福田ビジョン――あらゆる場で議論していきたい
昨日、地球温暖化問題に対する福田総理の考え方、いわゆる「福田ビジョン」が発表されました。これについて一言、今日はお話ししたいと思います。
予想された範囲でのビジョンだったと思いますが、2050年については60~80%のCO2削減ということを言われました。この点については、私は評価をしたいと思います。
ただ、2050年というのはかなり先の話ですので、よく言うのですが私自身97歳ですから、大きな目標としては必要なことだと思いますが、より重要なことは具体的に中期的にどういう目標を設定するか、つまり2020年にどうするかということが最も重要なことだと思います。
そういう観点から言うと、2020年の中期目標については、「来年の然るべき時期に発表したい」と言いながら、今回は出されなかった。これは大変残念なことだと思います。
そして、同時にその中期目標の設定の仕方について、セクトラル・アプローチ、つまり分野ごとに積み上げるというやり方が、かなり前面に出てきた感じがします。
しかし、そういったセクター別にやるということになれば、なかなか25、30、40%削減という数字は出てきません。
やはり、2050年に世界全体でCO2を半減するためには先進国として、これは福田総理もお認めになったように60~80%、それを達成するためには、2020年には25~40%というのが、いまの国際社会で語られている数字です。
そういった必要性からまず目標が定まり、そして、その目標を達成するために具体的に何をやるか。そういう発想に立たなければならないと思います。積み上げではなかなかそういった大きな数字は出てきません。
そして、2020年の数字をきちんと立てたうえで、具体的に、ではいま何をするか。
常々私も申し上げていますが、キャップ&トレード方式での国内排出権取引制度の早期導入。我々は2010年度ということを、温暖化対策基本法案の中で謳っています。
そして、炭素税(温暖化対策税)の導入。自然エネルギーの大幅な導入。こういった具体的手段を総動員しながら、その目標を達成していくということが必要になるわけです。
福田総理の場合は、その中期目標の設定をまだためらっていますし、どの程度の数字にするかということは明らかではありません。
そして、国内排出権取引制度についても、もう議論する段階ではないだろうという福田総理の思いは伺えますが、実際には今年の秋から「試行的実施を開始する」ということであって、いままで実質的に削減努力を産業界にお願いしてきたその延長線上でやっているとしか思えません。
カチッとした姿で国としてやるんだという意思を明確にしない限り、結局いままでと同じことになってしまうのではないかと思います。
いままでの数字というのは、1990年比で2012年に6%削減しなければならない日本が、逆に6.2%増えている(2006年)ということについても、実は昨日福田さんは「微増」だと言っているわけです。
これは何らかの勘違いだったのか、あるいは6%削減が6.4%増、往復で12%以上違っていることが「微増」という一言で片づけられたとしたら、私は大変残念なことだと思います。
そして、もう1つだけ言わせていただくと、基準年1990年というのを「20年も前」の数字だということで、新しい基準年を採用したいという気持ちがにじみ出ています。
しかし、1990年から今日まで、京都議定書を守って一生懸命努力してきた国がかえってそのために厳しくなり、日本のように減らすどころか増やしてしまった国が楽になるというのは、あまり公平なことと言えないと思います。
したがって、京都議定書を作ったときの1990年の数字の妥当性はしっかり議論したらいいと思いますが、当然のように例えば2005年といった数字を前提にして議論していこうという提案は、やや恥ずかしい提案ではなかったかという気がします。
いずれにしても、総理の考え方も明らかになったわけですから、これからしっかりとこの問題に取り組んでいかなければいけない。私たちも法案を出しましたので、あらゆる場で議論していきたいと思っているところです。
*「地球温暖化問題に対する福田総理の提案について(談話)」(民主党HP)
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