公務員年金の見直し―官優遇は誤報、新制度で官民格差はゼロに
「共済年金職域部分と退職給付に関する有識者会議」で議論していただいていた、公務員の年金の問題についての議論の結果が出ましたので、そのことについて、一言申し上げたいと思います。
人事院の調査では、官民格差、つまり退職一時金と年金の合計額(退職給付)が、公務員のほうが民間よりも400万円多いという結果が出ました。5年前の調査では、官民格差はほとんどなかったわけですが、今回400万円という大きな差が出ました。
有識者会議の結論は、これをどうするかというのが1つの論点で、そのことについては、これをなくすという結論になりました。ただし、1回でなくすのではなくて、段階を踏んでなくすという意見が多数だったわけです。
そしてもう1つは、公務員の年金と会社員の年金、つまり共済年金と厚生年金が1つになる、これは別の法案(被用者年金一元化法案)が既に衆議院を通過しているわけですが、それに伴って、公務員だけにあった職域加算部分という、いわば3階建ての部分が廃止されます。
それに代わる措置をどうするか、新しい年金制度をどう考えるかということについても、ご議論いただいたわけです。そのことについて、新しい具体的な制度設計を示していただいたということです。
ただ、この点について、メディアなどを見ていますと、さまざまな誤解というか無理解があるということで、そのことを今日は説明したいと思います。
メディアの中には、「これは公務員の優遇が残ったものである」と。民間では「企業年金」というものがありますが、特に中小企業には企業年金のない企業が多いというなかで、公務員に従来の共済年金が厚生年金に変わるわけですが、「それ以外に年金制度を設ける必要はないのではないか」と、「官を優遇するものだ」と。こういう議論が見受けられます。
ただ、誤解があるのは、基本的に退職給付、つまり年金と退職金の合計、今回そこで400万円の格差があるということがわかったわけですが、その退職給付については、官民格差をゼロにするという前提で、議論しているということです。
官民格差がゼロになるということは、あとは退職金と年金、それぞれ税金が投入されるわけですが、そのトータルの税金の額というのは、民間と格差がゼロになるように設定するということです。
したがって、あとは退職金と年金にどう割り振るかの問題というように、論理的に整理できるわけです。今回、すべてを退職金で払うのではなくて、一部を使って、年金の形で払うということにしたものです。そういう論理的な整理がされていますから、基本的に官優遇という議論は成り立ちません。
しかし、もし年金などの運用が上手くいかなかったときに、税金を追加投入するということになれば、そこである意味で官民格差ができてしまうわけで、そういうことにならないような制度設計、基本的には国債の金利に合わせた運用収益ということを考える。つまり、非常に保守的、安全な運用を前提に制度を考えるということで、税の追加投入というものが基本的にないという制度設計をしたわけです。
「なぜこういう年金制度を残すのか」、「全部退職一時金でいいではないか」という議論もあります。それに対しても、議論がありました。
警察官や自衛官の皆さんが、その処遇上、例えば不幸にして亡くなったという場合の遺族年金の制度、そういうものの必要性については、多くの国民の皆さんもお認めいただけると思いますが、そういう制度を運用していくためにも、全体に年金制度というものが必要だという議論。
もう1つは、公務員退職後も、守秘義務など、一定の義務は残ります。そういったことに対する抑制、守秘義務違反などが起こらないためにも、年金制度を残しておいたほうがいい。そういうことに違反があれば、年金をそこで打ち切るというような制裁としても使えると。こういう議論もありました。
詳しくは、有識者会議の報告書をご覧いただきたいと思いますが、そういう議論を重ねるなかで、現在の制度設計になったものです。
重ねて申し上げますが、年金制度があることで税投入が増えるということはなくて、年金制度を作るということになれば、その分退職金が減るという関係にあることを、まず議論の前提としてご理解いただければ、いろいろな誤解はなくなるのではないかと思います。
メディアの皆さんにもよく説明をしているはずなのですが、その辺が正確に伝わっていないことは、残念に思っています。
※共済年金職域部分と退職給付に関する有識者会議の報告書はこちら
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