平成30年4月4日 第196回国会 倫理選挙特別委員会「福島県議選選挙区特例法について」
1. 人口比例、投票価値の平等との関係
2.「著しく下回る」の基準・目安
3.「臨時の措置」としての特例
○岡田委員 無所属の会の岡田克也です。
今回の法案について、私は、その必要性は当然認めるものであります。ただ、問題は、憲法上の法のもとの平等という趣旨との関係で、整合性あることになっているかどうかということは非常に重要なことなので、念のために幾つかお聞きしたいというふうに思います。
まずは総務省の方にお聞きしたいと思いますが、公選法十五条八項では、各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議会の議員の定数は、人口に比例して、条例で定めなければならないと。そして、施行令百四十四条では、国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口を想定しております。
住民基本台帳人口ではなくて国勢調査人口を用いることとした理由について確認したいと思います。
○大泉政府参考人 お答えいたします。
地方選挙の選挙区設定につき、いや、定数配分に用いる人口につきましては、官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口とされております。これは公職選挙法の施行令で定められております。
地方選挙について規定しました昭和二十二年制定時の地方自治法につきましては、この法律における人口は、官報で公示された最近の人口によるとの規定が置かれておりまして、昭和二十五年、公職選挙法制定時に地方選挙の規定が同法に移りまして、同時に、政令事項として同様の規定が置かれております。
その後、昭和二十七年に、関係法律の整合性を図るために、国勢調査ということが明記されているというような経緯をたどっております。
選挙区設定につきましては、国政選挙についても国勢調査人口を用いるということとされておりますが、このような経緯に加えまして、国勢調査人口は、人口の把握そのものを目的として、法令、統計法でございますが、これに基づき、国が全国一斉に行う実地調査による人口であり、確度が高いということ、国勢調査は五年に一度行われるものでございますが、議員の定数配分はある程度安定性を要するということなどによるものとされていることによるものでございます。
○岡田委員 法案提出者にお聞きしたいと思います。
今回、平成二十七年の住民基本台帳人口そのものを用いずに、平成二十二年の国勢調査人口に住民基本台帳の人口の増減率を乗じるという形をとっておりますが、この考え方は、住民基本台帳そのものの人口を用いるということも可能だと思いますが、ここはどういうふうに整理されたのでしょうか。
○根本(匠)議員 ただいま総務省からも答弁がありました。選挙制度の分野においては、従来から一貫して国勢調査人口を用いてまいりました。その特例を設けるに当たっては、必要な部分は補正しながら国勢調査人口を用いるという基本的な考え方とできるだけ一貫性を維持しなければならないと考えたところであります。
そこで、本法案では、住民基本台帳そのものを用いる形をとらずに、国勢調査人口を基本としながら、住民基本台帳の増減率を加味した人口、これを特例として用いることといたしました。
○岡田委員 それでは、内閣法制局長官にお聞きしたいと思います。
今回、特例として用いる数字であっても憲法の投票価値の平等は確保されていると私は考えるんですけれども、法制局の見解をお聞きしたいと思います。
○横畠政府特別補佐人 この法案で憲法の投票価値の平等が確保されているかについては、議員立法として提案されている法案でありますことから、当局としてお答えする立場にはありません。
しかし、一般論として申し上げれば、まず、大震災等のやむを得ない事情により、もとの市町村に住民票を残したままで域外に避難を余儀なくされている多数の方々について、法的に当該もとの市町村の住民と認めるということには、合理性、相当性があると考えられます。
その上で、必要な場合に、そのような状況にある住民の方々の数を含めるように、合理的に補正して計算した住民の数をベースとして選挙区における議員の定数を定めるということは、御指摘の投票価値の平等という観点から、特に問題があるとは考えられません。
○岡田委員 総務省の方、今の法制局長官の御答弁がありましたが、何か加えることはありますか。
○大泉政府参考人 総務省といたしましても、議員立法で提出されたものでありますので、お答えは差し控えたいと考えております。
ただ、今回の法案につきましては、福島県の状況、あるいは憲法、公職選挙法などの関係法令を総合的に勘案しまして、各党各会派で人口の推計方法も含めてさまざま御検討いただき、このような方法で人口の特例を設けるということに至ったというふうに承知しておるところでございます。
○岡田委員 この法案の中で、著しく下回るという概念が出てくるんですが、この著しく下回るの基準、目安について、法案提出者はどういうふうに考えておられますか。
○佐藤(茂)議員 岡田委員の方から、著しく下回るの基準や目安について御質問をいただきました。
著しく下回るというのが、どの程度で、どの市町村が該当するかは、最終的には条例制定に当たっての福島県の判断でございますが、著しく下回るという文言の合理的な解釈として、おのずと常識的なものにおさまると考えております。
この点に関しては、原発事故による避難指示区域等以外の県内市町村の人口の動向との比較から見ても、人口減少が顕著であるような市町村において特例人口を用いるというのが一つの合理的な解釈として成り立つというのが各党の提案者の共通の考えでございます。
具体的には、避難指示区域等の市町村の中で、平成二十二年から平成二十七年の市町村別の国勢調査人口の推移において、指定市町村以外の市町村で人口が最も減っている三島町の人口減少率を上回る指定市町村である双葉郡の八町村と南相馬市、飯舘村が想定されますが、いずれにしても、最終的には条例を定める福島県の御判断であると考えております。
○岡田委員 最後に、先ほど法制局長官からしっかりとした答弁をいただいたわけですが、法案提出者にも確認したいと思います。
憲法の法のもとの平等ということに関係することですから、こういう特例がこれから何度も起きるということでは困るわけで、やはり東日本大震災と福島第一原発という未曽有の大災害に伴う大規模かつ長期の住民避難という特別の事情に基づくものだというふうに理解をしております。
こういった未曽有の事態に対応するためのやむを得ない臨時の措置であるということを、もう一度、法案提出者に確認しておきたいと思います。
○橘議員 本法律案の特例の対象となる選挙は、あくまでも平成三十一年十一月に予定される次の福島県議会の一般選挙であります。本法律案の題名や、第一条、趣旨の規定におきましても、臨時特例と定めておるのは、この趣旨でございます。
岡田委員御指摘のように、本法律案は、福島第一原子力発電所の事故による災害が発生し、国による避難指示が出された避難指示区域等におきまして、多数の住民の方々が住民票を残したまま避難することを余儀なくされているというまさに異例の状況を受けた公職選挙法の特例であるというふうに提出者として理解しております。
○岡田委員 終わります。