尖閣国有化1年―主権は譲れないが、お互いが知恵を出して対応を
尖閣諸島の所有権を国が取得する、いわゆる国有化から1年になります。
当時の意思決定に深く関与した1人として、いままでその詳細は語らずにいました。
私も、閣僚であっても守秘義務がありますので、簡単にお話しするわけにはいかないという状況にありますが、気が付いたことを少しお話したいと思います。
まず、当時の状況は、国が買うか都が買うかという2つの選択肢しかありませんでした。
当時の石原都知事は、都が買うと宣言されました。所有者(個人)もそれに応じかねない状況でした。そういう中で、都が買うことを防ぐには、国が買ってしまう以外に手はないということが客観的情勢でした。
そういう中で、都と国が争い、それぞれが所有者に働きかけをして、最終的に、幸いにも国が買うことができたということです。
都が買えば、国が買うよりも中国との関係で問題が少なかったという意見がありますが、これは全く根拠のないことです。
当時の石原都知事の言動を思いで出していただくと、中国政府に対して極めて挑発的なことを言われ、都が買った場合にいろいろな構築物を島に造るということも明言されていたわけです。そういったことになれば、日中関係に甚大な影響を及ぼすことは明らかで、我々は、都に代わって国が買うしかないという苦渋の決断をしました。
「国が買ったのは人気取りだ」と言う石原慎太郎さんの新聞でのインタビューは、私としては驚きを禁じ得ません。
我々は、本当に厳しい中で、日中関係に影響を及ぼしかねない、現実には非常に大きな影響が出たわけですが、そういう中でのやむを得ない苦渋の決断をしたのであって、人気取りなどという発想は全くありませんし、全く根拠のないことだと思います。
いずれにしても、国が買うということはなされました。
「ゆっくり国が買えばよかった」と言う人もいますが、ゆっくりしていたのでは都が買ってしまうため、あれ以外の選択肢はなかったと思います。
主権に関することは譲ることができないのは当然の前提としながら、経済や安全保障の面でも隣国である中国との関係は重要です。尖閣の問題が日中関係全体をダメにしてしまうということがないように、お互い知恵を出しながら、しっかりとした対応が求められると思います。
そして同時に、尖閣をめぐる現在の対立状況が、誤って武力行使というようなところにエスカレートしないような知恵も、お互い出していかなければならないということを、改めて感じています。
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