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平成30年4月13日 第196回国会 外務委員会「外務大臣の韓国訪問 、朝鮮半島有事 、北朝鮮と非核化」



○岡田委員 無所属の会の岡田克也です。

 まず、きょうの本題に入る前に、外務大臣、先ごろ韓国を訪問されました、そのことについて少し申し上げたいと思います。

 短い時間の中で、日韓の外相会談、そして大統領表敬を行われて、私は非常に有意義だったというふうに思うわけです。特に、北朝鮮による完全、検証可能な、かつ不可逆的な方法での核、ミサイルの廃棄を実現するために最大限の圧力を維持していくということが確認されたことは、私はよかったというふうに思っております。評価しております。

 その上で、南北あるいは米朝の首脳会談に向けて今後の方針を綿密にすり合わせあらゆる機会を捉えて日韓米三カ国で緊密に連携していくことを確認した、この点も高く評価できるところですが、ここで言う今後の方針というものについて、詳しくは言えないと思いますけれども、基本的にどういう方針で日米韓で緊密に連携していこう、首脳会談に備えていこうとしているのか、お話しいただきたいと思います。

○河野国務大臣 ありがとうございます。

 北朝鮮危機は、核、ミサイルそして拉致あるいは拘束者の問題、こうしたものを包括的に解決をするというのがゴールだろうというふうに思っております。

 核兵器については、完全かつ不可逆的そして検証可能な非核化をしなければならないというゴールも共有をしておりまして、また、これまで国際社会は少なくとも八回北朝鮮と対話をいたしましたが、結果、少なくとも八十億ドル程度の資金を提供したにもかかわらず何も生まなかったということがございます。

 その反省を踏まえて、少なくとも北朝鮮が非核化に向けて不可逆的な行動をとったということに対する対価でなければならない。非核化という言葉、あるいは非核化にコミットするという言葉に対して対価を与えてはならないというのが今の方針でございます。

 そうすると、大きな方針としては、日米韓あるいは中国、ロシア、合意をしているところでございますが、それでは、これからそこに向けて、細かなステップについて、どういうふうにステップを切っていくのか。あるいは、当然、北朝鮮はそうした行動をとることに対して対価を求めてくるということになろうかと思いますが、国際社会で一致して、どのタイミングで制裁の緩和を始めるのか、どれだけ緩和をするのか。

 そうしたことを国際社会の中でしっかりと議論をし、合意をしていかなければならないというふうに思いますので、その点に関して、日韓あるいは日米韓、しっかりと連携をしてまいりたいというふうに思っておりますし、中国、ロシアとも当然にそこは連携が必要になってくるというふうに思っております。

○岡田委員 今までの北朝鮮との交渉、核、ミサイルの開発という意味では何も生まなかったという表現は私はあながち誤ってはいないと思うんですが、なぜそうだったのかという検証は、それは北朝鮮の側だけに理由があったのか、あるいはそれ以外の五カ国にもそれぞれ理由があったのか、その検証はしっかりした上でこれからの交渉というのは必要だと私は思います。それはまた別の機会にこの場でもしたいと思いますが。

 二〇〇五年の九月の六者会合による共同声明というのがあります。これもやがて事実上ゼロになってしまったわけですが、この二〇〇五年の六者会合が一つのベースになる、そこに重要なことはほとんど書かれていると私は思いますので、そういうお考え、これがベースになるというお考えはおありでしょうか。

○河野国務大臣 二〇〇五年九月の六者会合に関する共同声明において、北朝鮮は、全ての核兵器及び既存の核計画の放棄、核不拡散条約、NPT及びIAEA保障措置への早期復帰を約束いたしました。これが一つの、非核化に対する考え方であろうかとは思いますが、このときとは北朝鮮の、さまざま、核に関連する活動の進展というのもございますので、これは一つの考え方にはなると思いますが、これだけでいいのかどうかというのは、一度点検をする必要があろうかと思います。

○岡田委員 ここに、北朝鮮、それから残りの五カ国、例えばアメリカや韓国、日本が行うべきことはほぼ網羅的に書いてありまして、私は、これは一つのベース、もちろん、大臣おっしゃるようにその後状況は変わっていますから、そのままにはならないわけですが、一つのベースではないかというふうに思っております。

 では、もう一点、訪韓に関してお聞きしておきたいと思います。

 日韓パートナーシップ宣言二十周年であることを踏まえて未来志向の関係を構築していくことを確認したというふうに発表されておりますが、二十年前の、小渕総理と金大中大統領との間のパートナーシップ宣言というのは非常に歴史的なものだったというふうに私は思います。

 そのことを踏まえて、未来志向の関係を構築していくというふうに確認されたわけですが、何か改めて日韓で文書を交わすとか、そういったことはお考えですか。

○河野国務大臣 日韓パートナーシップ二十周年というのがことしの十月にやってくるわけでございまして、これに向けてさまざま、両国間、困難な問題が昨今いろいろございましたが、それを適切に両国間でマネージしながら未来志向の関係をつくっていこうということを、外交部長官あるいは大統領とも、表敬の際にそうしたことを申し上げてきたところでございまして、今御提起いただきました、新たな文書をつくるかどうかについては、今の時点ではまだ何も決まっておりません。

 ただ、パートナーシップ宣言にありましたような、さまざまな共有する認識あるいは行動計画というのが出ておりますから、そうしたものをもう一度振り返ってみて、次の十年、二十年、どうしていくのかというのは、これは一つ考えていかなければならないというふうに思っておりますので、文書を出すかどうかは別として、この二十周年というのを振り返ってみて、この次の日韓関係を前向きなものにしていこう、そういう努力、議論というのはしっかりやらせていただきたいと思っております。

○岡田委員 アジアの情勢が大きく変わってきた。これから中国に対して、やはり日本と韓国が協力して対応していかなきゃいけない課題も多いと思います。アメリカのトランプ大統領は極めて不安定ですので、北朝鮮の問題も、やはり日韓の協力というのは欠かせない。そういう中で、日韓関係をもう一回、さまざまな困難はありますけれども、それを乗り越えて、しっかりと関係を深める、そういうきっかけにこの二十年をすべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

 大臣、もし何かありましたら。

○河野国務大臣 まさにおっしゃるとおりだと思います。

 パートナーシップ宣言というのは、やはり、当時の首脳がかなり思い切った決断をされて、この両国関係を前に進めていくことが大事だというところで一致をしたわけで、さまざま、当時もいろいろな問題がありましたが、それはそれでマネージしながら、やはり大胆に前向きにやっていこうではないかということを、二人のリーダーが合意し発表したわけでございますから、その精神というのを我々もしっかり受け継いで、困難な問題は適切にマネージしながら、この日韓の両国関係を更に深め発展させていく、そういうつもりで頑張ってまいりたいと思います。

○岡田委員 それでは、朝鮮半島有事について幾つか質問したいと思います。

 平成十一年四月二十三日の高村外務大臣の答弁で、北朝鮮が武力行使に至ったときに、国連安保理決議八十二、八十三、八十四、これらの決議に基づいて朝鮮国連軍が反撃することは現在でも理論的には排除できないというふうに高村大臣は答弁されました。

 もしそういった朝鮮国連軍として反撃を行うというときに、日米安保条約と一体をなす岸・ハーター交換公文に基づく戦闘作戦行動、発進のための基地使用が事前協議の対象となるのかならないのか。私は、実質的には、朝鮮国連軍といっても米軍ですから、基地使用の際には事前協議の対象になるというふうに思うんですが、確認したいと思います。

○河野国務大臣 日米安全保障条約及びその関連取決めと朝鮮国連軍たる米軍との関係につきましては、吉田・アチソン交換公文等に関する岸総理・ハーター国務長官の交換公文において、国際連合統一司令部のもとにある合衆国軍隊による施設及び区域の使用並びに同軍隊の日本国における地位は、相互協力及び安全保障条約に従って行われる取決めにより規律されると了解をされております。

 つまり、朝鮮国連軍の一部を構成する米軍につきましては、日米安全保障条約第六条の実施に関する交換公文、岸・ハーター交換公文に言う事前協議の主題のうち、日米安全保障条約第五条に基づいて行われるものを除いた、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用に該当する、そういう場合には我が国との事前協議が行われることとなります。

 他方、米軍以外の朝鮮国連軍について言えば、その駐留の根拠となっている吉田・アチソン交換公文及び同交換公文を受けた国連軍地位協定において、事前協議制度は存在しません。

 それは、国連軍地位協定についての合意された公式議事録の地位協定第五条に関する規定からも明らかなとおり、国連軍地位協定上想定されている朝鮮国連軍の活動は、全て兵たん上のものであります。

 したがって、国連軍地位協定上は、朝鮮国連軍が我が国の施設・区域を発進の基地として戦闘作戦行為に従事することは想定をされておりませんので、朝鮮国連軍の一部を構成する米軍については我が国の事前協議が行われますが、米軍以外の朝鮮国連軍について言えば、事前協議の制度は存在しない、その対象とならないということでございます。

○岡田委員 米軍以外の朝鮮国連軍が、例えば直接、基地から発進するとか、そういうことはあり得るんですか。

○河野国務大臣 米軍以外の朝鮮国連軍の活動は、全て兵たん上のものでございます。

 我が国の施設・区域を発進基地として戦闘作戦行動に従事することは想定をされていないというふうに考えております。

○岡田委員 わかりました。

 次に、大臣が私の質問に対して、現在の北朝鮮を抑止するために全ての選択肢がテーブルの上にあるということを高く評価するという大臣の答弁について私が聞いたところ、つまり、先制攻撃をアメリカが行うときにはどうなのかと聞いたときに、大臣は、現在の北朝鮮を抑止するために全ての選択肢がテーブルの上にあるというのは、アメリカも国際法の規範の中でそういうことを行っていると我々は認識している、そういうふうにお答えになりました。

 この答弁の意味なんですが、アメリカは、国際法の規範の中で、今までそれに反するような先制攻撃は行ってこなかった、そういうことは例がないんだという意味ですか。

○河野国務大臣 先制攻撃を行うことは国際法上認められていないという点について、これまでも申し上げてきたとおりでございますが、アメリカも国連憲章を遵守する義務を負っており、我が国として、アメリカが国際法上違法ないわゆる先制攻撃を行うということは考えておりません。

 他方、アメリカを含めた他国の行動の一々について我が国としてその法的評価をしているわけでもございませんし、我が国として、外国政府の国際法の解釈について有権的な説明を行う立場にはないというふうに考えております。

 いずれにせよ、アメリカは国連憲章を遵守する義務を負っておりますから、我が国として、米国が国際法上違法ないわゆる先制攻撃を行うということは考えておりません。

○岡田委員 アメリカはもちろん国連憲章を守る義務はあるものの、国益上必要だと考えれば、それにもかかわらず、そこからはみ出るような先制攻撃もいとわないというのがアメリカの基本的考え方だと私は理解していますが、大臣、違うんですか。

○河野国務大臣 日本として、他国の政策あるいは国際法の解釈を他国がどのようにやっているか、有権的な評価をする立場にはございませんが、先ほど申し上げましたとおり、アメリカも国連憲章を遵守する義務を負っているわけでございますから、国際法を守って活動するというふうに日本政府として認識をしております。

○岡田委員 例えば、具体例を挙げますが、二〇〇二年のブッシュ・ドクトリン、ここでは大量破壊兵器を持つテロ支援国家に対する先制攻撃というものを認めているわけです。これは必ずしも国連憲章の枠の中にあるということに限らないと私は思うんですが、いかがですか。

○河野国務大臣 二〇〇二年の米国の国家安全保障戦略には、米国が脅威に対して先制的に対処するために必ず武器を行使するとしているわけではありません。また、先制を侵略のための口実としてはならないという旨が明記されているというふうに承知をしておりまして、このブッシュ・ドクトリンというものが、アメリカが国際法上違法な武力の行使を使うということに当たるとは考えておりません。

○岡田委員 必ず当たるというふうに言っているのではなくて、そういうこともいとわないというふうに普通は読まれているんじゃないんですかということを申し上げているわけです。

 日本の外務省の解釈は普通考えられているのと違いますが、そういう解釈でいいんですか、本当に。

○河野国務大臣 アメリカも国連の常任理事国として国連憲章を遵守する義務を負っている国でございますので、日本政府として、アメリカが国際法に違反するような先制攻撃を行うとは考えておりません。

○岡田委員 普通ならそういう答弁でも済んでいくのかもしれませんが、私が問題にしているのは、トランプ大統領があらゆる選択肢が机の上にある、それを高く評価するというふうに日本政府が言ったから問題にしているわけですね。

 つまり、国際的にアメリカが国連憲章に反するような先制攻撃もあり得るというふうに考えられている中で、そしてあえて、あらゆる選択肢はテーブルの上にある、つまり武力行使もある、その中にはひょっとしたら国連憲章に反するものもあるかもしれない、それを高く評価してしまっているから、私はそれは行き過ぎであるというふうに考えているわけですが、いかがですか。

○河野国務大臣 今回の北朝鮮危機は、対話を通じて平和的、外交的に問題を解決するということを全ての国が望んでいるわけでございますし、この危機をつくり出しているのは北朝鮮という国でございます。北朝鮮は、国際社会が対話を進めようとしている中にあって、核、ミサイルの開発を継続をしてきたわけでございます。

 我々としては、今後北朝鮮の意図をしっかりと分析をしてまいりたいと思っておりますが、北朝鮮による完全そして不可逆的、検証可能な核、ミサイルの廃棄を実現するためにはこの最大限の圧力を維持していくということが必要だというふうに国際社会は考えております。

 このような観点から、我が国は、全ての選択肢がテーブルの上にあるという米国の立場を今後も支持してまいりたいと思っておりますし、私どもは、アメリカは、国連憲章を遵守する、そういう義務を負っていることから、国際法に違反するような行動に出るということは想定をしておりません。

○岡田委員 結局、いざとなって武力行使をされたときに、日本に対して報復がある可能性が非常に高いわけですね。そういう状況にあるときに、かつ米国の今までを見てきたときに、国連憲章を必ずしも遵守しているわけではないということが明らかなときに、私は本当に不要な発言だったと思いますよ、高く評価するとまで言ったのは。

 今、少し対話のムードが出てきているこのときに、少しそのトーンを変えたらいかがですか。そうでないと、私は国民の命を守れないと思いますよ。余りにも調子に乗って、アメリカの中でもいろいろな議論があるトランプ大統領のその発言をそのまま一〇〇%肯定するようなやり方というのは、私は日本外交として非常に情けないというふうに、そう思っているということを申し上げて、時間が参りましたから私の質問を終わりたいと思います。




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