美味しい紅茶も苦く――スリランカ紛争
今日は、スリランカの話を少ししたいと思います。
スリランカという国は、我々には、小さい頃の「セイロン」という名前のほうが、むしろ馴染みがあるかもしれませんが、長年民族間の紛争で悩んで参りました。
スリランカの構造というのは、約75%のシンハラ人に対して、タミル人が18%、ムスリムが残り7%という人口構成にあります。その中で、このシンハラ人とタミル人の紛争が続いてきたわけです。
歴史を振り返ると、元々このシンハラ人がスリランカの多数を占めていたわけですが、イギリスの統治下にあって、タミル人がインドから移住された。そして、この少数派のタミル人をむしろを優遇するなかで、イギリス当局がスリランカを統治してきたという歴史があります。
ちょうど同じような話は、ビルマ(ミャンマー)において、少数派のカレン族などを優遇して統治してきた。多数派が冷遇されてきた。同じような手法がスリランカでも行われました。
この2つの民族間の争い、タミル人というのはインド南部の多数派ですけが、そういった大国の後ろ盾もあって、長年悲惨な紛争が続いてきたわけです。
先般、東京駐在のスリランカ大使が私の部屋(事務所)を訪れまして、「この長かった紛争も大分終わりを告げつつある。もうすでに、反政府ゲリラは数百人規模にまで制圧されて、非常に限定された地域になった。まもなく平定されて、スリランカに平和が訪れる。したがって、荒廃した北部を中心に――北部にそういった人たち(反政府ゲリラ)がたくさんいたわけなので――是非日本にも本格的な経済的支援をしてもらいたい」という話をして帰られました。
その後数日して、最近のことですが、全く違う情報がもたらされました。それは、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」という国際的なNGOで代表を務めるケネス・ロスさんがお見えになりまして、「いま、確かに状況は反政府ゲリラが制圧されつつあるが、一般のタミル人を人質に取って抵抗している。そして、それに対して政府軍が攻撃を加えて、多くの人命が失われている。これを早く停戦しなければいけない、停戦に持ち込まなければいけない」と強調されて帰られました。
両者の言い分には、かなり差があるわけですが、外務省にも状況がどうなっているのか聞いたところです。
外務省もこういう状況を放置できないということで、従来スリランカに対しては、経済協力などで影響力を行使できる立場にありましたので、日本、EU、ノルウェー、米国、この4つの国・地域が共同代表で、日本からは明石康さんが議長になって、この和平交渉をして参りました。先般その外務省で、48時間の戦闘行為自制を歓迎するとの発表がありました。
非常に、いろいろな経緯もあって難しい問題ですが、しかし、一般の市民が犠牲になるということは絶対に避けなければなりません。残されたその反政府ゲリラをどう扱うかということも絡むと思いますが、早く各国が協力してスリランカ政府にも自制を求め、最終的な平和合意がなされることを期待したいものだと思います。
スリランカの紅茶は大変美味しいですが、最近、スリランカの紅茶を入手する機会がありました。私は紅茶が好きですけれども、こういった話を聞いたあと、スリランカの紅茶はやや苦味が増したような気がします。
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