株価の乱高下―アベノミクスの誇示は間違い、長期金利上昇も深刻
一時の円安の動き、そして、株高の動きについて、若干不安定な傾向が見られます。このことについて、今日は申し上げたいと思います。
そもそも、なぜ大幅な円安が実現したのかというときに、もちろん、「1本目の矢」、つまり、金融緩和によって貨幣価値が下がったということはあると思います。
しかし、それだけではなく、貿易収支の大幅な赤字、そして、アメリカやヨーロッパの景気の先行きに明るさが見えてきたことが総合されて円安になった。そして、そのことが株の急激な上昇につながったと考えるべきだと思います。
それがいま、いろいろな要因によって、円安の動きがやや一本調子ではなくなり、株についても非常に不安定な動きになっています。
こういったことは、当然予想されたことではあります。ただ、私が思うのは、やはり安倍総理が株高について、安倍政権の政策決定、「アベノミクス」の成果であると誇示をしたと。自分たちのその政策の結果として、株高が実現したということを述べられたことが、そもそも間違いであったということだと思います。
様々な要因の中で円安と株高が実現してきた。したがって、そういう前提が変われば、当然一本調子ではなくなるということです。
そもそも、私は、内閣総理大臣が株の水準について、自らの政策決定の成果であると誇示をしたこと自身が、適当ではなかったのではないかと思っています。
いずれにしても、この為替と株の不安定な動きというものは、これからも継続していくと思います。
どちらかと言うと、いままで「アベノミクス」で魔法の杖一振りで多くのことが良くなると、言わば過大な期待があったとすれば、それはもう少し冷静に見なければいけないということが、今回の為替や株の動きではないかと思います。
そして、私が最も重要だと思っているのは、金利の動きです。前にも長期金利が上がっているということについて指摘をしましたが、これは景気の先々にとって、足を引っ張る要因になりかねない。住宅ローンが上がれば、住宅投資にマイナスの影響がある。
もちろん、消費税が上がるということを前提に考えれば、当面、駆け込み的な需要が増えると思いますが、長期金利が上がっていくということは、明らかに住宅投資にとってはマイナスになると思います。
あわせて、企業の設備投資にとってもマイナスになる。したがって、実体経済にかなり影響を及ぼす可能性があると思います。
そもそも、残存期間の長い国債を日銀が買い入れるということを決定した理由は、長期金利を安定させる、あるいは、下げるということにあったはずです。いま、現にそれとは逆のことが起きているということは、政策目的が実現できていないということを意味するわけですので、かなり深刻な状況だと思います。
そういったことについて、これから日本銀行を中心にどう対応していくのかということも問われると思います。
いずれにしても、ここは多くの方が一致するところですが、「3本目の矢」である規制改革、あるいは成長戦略、いろいろメニューは出てきていますが、これを具体的にどういったものを打ち出して、実現していくか。そのことが厳しく問われていると思います。
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