前空幕長論文――制服組も必要に応じて国会に出て答弁を
今日は田母神(たもがみ)前空幕長(航空幕僚長)の問題について、一言申し上げたいと思います。
まず、田母神前空幕長の論文ですが、新聞などにも掲載されましたので、お読みになった方も多いと思います。私に言わせると、中身は論評に値しないような内容であると言わなければならないと思います。
特に私が思うのは、例えば、日中戦争はコミンテルンに操られた蒋介石によって、巧みに戦争に引きずり込まれた、あるいは、日米戦争についても、共産主義に影響を受けたアメリカ高官によって、日本は戦争の道にこれまた引きずり込まれてしまったと、そう言わんばかりの内容です。
戦争を始めたことは国としての意思であり、何か中国やアメリカにうまくしてやられたんだ、引きずり込まれたんだという考え方自身は私には理解できないものです。日本という国はそこまで、私は戦争は愚かだったと思いますが、愚かにも「引きずり込まれてしまった」のでしょうか。そこに国としての意思はなかったのでしょうか。
私は自衛隊の空幕のトップがこういう認識であるということに極めて驚きますし、そういう認識の人間がいてもおかしくはないのですが、そういう人が空幕のトップになった、航空自衛隊のトップになったということが驚きです。一体人事というのはどうなっているのかという思いが非常に強くしてなりません。
ご本人は「言いたいことも言えないようでは北朝鮮と同じだ」「民主主義ではない」と言われましたが、国の方針が明確にあるときに、その国の方針の下で働く自衛隊の皆さんも一種の国の官僚でありますから、そういう人たちが明らかにトップと違う方針を公言できるというのは民主主義ではありません。
いろんな議論はあっていいと思いますが、明らかに国の方針と違うことを外に論文として発表するのであれば、それはまず自らお辞めになってから、やられるべき話だと思います。
そもそも、民主主義という言葉を使うのであれば、シビリアンコントロールは一体どうなっているのかと言わざるを得ないわけで、そもそもシビリアンコントロールということ自身を理解していないか、あるいは認めない、そういう人が実力部隊、自衛隊のトップにいたということは極めて深刻なことで、政府も当然どうしてこういう事態が発生したのか、フタをすることなく、お茶を濁すことなく、しっかりと分析をし、そして再発を防止していく、人事権も含めてしっかりと政治家、つまり防衛大臣あるいは総理がコントロールする、そのことを明確にすべきだと思います。
それにしても、私の持論ではありますが、国会には制服の人(自衛官)は基本的に呼べないことになっています。かなり前ですが、私が安全保障委員会の野党側筆頭理事をしたときも随分議論しましたが、与党側は認めようとしませんでした。
このこと自身が不思議なことであって、国会に出てくる責任を負わない。しかし外で言いたいことは言うというのは極めておかしなことです。自衛隊の皆さんももちろん、政治家の下、大臣の下で、それに従って司る公務員です。私は国会にも必要があれば出てきて、そして答弁をする。そういった当たり前のことをまず実現しなければならないと思います。
そういう責任がないなかでやりたいことをやっていると、今回の前空幕長についてはそういう印象を強く持ちました。非常に危機的状況だという風に認識しています。
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