韓国訪問―被害者の立場に立てば、その気持ちは理解できる
一昨日(2月10日)の夜、羽田を発ってソウルへ行きました。実質的には、昨日(2月11日)丸1日、韓国でいろいろな方と会談を行って、夜遅くに帰ってきました。
今回の祭日を利用した韓国訪問ですが、日本と韓国にとって今年は特別な年です。日韓併合がなされて、ちょうど100年になります。韓国の中では、そのことをめぐりいろいろな議論が盛り上がり、日韓関係は非常にセンシティブな1年になるだろうと思います。
柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商部長官(外務大臣に相当)とは、そういった困難をしっかりと乗り越え、次の100年に向けて、未来志向で日韓関係を形作っていくことを確認しました。
私が会談後の共同記者会見で述べたことは、日本の新聞でもいろいろと報じられていますが、私は、「100年前の出来事は、韓国の人々――正確には朝鮮半島の人々と言うべきかもしれませんが――にとって、国を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられることだった。私は、自分が日本人であることを誇りに思う。だからこそ、そのときの韓国の皆さんの気持ちがわかる。被害者の立場に立って、その気持ちを忘れてはならない」と申し上げました。
そして、「これからは、そのことにしっかりと目をそむけずに直視しながら、未来志向で日韓関係を築いていこう」と申し上げました。これは、私の思いです。
よく、謝ってばかりいるとか、いろいろなご意見がありますが、しかし、例えば、我々の日本がどこかの国に植民地にされ、様々な文化を否定されたらどうでしょうか。
例えば、韓国で行われた創氏改名。韓国では、結婚しても名前は変わらないというのが、長い間続いた歴史です。にもかかわらず、日本と同じように姓は1つにするというように変えられたわけです。
そのことに象徴されるように、様々な文化についても否定されるということであれば、私は、日本に誇りを持つ日本人であれば、とても堪えがたいことだと思います。
ですから、我々は、その気持ちを相手方の立場に立って理解しなければいけないと申し上げました。
30分程度の時間でしたが、李明博(イ・ミョンバク)大統領とも会談する機会をいただきました。李明博大統領は、他に外国の要人が2人来ておられて、大変お忙しい日でしたので、私は外務大臣ですから、無理をしていただく必要はないと申し上げたのですが、会談の合間に時間を取っていただきました。
李明博大統領は、一時は牛肉の輸入をめぐる対米交渉で妥協しすぎたということで、支持率が2割を切るような事態もありましたが、いまは支持率は回復して、非常に自信に満ちておられました。
李明博大統領は、「いろいろな国民の意見は聞かなければならないが、しかし、聞いているばかりでは、リーダーは決断できなくなる。必要なときには、リーダーは思い切った決断をしなければいけない」という趣旨のことを言われていました。
そういった過去の経緯を見ると、それを乗り越えてきた人だけに、言われることに非常に説得力があると思いました。
いずれにしても、韓国はお隣の国ですし、自由と民主主義、市場主義経済といった様々な基本的価値を共有する国です。日本と韓国が一緒になって、地域の問題や二国間の問題だけではなく、例えば、アフガニスタンへの支援や、あるいは、いろいろな国への経済協力を一緒にやっていくなど、グローバルな問題に対しても、様々な場面で協力できる関係を是非構築していきたいと、改めて感じたところです。
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