中国訪問報告(2)――広東省・産業視察篇
今日は中国訪問報告の第2弾、広東省のお話をしたいと思います。
今回4日間のうちの後半2日間は広東省にお邪魔して来ました。なぜ広東省かということですが、目的は2つあります。
1つは、広東省には深?(シンセン)とか東莞(トウカン)、あるいは広州といった市がありますが、そういった地域は改革開放が真っ先に行われた地域です。
したがって、台湾や香港資本が、香港はすぐ近くにありますから、大量に進出した。どちらかというと付加価値の低い、例えば靴の製造ですとか、アパレルですとか、そういった産業が出たわけです。
それがいま、中国の人件費が上がり、あるいはストなども起こり、あるいは様々な労働法制も導入されたことによって、中国から他のカンボジアやバングラデシュ、ベトナムといった国々に工場がかなり移転しているということが言われています。最近の『日経ビジネス』や『エコノミスト』でも、そのことが特集されたりしています。
そういった、中国で最も早く改革開放がなされた広東省で何が起こっているのか――。これはやがて、5年、10年先の中国沿岸部全体で起こることですから、それをこの目で見てみたいということが1つありました。
もう1つは、そういったことも含めて、日本の企業の方々の意見を直接聞いてみたいと思ったわけです。この2つの大きな目的を持って広東省に行きました。
まず、広東省のトップ・書記を務めているのが汪洋(オウヨウ)さんという方です。この方も前回お話しした李克強さんとほぼ同じ年齢で、50代前半、私よりちょっと若いくらい、そして、共生団(共産主義青年団)出身です。
汪洋さんは、実は大学は出ないまま共生団の活動を始めて、そして、能力を認められて引き上げられ、いまやこの1億人を擁する中国の中でも最も重要な地域である広東省のトップを務めています。やがて中央に戻って、さらに上に行くのではないかと言われている人です。
私も夕食を共にして、会談と夕食と合わせて2時間ぐらい、いろんなお話をさせていただきましたが、李克強さんとタイプは違いますが、非常に立派な政治家であると感じました。非常に将来楽しみだと思います。
そして、その汪洋さんとの会談で、おそらく汪洋さんはかなり自信を持って、「付加価値の低いところが広東省から出て行ってしまうのはやむを得ないことだ。より付加価値の高い産業を誘致していく」ということを強気に述べられた、というのが私の印象です。
では実際に現地の企業はどうなのか、ということで、私も中国資本のビール会社のトップ、それから電力会社のトップにお話を伺う機会がありました。
それぞれ非常に興味深かったのですが、特に私が興味を持ってお話をさせていただいたのが、日本の中小企業の代表者の方3名と昼食を共にしながらお話をさせていただいたことです。
「非常に困っている」というのが彼らの共通した意見で、人件費も上がる、そして、いろんな規制が強くなる、あるいは、いろんな規制がある日突然新しいルールとして適用されてしまう、その助走期間、周知期間がない、そういったことに対して非常に困っている、と。
大企業であれば総務とか人事とか労務とか、そういったことについて担当セクションがあって、そこで対応できるが、中小企業の場合だと、製造の現場があるだけで、そういったことについて経験のある人もいない。
そういう中で、いろんな要求が働く側からも出てきて、四苦八苦している――。そういう印象を受けました。
こういうところについては、現地のJETRO(日本貿易振興機構)、今回私は大変お世話になりましたが、JETROや、あるいは総領事も大変がんばっておられましたが、そういった領事館つまり国の機関の役割がよりこれから大きくなっていくのではないかなと。
これは広東省だけではなくて、中国の他の地域についても言えるのではないかなと。中小企業に対するしっかりとしたケアが望まれているのだなと感じました。
最後に、広州には自動車産業、日本でいうと日産、トヨタ、ホンダも出ています。今回、トヨタの工場、そしてデンソーの工場も見てきました。 デンソーは私の地元の大安製作所が、いわばマザー工場となって、広州でモノづくりをしているわけです。
トヨタの工場は若い男性中心の工場で、最新の機械を入れて、非常にきびきびと、生産性が高いなと実感できました。
デンソーのほうは、給料は安いのですが、地方から集めた女性が中心の工場です。しかし、本当に真剣に仕事をしている様子が伝わってきました。
一生懸命働いている。もちろん労働コストも安いわけですが、あれだけ一生懸命働いていると、日本もうかうかできないなと。よほど頑張らないと、とても太刀打ちできないと感じました。
いずれにしても、今回いろんな産業の現場を見ることができたのは、大変有意義な旅でした。
コメントを返す