温暖化の中期目標-これでは国際交渉で日本が取り残される
今日は、昨日麻生総理が発表された日本の温暖化対策、いわゆる「中期目標」について、私の考え方をお話ししたいと思います。
昨日の夜、私自身も記者会見をして、この麻生さんの新しい目標があまりにも低すぎるとお話ししました。申し上げたいことはいろいろありますが、要約して申し上げると、今回のこの目標値で果たして中国やインドといったこれから発展していく国々を枠組みの中に取り込むことができるかどうか、ということがまず懸念されます。
麻生さんはこの地球温暖化の問題で、こういった国々、あるいはアメリカも含めて、大きな排出国がきちんと枠組みに入らないと意味がないということを強調されました。そのこと自体は事実です。では、今回の低い数字で、果たして説得力があるのかということになります。
私自身も中国の環境大臣と意見交換をしたことがありますが、彼らが言うのは、「いままでの温暖化の進行については、産業革命以降、多くの温室効果ガスを排出してきた先進国に責任がある。そして、その先進国が自ら高い目標を持って、これから温室効果ガスの排出を抑えていくという姿勢を示さない限り、中国としては、あるいはこれから発展しようとする国としては、この議論に乗って排出を抑制していくことはできない」というものです。
この論理が正しいかどうかは別にして、しかし現実を見たときに、やはり先進国グループがしっかりと高い目標値を持って努力をするということを示さない限り、インドや中国がそれに乗ってこないということ自体は、私は事実であると思います。
麻生総理は、そういったこれから発展しようという国々を、どういった論法で説得していこうとしているのか、まずそこが見えないわけです。
そして2番目には、科学の要請ということをどう考えるかという大きな話があります。
つまり、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートにもあるように、これから気温の上昇を2℃程度に抑えていこうとすれば、当然、先進国としては2050年には60~80%、あるいはそれ以上の温室効果ガスの排出量の抑制が必要になる。そして、そのこと自体は、実は日本の政府も閣議決定で認めているわけです。
しかし、今回のこの新たに決められた数字が、2050年に向かって、一直線で温室効果ガスを減らしていくことになるかというと、そういうことにはならないわけです。
麻生さんは一方で、2030年には4分の1程度、つまり25%程度の削減ということを言われています。2020年、2030年と線を引いたときに、この延長線上で2050年に60~80という数字にはならないわけで、2030年以降急激に温室効果ガスの排出削減が進むという「仮定」に立っていることになります。
しかし、これは言葉を変えれば、次の世代に問題を先送りしているに過ぎないということになるのだろうと思います。言っていることに整合性がないと思います。
そして3つ目、最後にもう1つ強調したい点は、温暖化が進むことによるマイナスをどう考えるのかということです。気候の不安定化あるいは高潮の被害、農産物・水への影響――様々な温暖化によるマイナスの影響が指摘されています。そういったことについては、モデルの中に組み込むことができないということで、今回カウントされていないわけです。
もちろん、日本だけがやっても、世界の温暖化を止めるには効果が限定されているという議論も、あるいは可能かもしれません。しかし、それこそがまさしく小国の論理であって、日本自身が自ら率先して温室効果ガスの排出を減らすことで気候の温暖化防止を進め、そして、そういった大きな温暖化のマイナスを除いていくと考えていかなければならないと思います。
それをしない場合のマイナスの影響というものをカウントしないまま、国民の負担だけ一方的に、年間36万円だとか、そういったことを言い立てる麻生総理に、私は政治のリーダーシップを感じることはできません。
この問題は、12月にデンマークで行われる国際会議に向けて、これから日本がどういう役割を果たしていけるのか。世界の大きな話し合いの流れから日本が取り残されてしまうのではないかということを、私は強く懸念していることを申し上げておきたいと思います。
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