閣議議事録―後世の批判に堪えうるものを残すことに大きな意義
安倍内閣が、閣議や閣僚懇談会(閣僚懇)の議事録について、3週間後にホームページで公開するという方針を固めたようです。
この問題は、私が副総理のとき(2012年)に、公文書管理担当大臣として議論をしました。
閣議・閣僚懇の結果については、いままでは官房長官がまとめて記者会見で報告するということに留まっていましたが、きちんと議事録を残し、原則30年後に公開するということを、有識者の意見も聞いて、内閣の方針として決めたところで政権交代がありました。
その後、私からも国会で、閣議議事録の作成・公開をどうするのか、ということを聞いてきましたが、今回、政府内での検討の結果、最初に申し上げたようなことで対応すると決まったようです。
ただ、これで本当に情報公開がきちんとなされるのかということについて、私は心配をしています。
私が検討したときには、きちんと録音もして議事録を作り、事前に閣僚にそういう議事録でいいかということも確認を取る作業が必要だ。そして、30年間は開示しない。もちろん、必要に応じて官房長官が記者会見で説明をしますが、議事録そのものは開示をしない。情報公開請求があってもその例外にする。そのための公文書管理法と情報公開法の改正もするということを決めました。
ただし、30年経てば原則公開し、あのときなぜこういう意思決定をしたのか、誰がどういう議論をしていたのかということを分かるようにする。ドイツやイギリスの制度に習ったものにするということにしました。
それが3週間で全部出てくるということなら、ある意味素晴らしいことですが、実際にそういうことがあり得るのかという疑問がまずあります。
我々のときも、閣議はかなり形式的ではありましたが、閣僚懇では実質的な議論もしました。特に、連立政権でしたので、普天間基地問題をめぐり、社民党党首であった福島みずほ大臣と鳩山総理、外務大臣であった私との間で、かなり激しいやり取りもあったりしました。
そういうやり取りは、当然あると思います。閣僚懇で閣僚が実質的に議論するということがなく、閣議・閣僚懇が全くの形式ということになると、国家の意思決定というのは一体どこでなされるのか、ということになります。
それが全部直ちに公開できるということにはならないはずだと思います。したがって、議事録すべてではなく、議事概要という形で非常に重要な部分を伏せて、部分的に公開するということにならざるを得ないのではないかと思います。そこのところをきちんと説明すべきだというのが第1点です。
第2点は、議事録がきちんと作られていれば、30年後には公開するというところに私は大きな意義を見出していました。先ほど言いましたように、なぜこういう結論になったかということが事後的にも分かるということが、民主主義の発展にとって重要であり、ある意味で民主的統制にもなる。でたらめなことは発言できないということになります。
しかし、そういったきちんとした議事録を後に残せる形で取るのかどうかということについて、今回の安倍内閣の結論ははっきりしません。
内閣法制局長官や内閣官房副長官がいるからメモは取れるということのようですが、それが後世残される公文書ということになるのか。単なるメモ書きの一部をホームページに載せ、あとは廃棄されてしまうのか。
私は、後世、きちんと批判に堪えうるだけのものを残さなければいけない。そこにこそ、この議事録を作る意味があったと思います。もしそういうことがなされないとなると、あまり意味のないことをやっておられる。官房長官が従来の記者会見で述べていたことを、少し詳しめにホームページに載せるだけということになりかねない。そういう懸念をしています。
そういったことについて、しっかりと内閣に情報発信をしてもらいたいと思います。情報公開法や公文書管理法の改正も含めて、きちんとした対応が必要だということを申し上げておきたいと思います。
【参考1】閣議議事録等の作成・公開制度の方向性について(2012年10月24日)
【参考2】閣僚会議等の議事録等の作成・公開について(2012年11月29日)
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