成長戦略・骨太方針―財源の具体論なき歳出増、危うい財政規律
北アイルランドのロックアーンで開かれているG8サミット(主要8カ国首脳会議)で、日本の経済政策、いわゆる「アベノミクス」について、一方で評価をしながら、中期的な財政計画、財政再建策を決める必要があるということになったようです。
私は、この点が非常に大事だと思っています。
先の政府の成長戦略あるいは骨太方針を見て分かることは、ここで様々なことが言われていたり、安倍総理の口からも出るわけですが、バラマキとまでは言いませんが、歳出増を伴うものや歳入減を伴うものをいろいろ言われても、それをどうやって賄っていくのかということについて、具体論がないということです。
確かに、2020年までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化するという、野田政権のときの方針はそのまま維持されるということは書き込まれました。しかし、それをどのように達成しようとしているのか、私には全く理解できないわけです。
公共事業予算も、これからも財政支出を増やしていくことになるのではないかと思います。一旦補正予算で積み上げたものが、我々(民主党政権)が麻生政権時代のものを3割カットしたその水準に今後戻るとはとても思えません。
そして、幼児教育の無償化を中心とする教育予算の増額についても、盛んに言われます。
防衛費も、今年も少し増えたわけですが、これからも増やしていく必要があるということが、政府の中や自民党から出ています。
それに加えて、成長戦略の発表で株価が下がったことを受けて、安倍さんが口走った企業減税です。法人税の引き下げや投資減税ということを言われていますが、これも思い切ったものということであれば、数兆円規模で当然必要になってきます。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加するということになれば、国内対策として、当然かなりの規模の農業予算の積み増しということが避けられないと思います。
つまり、財政を悪化させる話はたくさん出ていますが、いかにしてそれに見合う収入を確保していくのかということについては、全く言及がないわけです。
行革についても、私の時代に、例えばUR住宅の中で、民間がやっても不思議でないタワーマンションのような家賃のかなり高いものを切り離し、別会社にして民営化すべきだという提案を有識者にまとめてもらいましたが、これは既に棚上げされています。
そして、高速道路の借金の返済を10~15年先送りするという案が提案されています。
2050年までに、すべての高速道路に関わる借金を返済するというのは、小泉総理の時代の道路公団民営化の最大の目玉だったわけです。それを、さしたる議論もないまま、補修のために費用が必要ということで、簡単に先延ばししてしまうということです。
高速道路の補修は重要なテーマですが、そういったものを全く盛り込まず、2050年にすべての借金を返済するということになったとすれば、そもそも、そのことが全く欺いたものだったと言わざるを得ないと思います。
そして、高速道路の通行料の割引についても、借金の返済の期限を延ばして賄っていこうという議論は、すでに去年から出ていたわけです。つまり、高速道路をめぐる様々な問題について、小泉さんの道路公団民営化の議論のときの最も重要な決定を覆し、結局、新しい高速道路もどんどん造りますということになりかねない危うさを含んでいるわけです。
これは言葉を換えれば、新たに借金をするというのと全く同義だと思います。
こういった財政の規律ということに対して、極めて危うい状況がいま出てきています。場合によっては、国債を大量に発行し、日銀がそれを引き受けていくという、日本の将来にとって極めて懸念すべき状況になりかねないということを、非常に心配しています。
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