平成30年3月23日 第196回国会 外務委員会「対北朝鮮政策、対米貿易・通商問題他」
○岡田委員 民進党・無所属の会の岡田克也です。
私からは、まず、当面の北朝鮮政策について大臣の御意見をお聞きしたいと思っています。
まず、三月五日、六日の二日間、韓国大統領府の鄭義溶国家安保室長と徐薫国家情報院の院長が特使として訪朝して、それをきっかけに、四月末の南北首脳会談、それから、五月までとされている米朝首脳会談を行うことになりました。
この間の韓国政府の対応について、まず、総括的に大臣はどのように評価しておられるのか、お聞きしたいと思います。
○河野国務大臣 今回、日米韓三カ国が連携をし、また中国、ロシアの協力も得て、国連の安保理で制裁決議案、かなりこれまでになかった厳しい経済制裁を北朝鮮に対して行うということになりました。
この状況の中、いずれ北朝鮮が何らかの行動に出ざるを得ないとは思っておりましたが、随分予想よりも早く動いたなという気が正直しております。平昌オリンピックという場がありましたので、それを利用した、いわば北朝鮮のほほ笑み外交と言ってもいいのかもしれません、そういう機会を捉えて北朝鮮が動いたということなんだろうと思いますが、そうした機会からここに至るまでの韓国政府の努力というものに敬意を表したいというふうに思っております。
北朝鮮に韓国は特使団を送り、金正恩委員長との直接の面談というのもあり、そこで北朝鮮が非核化へのコミットメントを明確にした、非核化への意思を明確にしたという報告を、私も、特使団の一員であった徐薫国家情報院長から直接詳細に説明をいただきました。
しかし、いまだに、北朝鮮側からは、非核化へのコミットについて直接の言及がないんだと思います。このことについては、アメリカも、やや北朝鮮の意思について懸念を持っているという表明がございました。
我々としては、南北の首脳会談あるいは米朝の首脳会談に向けて、北朝鮮の意思あるいは北朝鮮の意図というのをしっかり分析をしていく必要があると思いますし、これまで国際社会は北朝鮮とたびたび対話をし、その対話が成果を上げることができなかったという失敗を繰り返してはならないという、ここは、日米韓だけでなく、広く国際社会の中で共有をされている認識だというふうに思っております。
北朝鮮が、まず、完全かつ不可逆的、そして検証可能な方法で非核化をする、そして、ICBMだけでなく短距離ミサイルに至るまでのミサイルを放棄する、そして、日本の拉致被害者だけでなく、米国の拘束者、あるいはさまざまな国の拉致被害者の解放に向けてしっかりと行動をとるということを国際社会として求めていく必要があるというのは共通認識だと思いますし、北朝鮮が具体的に行動をとるまで北朝鮮に対する圧力というのは維持していかなければならないというのが、米国政府内、あるいは日米、日米韓の共通認識と言ってよろしいかと思います。
我々としては、引き続き北朝鮮の意図をしっかり分析をしながら、他方、北朝鮮は、いまだ核関連施設、ミサイル関連施設での活動を停止しておりません。さらに、瀬取りを始めとする制裁を逃れる方法をかなり巧妙に今でも続けているというのが現実でございますので、北朝鮮の動き、北朝鮮の意図というのをしっかり見据えながら、南北の首脳会談、米朝首脳会談に向けて、これから起こり得るさまざまな出来事の中で、日米韓の連携をしっかり維持していきながら対応してまいりたいというふうに考えております。
○岡田委員 私は、北の対応もありましたが、やはり韓国の外交が非常にダイナミックに動いたなというふうに受けとめました。ちょっとうらやましくも思ったりしたわけですが、ただ、中身についてはいろいろ問題もある。その点、今から少し議論していきたいと思います。
大臣は今、包括的にいろいろなことを言われましたが、まずは、韓国大統領府の発表文の中で、北側は朝鮮半島非核化の意思を明確にしたというふうに書いてありますが、このことについて、徐薫長官とのやりとりその他、より具体的に説明があったんでしょうか。何かここで言われていることがかなり信憑性があるというふうに確信を持たせるようなことがあったのかどうか、お聞きしたいと思います。
○河野国務大臣 徐薫国情院長から説明をいただきましたが、金正恩委員長が非核化の意思を明確にした、ざっくり言うとそういう御説明でございました。
徐薫院長も、北朝鮮で意思決定ができるのは金正恩委員長一人しかいないということなんだろうと思いますが、その金正恩委員長が非核化の意思があるということを伝えた、それを特使団経由で我々も聞いたということでございます。
この非核化のコミットメントがあるということを裏打ちするために例えばこういう行動をするとか、そういう説明は全くありませんでしたし、恐らく、それを何か具体的に裏打ちをするものはなかった。しかし、金正恩委員長が非核化の意思があるんだということを手がかりにして、この南北の会談そして米朝の会談というものに今持ち込もうとしているわけでございます。
これは、金正恩委員長の方から、米朝会談をやる意思があるということをアメリカに伝えてくれという話があって、特使団はそのままアメリカへ向かって、トランプ大統領にその旨伝えたところ、トランプ大統領がそれじゃやろうということになりまして、安倍総理にトランプ大統領からまず電話をいただいた後、そういう記者発表があったということでございます。
ですから、この非核化の意思というのは、金正恩委員長が特使団にそう言ったというところでありまして、しかし、対外的にそれが北朝鮮から発表されているわけでもなく、行動をもって裏打ちをされているでもないということは、核関連施設が動いているという情報からも、裏打ちをする行動には至っていないというふうに思っております。
○岡田委員 大臣おっしゃるように、これは対外的に北朝鮮が何かアナウンスしているわけでもないし、合意された紙があるわけでもない。ただ金正恩氏が言ったということを聞きましたというだけですから、ある意味じゃ非常に、幾らでも、そんなこと言っていないと言って開き直られてしまうと話としてはそこで変わってしまうという、かなり問題のあるところだと思うんですね。
先ほど大臣はアメリカの中にも懸念を持っているところもあるというふうに言われたと思うんですが、もっと厳しく、非常に懐疑的だ、北朝鮮が核放棄に応じることを示す兆候はないと、アメリカの上院軍事委員会でコーツ国家情報長官は言われています。
かなり受けとめ方に幅があるんだというふうに思うんですね。その曖昧なものを前提にいろいろなことが進んでいくというところに心配はあるものの、しかし、動き出した船、やはりこのチャンスを生かそうということだと思うんです。
私、安倍総理の発言を聞いていて、ちょっと気になることがあるんですね。安倍総理は、三月九日の電話による日米首脳会談の後の会見でこういうふうに言われたんですね。北朝鮮が非核化を前提に話合いを始める、そう北朝鮮の側から申し出たこと、この北朝鮮の変化を評価するというふうにおっしゃっているわけですね。
私はこれ、おやっと思ったんですが、北朝鮮が非核化を前提に話合いを始めるというふうには言っていないわけですね。先ほど言ったように、北側は朝鮮半島非核化の意思を明確にしという、これしかないわけですから、非核化を前提に話合いを始めるというのは、私はちょっと受けとめ方として踏み込み過ぎているんじゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。
○河野国務大臣 安倍総理の発言は、さまざまな発表のほかに、トランプ大統領からの説明や韓国側からの説明を踏まえた上での発言であるということを申し上げたいと思います。
いずれにしろ、対外的に発表はない、具体的な活動の停止といったようなものもないという中で、懸念を共有しているというところは大いにあるんだろうと思いますが、少なくとも、北朝鮮が明確な行動に出ない限り圧力は最大化されたまま維持されるというところで、今国際社会は一致をしております。
ワシントンでも、国際社会が損をすることはないという発言をされた方がいらっしゃいましたが、北朝鮮の意思が果たして本当なのかどうなのかというのはわからないまでも、北朝鮮がただ非核化にコミットしますと言っているだけでは何も得るものはない、そういう発言に対して対価は何も与えるわけではない、本当に北朝鮮がそういう非核化への意思があって、それを具体的な行動に移していくならば、国際社会としてそれに対応するということになりますので、対話を始めるということに関して言えば国際社会は今のところ失うものは何もないということなんだろうと思います。
ただ、この先、南北の会談が行われる、あるいは米朝の会談が行われる中で、さまざまなやりとりがある中で、北朝鮮の意図というのがもう少し明確になっていくんだろうというふうに思っておりますが、そのときに、本当に北朝鮮が非核化にコミットしているのか、あるいはそれをどう行動につなげていくのか、そうしたところを我々としては明確に見ていきたいというふうに思っております。
○岡田委員 安倍総理が電話会談などで特別の情報を得ているならともかくとして、私は、素直に見ると、ちょっと踏み込み過ぎじゃないかと。北朝鮮が、韓国政府の発表文ですが、北側は朝鮮半島非核化の意思を明確にしたというのは、言葉をかえれば、全ての条件が満たされれば非核化をしてよい、そういうことだと思うんですね。そのことと、安倍総理が言われた、非核化を前提にしたというのは、私はかなりニュアンスの差はあると思うんです。受けとめ方としてちょっと前のめり過ぎではないかということは申し上げておきたいと思います。
それでは、そこで、制裁圧力との関係です。先ほど大臣も言及されましたが、大臣は、日米韓の認識は共通であるというふうに午前中答弁されたと思います。また、別のところで、北朝鮮が具体的な動きをするまでは圧力は緩めないというふうに大臣はおっしゃっています。
他方で、例えばペンス副大統領はこう言っているんですね。全ての制裁は維持され、最大限の圧力攻勢は北朝鮮が核計画の終了のために具体的、恒久的、検証可能な措置をとるまで続くと。
同じ意味でしょうか、大臣と。
○河野国務大臣 少なくとも、北朝鮮がそうした具体的な行動をとるのが制裁について議論をする大前提であるというところは申し上げてよろしいかと思います。
北朝鮮が、例えば、我々が申し上げているのは、完全かつ不可逆的、なおかつ検証可能な非核化というわけですが、これは別に、それじゃやりますと言ってボタンを押したらそうなるというわけではなくて、IAEAの査察チームが入り、さまざまな行動が行われ、最後、核兵器をどう解除し、更に何をやってという一連のプロセスがあるわけでございます。
その間に国際社会としてどのように対応していくかというのは、これはこれから北朝鮮とさまざま交渉する中で、いわばこちら側の手のうちでございますから、なるべく、どういうふうにしたらどういうふうにするんだということは申し上げない方がよろしいかというふうに思っております。
ですから、我々としては、さまざまな言い方はあると思いますが、少なくとも、ただ言葉で言っているだけでは対価は得られない、北朝鮮が具体的な行動をとることが必要で、具体的な行動が出るまで制裁は最大限の圧力のもと続けられるという言い方をしているところでございます。
○岡田委員 ペンス副大統領の言葉、具体的、恒久的、検証可能な措置をとるまでは圧力攻勢は続くというのは、現実には、やはり交渉の中で、相手の出方によって、場合によってはそういった圧力を一部緩めるとか、それは交渉ですからそういうことは当然あり得るというふうに思っております。大臣がおっしゃっているのもそういう意味だというふうに理解してよろしいですか。
○河野国務大臣 向こうが何かをやったらこちらが何かをやるということでは、以前と同じような、食い逃げされていることにもなりかねませんので、なるべくこちら側の手のうちは申し上げないようにしておきたいというふうに思います。
○岡田委員 今までと比べるとより厳しくやる、そういうふうに理解をしておきたいと思います。
そこで、この間、米韓の外交当局というのは私は緊密に連絡をとってきたんだろうというふうに思うんですね。全くばらばらに、特使が行って、そしてその後アメリカに行ったということではなくて、やはり緊密な連係プレーというのがあったんじゃないかというふうに思うわけです。
それに比べると、日本外交の存在が非常に薄かったのかな。もちろん我々の見えないところで何らかのことをやっているのかもしれませんが、私が承知する限りは、やはり、米韓が緊密にこの間進めてきた、それに対して日本は少しおくれをとったというか、蚊帳の外だったというふうに思えてならないわけです。
ただ、これからやはり日本がどういうふうにそこにかんでいくかということは非常に重要で、南北首脳会談、そして米朝首脳会談、その過程で、日本もしっかり、韓国、アメリカだけではなくて、準備作業というか、いろいろな事前の交渉について一定の役割を果たさなければ、日本の国益は実現できないというふうに思うわけです。
この点について、大臣の基本的な考え方をお聞きしたいと思います、具体的なことは言えないと思いますから。
○河野国務大臣 最近、さまざまな評論家とか専門家という方々が、どうも日本は蚊帳の外じゃないかとか、米韓はやっているのに日本は何だとか、いろいろなことをおっしゃっている話は聞こえてまいりますが、別に日本が手柄話をしても意味がないわけで、それは、将来、歴史が判断をすればいいことであって、我々当事者がそこで、我々がやっているんですなんというのを大上段に振りかぶって言う必要も全くないと思いますし、それは言いたい人が好きなように言っていればいいことだと私は思っております。
大事なのは、この北朝鮮の危機をどのように平和裏に解決するかというのが大事なのであって、誰かが手柄を誇るとか誇らないとか、そういう話では全くないというふうに思っております。
これまでも、日米韓、極めて緊密に連携をしてまいりましたし、国際場裏では中国、ロシアにもしっかりと協力をしていただいて、国連の安保理決議を累次採択をしてまいりました。
その中には、これまでにないような、北朝鮮にとって大変厳しい決議案も採択をし、それを国際社会が一致して維持してきました。
また、ヨルダンのように北朝鮮と国交を断絶するというアクションをとってくれた国もあれば、多くの国が大使を追放し、あるいは北朝鮮からの大使の受入れを拒否する、日、米、韓、中国だけでなく、ラトビアのような少し離れた国も独自の経済制裁をするというようなことをやってきてくれて、国際社会で今認識を共通して、この北朝鮮危機というのは決して東アジアあるいは米朝間の問題だけではない、国際社会に対する脅威だという認識を共有をしてくれております。
だからこそ、国際社会挙げて経済制裁が続き、瀬取りのような巧妙な制裁逃れがあれば、それを直ちに国際社会で物事を共有し、是正の対応をさまざまな国がとってくれているということなんだろうというふうに思っております。
日本といたしましては、こうした国際社会の中での結束というものをこれからも維持し、さまざまな国がこの北朝鮮危機に関する情報をとれば、それが直ちに今共有されるというメカニズムもございます。そういう中で、国際社会一致してこの北朝鮮問題を解決する方向でしっかりと動かしてまいりたいと思っております。
○岡田委員 圧力を強める、あるいは北朝鮮問題の重要さを世界に認識を広げるという意味で日本外交が重要な役割を果たしてきたことは、私もそのとおりだと思うんですが、今回の、どういう結果が出るかはわかりませんが、米朝首脳会談、これは、当然、韓国とアメリカが事前にいろいろな協議をしつつ、特使が行ってカードを切ったというか、そういうことだと思うんですね。その間、緊密な連携というのは韓国とアメリカの間ではなされていた。
日本は、対話のための対話では意味がないなどといって、ほとんど、これは何も言っていないに等しいわけですけれども、具体的な対話のための活動があったというふうには私には見えないものですから、申し上げたところであります。
それでは。六カ国協議というのがかつて行われておりました。これは、この北朝鮮問題について、日本がきちんとそこにかむための一つの工夫だったというふうに思うんですね。ほっておくと、アメリカ、韓国、中国、そういったところがプレーヤーで、日本というのはその枠の中から外れてしまう可能性がある、だから六カ国協議という、そういう形をつくって、その中でかんできた、議論の中、枠の中に入ってきたというふうに私は思うんですが、この六カ国協議的なものをどこかの段階で再び立ち上げるということはお考えですか。
○河野国務大臣 北朝鮮の意図もまだ明確ではないというのが現在の状況なんだろうと思います。北朝鮮が非核化にコミットをすると言っておりますが、先ほどから申し上げているとおり、それが果たしてどこまで真実なのかもよくわからないという状況の中で、余り先走った話をすべきではないんだろうと思っております。
まず南北の会談が行われ、その後、米朝の会談が行われるわけですから、そこまでのやりとりを通じて、あるいはこの首脳会談の中で北朝鮮の意図を明確にし、北朝鮮がそうした、先ほどから申し上げたような行動に具体的に出るところをしっかりと後押しをすることができるかどうか、そのためにどういう取組が必要なのかというのを、日米韓、しっかりと連携をしながら、今後の対応を検討してまいりたいと思います。
○岡田委員 私が気になるのはイランの非核化に向けての交渉。本来の歴史的な経緯とか関係の深さからいうと、私は、日本は当然当事者としてもっとかんでよかったはずだと。しかし、残念ながら、その交渉からは外れていた。ドイツなどが入った、ドイツやイギリス、フランス、そしてアメリカという中で日本は外れてしまった。
北朝鮮は、イランよりも更に日本にとっては利害関係が深いわけですから、そういうことにはならないと思いますが、いずれにしても、日本の国益を実現していくために、しっかりとこの協議の中にこれからも入り続けてもらいたい、そういう思いで申し上げたところであります。
さて、これは当然否定されると思いますが、一部の報道で、日朝首脳会談というようなことを言われていますが、このことについて、これは事実かどうか、多分お答えにならないと思いながら聞きますが、いかがでしょうか。
○河野国務大臣 そういう報道があったというのは事実だと言っていいと思いますが、まず南北の会談、あるいは南北、米朝の首脳会談というのが今予定をされておりますので、その中でのやりとりなどを通じて、北朝鮮の意図、あるいは北朝鮮が行動に移すために、どういう枠組みがいいのか、どういう行動が必要なのか、それをまず日米韓でしっかりすり合わせてまいりたいというふうに思います。
○岡田委員 すぐ思い出すのは小泉訪朝ですけれども、あのときには、当時の局長だった田中均さんが会談を非公式に重ねて、一つの大きな絵を描いて、その中で訪朝がなされて平壌宣言というところまで私はいったと思うんですが、単に行けばいいというものではもちろんありませんので、いろいろなことを積み重ねる中で、もちろんタイミングがあれば首脳会談ということは当然あるかもしれませんが、そのためには十分な積み重ねということが前提になるということは申し上げておきたいというふうに思います。
さて、次に、拉致問題についてお聞きをしたいと思います。
大臣が訪米された折に、来る米朝首脳会談で拉致問題の解決に向けて問題提起、あるいは解決に向けて協力を要請したというふうに、十六日の臨時会見の中で河野大臣は述べられております。何人かの方にお会いしたわけですが、この米朝首脳会談で問題提起をするということを米側は受け入れたんでしょうか。
○河野国務大臣 ワシントンで、ペンス副大統領、マティス国防長官、サリバン国務副長官、それから当時の、当時のというかまだ四月までは現職ですが、マクマスター補佐官、その他さまざまな方とお目にかかる中で、この核、ミサイルに加えて、拉致問題の解決が重要であると。特に、米国にはまだ三人拘束をされている人もおりますし、日米以外の国でも北朝鮮に拉致されている、拘束をされている人がいる、この問題もあわせて解決されなければならないということを申し上げ、アメリカ側は、トランプ大統領がこの拉致被害者の問題をこれまでも発言をされていたり、非常に深く認識をしているということに触れ、日米でこの問題についてしっかり協力をしていこう、そういうところで一致をいたしました。
韓国の康京和外交部長官もワシントンにいらっしゃっておりましたので、日韓の外相会談を行いまして、韓国とも引き続きこの拉致問題で緊密に連携し合っていこうということを確認いたしました。
○岡田委員 私がお聞きしたのは、米朝首脳会談でこの拉致問題を取り上げることについて、米側に受け入れられたのかどうかということを聞いているわけです。
○河野国務大臣 これから行われるさまざまな準備会合、あるいは南北、米朝の首脳会談の中で何がどう議論されるかというのは、それはもう国際社会側の手のうちでございますから、それを申し上げるのは差し控えたいというふうに思います。
○岡田委員 やがて結果の出ることですからこれ以上申し上げませんが、それでは、大臣は、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった懸案を包括的に解決し、国交正常化を目指す考えに変わりはないと説明したと、訪米のときにですね、言われていたわけですが、核、ミサイルだけではなくて、拉致も含めて包括的に解決するということについて、これは、日米間で、了解といいますか、共通の理解に達したんでしょうか。
○河野国務大臣 この三つの問題が解決される必要があるということでは、共通認識だと思います。
○岡田委員 では、韓国側ですが、康京和外交部長官との会談でも、南北首脳会談でこの拉致の問題を取り上げてほしいと申し上げたというふうに大臣は言われたわけですけれども、これについての韓国側の反応はいかがだったんでしょうか。
○河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、準備会合、あるいは南北、米朝の首脳会談の中で、何をどのように取り上げるのか、何をどのようにテーブルの上にのせるのかというのは、これは国際社会の手のうちでございますので、そこを申し上げるのは差し控えたいと思います。
○岡田委員 ちょっと気になる発言がありまして、先ほどの徐薫国家情報院長の発言なんですが、大統領府が言っているわけですけれども、河野大臣に対して、今後、日本と北朝鮮の実質的な関係改善が進む過程で論議や協議が進むことができると河野大臣に伝えたというふうに大統領府は発表しているんですね、徐薫さんが。
この言い方だと、日本と北朝鮮がバイでやるときに拉致の問題は提起すればいいではないかということで、かなり、決して積極的な受けとめ方ではなかったというふうにも思えるんですが、こういうことについて、韓国側は発表しているわけですが、そういうやりとりはあったんでしょうか。
○河野国務大臣 日韓では、核、ミサイル、拉致問題についてさまざま協議をし、こうした北朝鮮に関する問題を解決するところで、引き続き日韓が緊密に連携をしていくというところで一致をしているというのは、先ほどから申し上げてきたとおりでございます。
○岡田委員 なかなか答えにくいと思いますが、私としては、やはり、韓国側もしっかりと認識を持ってもらって、日本と共通の認識の中で、拉致の問題についてもきちんと正面から受けとめてもらう。もちろん、韓国側にも同じような問題、あるいは、人数的にいうとそれ以上の問題があるわけですから、そういうふうに考えております。
あと、包括的な解決という中で、例えば、拉致問題についてのみ北朝鮮側が何らかの具体的行動をしたというときの制裁とか圧力というのは、どうなるんでしょう。
○河野国務大臣 この経済制裁というのは、国連の安保理決議に基づいて行われているものでございますから、当然、どうするというのは、国連の安保理でさまざま議論が行われなければならないものだと思いますが、先ほどから申し上げているように、北朝鮮がどうすれば国際社会がどうするのかというのを申し上げるのは、これは交渉前に手のうちを明かすようなことになりかねませんので、中身については差し控えたいと思います。
○岡田委員 もちろん、安保理で決めた制裁は、当然、日本だけの判断でそれを緩めることはできませんが、日本独自の制裁もあります。そのことと拉致についての一定の具体的行動ということがリンクしてカードが切られる可能性というのは、私はかなりあるんだろうなというふうに思っております。今、それについてのお答えをいただく必要はないんですけれども、そのことも念頭に置きながら賢明な対応をしていただきたいというふうに思っています。
次に、対米貿易、通商問題について質問したいと思います。
まず、知的財産保護、通商法三〇一条に基づく知的財産権保護のための投資の制限や関税の引上げ、あるいは、二百三十二条に基づいて鉄鋼製品やアルミニウム製品に対する関税を引き上げる、こういう措置についてお聞きをしたいと思います。
まず、鉄鋼、アルミが、日本もその対象に入っているわけですけれども、これの我が国に及ぼす影響というのはどの程度のものでしょうか。私はそう大きなものではないんじゃないかというふうに思っているんですが、いかがですか。
○河野国務大臣 御指摘のとおり、日本からの鉄鋼、アルミニウムの輸出のうち、アメリカ向けの割合は、鉄鋼で約六%、アルミについては九・八%でございます。もちろん、その輸出している業界、企業からしてみれば大きな影響ということになるのかもしれませんが、割合的には、今申し上げた六・〇%、アルミは九・八%というのが、数字ではそうなっております。
これをどう判断するか、大きいか小さいか、いろいろな立場の方、それぞれの御判断があるとは思いますが。他方、米国の今回の二三二条の措置は、同盟関係にある日米両国の経済関係、協力関係あるいはWTOの体制全体に影響を及ぼしかねないものであって、そういう問題は大きいのではないかなというふうに思っております。
日本の鉄鋼、アルミの企業への影響そしてWTOとの関係を十分に精査した上で、引き続き適切に対応してまいりたいというふうに思います。
○岡田委員 今回の措置で、EUや韓国は適用除外、残念ながら日本は適用対象外というふうにはならなかったわけであります。この辺の理由についてもお聞きしたいと思いますが、ただ、そういった、自分の国は適用を除外してくれ、こういう話も大事ですけれども、大臣もおっしゃたように、やはり、自国の問題も当然あるけれども、全体としてこれは自由貿易を阻害する、そのことが世界に及ぼす影響がいかに大きいかということを私はぜひ日米間で話し合ってもらいたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○河野国務大臣 アメリカ政府のこの二三二条の輸入制限措置、既に発動されているわけでございますが、これは、日本からの鉄鋼、アルミの輸出が米国市場から、締め出されるわけではないんですが、制限措置が課せられるというわけでございますが、当然、アメリカがこういう措置をとりますと、世界市場が混乱をすることにつながるわけで、なおかつWTO体制に非常にネガティブな影響を及ぼすことになる。これは極めて遺憾と言わざるを得ないと思います。
日本は、TPPあるいは日・EUのEPAなど、今や自由貿易の旗頭になったかのような状況でございますが、自由貿易を堅持する立場から、鉄鋼やアルミニウムの問題は、本来世界的な過剰生産にどう対処するかというのが問題の本質なんだろうと思います。アメリカが輸入制限措置をとったから対抗措置をとるというような、これの応酬をやってもどの国の利益にもならないというふうに考えております。
先週の木曜日の夜でしたか、ライトハイザー通商代表とかなり長い時間いろいろ意見交換をさせていただきましたが、ライトハイザー通商代表も、この鉄鋼、アルミの問題に非常に詳しく、状況はよく把握をされているんだろうと思います。
我が国のこうした懸念を伝えると同時に、我が国の企業に対しても影響を与えないでほしい、つまり、日本からの鉄鋼をアメリカが輸入することはアメリカの安全保障上何ら問題はないわけでございますから、少なくともそうしたことを考慮してほしいということを申し上げると同時に、こういうやり方ではWTO体制に悪影響が出るし、世界経済にとってもプラスなことはないということを申し上げてまいりました。
○岡田委員 世界経済全体がシュリンクするということになれば、それは世界全体にとって大きな影響を及ぼす。きょうの株価なども、そういったことを懸念してのあらわれだというふうに思っています。
もう一つは、今回の措置を見ていると、やはり中国狙い撃ちという感がなきにしもあらずです。知的所有権の問題もそうだし、関税もそうですね。他方で、中国は、北朝鮮問題を考えたときに、非常に重要な役割を我々としては期待している。制裁の手を緩めない。一方であなたが必要だと言いながら一方でぼかんと殴るような、こういうやり方は私は決して賢明ではないと思うんですけれども、そういうことについても米側と話をされたことはありますか。
○河野国務大臣 この北朝鮮の問題、特に経済制裁に関しては、中国が北朝鮮との貿易額の約九割を占めるわけで、中国の役割というのは非常に重要でございます。それはもうアメリカ側もよく認識をしている。
そして、中国はロシアとともに国連の一連の安保理決議による制裁に賛成をし、この制裁を現実に行っており、また、中国は独自の制裁を北朝鮮に科しているということもありますので、最大限の圧力を北朝鮮にかけて、北朝鮮を非核化に向けて動かしていくという中で、中国が果たす役割というのは非常に大きい。ここは日米間でも共通認識でございます。
他方、アメリカは、中国の知的財産権の侵害ということを非常に問題視しております。また、さまざまな不公正貿易、あるいは過剰生産能力といった問題に対処しなければならないという強い思いをアメリカの現政権は持っているわけでございまして、そういう中での三百一条の調査、あるいは二百三十二条の輸入制限措置といったことになっているんだろうというふうに思います。
日本としては、我が国の考えをアメリカにしっかり説明をしながら、問題の根本的な解決に向けて、必要な努力、協力というものをやってまいりたいというふうに思っております。
○岡田委員 先ほど、鉄、アルミの話をしましたが、次に出てくるのは自動車じゃないかと。もし自動車についての関税の引上げとかあるいは量的規制とか、こういうことになりますと、これは日本経済に及ぼす影響は極めて大きいということになると思います。
そうならないための協議というのは非常に重要だと思いますが、副大統領と麻生副総理の間の日米経済協議、余り活発にやっているというふうには思えませんが。今まで二回やっただけ。昨年十月以来は開催されていない。ここがもっときちっと機能しないといけないのではないかというふうに思いますが、最後に、その点について大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。
○河野国務大臣 御指摘のとおり、日米経済対話は、昨年四月に第一回の会合、昨年の十月に第二回の会合が開催されました。
現在は、三回目の会合の開催に向けて、貿易及び投資のルール、それから、先ほど申し上げました、さまざまなこのWTO体制の中での課題にどう対応していくかという共通戦略をつくる、あるいは、経済その他の構造政策の分野での協力、分野別の、牛肉ですとか、それこそ自動車ですとか、さまざまな分野での協力の三つの柱の中で、事務的レベルでのさまざまな会合を重ねてきているところでございまして、それぞれの成果が出たところで三回目の経済対話というのが行われることになるんだろうというふうに思っております。
この経済対話を通じて日米の経済協力をしっかり進めると同時に、できればTPPの意義のようなものをしっかりとアメリカに説明をし、アメリカの、短期的には無理かもしれませんが、長期的な政策転換につなげてまいりたいというふうに思っております。
○岡田委員 終わります。