核軍縮――米国はじめ世界の状況が変わりつつあるなかで
今日は核の話について、少しお話ししたいと思います。
昨日、オーストラリアの外務大臣、資源エネルギー大臣を務められ、そして、いまは政界から引退されていますが、野党労働党の党首も務められたギャレス・エバンズさんが日本にお見えになって、核の問題について意見交換したいということで、1時間近く意見交換をしました。
実はこのエバンズさんは、先日オーストラリアのラッド首相が日本にお見えになったとき、福田総理に、核の不拡散あるいは核の軍縮について議論する国際委員会(「核不拡散及び軍縮に関する国際委員会」)をつくろうという提案をされて、福田総理も了解され、その共同議長に就任することとなった人です。
様々な意見交換を行いましたが、とにかく、私とエバンズさんとの間で共通したことは、核の不拡散とか核保有国の核軍縮といったことに対して、大分状況が変わってきたということです。
例えば、ブッシュ大統領が核の先制攻撃を否定しないなど、いろんな意味で核軍縮ということに対してかなり後ろ向きの姿勢がアメリカは目立ったのですが、最近、キッシンジャーさん(元国務長官)はじめ、外交の専門家の皆さんが「核のない世界を目指す」ということで、共同で見解を発表され、そしてまた、次の大統領が(民主党オバマ氏、共和党マケイン氏の)どちらになろうとも、核軍縮あるいは核不拡散については、より前向きに取り組まれるのではないかということで、アメリカも変わってきたと。
この機会に、国際委員会において、軍縮・不拡散についてしっかりとしたレポートをまとめようということです。
私はこの委員会の趣旨には大いに賛同しますが、特にエバンズさんに申し上げたことは、インド、パキスタン、あるいはイスラエルといった、核を保有している国――イスラエルは国そのものは認めていませんが、国際機関の常識としては核を保有している――しかし、核不拡散条約(NPT)には入っていない、そういう国をこれからどう扱っていくのかということが、非常に重要な問題ではないかと。核軍縮・核不拡散と並んで重要な問題ではないかと申し上げました。
例えば、インドについては、核実験をして核を持っていることは明らかですが、核不拡散条約に入っていません。したがって、いま核保有国が持っているような、核軍縮の義務というのも負わないわけです。あるいは、包括的核実験禁止条約(CTBT)にも入っていません。核実験を将来行うこともあり得べしということをインドは言っているわけです。
こういった国をどう扱っていくのか。非常に難しい問題ですが、彼らに核を完全に捨てろと求めることも現実的でないかもしれません。そういう意味で、こういったすでに核を持ってしまった国々をどう位置付けていくのかということが、非常に大きなテーマだということを申し上げました。
ちなみに、このインドの核につきましては、原子力供給国グループ(NSG)での議論、つまり、アメリカとインドが核の平和利用、民生用原子力について協力していくという話がありますが、これをどういった枠組みの中で認めていくのか、あるいは、認めないのか。そういったことについて、さらなる議論が必要です。
私も国会で二度取り上げましたが、当時の安倍総理あるいは高村外務大臣から明確な答えは返ってこない。いままで核軍縮・核不拡散に世界の先頭を切ってリードしてきた日本にしては、大変情けない状況にいまあるということも、あわせて申し上げておきたいと思います。
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