけでございますから、間違いなく正規をめぐる雇用状況はよくなっているわけでございます。足元では正規の方が前年に比べて増加しているなど、これも着実に改善をしていると思います。

 そして、正規、非正規間に見られる賃金格差でありますが、我々もこれは注意深く対応してきたわけでございますが、平成二十四年から平成二十六年にかけて縮小してきています。パートで働く方の時給はここ二十二年間で最高水準になっています。

 非正規雇用の方の待遇改善も着実に進んでいるということでありまして、私たちが進めている政策は、しっかりと雇用環境をよくしていく、雇用環境全体をよくしていく、それは、景気をよくしていくことによって雇用環境をよくし、さらにその中でも正規に行きたい人が行けるような状況をつくっていくということであると同時に、正規と非正規の格差を是正していく。我々はそれを成功しつつある、このように考えております。

○岡田委員 非正規から正規への動きがふえている、これはいろいろな統計のとり方の問題です。

 ただ、私が言いたいのは、景気回復局面の中で正規の絶対数が減っている。それは全体の働く人の数が減っているからだとおっしゃるかもしれませんが、非正規も含めればふえているわけですから。そういう中で正規が減っているというのは、やはり私は深刻に捉えるべきだというふうに考えます。

 特に、二十五歳から四十四歳という、まさしくこれから結婚し、家庭を持ち、子供をつくり、そういう働き盛りの人たちが不安定な雇用がふえてしまっているということについては、やはり何らかの政策的対応が私は絶対必要だというふうに思うわけであります。

 さらなる正規雇用への転換や、あるいは職業資格の取得などを後押しする制度、そういったことにさらに政府として私は力を入れるべきだというふうに思いますが、総理、そういうお考えはありませんか。

○安倍内閣総理大臣 それは当然、我々も、それぞれの年齢層ごとにしっかりときめ細かく分析をしながら、正社員になりたい人がその目的を実現することができるように、そうした雇用に向けてのいわばキャリア形成等も含めて支援をしていきたい、このように思っております。

○岡田委員 ぜひ具体的政策をお願いしたいと思います。

 次に賃金ですが、賃金がふえたということを総理はよく言われます。ただ、問題は実質賃金なんですね。それで見ると、民主党政権の時代には平均して九九・八、これは二〇一〇年を一〇〇とした数字です。ところが、安倍政権になると九六・五ということで、むしろ実質賃金はマイナスだ。だから、物価が上がっている中で、賃金はそれに追いついていない。実質賃金が下がっていれば消費がふえるはずがない、それが現在の消費低迷の大きな原因になっている、これは誰が考えてもそうだと思うんですが、こういうことについてどうお考えですか。

○安倍内閣総理大臣 まず、この実質賃金を見れば、実質賃金指数が安倍政権になって下がっているということは、これは、いわば働き始める人が多いわけですから、安倍政権になって百万人新たに働き始めました。しかし、それは最初はどうしても慎重にいきますから、パートで働き始める方が当然多いんです。企業側もそうですし、働き始める方もそうであります。それを平均しますから、当然これは、景気回復局面では常にこういう現象が起こります。つまり、景気回復をしているということであります。

 そして、そこで大切なことは……(発言する者あり)済みません、ちょっと少し静かに、こういう議論をしているんですから、おとなしく聞いてくださいよ、たまには。

○河村委員長 御静粛に願います。

○安倍内閣総理大臣 そして、実質総雇用者所得については、稼ぐ額、総額ですね、それは、民主党政権下の二〇一〇年から二〇一二年までの平均値と、安倍政権下での二〇一三年から二〇一四年までの平均値を比較すると、これはほぼ同じ水準でありました。我々が、デフレ脱却に向かいながら、かつ、消費税を引き上げをして、その影響を加味して同水準ということであります。我々は三%引き上げたんですから。

 これは、消費税を三%引き上げて、いわば実質賃金を三%押し下げるという効果を入れ、そしてかつ、デフレから脱却するために今徐々に物価が上がっていくということを加味しても、民主党政権、デフレ下でやっているときと実は同じ水準だった。これは総雇用者所得ではそうなるということは申し上げておきたい、このように思います。

○岡田委員 総理、二年前なら、最初はまずパートからだとかそういう説明は通じると思いますが、もう三年たっているわけですね。それで傾向は変わらないわけですから、やはりここは大きな問題があるというふうに思います。

 もちろん、賃金交渉というのは労使交渉に委ねるべきだと思いますが、しかし、もっと思い切って上げる、経営者側にはそういったことも求めなければならないと思いますし、やはり、日本的経営、人を大事にするというのであれば、総理からもたびたび言われているとは思いますが、もっと強く経営者側に賃金を上げるということを言うべきだというふうに私は思っております。

 さて、労使交渉で決まるというふうに申し上げましたが、政府がある程度決められるものがあります。それは、最低賃金。

 最低賃金については、総理は、民主党時代よりも今の方が上がっている、こういうふうに言っておられるわけですが、私はもっと最低賃金は上げるべきだというふうに思います。

 我々のときには、平均千円を目指すということで絵を描いておりました。残念ながら、東日本大震災があって、その年は低い増加にせざるを得なかったんですが、しかし、かなり頑張って最低賃金は引き上げてきたつもりであります。安倍総理も、ぜひ最低賃金の引き上げについてさらなる努力を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 先ほどの答弁につけ加えてちょっと言わせていただきますと、一人当たりの実質賃金も七月以降プラスでありまして、実質総雇用者所得もプラス基調が続いておりますし、冬のボーナスについては昨年、プラス五・二六%の上げでありまして、これは二十四年ぶりの出来事であります。そして、夏も三年連続プラスになっていますが、我々が政権をとった民主党政権時代の二十四年、冬も夏もマイナスであります。それを我々はプラスに変え、三年連続それが続いているということをまず申し上げておく上において、最低賃金について申し上げますと、安倍政権においては三年連続でこれを大幅に引き上げているわけであります。十五円、十六円、次は十七ではなくて十八。十五、十六、十八、こう上がっているわけでありまして、合わせて五十円の大幅な引き上げとなっているわけであります。

 我々も、最低賃金の引き上げが経済の好循環を回していく上において大変重要である、このように考えております。

○岡田委員 総理はたびたび、最低賃金は民主党のときよりも上げているというふうに言われるので、ちょっとパネルを用意してまいりました。これをぜひよくごらんいただきたいと思います。

 残念ながら、我々のときには消費者物価が下がっておりました。消費者物価が下がる中で最低賃金を引き上げてきたんです。今は消費者物価が多少上がってきた。その伸びに最低賃金が追いついていないというのが現状なんです。だから、私は、もっと上げられるし、上げなきゃいけないと。物価よりも下がっていたら実質所得は目減りしてしまいますから。そこの認識はきちんと改められるべきじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 示されたこの図についてはよくまた精査させていただきたい、こう思っておりますが、我々はまさに過去最高の水準で上げているのも事実であります。

 そして同時に、ただ紙に書けば実現するというものではなくて、これはやはり地方の零細企業等も含めて雇用も確保しなければいけない、そういう中小零細企業が成り立っていくという水準も大切であろう、このように思う中において、地方のそうした中小零細企業の生産性も上がっていくお手伝いもさせていただきながら、そうした小さな企業もこうした最低賃金がかかってくるわけでありますから、これが上げられる能力を我々は支援をしながら上げていきたい、こう考えているわけでございます。

○岡田委員 我々、消費者物価が下がっていく中で最低賃金を上げるというのは大変なことでした。したがって、それは、総理がおっしゃる中小零細企業への対応、予算措置もやりながらこれをやってきたわけです。ですから、今、状況が変わって少し消費者物価が上がっていくということであれば、当然、最低賃金は上げなければいけないし、そして、将来消費税がさらに上がるというときには、それに先立つ形でやはりこういうものは上げていかないと、後追いではまた影響が大きく出てきてしまうんだというふうに私は思うわけであります。

 さて、新三本の矢について少し議論したいと思います。

 新三本の矢って、私は最初に聞いたときよくわからなかったんですね、一体何が矢で、何が的なのか。たしか最初の記者会見では、ここに書いてあるGDP六百兆円、出生率一・八、介護離職ゼロ、それからここに書いてある希望を生み出す強い経済等々、これは全部矢になっていたようにも思うんですが、最近、総理の講演などで、実はGDP六百兆円などは矢ではなくて的であるということを言われていると思います。

 最初の三本の矢というのは非常にわかりやすかったと思うんですね。中身はいろいろ議論はあるんですけれども、デフレ脱却のために、一本目の矢、大胆な金融政策、二本目、機動的な財政政策、三本目に民間投資を喚起する成長戦略。ところが今回は、一億総活躍社会の実現という大きな的、目標があって、そのために三つの具体的な目標がある、それを生み出す一本、二本、三本の矢だということですが、非常にわかりにくい。国民の皆さんも戸惑っておられるんじゃないかと思います。

 総理、例えば、介護離職ゼロという目標を達成するために安心につながる社会保障をやりますと。これは矢になっているんですか。安心につながる社会保障をやれば介護離職ゼロになるということですよね。ちょっとよくわからないので説明してくれますか。

○安倍内閣総理大臣 まず、政府に求められているのは、どういう問題意識を持っているのかということであります。

 我々は、三本の矢の政策によって、デフレから脱却しつつあるという状況まで来ました。名目GDPもふえて、税収もふえてきた。こうした果実をしっかりとこれからも生かしていく。どういう方向を目指すのかということであります。我々は、一億人という人口を維持していきたい。そして、この一億人がしっかりと活躍をしていくことによって、先ほど質疑の中でもあった、それぞれが自己を実現する社会をつくる。ここで大きな課題としては、今の我々が持っている人口動態にしっかりと真正面から向き合いながら対応していくことが大切であろうと思うわけでございます。

 そこで、いわば的と矢の関係において説明をさせていただきたいと思いますが、まず、三本の矢をまとめて一本の矢として、最初の強い経済をつくり、GDP六百兆円を目指していくということであります。

 そして、二本目の矢として、この人口動態にしっかりと向き合いながら、希望出生率一・八を我々は実現しなければいけない、そのために子育て支援を行っていくということであります。

 具体的には、待機児童をゼロにしていくため、二十万人、四十万人と目標を掲げておりましたが、女性が約九十万人新たに仕事をし始めましたからこの需要がふえてきたという中において、四十万人を五十万人に引き上げていくということも決めさせていただいておるところではございます。

 そして、三本目の矢としての、介護離職をゼロにしていく。

 なぜ介護離職をゼロにしていくということが重要であるかということでございますが、今でも介護離職される方が多く、仕事をやめることによって共倒れになる方々も出てきているわけでございます。そこで、団塊の世代の皆さんがいよいよ七十五歳以上になっていくというときに、団塊ジュニアというのは二つ目の人口の大きな固まりでありますから、この皆さんが介護離職をしていくということになれば、これは日本の経済に大きな打撃があるわけでありまして、今からそれには備えていなければならないということでございまして、そのために、我々は、安心の社会保障という政策を打っていくことによって介護離職ゼロを実現していく考えであります。

 それはもちろん、例えば都市部において施設が足りないという大きな課題もありますが、それだけではなくて、予防に力を入れていくことによって要支援の方がその支援が必要でなくなったという例も出てきているわけでありますから、そうしたいい事例をしっかりと横展開していく中において、老後でも元気な状況をつくっていけば介護離職も減っていく、こういうことも含めながらしっかりと政策を打っていきたい、こう考えているところでございます。

○岡田委員 例えば、介護離職ゼロのところの説明、最初、介護施設の整備ということに重点を置かれたようにも私は理解しておりましたが、この前の講演の中では、在宅介護の負担の軽減、介護施設の整備、介護に携わられる人材の増加や処遇の改善、介護休業給付水準の引き上げなどなど、こういったことをやっていくんだというふうに言われました。

 総理、これはもちろんそれぞれ大事なことだし、やっていかなければいけないことなんですが、どのぐらいの予算をこれに充てるつもりですか。

 例えば、今、介護給付の総額は十・一兆円、二〇一五年ですね、一般会計ベースでは二・八兆円、非常に伸びが厳しいということで、今回、その水準を落とした、予算を削減するということもやられましたよね。ですから、今総理が言われた、あるいは私が言ったいろいろなことをやっていく中で、どのぐらいの予算を例えば一般会計ベースで投入するというお覚悟があって言っておられるのか、お示しください。

○安倍内閣総理大臣 どの程度の金額が必要かということは、まさにこれから議論を深めていくのは当たり前のことでありまして、我々は、まずは、問題意識と、国としての目標と、どういう手段をもってそれに到達をするかということを発表させていただいたわけでありまして、そこで全てができているわけではないわけでありまして、まさにこれを私は総理大臣としてお示しをして、そして政府・与党でちゃんとその中身を詰めていく。先般、そのための国民会議もつくり、与党においてもそのための本部が設立をされ、来年度の予算編成に向けてしっかりと議論を進めていきたい、こう考えているところでございます。

○岡田委員 希望出生率一・八のところも、夢を紡ぐ子育て支援ということで、先ほども総理も言われました、五十万人分の保育の受け皿を整備しますと。それから、幼児教育の無償化、一人親家庭への支援拡大、三世代同居への補助、それぞれ今までも議論されてきたし、いいことだと私も思います。ぜひやりたい。

 だけれども、我々民主党政権のときには、消費税を上げさせていただく中で、七千億円をこのために使おうということを決めました。不十分だと思いましたけれども、もっとふやしたいと思いましたけれども、全体の枠組みの中でそれ以上を充てることは残念ながらできない、ほかにも年金や医療もある、そういう中で決めさせていただきました。

 だから、総理、いろいろなことを、夢を語るのはいいんですよ。だけれども、現実に、日本国総理大臣として、一体、この夢を紡ぐ子育て支援と、安心につながる社会保障、実は介護の話ですが、介護と子供、子育てにどれだけの予算を充てるのかということの全体の目安がなければ、それを全部党に丸投げするわけにはいかないじゃないですか。そこはどういうお覚悟ですかと聞いているんです。

○安倍内閣総理大臣 それはどんな政策もそうなんですが、政府として、まず、総理大臣として大きな方向性を示す中において、当然、夢を語るだけではありません、私は総理大臣ですから、実現可能性がなければならないわけであります。そのための予算の裏づけ、これは当然のことであります。

 まさに、その中において議論をしていく、政府と党が議論をしていくわけでありまして、これは勝手に議論するのではなくて、我々が議論する上においては、その予算の裏づけもあわせて議論していく、これは当然のことであろう。そういう議論をしっかりと深めていきながら効果的な政策を打ち出していきたい、こう考えております。

○岡田委員 総理、方向性だけでもちょっと教えていただきたいんですが。

 ことし六月に骨太の方針が閣議決定されました。経済財政運営と改革の基本方針二〇一五であります。二〇二〇年にプライマリーバランスを黒字化するという目標は変えないということを宣言されました。しかし、そのために、まずは当面三年間、社会保障費の伸び、まあ高齢化に伴ってふえるわけですね。一兆円程度ふえるかもしれない。しかし、それを毎年五千億円の増に抑えるということをその中で決められました。これはかなり大変なことだというふうに思うんですね。それだけでもかなり大変なのに、さらに新しいことをやると言われる。

 そうすると、残された医療やあるいは年金、そういったところをさらに重点化していく、切り込むことになるのではないか、そういうふうにも考えられるわけですね。いや、そうじゃなくて、五千億円の増に抑えると言ったのは、実は、それ自身変えるんだ、もっと社会保障費をふやすんだ、そういうことなのか。基本的な方向はどっちなのかということだけでもお示しいただけますか。

○安倍内閣総理大臣 基本的な考え方は、既に私たちが示している考え方の中において、我々が新たな三本の矢を打っていくということでございます。子育ての支援においてもそうですが、また同時に、特に介護離職ゼロについては、これはさまざまなアイデアを持ち出していくことによって効率的な対応も十分に可能になるわけであります。

 例えば施設においては、専ら、施設の介護の不足が生じているのは都市部に集中をしているわけであります。そして、土地がなかなかない、手当てができないという問題があるわけでありまして、そういう点に着目をしながら、いわば効率的に、財政負担が少ない方法というのもないわけではございませんから、そういうことも考えながら、我々はどういう対応が可能であるかということを考えていきたい。

 また、例えば、効率的な、先ほど申し上げました、リハビリによって要支援が、支援が必要でなくなる人たちも出てきている。また、要支援だった人がサポートする側に回っているという事例も和光市で拝見をさせていただいた。こうしたことを横展開していくということは、これは新たな財政措置が必ずしも大きく要るということでは全くないわけでありまして、むしろ効果が逆に出てくる。財政上、これは節減の効果も出てくるわけでございます。こうしたことも含めて考えていきたいと思います。

 同時に、今、岡田委員がおっしゃった五千億円ということでございますが、骨太の方針二〇一五においては、「これまで三年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸びとなっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を二〇一八年度まで継続していくことを目安とし、効率化、予防等や制度改革に取り組む。」という枠組みが定められています。

 その取り組みに当たっては、単なる負担増と給付削減による現行制度の維持を目的とするのではなくて、質が高く効率的な医療・介護提供体制に向けた改革を行っていく、あるいは個人や保険者に対する予防インセンティブの強化をしていく、そして薬価や調剤等の診療報酬の改革もしていく、負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化の検討などを進めることが必要であると認識をしておりまして、今後とも、必要な予算の確保に努め、国民が信頼できる社会保障制度を構築していきたい、こう考えております。

○岡田委員 それは骨太の方針にそう書いてあるわけですが、私が言っているのは、五千億の伸びに抑えるだけでも今言ったさまざまなことに取り組まなければならない、大変なことである、それに加えて新たに二本目の矢、三本目の矢というのが出てきて、いろいろなことをやりたいと。それは私もやりたいです。だけれども、それをやるための財源の手当てをどうするのかということもあわせて議論していかないと、それは絵に描いた餅に終わるのではないかということを申し上げているわけです。

 この二〇二〇年プライマリー黒字化というのは、これだけで終わらないわけですね。内閣府の試算によりますと、このままいくと二〇二〇年度に六・二兆円の赤字になる。そこの手当てはまだこれから。これはどうやって、二〇二〇年、この赤字を埋める具体策、もうそろそろ、私、お示しする責任が政府にあると思うんですけれども、いつお示しになるんでしょうか。もう一つ言うと、名目三、実質二という非常に高い成長で税収が上がるという、ここもかなり私は難しいと思います。しかし、まあ、そこは譲りましょう。しかし、それ以外になお六・二兆の赤字、これについてどう手当てするかということについて、いつきちんとしたお答えを国民に対してお示しされますか。

○安倍内閣総理大臣 我々は、まず経済再生を進めていく。経済再生を進めなければ財政の健全化ができないというのは、これは岡田代表も同意をしていただけるのではないかと思いますが、その中で、デフレ脱却までもう一息というところまで来たわけであります。

 税収は約三割、十二兆円以上ふえています。今年度は基礎的財政収支の赤字の半減目標を達成する予算を組むことができました。経済、財政両面で着実に成果を上げていると考えております。そして、引き続き、経済・財政再生計画に基づいて、プライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて取り組みをさらに進めていきます。

 今お示しになったような一億総活躍国民会議において、財源とあわせてよく検討していくことに、新三本の矢においてはなっていくわけでありますが、いずれにせよ、しっかりとそうした施策もあわせて進めていく考えでありますが、計画の中間地点である二〇一八年度において、PB赤字対GDP比一%程度及び国の一般歳出の水準の目安に照らし、改革の進捗状況を評価することとしておりまして、必要な場合は、デフレ脱却、経済再生を堅持する中で、歳出歳入の追加措置等を検討し、二〇二〇年の財政健全化目標を実現することとしているわけでございます。

○岡田委員 非常に歯切れが悪いというふうに思うんですね。

 今申し上げたことに加えて、一月には補正予算、これはかなり大型のものが出てくるんじゃないかという議論もありますね。それから、今議論をされている消費税の軽減税率の話、これも場合によっては、どこから財源が出てくるのか、社会保障をさらに削るということになるのか、こういう話であります。

 私は、アベノミクスというか安倍総理の経済政策を見ていて、もちろん私も経済再生は重要だという考え方に立ちます。しかし同時に、財政の健全化も重要である、これは両立していかなければいけないというふうに私は思うんですね。総理を見ていると、経済再生なくんば財政健全化なしということで、財政健全化がどんどん後送りになってしまっているんじゃないか。この一年間で三つの格付機関が日本国債の格付を下げました。

 先ほど稲田政調会長のお話を聞いていて、私は全く考え方が近いと思ったんですが、今財政健全化をしなくていつやるんでしょうか。こういう少し経済が落ちついてきたときに取り組まざるをしていつやるのか。経済は循環ですから、また悪くなるときがありますよ。だから、やはりいいときに取りかからなければならないというふうに、自民党の中にもそういう御意見があることを私は知って非常に評価するわけですが、ぜひ、総理もここのところはしっかりと考えてもらいたいと思います。

 そして、最後に申し上げておきますが、まだまだ議論したいことがたくさんある。我々は、憲法五十三条に基づいて、国会議員四分の一の署名を添えて臨時国会の召集を求めています。憲法は、通常国会をもって臨時国会の開催にかえることができるなんてどこにも書いてないんです。臨時国会の召集をしなければならないというのが憲法の考え方であります。総理ですから憲法を守る義務があると思うんです。ぜひ、この十二月までに臨時国会をきちんと開いて、そしてこの議論の続きをしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 終わります。




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