村山談話―歴史的事実を認めずして、受け継いでいるとは言えない
安倍内閣の歴史認識が問われています。
とりわけ、「村山談話」に対する考え方・受け止め方について、様々な議論がなされています。
安倍総理は当初、村山談話について、「そのまま継承したものではない」という答弁もしていましたが、様々な議論の中で、「全体として受け継いでいる」という言い方をしています。
しかし、先週金曜日(10日)の衆院内閣委員会で、私がこの点について菅官房長官と議論した際、村山談話の中にある「植民地支配と侵略」について引き継いでいるのかと質問したのに対して、菅官房長官は「歴代内閣の立場を引き継いでいる」という答弁を繰り返し、植民地支配や侵略ということについて引き継いでいるということは、一言も言わなかったわけです。
安倍さんの答弁も、「侵略を否定したことは一度もない」という言い方に留まっていて、そういうことを認めるかどうかについては、明言を避けています。「全体として受け継いでいる」ということで、誤魔化しているということです。
私がこれを問題にするのは、村山談話の本質がここにあるからです。
村山談話は、過去の侵略や植民地支配によって、アジアの人々に多大な苦痛と損害を与えた「疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め」というのが最もコア(核心的)な部分です。
この「疑うべくもないこの歴史の事実」というのは、「植民地支配と侵略」を受けているわけですが、そこの部分について明確に言わずして、村山談話を受け継いでいることにならないわけです。
結局、「全体として受け継ぐ」という言葉で誤魔化していると受け取らざるを得ないと思います。
この「植民地支配と侵略」というキーワードは、村山談話から10年後、2005年の「小泉談話」でもそのまま引き継がれています。
あるいは、植民地支配ということについては、小泉政権時の「日朝平壌宣言」の中にも出てきます。日朝平壌宣言の中にもそういう認識が示されている、これは、当時の社民党党首である村山総理の見解に留まらず、当時も自民党と社民党の連立政権だったわけですが、その後、小泉さんになっても、同じ見解が示されたわけです。言わば歴代内閣の共通認識です。
その「植民地支配と侵略」というキーワードについて、安倍内閣ははっきり引き継いだということは言っていない。つまり、「引き継いでいない」と言われても仕方がないというのが現状です。
これではやはり、周辺の国々、あるいは、アメリカの中で疑問の声が上がったとしても、決して不思議ではないわけで、なぜ植民地支配や侵略という歴史的事実を認めないのか、そのことについて、明確に説明する責任が安倍総理にはあると思います。
私は、歴史から目を背けることなく、そして、反省すべきはきちんと反省したうえで、未来志向の関係を築き上げていくというのが、いままでの内閣の取ってきた方針であり、同時に必要なことだと思っています。
そこを誤魔化してしまったのでは、「未来志向」と言っても、アメリカも含めた周辺の国々の理解はとても得られないと思います。
私が外務大臣として韓国に行った折に、こう申し上げたことがあります。
「私は日本人であることに誇りを持っている。したがって、朝鮮半島の人々が他国に植民地支配を受け、誇りを奪われたことについて、よく理解できる。同じ立場に我が身を置き換えてみれば、そのことはよく理解できる」
日本人であることを誇りに思うからこそ、他国の痛みについてもしっかりと思いを馳せることが必要ではないかと思っています。
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