平成29年3月8日 第193回国会 内閣委員会
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○秋元委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。
○岡田委員 まず、官房長官に、天皇陛下の御退位の問題などについて政府の見解を確認したいと思います。
まず、官房長官は、二月十七日の当委員会での所信表明におきまして、「天皇陛下の御公務の負担軽減等については、国会における御議論をしっかりと受けとめ、国民的な理解のもとに成案を得る考えであります。」というふうに述べられました。
ここで「成案を得る」ということの意味ですが、これは、内閣として法案を出す、そういう意味なんでしょうか。
○菅国務大臣 私が当時申し上げたことでありますけれども、今、現実、どうなっているかということでありますが、立法府の中で、正副、衆参の議長、副議長を中心に、各党各会派の皆さんからさまざまな意見聴取をいただいているところであります。
政府としては、そうした立法府の皆さんの御議論をまず見守っていくということが、ここは極めて大事だというふうに思っております。
そうした中で結論が出されれば、それをしっかり受けとめて、検討を進めていきたいという趣旨の発言であります。
○岡田委員 実は、予算委員会、これは一月二十六日ですが、ここで総理は、国会の議論をしっかりとまずは見守りながら、その結論を受けて私たちは法案を取りまとめていくということを考えていますという答弁があるんですね。
これを見ると、閣法前提のようにも聞こえるわけですが、私は、今、閣法でなければならないという理由はない、むしろ、国会でしっかりまとまるのであれば、議員立法の方が立法府としてふさわしいのではないかという意見を持っております。少なくとも、閣法でなければならないというのは、私は立法府に対する行政の越権ではないかというふうに思うわけですが、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。
○菅国務大臣 私が申し上げたことも総理が発言をされたことも、ここはまさに一緒のことであります。
天皇陛下は、昨年の八月、国民に向けてお言葉を発せられました。そのお言葉を、政府としては重く受けとめているところであります。
その中で、議員立法という、今委員からお話がありました。議員立法について、そのよしあしについては、政府としての立場でここは申し上げることではないというふうに思っております。
ただ、私ども政府とすれば、負担軽減に対しての陛下のお言葉というのは、やはり重く受けとめる責務が政府にはあるというふうに思っています。
そして、現在は、先ほど申し上げましたけれども、正副の、両議長、両副議長、これは衆参で、今、各党会派からさまざまな意見についてお話を伺っていただいておるわけでありますので、静かな環境で行われているそうしたものについて、政府としては、しっかり見守っていくというのが政府の立場であります。
○岡田委員 私は、閣法というものが、例えば行政府、総務省とか経済産業省とか、その行政について閣法で提案されるということは、それは当然あっていいし、何ら問題はないと思うわけですけれども、こういう国の仕組みの骨格にかかわることについて閣法で出てくるというのはよくわからないわけであります。
やはり、基本的には各党がきちんと法案を出す、それは私は、主要政党が合意して出す、一本化して出すことが望ましいというふうに考えておりますが、余り内閣が閣法ということで前面に出過ぎることは三権分立のあり方からいっても根本的に疑問があるのではないか、そういうふうに思いますが、いかがですか。
○菅国務大臣 先ほど私が申し上げましたように、政府としては、天皇陛下が昨年八月に国民に向けてお言葉を発せられました。その言葉を重く受けとめて、有識者会議を開いて、現在においては公務の負担軽減のためにどのようなことができるのか、予断を持たずに御議論をいただいて、一月の二十三日に、さまざまな皆さんから御議論をいただいて、その論点整理というものを取りまとめていただいたわけであります。
また、国会においては、それよりも以前に、私が申し上げましたけれども、衆参の両議長、副議長の間において検討の場が設けられておりましたので、政府として、そうした天皇陛下の退位等に行われている、まさにこの立法府の議論を見守って、そしてそこで御議論の結論が出ればしっかり受けとめていくというのは、それは政府の当然の役割であるというふうに思ってもおります。
○岡田委員 政府がお言葉を受けていろいろ検討されることは当然だというふうに思いますが、閣法でなければならないというふうにしてしまうと、私は非常に問題があるんじゃないか。
国会できちんとした合意ができることが前提ですが、議員立法という選択肢もあるというふうに私は考えておりますが、この点について、閣法でなければならないというふうにお考えなのか、そこを確認したいと思います。
○菅国務大臣 議員立法について、私ども政府の立場で発言することは控えるべきだというふうに思っています。それはあくまでも立法府を中心とする議員の皆さんの考えることだというふうに思います。
ただ、それと同時に、政府としては、天皇の発せられた、国民に向けて発せられたお言葉に対してやはり責任を持たなきゃならないということも、そこも御理解をいただきたいというふうに思います。
○岡田委員 閣法前提ではないというふうに受けとめさせていただきました。
そこで、いや、そうじゃないというなら言っていただきたいんですが、閣法でなければならないという趣旨ではないというふうに私は理解しましたが、いいですか。
○菅国務大臣 議員立法を提出するしないということに対して、私の立場でそこは、申し上げることは控えるべきだというふうに思います。
○岡田委員 それでは、特例法か皇室典範の改正かということが、議長のもとでも、もう議論されております。議長のもとで議論されていますので、余り深入りすることは避けたいと思いますが、私は、特例法か皇室典範の改正かという法形式の問題ではなくて、今回の一代限りの特例として御退位を認めるのか、それとも恒久的な制度とすべきかということが物事の本質であるというふうに考えます。
政府の行われた有識者会議のヒアリングでも、ここは意見が分かれたところであります。政府としては、この点についてどうお考えなのでしょうか。一代限りの特例でないといけないというふうにお考えなのでしょうか。
○菅国務大臣 政府として一代限りの退位ということを軸に検討している事実はありません。
政府としては、現在国会において、先ほど来申し上げていますけれども、衆参の両院の議長、副議長を中心に、今、各党会派の間で議論が進んでいるものと承知しておりまして、その議論を見守って、その結論が出れば、しっかり受けとめて、さらに検討をしていくべきだというふうに思っていますし、現時点において予断を許すような答えは、ここは控えさせていただきたいというふうに思います。
いずれにしろ、今進められている正副議長の中の議論というものを見守っていきたいというふうに思います。
○岡田委員 政府としては一代限りということを前提に考えているわけではない、国会の議論を見守っている状況である、こういうお話だったと理解をします。
そこで一つ確認なんですが、もし特例法で一代限りということになった場合であっても、退位後の天皇陛下の御身分、例えば皇族にするという規定は、今の規定からは出てこないと思うんですね。退位された天皇陛下が皇族であるということですね。それから、秋篠宮殿下のために皇太弟という身分をつくらなければならないとか、そういったことが当然必要になってくると思います。
特例法でこういうことを規定するということになると、非常におかしいのではないか。本来、そういう新しい立場をつくるのであれば、ここの部分は皇室典範の改正で対応せざるを得ないのではないか、こういうふうに思うわけです。
政府の中で法律もいろいろ御議論されていると思いますが、ここのところはどういうふうに整理されるんでしょうか。
○菅国務大臣 まだ方向性が出る前のことについて、私がこの場で申し上げることは、そこは控えるべきだろうというふうに思っておりますが、さまざまな問題が出てくる、対応しなきゃならないということは、私どもも承知をしております。
○岡田委員 特例的に、退位された後の陛下が皇族であるということを決めたり、あるいは皇太弟という地位を認めるというのは、私は極めて違和感を感じるわけであります。そういうものは恒久的に設けなきゃいけない。恒久的に設けるとしたら、この部分は少なくとも皇室典範に書かざるを得ないというふうに思うわけですね。
そういう意味で、特例法で対応するということになったとしても、かなり皇室典範そのものの改正ということも同時に行わなければならなくなる、こういうふうに思うわけであります。やはり本則に返って、恒久制度にし、皇室典範を改正するということが私は望ましいというふうに考えているところであります。
次に、今回の議論の視野には直接入っておりませんが、女性宮家の話についてお聞きをしたいと思います。
官房長官は二月二十七日の記者会見で女性宮家の創設について問われて、皇族の減少に今後どのように対応していくかについては、内閣官房の皇室典範改正準備室において検討を行っていますというふうにお答えになりました。
皇族の減少の問題に対応するために女性宮家の創設は不可欠であるというふうに認識しておられるのか、あるいはそうではないのか、官房長官の、あるいは政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○菅国務大臣 いわゆる女性宮家の創設など、皇室典範に関して各種の議論があるということは政府としても承知をしておりますし、皇族の減少についてどのように対応していくか、このことについて、政府でも極めて重要な課題だというふうに思っています。
そういう中で、内閣官房皇室典範改正準備室において、これまでのさまざまな議論の経緯というものを十分検証するなど、政府部内でこれは検討を行ってきたところであります。
そういう中で、私、さきの記者会見でも申し上げましたけれども、検討を先延ばしすべきものではないということを記者会見では申し上げました。
現時点において、それ以上のことは控えさせていただきたいと思います。
○岡田委員 それ以上のことは控えさせていただきたいということですが、どういうタイムスケジュールで、この準備室での議論を行っておられるのか。
これは、野田内閣で論点整理は一旦なされました。何が論点かということはかなり明らかになっているわけで、準備室で議論するといっても、もう安倍内閣スタート後、四年たっているわけですから、長々と議論するような、そういう話ではないわけであります。いつごろまでにこの問題の結論を出されるのか。
それから、私は、これもやはり国会でちゃんと議論すべき話だと思いますので、今回の御退位等の問題が法律できちんと成立した後に、国会においても引き続き女性宮家の問題を取り上げて議論していくべきだと考えますが、政府においても有識者会議での議論などを行われるべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○菅国務大臣 まず、今私が申し上げましたように、内閣官房にそういう準備室を設けて、過去のさまざまな経緯等について、ここは調査をさせていただきました。
ただ、そういう中で、今上天皇のお言葉がありました。最優先すべきは、まさに高齢化時代における天皇陛下の負担軽減、こうしたことが、ここは極めて重要だというふうに思っています。そういう中で、現在、ここに全力を尽くして、政府として今取り組んでいるところでありますので、いつまでということを現時点において申し上げることは控えたいというふうに思っています。
○岡田委員 官房長官も御指摘のように、これは余りゆっくりできる話ではないということは事実であります。そういう意味では、しっかりと政府の中でも御議論いただき、もちろん国会でも何らかの形で議論して、早急に対応すべきではないか、そういうふうに思っています。
この女性宮家の創設の問題を安定的な皇位継承の問題というふうに捉えるのは私は誤りで、これは公務の負担軽減の問題だというふうに思うわけですね。
別に、今の男系男子という原則を変えるという議論をここでするわけではございません。それはその先の話として、そういう議論もやがては必要になると私は思いますけれども、女性宮家の創設の問題自身は、今の男系男子を前提にして、御結婚後も皇族の身分を保たれるということでありますので、ここはきちっと整理をして、安定的な皇位継承の問題ではなくて公務の負担軽減の問題であると。つまり、皇族が減ってしまうと、天皇陛下の公的行為とかそういったことを行う際の、かわりに行う人の数が減ってしまうということが、結局、陛下の負担を増すことになる、そういう整理で議論すべきだというふうに考えますが、この点はいかがですか。
○菅国務大臣 政府としても、いろいろな議論がある中で、どのように対応していくかということを、先ほど申し上げましたけれども、皇室典範改正準備室というところで、増員もして、そこは検討を行ってきているということも、これは事実です。
ただ、そういう中で、昨年、陛下が国民の皆さんにお言葉を発せられました。その陛下のお言葉を政府は重く受けとめて、最優先で、適切に対応することができるように、今総力を挙げて取り組んでいるところでありますので、私は、皇族の減少については、そんなに時間をかけてやるべきじゃないということも申し上げています。
ただ、まず順番として、負担軽減、陛下のお言葉を私どもは真摯に今受けとめているところでありますので、そこから先のことについて現時点で申し上げることは控えさせていただきたいというのが私の思いです。
○岡田委員 一部に、この女性宮家の問題が女系天皇や女性天皇につながるのではないか、こういう議論があることも事実だと思います。ただ、それは直接つながる話ではない、それはそれでまた議論すべき別の課題である、そういう整理でこれは進めていかないと、結局タイミングを失してしまうということになりかねませんので、そこはぜひ整理の上で御検討をお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。
官房長官は、以上で結構です。
石原大臣、財政健全化の問題で議論したいと思いますが、ちょっと順番を変えまして、まず、二〇二〇年PB黒字化という目標があるわけですが、その後の話について議論したいと思います。
二〇二五年問題というのがよく言われるわけですね。団塊の世代が全員七十五歳を超えると社会保障費は飛躍的にふえる。そのことと、将来の金利上昇の問題、この二つのファクターをどう考えていくかということが、仮に二〇二〇年、PB黒字化できたとしても、私は非常に厳しいと思いますが、それはまた後で議論しますが、仮にPB黒字化できたとしても、極めて大きな重い課題だというふうに考えるわけです。
予算委員会で我が党の前原委員が、二〇二三年以降、名目長期金利が上昇し、名目成長率を上回るという、内閣府で大臣がおつくりになった中長期の経済財政に関する試算について問題提起をしました。結局、二〇二六年以降、国、地方の債務の対GDP比は下がり続けるのではなくて、発散するのではないかと。確かに、公式に基づけば、そういう計算になりかねない。
それについて、二〇二六年度以降の試算を国会に出すということで御検討いただいているはずですが、そもそもこれは当委員会の問題でもあると私は思いますので、いつ国会にお出しになる予定か、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○石原国務大臣 ただいま岡田委員がおっしゃられましたとおり、二〇二五年というのは、団塊の世代の方々が全て後期高齢者の域に入っていらっしゃる、それに伴いまして医療費の増大あるいは介護費の増大等々が予測されるわけでございます。
そんな中で、安倍内閣のこれまでの取り組みの中で、経済成長をして税収をふやさない限りは、対GDP比の赤字というものを削減していくことはなかなかできないということも明らかになってきた。そんな中で、私ども、十年間の前提を置いて数値をお示しさせていただいているわけでございますけれども、それはあくまでも、前提値というものをどう置くかによってその数字というものは変わってくる。
しかしながら、今、二〇一七年になりましたので、そこから先、二〇二六年、二七年とか、一年、二年先がどういうふうになるかということは出せないかということで前原議員との間では議論をさせていただきまして、今検討させていただいているところでございます。同じような議論が、当内閣委員会あるいは財政金融委員会でもあったと承知をしております。
その姿、これはもう委員御承知で御質問されていると思いますけれども、経済成長率と、それに伴いまして、経済が成長していけば必ず金利を、要するに、金利を上げて経済の過熱を抑えるという事態も、過去の経験の中から私どもは承知している。
ですから、そこの前提値をどう置くかによって数字というものは大きく変わってまいりますけれども、今、労働問題が非常にタイトになってきて、宅配便という日本独特のサービスが維持できない、できる、こういうところに来ているわけでございます。
そういうことを考え合わせますと、ここにまたイノベーションが入ることによって、そこの部分も変わってくる。すなわち、どういう経済をつくってどういう社会になるか、この前提値によって、将来の数字というものは大きく変わってくる。それで、新たな、何というんでしょうか、前提値によって将来像が大きく変わってくる中で、今委員が御質問されました点について、ニュートラルに近いものでどうやって出していけばということを今検討させていただいているところでございますので、もうしばらくお時間を頂戴できればと思います。
○岡田委員 まず、これは、二五年以降、二六年、二七年ということではなくて、中長期試算ですから、やはり二五年以降、三〇年、三五年と、これは当然、モデルを動かせば機械的に出てくる話だというふうに思います。なぜ時間がかかっているのか、全くよくわからないんですね。
前提というのは、そういう前提を置いて、経済再生ケースと、そうでない、経済再生がうまくいかないベースラインケースというものを、数字をそういう前提で置いているわけですから、そのときに財政はどうなるか。金利が上がったときに結局財政健全化はできないんじゃないか、こういう根本的な疑問が呈されているわけですから、それに対してきちんと試算結果を示す必要がある。そして、そういうことが起こらないためには、じゃ、どうしたらいいのかということも、政府として御検討いただく必要があると思うんですね。
そういう議論の前提としての数字を示すということですから、いつまでかということをきちんと述べていただけませんか。
○石原国務大臣 これも委員御承知のことだと思いますが、あくまでも、財政健全化、二〇二〇年にPBの黒字化を目指す。二〇一五年には半減という目標は達成させていただきました。安倍内閣になって二十二兆円の税収がふえた。また、経済も拡大していった、歳出も効率化している、削減している。伸びる社会保障費の部分も、かつて一兆円のところを五千億に抑えている。こういうさまざまな努力を行うことによって、中期計画の中で目標達成をしていく。
今その中期計画の中でございますので、そこから先の試算、すなわち、先ほど若干イノベーションの話を、物流に関して話をさせていただきましたけれども、どういう社会に、それから先の社会を、日本を持っていくのかというところの青写真、すなわち、どういう社会になるのかということは、その前提値をどう置くかによって大きく変わってくる。
今、政府として、十年間というものをつくらせていただきまして、そこから先のものは、実はつくっていないというか、具体的にどういう経済社会になるのか、どういう社会構造になるのか、イノベーションのスピードが非常に速いもので、そこのところをかっちりとしたものができていない以上は、今ある中期計画の中で、もちろん金利水準が経済成長よりも、一般論ですけれども高くなってしまえば財政は大変厳しいことになるというのはイロハのイだと、委員の御指摘のとおりだと思いますけれども、じゃ、そういうふうにならないような経済成長モデルはどういうものか、モデルをどう置くのかというところは、やはり議論にさまざまな時間を要するという点は御理解いただきたい。
ただ機械的に今の延長線上で数字を出しても、それは私は意味のないことだと思っております。
○岡田委員 私、何を言っておられるかよくわからないんですが。
結局、名目金利と名目成長率、この二つで、その関係の問題ですから、どういう経済になるかとかそういう話は、それは経済成長がさらに望めるとかそういう議論にはなったとしても、まあ私は非常に非現実的だと思いますが、そういう議論にはなったとしても、公式上、名目金利と名目成長率があれば発散するか収束するかというのは当然出てくるわけですから、私は大臣の言っておられることはよく理解できないんです。
わかるように説明してもらえますか。
○石原国務大臣 私が申しておりますのは、すなわち、名目成長率をどの数字に置くか、名目金利をどういうふうに置くのか。当然、経済が成長していって経済が過熱すれば、金利を高めて経済に、インフレにブレーキをかけるということが起こってきます。そういうものを含んで、私たちは十年間の中で計画を立てさせていただいたわけでございます。
中長期試算というものは、この目標に向けて改革の進捗状況を点検するということを目的としておりまして、この目的に沿った範囲で、委員御指摘のとおり、二〇二〇年代前半までの十年間程度を試算として示させていただいた、あくまで試算であります。
ですから、そこから先の社会を、イノベーションが起こることによってどういうふうになるのかということをどう前提値を置くのか、すなわち、成長率と名目金利の上昇をどう置くのかということによって、あらわれてくる姿というものは全然違ってくるわけでございます。
そこのところを今検討させていただいておりますので、ただ単純に今あるものを延長線上でお示しするということは私は意味のないことだということは、前原議員との御議論の中でもお示しをさせていただいたところでございます。
○岡田委員 答えは一つしかないんだと思うんですね。名目成長率は伸びても名目金利がそれを上回ることはない、人為的にそういうことが可能であるという前提をとらない限り、発散するということは明らかだと思うんです。
もし、名目金利が低いままこれから二〇二五年、三〇年とやっていけるというなら、どうやってそれが実現可能なのかということもあわせ説明しないと、結局は発散しますねということに私はなるんだと思いますが、名目金利が名目成長率よりも下がる、そこについて石原大臣は確信をお持ちなんですか。
○石原国務大臣 何度も申しますとおり、十年間程度の期間で試算としてお示しをさせていただいているものが今議論の俎上に上っているわけでございます。
そして、先ほどイノベーションの例をさせていただきましたけれども、ここから二〇二五年以降の社会においてどういうような経済成長になるのかという確固たるものというものは、どういう数値を置くかによって全然変わるわけでございます。この範囲以上の期間、委員は機械的に二〇二五以降のものを今の試算のままで出す意味があるというお話をされているわけですけれども、その試算に用いさせていただいております経済財政モデルというものが、二〇二五年までの十年間程度の推定期間を念頭に作成されている、この十年間であるならばこういう経済成長、こういうことが予見できるだろうということでつくられているわけでございます。
ですから、ここから先のものをつくるのであるならば、推計に必要な前提条件をどう置くか、あるいは、推計値について、先の話になりますから不確実性が当然高まってくる、そういうことであるものをただ単純な数字としてお示しすることに意味があるのかといえば、私は意味がない。当然、これから先、内閣がいろいろな形で、新しい内閣がまたできることもあるでしょう、そういうときにまた新しいモデルをどうつくるのか、その内閣の経済政策によって将来像というものは大きく変わってくる、そのように御理解をいただければと思います。
○岡田委員 名目成長率が上がる上がらないということはあっても、そのことと金利の関係というのはこれは公式上明らかなわけですから、私は大臣の言っていることは全くよくわからないし、それから、新しい内閣がと言われますが、新しい内閣がスタートしたときにもう手おくれであるということになりかねないから、危機感を持って申し上げているわけです。
二〇二〇年PB黒字化の話は後ほど申し上げますが、もう一つ、二〇二六年度以降を待たなくても、お示しになった中長期の財政試算の中でも、もう既に危機的状況があらわれているわけですね。
例えば、GDP比で見た場合に、基礎的財政収支は、二〇二〇年マイナス一・四。これが、二〇二五年にはプラス〇・二ということで、二〇二五年にはめでたくPBは黒字化するという試算になっていますね。しかし、国債費を含めた財政収支で見ると、二〇二〇年マイナス三が、二〇二五年はマイナス三・六ということで、PBは、基礎的財政収支は改善しているけれども、財政収支はGDP比でも悪化をしているという計算結果になっております。
なぜそうなっているかというと、結局、税収の伸びが、例えば一般会計で見ると六十七・一兆、二〇二〇年ですね。それが二〇二五年には、十四兆ふえて、八十一兆になるという計算ですけれども、国債費の方は、同じ期間に二十兆ふえる。つまり、税収の伸びを国債費の伸びが上回るということになっているから、PBは改善しても、財政収支そのものは悪化する。これが、既に示された中長期の経済財政試算の中でもあらわれているということです。
このことについては、どういうふうにお考えですか。
○石原国務大臣 今委員が財政収支のお話をされましたけれども、そこは非常に重要な点であると私も認識をしております。すなわち、税収を上回って国債費の利払いがふえていけば、当然、財政収支は悪化していく。そういうものをこれからどうやって抑えていくか。幸いにも、今は低金利でございます。今、非常に余裕があるときに将来の姿を考えていくということが肝要である、私はこのように考えています。
そんな中で、現に、この安倍内閣になりまして、二十二兆円の増収を図り、国債発行額も十兆円減額できている。このラインで、イノベーションを起こすことによって、さらなる経済の成長、すなわち、潜在成長率が今〇・八でございますけれども、これをさらに高めていくということが肝要で、その経済政策というものを、未来投資会議を中心に、新しいソサエティー五・〇という社会をつくっていく形の中で実現していくべく、今検討しているところでございます。
○岡田委員 私は、所管大臣としてもっと危機感を持って、しっかり対応すべきだというふうに思います。
今、二〇二〇年以降の話をしましたが、では、二〇二〇年PB黒字化というのは果たして可能なのかということについて少し、残された時間で議論したいと思います。
まず、石原大臣は、二月十七日の所信の中で、「名目GDP六百兆円経済の実現と二〇二〇年度の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指します。」というふうに言われました。昨年秋の臨時国会での所信では、「財政健全化については、消費税率一〇%への引き上げが延期された中にあっても、二〇二〇年度の目標を堅持します。」、財政健全化目標は堅持すると言われたんです。今回は、両立を目指しますというふうに言われました。
後退したかのような印象を与えるわけですが、堅持をするという考え方は変わっていないんでしょうか。
○石原国務大臣 日本にとりまして大切なことは、先ほど財政収支のお話をされましたけれども、対GDP比債務というものをしっかりと減らしていくということが一つ肝要であること、そしてまた、税収をふやす努力を必ず行っていくということ、そして、財政の方では効率化を図る、無駄を省いていく、特に社会保障費の部分で、安倍内閣は、一兆円自然増のところを五千億に抑えておりますけれども、この考え方はできる限り堅持していく。
もちろん、先ほど二〇二五問題を委員が御言及されておりますけれども、高齢者の方がふえたときの対応というものはしっかりと、どういうものになるかということは予見できませんけれども、健康年齢を高くしていくことによって医療費を抑制するなどの努力を行っていかなければならない。
そういう意味において、私は、財政健全化をしっかりと堅持していく、こういうことを、財政政策を担当する者の一人として言い続けること、また、実現していくことにこの国の将来というものがかかっている、そのぐらいの危機感を持って取り組ませていただいているところでございます。
○岡田委員 今、GDP比の債務残高の話、これを改善するということを言われましたが、PB黒字化二〇二〇年、これについて言及されなかったんですが、これが一番大事じゃないんですか。
○石原国務大臣 もちろん、この間、中期試算を改定したものをお示しさせていただいた中で、現実的な数字はといえば、二〇二〇年度における国、地方合わせた基礎的財政収支は五・五兆円から八・三兆円と、大変厳しい数字になっております。
それは、ある意味では、二〇一六のときの円高によりまして、世界経済の不確実性もその当時高まっておりましたし、さらに株価がそれによって下がったり、それによって企業収益が下がる、配当が下がる、キャピタルゲインが減ったということによって、予想していたよりも税収が下がってしまった。
すなわち、やはり税収がしっかりと上がっていく経済再生なくして、今御議論をいただいているPBの黒字化も財政再建ということもできないということも、この四年間で明らかになったわけであります。
それであるならば、やはり、経済を成長させて税収をふやして、そしてもちろん財政の部分はしっかりと抑制的な態度をとって、委員御指摘のとおり、PBの黒字化と、一番重要なのは、やはり先ほどの発散論になるんですけれども、債務が、要するにGDP比でふえていかない、こういう姿を定着させることが肝要であると考えております。
○岡田委員 今、石原大臣の答弁は、一番大事なことは債務残高がGDP比で発散しないようにすることだと言われましたが、まず一番大事なことは、PBを二〇二〇年、黒字化するということじゃないんですか。あわせて債務残高を減らしていくということであって、PB黒字化二〇二〇年というのはどこかに行ってしまっているわけですか、石原大臣の頭の中では。
○石原国務大臣 決してどこかに行っているということはございません。
当内閣委員会での所信の表明の中で、この二〇二〇年のPB黒字化をしっかりと目指していくということには変わりませんし、債務残高対GDP比を着実に下げていく、これはもう委員のこれまでの御議論と全く私は同じだと思っています。それを目指しているということは全く変わっておりません。
そして、これを緩めてしまいますと、実は財政は膨張圧力が高まってくるということも過去の歴史の中で示されているわけでございます。そういう事態になりますと、将来世代に対する責任というものが私は発生してしまうと。
そういうことで、二〇二〇年度のPBの黒字化と財政再建、こういうものを目指していくということに何ら変わりはございませんし、昨年とことしの中で言い回しの言葉が違うという御指摘ではございますけれども、気持ちは全く変わっていないというふうに御理解をいただければと思います。
○岡田委員 私はここは非常に気になっているんですが、総理の代表質問に対する答弁でも、PB黒字化ということを強調されるというよりは、債務残高のGDP比の話を常にされている。
私は、きわめつけは麻生財務大臣だと思います。財務大臣というのは財政健全化に最も責任を持つ、そういう立場だと思いますが、例えば二月二十二日の衆議院の財務金融委員会では、ちゃんと八兆円なんて埋まるかと言われれば、我々としては、立てた目標に向かって努力するという以上に今の段階で申し上げる段階ではございませんと。
単なる努力目標である、八兆円、何とかするということ。これは、財政健全化についての重い責任を負う財務大臣の発言として、石原大臣はどう思いますか。
○石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されました財金委員会での財務大臣の答弁というものは今ちょっと持ち合わせておりませんので、その真意というものははかりかねますけれども、財務大臣も私とやはり同じように、特に現場で財政を預かる、また国の税収というものを一番身近に見ている方でございますので、財政再建への取り組み、あるいは総理が掲げられております現内閣としての目指すべき姿について、私の考え方と相違があるとは考えておりません。
○岡田委員 二〇二〇年PB黒字化という目標をだんだん下げて、そしてGDP比残高、そちらにスイッチしようとしているかのように思いますが、スイッチしたとしても、先ほどの名目金利との関係でいうと、非常に厳しいということはむしろ増すばかりではないかと私は思います。
最後に、石原大臣もいろいろ御努力されていると思いますが、所信の中で、経済・財政再生計画や経済・財政再生アクション・プログラム二〇一六にのっとって、歳出全般にわたって聖域なく徹底した見直しを推進していきますとお答えになりました。初年度である二〇一六年度の財政健全化効果、両計画に基づく財政健全化効果というのはどれだけ、金額でいうとあったというふうにお考えですか。(石原国務大臣「二〇一六ですか」と呼ぶ)二〇一六、はい。
○石原国務大臣 歳出の面で数字をお示しさせていただきますと、先ほど申させていただきましたとおり、社会保障費の一兆円増のところを五千億円以下に抑える、そういう形で推移しているということが成果ではないかと考えているところでございます。
○岡田委員 大臣が言及された二つの再生計画とアクション・プログラム二〇一六は、いろいろなことが細かく書いてありますね、効率化するための。そういうものの効果というのは金額でいうと幾らになるか。一兆円を五千億にしましたというのは、これはその外の話だと私は思うんですね。
いろいろな制度改革をして、そういうことをつじつまを合わせたということですけれども、効率化に伴ってどれだけ金額が浮いてきたのか。それを全部足したものが八兆円にならなきゃいけないんですね、二〇二〇年。そうすると、毎年二兆円ぐらい、社会保障の五千億を除いたとしても一・五兆円ぐらいは必要になってくるということなんです。そのことについてきちんと説明されるべきじゃありませんか。
○石原国務大臣 それはまさに、二〇二〇年のPB黒字化というものが当初の予定よりも、今回お示しさせていただいたもので、すき間が八・三兆円と大きくなった、それを単純に割っていくと今委員の御指摘の数字になるわけでございますけれども、それに向かって、大変厳しい状態ではありますけれども、私は財政政策をつかさどる人間の一人として、財政再建にしっかりと努めていきたい。
そして、今、どういう形でどういう政策を行い、政策効果によってどれだけのものが出たという数字をちょっと持ち合わせておりませんので、またお示しできるようなことなら、させていただければと思います。
○岡田委員 終わります。