4/14 外務委員会質問(RCEP・TPP11について)
【委員会】 衆議院外務委員会
【日 時】 4月14日(水) 13:00~13:20(20分間)
動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ YouTube 【岡田かつや国会論戦】 https://youtu.be/nSvHlCSc134
【質問要旨】
Ⅰ RCEP関連
1. RCEPは中国の影響力を高めるとの見方について
2. RCEPの今後について
3. インドとの包括的経済連携協定について
4. ミャンマーの批准について
5. ISDS条約の見通し
Ⅱ TPP11関連
1. TPPとRCEPの役割分担
2. 米国復帰について
3. 先進国と巨大企業の紛争調停のあり方
================================以下議事録==================================
第204回国会 衆議院 外務委員会 第8号 令和3年4月14日
○岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。
限られた時間ですので、スピーディーに進めていきたいと思います。
まず、午前中の議論もありましたが、RCEPについて中国が主導したとか、あるいはこれから中国に有利とか、そういう議論も出るわけですが、私は全くおかしな議論ではないかというふうに思います。
RCEPは、平成二十四年十一月に野田政権の下で交渉開始が決定されました。それからかなり時間がかかりましたが、ようやくまとまったものであります。関係者の皆様の御努力に心から敬意を表したいと思います。
結局、共通のルールを作るということであって、もしASEANの国々がそれぞれ、あるいはASEAN全体としてまとまったとしても、中国と交渉するのは容易なことではありません。そこに日本が入り、オーストラリアが入り、あるいは韓国が入って共通のルールができた、そのルールの下で日本も中国も韓国もお互い競い合っていくというのは非常に結構なことで、どこが主導権を発揮するとか、どこが得するという議論というのは私はやめておいた方がいいというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
○茂木国務大臣 全く岡田委員のお考えと一緒であります。
○岡田委員 その上で一つ、インドが抜けてしまったのは大変残念でした。
これは、思い起こしてみると、中国はASEANプラス3を主張し、日本はASEANプラス6を主張して、最終的には日本の主張が通ってスタートしたものでありますが、インドも国内問題もいろいろ抱え、あるいは中国とはやはり非常に競合する、しかも中国は少し先へ行っていますから、貿易赤字がどんどん大きくなる、そういう中で、インドとしてはこういう苦渋の決定をしなければいけなかったんだというふうに思います。ただ、モディ政権としても、やはり国を開く中で経済成長していこうという基本姿勢は私は変わっていないと思いますので、そういう意味では、これをどうするか。
インドというのは、非常に日本にとって大事な国であります。自由で開かれたアジア太平洋戦略においても重要な位置づけだし、市場としても、今こそまだ小さいけれども、中国と同じぐらいの貿易量になっても不思議じゃない、私、シン首相にそういうことを外務大臣のときに申し上げたことがあるんですが、そういう非常にポテンシャルのある市場であります。
そういうことを考えたときに、まずは日印包括的経済連携協定、これも難産で、小泉政権でスタートして菅(かん)政権で着地したというものでありますが、これは十年を迎えます。中身を見ると、やはり十年で関税撤廃というものがかなり含まれていて、その十年が来るわけですから、ここでもう一度、日印包括的経済連携協定の再交渉といいますか、RCEPでいろいろ議論したことも盛り込めるものは盛り込んで、二国間ではありますが、より日印関係を発展させる、そういう基盤としてはどうかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○茂木国務大臣 私も、RCEP、どうにか十六か国で合意をしたいと考えておりました。
岡田委員御指摘のように、インドの側から見ると、今ある貿易赤字が更に拡大してしまうのではないか、それと、インドの場合、中小といいますよりも更に小さな零細企業、これが大きくて、これが特に地方において大きな影響を被るのではないかな、こういう様々な懸念がある中で、私もジャイシャンカル外相等々と何度もこの話は話をさせていただきましたが、残念ながら、今回、インドが入らない状態で十五国での署名ということになったわけであります。
ただ、インド、十三億人の人口を擁する、そしてまた、近年、着実に経済成長を実現しておりまして、我々が進める自由で開かれたインド太平洋、ここにおきましても重要な位置を占める国でありまして、経済大国への歩みを進めております。また、ITの分野、様々な人材を擁しておりますし、さらに、コロナ禍での、医薬品もそうですが、ワクチン、こういうことについても、生産において重要な国である、そのように認識をいたしております。
そこで、今後のインドとの経済関係をどうしていくか。一つはインドのRCEP復帰、そして、岡田委員がおっしゃる日印包括的経済連携協定のレベルアップ、それぞれに重要性を持っております。今後の対応については、早期の実現可能性、それから二国間の更なる経済関係の強化、同時に戦略的重要性、こういった様々な要素を総合的に勘案して決定していくべきものであると思っております。
日印の包括的経済連携協定については、今、合同委員会において、協定の運用改善についてインド側と議論を行っておりますが、先ほど申し上げたような幾つかの要素を考えながら、どちらの要素と、場合によっては、片っ方を進めているから片っ方についてはもうやめるということではなくてもいいと思うんですけれども、今後、いろいろなアプローチを考えていきたいと思っております。
○岡田委員 是非、現在の包括連携協定の運用だけではなくて、そのものをもう一回バージョンアップするということも念頭に置いて議論していただければというふうに思います。
それから、もう一点、ミャンマーとの関係、午前中も議論が出ました。
ちょっと私は、政府の答弁が、大臣も含めて、煮え切らないような気がします。批准書の扱いについて、ASEAN事務局長に寄託することになるが、寄託がされた後のことについては特段の規定はない、他のRCEP参加国と今後の対応を検討してまいりたい、こういう旨の答弁がありました。
手続的にはそういうことかもしれませんが、そもそも、クーデターの正当性というものは認めないということは明確に日本政府も言っておられるわけですから、そうすると、今の政府、国軍中心の、政府と言うべきじゃないですね、国軍中心の今の権力については正統性はないというふうに言っているわけですから、そこなり、あるいはその下での議会が手続を進めたとしても、これが正当なる批准というふうには私は論理的に見ても言えないんだと思うんですね。
そういうものが出てきたときに、正統なる政府じゃないものが出してきたものについて、それを認めるということになると、それは、正統性を逆に遡れば、政府の正統性あるいは議会の正統性を認めていくことになりますから、そういうことはあり得ないと私は思うんですが、いかがですか。
○茂木国務大臣 我が国として、ミャンマーにおけるクーデターの正当性、認めることはありません。
その上で、若干正確に表現をさせていただきますと、ミャンマーに対して、我が国は、事案発生以来、暴力の即時停止、そして拘束者の解放、さらに民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきているわけであります。つまり、我が国としては、ミャンマーにおいて民主的な政治体制が早期に回復される、このことが重要だと思っておりまして、そのことを優先したい。
恐らく岡田委員も、ミャンマーの体制が今のままでいい、このように考えていらっしゃるのではないんだと思うんですけれども、ミャンマーの民主的な政治体制、これを回復する、こういったことに注力をしていきたいと思っておりまして、その上でそういった物事が進んでいくことが望ましいんだと思っております。
したがいまして、現時点では、今後の対応については、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN等始め、他のRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら検討していきたい、こういう答弁になるわけでありますけれども、今の体制の下でどうするということよりも、今の体制ではいけないと思っていますので、民主的な政治体制、これをミャンマーにおいて回復する、このための働きかけを強めていきたいと思っています。
○岡田委員 議論がすれ違っているんですが、私が聞いているのは、ミャンマーの今の国軍主体の括弧つきの政府、あるいは括弧つきの議会で手続をして、そして批准して、それがASEAN事務局長に寄託されたというときにどういう態度を取るかということを、やはり日本政府として明確にすべきじゃないか。そこをあやふやにしていると、何か認めるような、そういう余地を残してしまいます。正統性のない政府のやることは、それは認められませんよ、寄託しても、それはミャンマーとしての寄託だとは認めませんよということは明確にしておくべきじゃないですか。
○茂木国務大臣 恐らく、岡田委員と私の間で、コインの表側のことを言っているか裏側のことを言っているかということのように私には聞こえるんですけれども、ミャンマーにおいて、民主的な政治体制の回復、これを図っていくのは極めて重要だと思っております。そういった中で各国の手続が進むことが望ましい、こういう考えでありまして、現体制のままいろいろなことが全て進んでいく、これについて、我が国として容認するものではありません。
○岡田委員 ミャンマーが民主化する、あるいは前回の選挙の結果が尊重されるということは、当然、日本政府として目指しているものだし、私も全く同じです。だからこそ、今の括弧つきの政府がいろいろな決定をしたとしても、それを認めるわけにはいかないということは、あらかじめきちっと意思表示しておくべきじゃないかというふうに私は思っているんですが、意思表示しないのはなぜなんでしょうか。私はちょっと理解ができないんですが。
○茂木国務大臣 ミャンマーに対して、今、現在進行形で様々な働きかけも行っております。そこの中で、今起こっているこの悲惨な事態、これを一日も早く鎮静化させなければいけない。また、多くの関係者が拘束をされております。なかなか、この拘束が解放されないと、民主的な体制に本当に戻っていく、こういうプロセスも本格化しない懸念もあるわけであります。
そういったことも含めて、民主的な体制をつくっていく、そのためにどういうアプローチを取ったらいいのか、こういったことを最優先で考えておりますので、そういった趣旨の答弁をさせていただいております。
○岡田委員 最優先は結構なんですが、だからといって、括弧つきの今の政府が具体的な手続を進めてきたときに、それに対してどうなるのかということをはっきり言わないというのは、私、違う臆測を呼んでしまうんじゃないかと。日本政府としてはそれは認められませんよということを明確に言っておくべきだし、ほかの国々も、恐らく中国あたりは違うことを言うかもしれませんから、出さないようにするためにもはっきりと、出すという意味は、提出をしないよう、今の括弧つきミャンマー政府が提出するようなこともないように、日本政府としての意思ははっきりと示しておいた方がいいんじゃないですか。
○茂木国務大臣 クーデターの正当性、これは認められないと明確に申し上げているところであります。
そこの中で、今後、ミャンマーで様々なことが進んでいくと思います。それは、我々が、国際社会が望ましい方向にミャンマーを向けていかなければならない。今後起こり得る様々なことについて、いろいろな言ってみるとルートというのはあると思うんですけれども、このルートはどうだ、このルートはどうだ、このルートはどうだと全部今の段階でそれを肯定したり否定するということが本当にいい解決策につながるかといいますと、私は必ずしもそうは思っていない、こういう観点から御答弁申し上げております。
○岡田委員 クーデターの正当性はもちろん認めないということは、今のかぎ括弧つきのミャンマー政府は正統性がないということに当然なると思うんですね。したがって、そこが決めたことについては認められない。もうここまでは論理的に、当然そういう結論以外に私はあり得ないと思うので、それをあやふやにされると、ああ、そもそものクーデターの正当性についても余韻を持って言っておられるのかなというふうに誤解されかねないと私は思います。もう一度よく考えていただきたいと思います。
時間も限られているので、TPPについて、少し、残された時間でお話ししたいと思います。
大臣も、TPPというのは今後膨らみを持っていくということを言われました。一方では、でも、TPPとRCEPが最終的には一つのものになるかは今後判断していくという表現を、発言をされたわけであります。
私は、やはりTPPとRCEPというのは別物としてそれぞれ発展させていくべきじゃないかというふうに思うわけです。
RCEPというのは、やはり発展するこのアジア地域における共通のルールということで、これからも、例えばバングラとかモンゴルとか、あるいはスリランカとか、そういう国に広げていくという発想はあっていいと思いますが、TPPというのは、これは大臣も言っておられるように、私は、民主主義国家を中心とするハイスタンダードな経済連携協定だ、そういう位置づけでこれから考えていったらどうか。
ですから、名前とはちょっと変わってしまいますが、イギリスを入れる方向でこれから議論していく。私は、もう一段進んで、EUとも、加入になるのか合体になるのかちょっと分かりませんが、そういう意味では、民主主義国家のハイスタンダードな協定だという意味では、EUも入れる。カナダは入っていますから。そういうことで、位置づけをはっきりした方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○茂木国務大臣 RCEP協定については、先ほど来御答弁申し上げているように、ASEANの中の開発途上国も含みます、様々な発展段階の異なる十五か国で合意をした協定であります。
当然、この早期履行、そして、できればこの協定のルール面等のレベルアップ、こういったものも図っていきたいと思いますし、また、その上でになりますが、委員御指摘の国々、日本にとっても重要なパートナーであります。
私も、一昨年はスリランカ、そして昨年はモンゴルと訪問させていただいております。そういったRCEPについて、地域的な、地域におけるルールに基づく経済秩序の形成、拡大に主導的な役割を果たしていく、このための協定であると思っております。
一方、TPP、これはハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の通商ルールを確立した協定として、ASEANの一部の国、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、これも含まれるものでありますが、二〇一八年の十二月三十日に発効した、各国から非常に注目をされるというか、今様々な協定ができる中の一つのモデルになるようなものであると思っております。
同時に、その一か月後に発効しました日・EU・EPA、これも、我が国が自由で公正な経済圏を拡大していく上でもう一つの柱となるものであると考えております。
TPPについては、既に合意している国々が、まずは国内手続を早期に終了して、これを締結する。同時に、英国を始め、これに関心を示している国、こういった加入によりまして、TPPのハイスタンダードのルールというのを世界に広げていくということは重要だと思っています。
一方で、日・EU・EPAが、枠組みとして日・EUというわけですから、EUが広がった場合には別でありますけれども、これ以上、全く違った形で中南米に波及するとかこういうことはないんだと思いますけれども、少なくとも、今の段階で、TPP11、そして日・EU・EPA、これが我が国の通商政策といいますか、これの両輪になっている、こういう性格もあるわけでありまして、この二つを今後どうしていくかということにつきましては、もう少し全体の状況を見ながら検討していきたいと思っています。
○岡田委員 私が申し上げたのは、TPPにEUを入れる、アメリカが入り、EUが入れば、まさしく民主主義国家のハイスタンダードな協定というふうに、かなり性格が変わるわけですけれども、そういうものを目指していくべきではないか、そういう意味で申し上げました。
ただ、いずれにしても、河野大臣のときにもこの場で議論させていただいたんですが、ISDS条項というのが、やはりEUはかなり否定的で、違うアイデアを言っているわけですから、この前の日英のときもISDS条項は入らなかったわけだし、かなりこれから大きな議論になるというふうに思うんですね。
EUの言っていることにも、かなり、なるほどと思わせるところもあります。例えば一審だけじゃなくて控訴審を認めるとか、それから基本的に公開するとかいうようなこともその提案には含まれているわけです。
日本の企業から見れば、ISDSは便利かもしれませんが、日本政府という立場から見たときに、逆に巨大企業から訴えられるというリスクもこれからますます大きくなるんじゃないか。そういうことを考えると、ISDS条項が本当にいいのかどうか。ある意味では日本の主権がその分制約されているというふうにも捉えられるわけですから。
そういう意味で、よりよい紛争処理のための規定をEUとアメリカと日本で協議しながら作り上げていくという作業が私は必要な時期に来ているんじゃないかと思いますが、最後に、いかがでしょうか。
○茂木国務大臣 基本的な考えについては岡田委員と考えを共有したいと思いますが、同時に、ISDSについては、相当痛い思いをしている国というのがあるわけでありまして、かなり、アレルギーといいますか、これに対する拒否反応が現実にあるというのも事実だ、そんなふうに思っておりまして、このISDS条項、締約国が協定に基づく義務に違反した場合に投資家が損害を受けた場合、投資家が国際仲裁に直接付託することができる、こういったことを定めておりまして、我が国の経済界も重視している規定であると考えております。
このISDSについて、国家の規制権限を不当に制約するのではないかといった問題提起がなされているのも事実でありまして、ISDS条項は、本来、投資の受入れ国が正当な目的のために必要かつ合理的な規制を差別的でない形で行うことは妨げるものではないと考えておりまして、そういった点の理解を深めていくことも必要だと思っております。
こういった論点も含めて、ISDSの在り方については、委員の方からもお話ありましたように、米国、そしてEUも参加します国際商取引法委員会を含めて、様々な国際的な枠組みの中で今議論が進められているところでありまして、我が国としても、これらの議論に積極的に参加してきているところであります。
交渉の現場にいて、意外とやはり拒否反応というのもあるんだなと思っておりますけれども、これがどう適正に運用されているか、こういった実態を示すことによって、そういった国々の理解を得ていくということも必要ではないかなと思っています。
○岡田委員 日本の企業にとっては、これは便利な制度だというふうに思います。
ただ、日本政府が、逆に、巨大企業、例えばGAFAとか、いろいろな規制を入れたときに、これは内外無差別じゃないというようなことで訴えられるリスクもあるということですから、もう少し公平公正な運営が確保できるような、EUの方は多国間投資裁判所制度の創設ということを言っていると理解していますが、もう少し知恵を出すべきじゃないかということを最後に申し上げておきたいと思います。
終わります。