過去最高の国の借金――歳出削減努力の緩みを懸念
今日は、久しぶりに財政のお話をしたいと思います。
今日の新聞各紙は、国の借金がいままでの最高の834兆円になったと伝えています。
いま、少し景気の状況は上向きで、税収も増えつつあるというなかで、国債の発行も減っていますから、財政の立て直しの話が大きな政治の課題から少し隠れてしまっていますが、しかし、この問題は引き続き非常に重要なテーマです。
まず、財政の赤字というのは別に構わないのだという意見もありますが、私は、次の世代がそれだけ自由度をなくしてしまうと思います。
借金の返済に自らの収めた税金を充てなければいけなくなるということは、これは世代間の不公正だと思います。
そして同時に、あまりにも大きな借金が金利の急激な上昇を通じて、経済に大きな破壊的な影響を及ぼすそのリスクというものを、依然としてしっかりと考えていかなければならないと思います。
そういう意味で、財政の立て直しは政治の大きな課題であるということを改めて申し上げたいと思います。
まず第1に重要なことは、歳出削減努力です。これが、少し景気が上昇して税収が増えているなかで緩んでいるのではないかということを、非常に懸念しています。
例えば、今年度の予算案もそれなりの歳費削減はなされていますが、一方で減税を、特に法人税減税を様々な形で行っています。これも、結局は歳出を増やしているのと同じことです。
そして、今年の「骨太の方針」に公共事業費3%削減という数字が結果的に盛り込まれなかったように、いま、長かった歳出削減の時代に対する「もうそろそろいいじゃないか」という声が、いろんな既得権を持った人から出てきているということです。
もちろん私は、教育の予算や子育て支援といった予算は増やすべきだと考えています。しかし、まだまだ削るところはたくさんあります。公共事業費もそうです。あるいは、医療費の中にも増やさないといけないところもありますが、しかし非効率な部分もあります。
そういったところについて、2年前の総選挙では、私は国家公務員の人件費2割削減を含めて、具体的な方針を示しましたが、そういったプランを示して、歳費削減の手を緩めることなくやっていかなければいけないと思います。
同時に長期的な目標として、2011年のプライマリー黒字化の先の目標を議論すべきときだと思います。
これは、GDPに占める国債残高の比率を一定に保つ、あるいは減らしていくことに尽きると思います。そのことを、具体的に何年にどういう目標かということを設定して、そのためのシナリオを書いていかなければならないと思います。
一時、自民党の中川幹事長が「上げ潮路線」と言われて、そして、安倍総理も「経済成長なくして財政再建なし」という言い方をされました。
もちろん、経済成長があれば、税収にとって、財政にとって、それがプラスの効果を及ぼす部分もあります。
しかし、だからと言って実現できないような高めの経済成長を設定し、そして、それを前提にして歳出削減努力が鈍るとすれば、これは大きな問題です。
やはり、財政立て直しを考えるときの名目経済成長の伸び率は堅めに見なければいけないと思います。
それを甘めに見、そして長期金利の上昇を低めに見て、国債費(国の借金の元利返済)を圧縮するというのは、これはためにする議論と言いますか、一種の「財政の偽装」に過ぎないと考えています。
いずれにしても、将来のプライマリー黒字化までは、私はまず財政削減に重点を置いて、その先にあるものとしての負担増ということについても、政治はきちんと国民の皆さんに語っていかなければならない。
歳費削減をまずやったうえで、しかし、そういった議論も将来的には避けられないと思っています。
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