「増税延期」は国民無視の党利党略だ 選挙対策以外の何物でもない(夕刊フジコラム 2016/3/24)
民主党と維新の党が合流する新党「民進党」の結党大会が27日、都内のホテルで行われる。正式決定はまだだが、綱領案や規約案も固まった。
党名の変更については、厳しい時代も民主党を支えてくれた人々の中には「残念」という声も聞かれる。まず、これまでのご尽力、ご支援に心からの敬意と感謝を表したい。そのうえで、2つの政党が新党を立ち上げるにあたり、党名を新たにすることは意義があると思う。多くの方々から「民進党」を歓迎する意見も寄せられている。
綱領案では「自由、共生、未来への責任」を前面に打ち出した。
「公正・公平・透明なルールのもと、多様な価値観や生き方、人権が尊重される自由な社会」「誰もが排除されることなく共に支え、支えられる共生社会」「未来を生きる次世代への責任を果たす社会」を実現するとした。規約案では、男女共同参画本部を常設機関として設置し、地方自治体議員・組織の役割を強化するなど、21世紀型の新しい政党を目指した。
さまざまな議論はあるが、政権奪還のために、理念・政策が近い民主党と維新が1つになり、さらにバージョンアップした。報道機関の世論調査でも、期待感は少しずつ高まっている。国民とともに進む改革政党、それが「民進党」だ。夏の参院選を見据えて、素晴らしいスタートを切りたい。
さて、ノーベル経済学賞を受賞した米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授と17日に懇談する機会があった。メディアは、スティグリッツ氏が政府の国際金融経済分析会合に出席して、「消費税増税の延期」を訴えた部分ばかりを報じていたが、正確に伝わっていないと思う。
私が懇談で財政健全化の重要性を語ると、スティグリッツ氏は、炭素税を含む環境税や金融取引税などを導入して、税収を確保すべきだと語っていた。
スティグリッツ氏は財政出動の必要性を訴えていたが、これも安倍晋三政権が進めるような公共事業ではなく、子供や家庭への手当て、雇用の正規化、格差是正など、生産性を高める財政出動を主張していた。
永田町では今後、予定通り消費税を引き上げるか否かが大きなテーマとなる。安倍首相はこれまで、「リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」と語っていた。いわば公約だ。
現在、安倍首相がいうような重大事態が発生しているとは思えない。こうしたなかで、引き上げを再延期するならば、国民に対して「アベノミクスが失敗したので、引き上げられない」と正直に言うべきだ。
いずれにせよ、持続可能な経済財政構造をつくるという議論をしないで、安倍首相が「増税延期」を打ち出すとすれば、選挙対策以外の何物でもない。日本の将来を真剣に考えているとは到底言えない。国民無視の党利党略を許すわけにはいかない。 (民主党代表)